157 :VIP村人w:2006/11/24(金) 18:16:27.64 ID:Mwo+PfL10
………
かなり長い間殴られていたけど、俺が動けなくなったのを見ると満足したのか、
やつらは最後に唾を吐き捨てて、どこかへと消えていった。
「男…!!!」
友が向こうの木の陰から飛び出してきた。
なんだよ、まだいたのか。
「ごめん……グスッ…ごめん……!!俺の代わりに……グスッ」
友はまた泣いていた。
「……先……帰れって言っただろ……」
「そんなこと…できないって…ズズッ…それより…おまえ……」
「なんで……俺なんかの代わりに……?」
「……」
「……なぁ……」
「……この前、ひどいこと言っちゃったからな」
「え……」
「……許してもらおうと思ったんだ」
159 :VIP村人w:2006/11/24(金) 18:18:54.82 ID:Mwo+PfL10
「……!そんなことで…こんな……!」
一度はおさまったはずの友の涙が、また大量に溢れてきている。
「あん時は……ごめんな……」
「許すよ!!許すから…!……そんなことで……グスッ…うっ…あっ……
俺のほうこそ…グスッ…ごめん…ごめん……!!」
「よかった……」
ホントによかった。ここ数日…心に引っかかってたつっかかりが取れた気がした。
これで……殴られたかいがあったってもんだ。
「歩ける…?」
「ああ…」
「…家まで送るよ…」
「…サンキュ」
163 :VIP村人w:2006/11/24(金) 18:21:23.49 ID:Mwo+PfL10
友の肩につかまって帰る途中、道は暗くなり、空にはすっかり星が出ていた。
まだ5月。風が出てくるとまだまだ寒い。
「……男……」
「ん……?」
「ホントに…ありがとね」
「ああ…いいっていいって。気にすんなよ。……それよりさ」
「?」
「おまえ……こんな時間まで制服で…何やってたんだ?」
「……」
「ねぇ」
「…学校にいた…」
「学校?おまえ部活かなんか入ってたっけ?」
「……」
「…自習室で、出し物考えてた…」
「あ……」
166 :VIP村人w:2006/11/24(金) 18:26:07.73 ID:Mwo+PfL10
「なんだ…そうだったのか」
「……」
「あはははは…なんだ…そっかあw」
「笑うなよ」
「いや…ごめんごめんw なんだ…だったら教室来てくれればよかったのに」
「おまえがいっしょにいたくないって言ったんだろーっ」
「あ、そうか…そうだったw」
「……それで帰りに公園通ってたら、あいつらとぶつかっちゃって…」
「そっか…でもじゃあ明日からは…ってもう明日しかないけど、 明日は教室でいっしょにやろうな」
「…うん…」
「よかった…あ、ちょっと待って」
「?」
…ガランゴロンッ
「……ほい、これ」
「…コーヒー…」
「あの時渡せなかったからな。これでホントに仲直りw」
169 :VIP村人x:2006/11/24(金) 19:01:27.20 ID:Mwo+PfL10
「……」
「…どうかした?…もしかしてコーヒー嫌い?」
「ううん。大好き。ありがとう」
「…でもさ…」
「?」
「ふふ…こんなくだらないことまで覚えてるなんて……俺に怒鳴られたの、もしかして相当ショックだった?」
「う……その……」
「……ま、まあ……ね…」
「あははははっ」
ズキッ
街灯の薄明かりの中で……
俺はそのとき初めて友のホントの笑顔を見た。
屈託のない、無垢な笑顔だった。
胸に、痛みにも似た衝撃が走った。
小さいけど、鋭い痛みだった。
……だけどその時の俺にはまだ、その痛みの正体がなんなのかということは、解かってはいなかった。
最終更新:2006年11月27日 19:02