第五話
何だろう?
目的の家の近くで不審な少年を見かけた。
小柄なカラダで、襟までかかるきれいな髪をした少年は、
家の入り口をうろついたり、窓を覗こうとしていた。
私が近づくと、彼も私に気づいたようだ。
彼に話しかけてみようとしたが、その瞬間私は息を飲んだ。
・・・後ろからだと、体型から男だろうと思えたのだが、
その顔は、女性と判別がつかないほどに美しかったのだ。
こんな綺麗な顔をした少年には今まで出会ったことはない・・・。
戸惑いを見せていた私に、彼は笑みを浮かべて話しかけてきた、
まるで私の心を覗いたかのように・・・。
「いやあ、怪しいものじゃありませんよ。
ただ、ここの奥さんが気になりましてね・・・、
それというのもホラ、あの連続殺人事件あるでしょう?
緑のもやに包まれるっていうの。
知ってます?
この家の人だけでなく、一連の事件の被害者の奥さんは、
決まって子供の頃、行方不明になったり神隠しに遭ったりしてるんですよ。
初耳でしょう・・・?
あなたはこの家に用があるんでしょう?
気をつけてくださいね、
何せあなたの顔には死相が出ているんですから・・・。」
不気味な言葉を残してその少年は去っていった・・・。
私はまともに問い返す事もできなかった。
どう見ても17,8の少年だったが、こちらの全てを見透かしているような・・・。
また、不思議なことにどう見てもおとなしそうな彼の雰囲気に、私は怖れを感じていたからだ。
まるで彼には、神か精霊のような荘厳さがあったのだ。
それにしてもどういう事だろう? 被害者の妻が・・・?
少年が言ったことは、私には不思議な真実味があるように思われた・・・。


最終更新:2007年04月14日 11:28