「いいかい・・・?」
マリーはうなずく。
枯れ木の男は不思議そうに首を傾けていた。
・・・フラウ・ガウデンはマリーの身体を抱きながら、彼女の身体を人形の顔に近づける。
そしておもむろに自分の気味の悪い腐った腕を、マリーの口の中に突っ込んだのである・・・。
その部分を中心に煙状の気体が発生していく。肉眼では見ることはできないが、
恐らく「いのち」が老婆の腐った身体に取り込まれているのだろう。
そしてもう一方の手で彼女の首根っこを掴み、人形の上に覆いかぶさせた。
刹那のタイミングなのかもしれない。フラウ・ガウデンはマリーの身体から、
残った全ての生命を抜き去り、急いで腕を彼女の口から外すと、
その場はマリーの死体と人形が、口づけを交わす形となっていた・・・。
第十八話
・・・術そのものには大して時間は掛からなかったようだ。
だが、今やマリーは・・・、
いや、かつてマリーと呼ばれた少女は、人形の中で自分の心がどんどん、
他の何かに変わっていくという感覚を受け止めるので精一杯で、新しい身体を動かすどころか、
周りがどうなっているのかも認知できる状態ではなくなっていた。
人形の眼球が不規則な動きを繰り返す。
体温を感じるはずはないのに、身体が熱く焼けそうだ・・・。
激しいフラッシュの閃光が、途切れることなく視界を襲う・・・。
幾つもの大きな鐘を、いっぺんに鳴らしたかのような轟音が耳をつんざく・・・。
「・・・おい、ジジイ! ・・・エックハルト! ちょっと手伝いな!」
マリーの生命力を吸ったフラウ・ガウデンは、恐ろしいミイラの化け物から、
気味の悪い老婆に若返って(?)いた。
黄金色の瞳を除けば、今なら人間社会に紛れ込んでも違和感はないだろう。
彼女は、マリーの意識が人形になじむまでに、特製の衣服を着せたいようだ。
「服を着せるのか? 裸がいい。 裸がみたい。隠し事が有ると人間、大きくなれないぞ。」
「・・・もう一つの理由、このスケベジジイが悪戯すんだよ、・・・見えもしないくせに。
・・・黙って手伝いな! そっちの手、持って! もうこの人形はあたしじゃないよ!
⇒
最終更新:2007年04月14日 08:05