それは、この状況のマリーにとっても恐ろしい話であった。
もし自分がこんな身体になったら耐えられるのだろうか、しかも永遠に・・・。
 「そこでね、・・・これもヴォーダンの罰なんだろうねぇ、この今のあたしの身体は・・・、
 人間の命を吸った時だけ若返れるのさ・・・、
 少しだけね・・・。」


第十三話
マリーは身震いした。
 「命を吸うには誰でもいいってわけじゃない、相性があるのさ、
 子供や若い女性はかなりいいねぇ、アンタはとても相性が良さそうだ・・・。
 生きてたら最高のご馳走なんだろうけど、半分死んでる今の状態でも十分だ・・・。」
ようやくマリーは自分の置かれている状況を完全に把握した。自分は食料にされるのだ。
 「・・・取引・・・ですよね、私にどんなメリットが あるの・・・ですか?
 私は魂すら消えてしまうの?」
老婆はニヤッと笑って首を振る・・・。
 「残念ながらあたしが吸うのは魂じゃない・・・、そのままあたしがアンタの命を吸えば、
 アンタの魂は強制的に身体から離れ、さっき言ったように悪霊か幽鬼になる。
 あたしが命を吸わなくても、時間が経てばアンタの魂は身体から離れるけどね。
 ・・・アンタにとってメリットってのはね、あたしがアンタの命を吸って魂が抜け出た瞬間、
 その時アンタの魂を別の入れ物に入れる事ができるっ、て事なのさ。」
それがどういう事なのか、マリーにはよく理解できない。
 「すると、私はどう・・・なるの?」
 「少し死んだ魂について教えてやろうかねぇ、手短に行くけどね、
 普通、ヒトが死ぬと、その魂は冥府の死者の王の元へ行く、そっから先はあたしも知らないよ、
 だが、強い念を残した魂は・・・地上に残り、悪霊や幽鬼となる。しかし、それは永遠ではない。
 長く地上にいる間に、魂は意識を失い、情念だけの存在となり、負のエネルギーと化し、
 この世のいろんな物に影響を与える。そうしていくうちに、だんだん情念も薄れ、
 何十年か何百年後かには、完全にこの世から消滅するんだ。
 ・・・先に言っておくが、アンタの情念は中々消えそうにないよ・・・。
最終更新:2007年04月14日 07:20