第九話
後ろの方でも何かが動く気配がした。
一つ、二つ、三つ、・・・六つ、いや、最低でも七つの物体が私の周りを取り囲んでいる。
最も近いところにいたそいつは、茂みの隙間から正体を現した。
黒いぬめぬめした気味の悪い粘膜が、太陽の光を受けて不気味に輝いていた。
・・・奴らは!
あの夢の中で地の底から這いずり出てきた生き物じゃないか!!
私は逃げた、
奴らは這っているだけでそんなに大きくはない。
囲まれても、飛び上がればかわして逃げることもできる!
私は向かってきた生き物の頭の上を(頭と呼ぶに相応しいかは分らなかったが)跳び越えた。
その時、初めてその生物の全体像が視界に飛び込んできたのである。
あれは絶対、神によって作られたものじゃない!
邪悪な存在によって産み出された呪われた生物だ!
四肢は退化して、アメーバーのようにカラダを伸縮させて動き、
感覚器のようなものは、全く存在しないかのように見えた。
逃げろ、 逃げるんだ!
私はわけが分らなくなって、ただひたすら走り続けた。
・・・行き止まりだった。
奴らのスピードは異様に速く、
あれだけ走ったというのに、すぐそこまでに追いつかれていた。
必死に助けを呼ぼうとしたが咽喉はかすれて声は出てこない・・・。
奴らの口と思しき器官がパックリと割れ、群青色の唾液が牙の間からこぼれていく・・・。
誰かっ!!

何が起こったのか良く覚えていない・・・。
気を失う瞬間、確かに光を見た。
おぞましい生き物は姿を消し、私の目の前にはいつかの少年が立っていた・・・。


最終更新:2007年04月14日 11:45