6 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:22:46.81 ID:LI43psce0
「寒くなったねぇ。」
「夜中布団から転がり出てるからだろ。」
「え、マジ?」
「ホントだって。しょっちゅうゴロゴロ転がってるよ。」
「え〜〜〜〜〜・・・・。」
「何で疑うんだw 嘘なんてつかないって。」
「・・・何?そんなしょっちゅう俺の寝顔見てるの?w」
「あ。いや、そうじゃなくて!」
正直焦った。
中学で出会って仲良くなったこいつと、しょっちゅう遊びだしたのはつい最近だ。
中学校時代もよくツルんでいたが、高校が別になってからはあまり
連絡を取らなくなっていたのだ。
寂しくなった俺が、偶然を装ってこいつを待ち伏せしていたなんて
神様以外、知るヨシもない。
9 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:26:45.29 ID:LI43psce0
元々仲のよかった俺達は、すぐに再会を祝して喜び合った。
地方から出てきて一人暮らしのこいつの家に、俺がしょっちゅう
転がり込むようになるまでそう日数はかからなかった。
「お、俺も寒くて夜中起きたりするからさ。」
「ふ〜ん?風邪ひくなよ。」
「そりゃ俺のセリフだ。」
俺より少し背が低く、童顔でクリクリっとした目のこいつを正視することが出来ず、
俺の視線は宙をさまよいまくっていた。
俺のよこしまな気持ちに気付かれたくなくて、精一杯平静を装う。
こいつは男にしては色が白く、肌のキメも細かい。
雪国の出身者は男でも色白なんだろうか、と、気持ちを落ち着かせるために
こいつの腕を見ながらくだらないことを考えていた。
12 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:31:01.02 ID:LI43psce0
「あー今日も学校かーめんどくせぇなぁ!」
「お前テスト前だろ。ズルすんなよ。」
「ズルしても成績いいから大丈夫。誰かさんと違ってw」
「あっチクショ。俺のことか?!」
どさくさに紛れてヤツの首に腕をからめた。
心臓がドクドクいって血液が急に増えたような気がする。
軽く首を締め上げると、
「ギブギブwwwトイレ行くかせてくれwww」
と、何の疑いもないくったくのない笑顔がかえってきた。
違う意味でも心臓がイタイ。
俺はこのまま、ずっとお前のいい友達でしかいられないんだろうな。
16 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:37:13.58 ID:LI43psce0
いつから自分の気持ちに気がついていたのか定かではない。
それよりも、男の自分が男であるはずのこいつに
「友達以上」の感情を持っていることに衝撃を受けた。
何度も自分を疑って、こいつの顔を見つめ続けた。
そう。
夜中に。
今まで女としか付き合ったことのない俺が、どうしてこいつを好きになったのか。
元々その気があったのか。
それともそういう性癖というものは、急に出現するものなのか。
自分の気持ちに整理がつけられず、寝不足になるまでこいつの顔を見続けた。
けれど自分の身体の一部に集まる血液の原因は、こいつに他ならなかったのだ。
20 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:41:21.13 ID:LI43psce0
深夜真っ暗な部屋の中に、こいつの白い顔だけが浮かび上がる。
今すぐ抱きしめたら答えは出るのか?
ちょっと待て。
男同士のセックルって何をどうしたらいいんだ。
女の子を抱きしめるみたいにすればいいのか?
最初はやっぱりキスから?
俺とこいつがキス??
舌を絡めて????
有り得ない。
そんな現実は有り得ない。
男同士でキスするなんて、
そしてそれが許されるなんて。
そんなことを小1時間も考えてるうちに、
昨晩はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
俺は異常なんだろうか・・・。
21 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:44:29.06 ID:LI43psce0
トイレから出てきてすぐ、
「パン食う?」
と朝食の用意をするべく台所に立っているコイツの横に、
俺も一緒に立ってコーヒーの用意をしだした。
「どうする?」
「何が?」
「コーヒー。」
「飲むって。朝はコーヒーだって。」
「お前はコーヒーじゃなくてコーヒー牛乳だろw」
「うっさい。苦いの苦手なんだよ。」
「アイスでいいのか?お前寒いって言ってただろ。」
「あーうー・・・・えーと。」
「ホットだな。小鍋どこだっけ。」
くだらない些細な会話。
こんな会話をしながらも、俺の心臓はドキドキいっている。
23 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:47:23.33 ID:LI43psce0
「ここ。鍋は流しの下。」
「・・・!」
胸に顔をうずめるようにかがんできて、驚いて声も出ない俺。
(急に動くな!!)
(近くに寄るな!)
「な?」
流しの下にある物入れを開けながら、かがんだままこっちを見る。
「あ、ぁぁ・・・。」
ダメだ。ヤバイ。俺、絶対顔赤いはず。
「ほいよ、小鍋。」
「・・・。」
俺は後悔していた。
なんでこいつがかがんだ時に、後ろに飛び下がってしまったのかと。
何気なく身体をズラすだけにすれば、こいつの頭が俺の腹か下腹部に
触れていたかもしれないのに。
24 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:50:06.52 ID:LI43psce0
(俺の下腹部にこいつの顔が・・・・?)
