第八話
私は何故か、その単語が非常に気になった。
どこかで・・・。
私は部屋に戻り、布団に戻って思い出そうとした。
どれぐらい時間が経っただろう、私はついに思い出した。
そうだ、あの、いつか得体の知れない生き物の夢を見たとき、
あの時、誰かがリリスと叫んでいなかっただろうか・・・?
翌朝テレビのニュースが、今年最初の台風が発生したという報道をしていた。
その時、何の気なしに麻衣に聞いてみたら、麻衣が答える前に、
台風のニュースに熱中していた百合子が間に割ってきた。
「あたしが教えたのよ、リリスって言うのはね、
天地創造の話に出てくる人類最初の女性よ。
彼女はアダムと一緒に作られたの、
ところが彼女はアダムに従うことに耐えられなかったため、逃げちゃったの。
しょうがないから、その後釜にイヴが作られたんだけどね。
その話を麻衣にしただけよ。
なぜかって? 別に深い意味はないわ、ただあたしが気に入ってるだけよ、
リリスを・・・。」
あれは・・・百合子じゃないか?
家の近くの川原で独りで何をしているんだろう?
「おーい、ゆりこー!」
お? 気がついたな、ん? ・・・彼女はどういうわけか逃げ出した。
何故だ? 人違いだったかな? しかし確かに百合子だったが・・・。
私は彼女を追って走り始めた。
時が経つのも忘れ、ふと気づいた頃には、
私は、いまや使われなくなった廃墟の工場の、雑草の生い茂った原っぱのど真ん中にいた。
既に百合子の姿を見失っていた。
どこに行ったんだろう? ん・・・? 何かが向こうの茂みの中で動いた・・・?
風ではない・・・。
それは良く見ると私のほうへ向かってくるようだった・・・。
最終更新:2007年04月14日 11:42