だいろくわ
 「きみ だぁれ?」 うりぃ・めりーと犬が振り返りました。
そこには見た目、うりぃと同じぐらいの年頃の男の子がいました。
この村の男の子でしょうか? 手にはケンダマを持ってます。
 「ウチか? ウチはうりぃ・めりーや、ほんでこいつは犬や。」
 「ふーん? 変な名前?」
この村ではよそ者は珍しいのでしょう、特に女の子と犬の組み合わせですから。
 「アンタはこの村のモンか?」
 「そーだよ、梅八ってんだ。 ・・・きみ、どこから来たの?」
うりぃはこーゆーのが苦手でした。自分に興味を持たれる事がです。
 「あー、・・・いろんなトコや、日本全国放浪しとるんや。」
 「へー、いいなぁ、おいらはこの村から出た事、ほとんどないからなぁ」
 「なんや、こんなちっぽけな村なのにか?」
 「うん、おっとーと年の暮れにおっきな町に買出しに行くときぐらい。」
 「そぉか、・・・ちょーどええわ、梅八、この辺りにお社さん、あるか?」
 「八幡さまならあの丘の向こうにあるよ。」
今日のうりぃ達の寝床です。いつも彼女達はその土地の神社で寝てるのです。
 「おー、そぉか、ありがとな、 よっしゃ、犬! 行くで。」
 「あ、ま、待ってよ、しばらくこの村にいるの?」
 「あー、わからん、・・・成り行き次第やな。」
梅八は慌てて手に持ってたケンダマを、カッ、カッ、と操りだして、
 「これ・・・あげる!」 と、言いました。それにはうりぃの方が戸惑います。
 「えっ、ちょ、ちょっと待ってや? なんでウチにくれるんや?」
 「・・・それ、あげるから こ、今度遊ぼうよ。」 梅八は照れながら答えました。
恥ずかしかったのか、そのまま走り出しました。
 「おいら、西の一本杉の近くの家に住んでるんだ! じゃぁね!」
 「・・・あっ、おぃ! こらぁ・・・!」
うりぃと犬はその場にポツンと取り残されました。「・・・遊ぼお・・・ゆーたかて・・・。」
 「へっへっへ、姐さん・・・!お安くないですね? 顔、赤いですよ?」
 「やかましいわぁ!!」
今日のうりぃの決め技は陳家太極拳旋風脚です。犬の顎の骨がまた砕けました。


最終更新:2007年04月15日 01:23