それでね・・・、
 あたしにできるのは、この先、アンタが苦しみ続ける事を和らげられるというだけ・・・、
 今もアンタの心の中は、苦しみと恨みと悲しみだけ・・・そうだろう?」
マリーは狂おしい程、切なく叫ぶ。
 「そのとおりです! どうしたら・・・どうやったらこの苦しみが消えるの!?」
 「アンタのその強い情念を、別の力に換える・・・、そうすれば苦しみや痛みは消え、
 意識は残ったまま動く事もできる、強い情念がある限り・・・。」


第十四話
 「・・・そんな方法があるのですか!?」
フラウ・ガウデンは一度、マリーの傍から離れ、
ボロボロの腕をかざし部屋の反対方向を指差した。
 「歩けるかい? あそこに扉が見えるだろ? あの扉を開けてご覧・・・。」
マリーはベッドを降りた・・・。すでに足の感覚はなくなっている・・・。
地面を歩いていると言う自覚すらない。
ようやく部屋の隅にたどり着き、その重い(?)ような気もする扉を開いた。
小さな部屋だったが、二体の人形が置いてあった・・・。
一体は枯れ木のような細男の人形・・・、膝を抱えてうずくまっている。
恐ろしいことにその顔には目玉がない・・・。ポッカリと空洞があるだけだ。
もう一体は、簡易なベッドの上に裸で寝かされていたのだが、
こちらはこの家で目覚めて初めて目にする美しいもの・・・
今まで生きてきて、どんな女性よりも・・・村で見たどんな美しい花嫁よりも綺麗な、
長い銀髪の女性の人形がそこにあったのである。
 「・・・きれい・・・。」
人形は細部まで作りこまれており、見開いた長いまつげのグレーの瞳・・・、
青白いほどの滑らかな素肌・・・、生きている人間だといっても不思議ではないぐらいだった。
 「アンタの新しい身体だよ・・・って言ったらどうするね?」
後ろから老婆が声をかける。
それは絶望と不安に襲われていたマリーには、とても嬉しい言葉であった。
 「すごくきれいです! 誰が作ったんです? どこかのお姫様がモデルですか!?」
老婆はしばらく黙ってたが、うつむいて喋った。
最終更新:2007年04月14日 07:29