「昔、お節介な魔法使いがいてねぇ、醜い身体になったあたしを哀れんで、
こんな人形を作ってよこしたのさ、あたしが昔の姿を忘れないように、ってね・・・!」
「エエッ!! このきれいなヒトが・・・フラウ・ガウデン・・・!?
あ・・・ごめんなさい・・・。」
その時マリーは悟った・・・、この美しい女性が、死にもせず永遠に年を取り続けていくことが、
どんなに恐ろしい残酷な刑罰であるかと言うことに。
一体、彼女はどんな罪を犯したと言うのだろう・・・?
第十五話
「いいんだよ、・・・まだ他人に気を遣う余裕はあるようだね。
だけどね、いい事ばかりじゃない、さっき言ったように、苦しみがなくなるというのは、
『感じる事がなくなる』・・・という事なんだ。 痛くもない・・・苦しくもない・・・
熱くもない・・・寒くもない・・・悲しい事もない・・・嬉しい事もない・・・
つらい事もない・・・楽しい事もない・・・。
記憶は残るが、感動が失われてしまう分、想い出はどんどん忘れてしまう・・・。
アンタの魂が消え去るまでそれは続くんだ・・・。
・・・それでよければ取引をしよう・・・。
そうだ、参考までに、そこにいる男を見な・・・。」
そう言って老婆は、もう一体の人形に向かって指を指した・・・。
「もう一体・・・、あの枯れ木のような目玉のない・・・ キャアッ!?」
・・・こちらを見つめていた・・・、目玉がないくせに、目をパックリ開けたその男は、
首をもたげ、マリーの方を向いていたのである。人形じゃない・・・この男も生きている・・・?
髪がボサボサなのは、フラウ・ガウデンと変わりはないが、年の頃は40〜50ぐらいなのか、
黒髪の部分が多い。肉はげっそりと痩せ落ち、・・・そして細く結んでた口を裂くようにして、
気味の悪い笑みを浮かべたのである。
・・・マリーが生きている時であれば、間違いなく気絶ものだ。
「こ・・・この人も生きているんですか!?」
「客・・・久しぶりのお客・・・、女の子、・・・可愛い 子・・・?」
枯れ木の身体からは、その身体にふさわしい、かすれた乾いた声が発せられた。
「 イヤァッ!? 」 後ずさろうとするとすると、老婆が笑いながら答えた。
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最終更新:2007年04月14日 07:37