69 :処女作 :2006/11/27(月) 03:10:06.10 ID:EFJduhMa0
何もない空虚な心を持ったまま生きていた。
別に死ぬなら死んでもいいし、生きるなら生きてもいい。
「何のタメに…?」
現在だけが過去と結ばれていく。
未来となんて結ばれるなんて信じられない、信じたくない。
線、線、線。
「所詮人とのつながりなんて点じゃないか…!」
知ってもないのにそう呟いた。
社会なんて知らない、だけど知りたくもない。
70 :処女作 :2006/11/27(月) 03:11:09.41 ID:EFJduhMa0
「そんなにここが好きなの?」
弥生。保科弥生。
「今日もいるんだもん。」
「え、ああ…。お前もなんでここに?」
あまり知られてない公園。
学校帰りにたまによる。
昼は汚い池がある。
だけど夕焼けを映し出すこの池がたまらなく俺は好きだった。
見ていれば世の中の矛盾が消えていきそうな気がした…
「あたしがいちゃ悪いの?」
「いや、いいけど…」
「綺麗−」
こっちが言い終わる間もなく彼女がいった。
71 :処女作 :2006/11/27(月) 03:11:55.13 ID:EFJduhMa0
ふと見上げた弥生の顔。
昼はメイクした顔がある。
夕焼けに染まる弥生の顔。
白いワイシャツもオレンジに染まっている。
さっきまで世の中の矛盾を嘆いてた俺が何を思ってるんだろ…
自嘲する自分に向かって思わず口にしてしまった。
「まったくだ」
75 :処女作 :2006/11/27(月) 03:13:13.26 ID:EFJduhMa0
「えっ?」
ビックリして弥生がこっちをむく。
オレンジの顔のままで。
「いや、独り言…」
もうすぐ夜がくる。
オレンジの間なんてほんの一瞬−。
「やっぱり点じゃないか…」
「何?一人で?こわいよ。」
笑いながら、オレンジのまま弥生が言う。
「いや、ハハハ…」
76 :処女作 :2006/11/27(月) 03:14:22.24 ID:EFJduhMa0
「見てたよ」
急に弥生が言った。
何のことだかわからない。
「いや、ごめん、話聞いてなかった。何が?」
「見てたよ」
もうすぐ夜が来る…。
一瞬、悦に浸れる一瞬がこの女の一言で浸れなくなった。
「何を?池を?」
「いっつも公園で」
「池を?」
「フフフ…あなたを。」
78 :処女作 :2006/11/27(月) 03:16:22.90 ID:EFJduhMa0
しばらくの沈黙。
池の色は唯一ある公園の蛍光灯の青白い光に変わっている。
「…ゴハン食べなきゃ。じゃあね、またね」
そう言って自転車に戻っていく。
蛍光灯の光をまとって。
無常を嘆いている社会、保科がいる事実という社会。
この二つ、一つは混沌、もう一方は一人しかいない社会。
その狭間で生きる俺。
「やっぱり線かぁ」
言った後、思わず笑った。
いつくるかも分からない社会を見据えて、きっとまた明日もここに来るんだろう…
もしかして、未来は線で繋ぐものなのかもしれない。
おわり
最終更新:2006年11月27日 20:54