いかんいかん。
朝からそんな事を考えていたら、余計な事に体力を使う羽目になってしまう。
ただでさえ今日の1時間目は体育なのだ。
季節柄、ほぼマラソンに決まっているのに俺は死ぬ気か。
「どした?俺の話聞いてた?」
ハッと我に返る。
やつはもうとっくに元の位置に戻っていて、冷蔵庫から牛乳を出そうとしていた。
「だーかーらー。学校祭あるんだってば。来る?」
「え、こんな時期に?お前の学校、遅いんだな。」
「うん。毎年2学期の中間テストが終わってすぐなんだってさ。」
「へーいいなぁ。テストの後だから思いっきり遊べるし。」
「そそ。私立だからかな。気が利いてるよ。」
25 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:53:18.99 ID:LI43psce0
「俺のとこ、中間の直前だったぞ。
学校祭の準備で遅くなるわ、クラブはあるわで死ぬかと思った。」
「そんでその後すぐ試験か・・・。確かに死ねるなww」
「だろ。誰のための学校祭なんだよな。しかもすんげーつまんねーし。」
「マジか。俺のところはどうなんだろうな〜。」
お互い一年生なので学校祭は初めてだが、俺は公立、こいつは私立。
きっと規模も違うのだろう。
「せっかくだから、めっちゃおもしろいといいのにな。」
言いながらコーヒーを小鍋に移し、牛乳を入れる。
言葉とは裏腹に、黒い液体に混ざる白い螺旋の渦を、羨ましく眺めていた。
(俺達は一生こんな風にはなれないんだろうな。)
甘党のこいつのために砂糖をおもむろに放り込む。
ザラメ砂糖はすぐに溶けて消えていった。
黙って鍋をかき混ぜながら、学校祭には絶対に顔を出そうと決めていた。
27 :VIP村人c:2006/11/24(金) 02:55:08.57 ID:LI43psce0
「さっさと食って用意しないと、また遅れるよ。」
テーブルに何種類かのパンを出し、カップと皿を用意しつつ
「後何回か遅刻したらヤバいんじゃないのか?www」
とニコリと笑う。
う〜〜〜〜ん、抱きしめたい。
「お前こそ学校祭の前にテストだろ。大丈夫なのか?
俺、しばらく来ない方がいいよな。」
気を利かせようと無理して言ってるが、正直断腸の思いだ。
例えテスト前の1週間でもこいつに会えなくなる。
その1週間、俺はゾンビのような抜け殻で過ごす自信がある。
むしろゾンビにならない方法を教えて欲しいくらいだ。
「え・・・1週間ずっとか?」
「そりゃそうだろ。テスト前なんだし。」
30 :VIP村人d:2006/11/24(金) 03:02:50.66 ID:LI43psce0
「俺は成績下がらないから大丈夫www
ちょっとくらい下がっても、まだまだ普通以上だし。」
「ちょっとくらいでも下がったら悪いって。
ただでさえ転がり込んでいるのにさ。」
「光熱費、半分払ってくれてるだろ。」
「家賃払ってないじゃん。てか半分払わせろって。」
「いらね。ここ、俺が買った家じゃねーし。」
「そりゃそうだろwww」
実際、このマンションはこいつの親の物だ。
元々の実家は雪国の方だが、父親の仕事のせいで
幼い頃は一家でこちらに住んでいたらしい。
ところが実家に残っていた祖父母のどちらかが入院し、ボケが出て
介護が必要になったとかで実家に戻ったのだとか。
中学に進学するとき、こっちのマンションの間借り人が引越しをし、
誰も住まなくなったのをきっかけにまた一家で引越しを決意。
(ボケた人はとっくに亡くなっている)
しかし手続きを済ませ、いざ引越しの段になったときに、父親の仕事の都合で
また動けなくなったらしい。
二人の姉が受験前で引越しを渋っていたこともあり、こいつはそのまま一人だけで
上京して親に金を仕送ってもらっているのが現状なんだそうだ。
中学は俺と同じ公立だったが、高校は親の強い希望で私立に進学。
元々頭の出来が違うので同じ学校に行けるとは思ってなかったが、
それでも同じ学校に通えないというショックはひとかどならぬものだった。
31 :ふうりん :2006/11/24(金) 03:05:20.39 ID:LI43psce0
一人で暮らすには広すぎる4LDKのマンション。
俺が初めて泊まりに来たときの、こいつの喜びようは半端じゃなかった。
思えばあの頃から自分の気持ちに気がついていたのかもしれない。
ただ、それを認めてしまうのが怖かっただけで・・・・。
「いいよ、気にするなよ。ちゃんとテスト勉強もするから。」
「頼むから成績下がったりしないでくれよ。
お前の実家のカーチャンに顔向け出来なくなるからな。」
「分かってる分かってる。俺のカーチャンと不思議と仲いいもんなwww」
さすがに3人姉弟の末っ子で長男のこいつを一人っきりにさせとくのは
不安なのだろう。
俺がここに泊まりだしたとき、2週間に1回のペースで母親が泊まりにきていた。
その甘やかしっぷりには驚いたが、俺には得られなかった経験に羨ましくも思ったりした。
「ビックリしただろ、俺のカーチャン。ベタベタに甘やかすから。」
「いや、羨ましいよ。俺のとこ弟いるからそんなに甘やかしてもらえなかった。」
「そっか、子供の頃なんてもっとひどかったぞ。過干渉と過保護でさ。」
「あ、それ想像つくwww」
32 :ふうりん :2006/11/24(金) 03:10:36.01 ID:LI43psce0
当時、カーチャンが帰った後の俺とこいつの会話がこんな感じだ。
そんなカーチャンが羨ましく、俺がそう思ってることをこいつがカーチャンに
言ったのか言わないのかは知らないが、カーチャンは俺に頻繁に話しかけ、
3人で一緒に飯を食い、寝泊りし、ついにはメル友にまでなってしまった。
「今でもしょっちゅうメールのやり取りしてるのか?」
「一日一通はやり取りしてる。」
「俺のカーチャンなのにwwなんかキモイぞwww」
「バカ。お前のことが気になるんだよ。さしずめ俺は監視役ってとこだろうな。」
「なんだそりