「こっちだよ、外への出口は。
もうじき夜が明ける・・・、あたしらや森のヴィルダーヤークト、
ナハトイェーガー共は、夜の森以外では存在できないけどね、その人形のカラダは別扱いだ。
・・・さぁ、おいき。 」
マリーはその新しい身体を確かめるかのように、ギクシャクしながら歩き出し、戸口の外へ出た。
もう、あの恐ろしいまでの風も吹いていない。
外には、夜明けが近づいてるせいか、活動が沈静化した悪霊達がいた。
骨だけになった馬や、死体の兵隊達、首のない男もいる。
彼らは、その場で座り込んでいたり足踏みをしたりするだけの、おとなしい存在になっていた。
人形のマリーが傍を通っても、彼らから見れば同類なのだろう、何の興味も示さない。
マリーは途中で後ろを振り返った。フラウ・ガウデンと枯れ木の男がこちらを見送っている。
既にマリーは人であった時の心を失い始めていた・・・。かろうじて、手を一、二回振ると、
すぐに森の出口へ身体を向け、獣のような素早さでそこから走り去っていった・・・。
第二十話
・・・あたりは薄ぼんやりとしてきた・・・。
朝霧ではない、夜明けが近づくにつれ、彼らの存在そのものが希薄になってゆく。
走り去るマリーを見送ってた彼らだったが、
枯れ木の男・・・エックハルトが先に口を開いた。
「・・・フラウ・ガウデン、お嬢さんを騙したか・・・?」
森の魔女フラウ・ガウデンは微動だにせず答えた。
「・・・騙す? そんなつもりはないよ・・・いぃやぁ、そうかもしれないのかねぇ?
あの子を人形にしてしまう事への後ろめたさ・・・、
それがあったから、 あえて『取引』なんて言っちまったのかもねぇ、
・・・あたしは間違ってたと思うかい?」
「オレ、判らない・・・、でも、また呪われた闇の者が一人増えた・・・、
そして、あの人形、生きている・・・生きているから、食べ物が必要・・・。
あの人形の食べ物は・・・。」
・・・しばらくたってから彼女はポツリと言った。
「・・・そうだね、下手をするとずーっと、他人の怨念や悲しみも吸い取ってまで動き続ける・・・。
恐ろしい事だよねぇ・・・。」そして彼女は最後に祈りの声をあげた・・・。
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最終更新:2007年04月14日 08:19