第十二話
 「羅 ってのは、元々中国の天文で、日蝕や月蝕を起こす星とされてるけどね、
 ま、そんなのはどうでもいい・・・。
 問題は、こいつの正体が何なのか、という事・・・。
 あなたは、今から2年前起きた、中央アジア未開村への日英合同調査隊が、
 たった一人を除いて全員行方不明になった事件を知ってますか?
 その一人も、今じゃその件に関しちゃ何も喋りませんけどね、
 それでですね、その村で崇められている神、すなわち、
 森林・山地に潜み四方世界に鳴き叫ぶといわれる暴風雨神、咆哮者ルドラ・・・。
 そのルドラの神像がこれに良く似ているんです。
 そして村人達は、合同チームが行方不明になった後は、
 この神が地上に復活したと信じている。
 そしてこのルドラの異名こそが羅 星の天使、
 ヨーロッパでの古い名前をヴォーダン・・・、
 聖書で言うところの蛇・・・すなわちリリスの夫なんですよ。」
それが・・・そんな古い伝説が一体なんだと言うんだ・・・。
百合子とどんな関係があるというんだ・・・!
まさか百合子がそんな化け物の仲間だとでも言うのか・・・!
いや、それとも、百合子は子供の頃、ここでさらわれ、
その化け物に何かをされて地上に戻ってきたとでも・・・?
それとも、既にそれは百合子とは全く違う、別の生き物に取って代わられたとでも言うのだろうか・・・!
 「わかるかい? そしてリリスは『死』を知らぬが故に生殖力が乏しい。
 だから人間の男と結婚して子供を増やしているのさ。
 だけど・・・、リリスは決して男を愛さない。
 用がなくなったら適当な時期に殺される。
 あんたも例外じゃないんだ、ほら・・・、
 後ろをご覧・・・。」
なんて事だ・・・。いつの間にかあの緑のもやが私たちの周りを取り囲んでいた。
熊笹の葉は強い風で激しく泣いているにもかかわらず、
ガスは風に干渉される事なくたちこめてくる・・・。
そして私をさらに怯えさせたのは、振り返った首を元に戻した時だった・・・。


最終更新:2007年04月14日 12:07