108 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:58:26.99 ID:LI43psce0
どこへ行くにも携帯と財布がないと始まらない。
リビングに置いた財布を取りに歩き出すと、
「・・いやだ・・・っ。」
「え?」
「そんなのズルい・・・!」
「何が?
いや、確かに俺はズルいか。ほんとごm」
「だからそれがズルいんだって!!
自分だけ言いたいこと言って逃げるんだろ!?
俺はこのまま、ビックリさせられて、ショック受けたまま
ほったらかしか!?
俺が傷ついてるとか、俺が泣いてるとか、俺が怒ってるとか、
お前にはどうでもいいんだろ!!」
「あ、いや、そうじゃなk」
「大体何だよ!
もったいぶった態度ではぐらかしてばっかりいたのは
お 前 だ ろ !!!!!!」
「・・・・・・・・。」
「何で俺だけ悲しい思いしないといけないんだよ!!
お前がいなくなったら独りで寂しいだろうが!!
何 と か し ろ !!」
111 :ふうりん :2006/11/24(金) 16:08:04.37 ID:LI43psce0
「だからそれh」
「だからなんだよ!だから何なんだよ!!
そんなの我慢しろよ!!
もし俺がイヤだって言ったら我慢しろよ!!
したかったらすればいいけど、俺がしたくなかったら
我慢しろよ!!!!!!
ズルいんだから、我 慢 し ろ よ !!!
俺は寂しいの我慢しないけど、お前はしろ!!!!
我慢しろ!!!!!!!!我慢しろーーーーーーー!!!!!」
(え、何そのジャイアニズム理論。こいつの苗字、剛田だっけ?)
(てことは何か。俺はノビタか。それともスネオ?)
こんなくだらない事しか考えられない俺の脳みそは、
意外なこいつの反応に焦りまくって沸騰しているようだ。
「え、だけど俺h」
「謝ったらどうにかなるのかよ!
俺の快適空間、どうしてくれるんだよ!!
明日からの晩飯、どうしてくれるんだよーーー!!!」
(え、問題点そこ?)
(ねぇキスは?)
(俺の人生をかけた告白は?)
112 :ふうりん :2006/11/24(金) 16:16:03.93 ID:LI43psce0
「餌付けしたのお前だろ!!
明日から晩御飯作りに来いよ!!
俺が寝るまでここにいろよ!!!!
そんで毎日朝飯食いに通って来い!!!!!」
(お・・恐るべし、末っ子・・・。)
俺は半ば呆然としていた。
気持ちの悪いホモだと責められ、なじられるのを覚悟していたからだ。
なのにこいつは・・・。
緊張にゆがんで小刻みに震えていた唇がうっすらと半円を描き、
薄い笑顔に変わっていくのが自分でも分かる。
頬の筋肉が垂れ下がり、ニタニタしてしまいそうな顔を
必死で吊り上げ我慢した。
(だめだ・・・)
(俺今、すごく、浮かれてる・・。)
114 :ふうりん :2006/11/24(金) 16:23:11.73 ID:LI43psce0
惚れた相手にここまで言われてオチない人間がこの世にいるのなら、
会ってみたいと俺は真剣にそう思った。
もうダメだ。
目の前にいるのは男なんだけど、俺が好きになった男なのだ。
その相手に無理やりキスをしたはずなのに、そいつは俺に出て行くなと言う。
目にいっぱい涙をためて、普段怒鳴ったりしたことのない人間が、
俺を必死で引きとめようとして我侭を言ってくれている。
例えそれが、メシのためだけだとしても。
一人が寂しいだけだとしても。
自分の言い分を通すための屁理屈だとしても。
俺はもう、本当に、ものすごく幸せを感じていた。
側にいられればそれでいいと、心の底からそう思った。
「もういい。ほんとごめん。」
慌ててこいつの側に寄り、ボロボロ泣いているこいつを抱き寄せる。
もう遠慮しなくていいのかな。
俺の気持ちは分かってるよな?
120 :ふうりん :2006/11/24(金) 16:36:57.78 ID:LI43psce0
こいつの泣き顔にキスしようとして、ゆっくり顔を近づけてみた。
しゃくりあげてボロボロ涙を流しているくせに、
「それは、だめ。」
と、無常にもハッキリ言われ、手で押し返された。
それでも俺は幸せを感じながら、
(こいつのカーチャンには・・・やっぱり言えないよなぁ。)
と、今後のメールのやり取りの仕方なぞを考えていた。
もちろん、こいつを抱きしめながら。
午前中、凶悪犯のような妄想をしながらオナニーをしていた俺が、
いまや小さな子供をあやす保父さんのようになっている。
(世の中どうなるか、分かんねぇもんだな。)
心の中でクスリと笑い、抱きしめる手に力をこめた。
この手はもう、離さない。
いつまでも、ずっと。
そして俺はこいつに勝てない。
惚れたが負け、だから。
終
最終更新:2006年11月27日 04:49