第十一話
二日後、私は密かに妻の郷里へ向かった。その家はかつての有力者の家系だったそうだ。
あの時、謎の少年は肝心なことは何も教えてくれなかった。
自分で答えを見つけるしかないということだ。
百合子の父は亡くなっていて、その弟さんがその家を継いでいる。
百合子の叔父さんには本当のことは黙っていた。
神隠しに関する取材と偽って頼み込み、当時の状況を教えてもらうつもりだ。
翌日、百合子がむかし行方不明になったとき、彼女が発見されたという谷に案内された。
何も不思議なところはない、ごくありきたりな光景だった・・・。
そのうち百合子の叔父さんは、仕事があるからといって家に戻られた。
私は一人で辺りを調べまわることにした。
 ・・・何だろう?
山道から少し外れたところで、熊笹に覆われた、何か奇妙な格好をした岩を見つけた。
笹の葉を払い、やっとの思いで私の胸元の高さぐらいの岩の前に立つ。
かなり風化してるがどうも彫られたものらしい。
一応人型をしているが、顔は山羊か獣のような顔で、
胸は女性のように盛り上がっている。
それでいて腰には男根が屹立しているのだ。
背面には漢字が彫られている、 ・・・羅・・・ ?
 何だっけ? ・・・聞いたことあるような・・・。
 「ここで何をしている?」
私はギクリとして後ろを振り返った。
・・・あの少年だ。
薄気味悪い奴だ、この笹の茂みの中を、音もさせずにどうやって私に近づいたんだ?
彼は私の答えを待たずに話を始めた。
 「へえ、羅 の像か、いいものに気がついたね、
 これが今度の事件の鍵なんだからね。」
 「何だって? 君は何て言った? 
 ・・・この今にも崩れそうな石像が・・・?」
彼は全てを了解してるかのように、涼しく笑いながら口を開いた。


最終更新:2007年04月14日 11:56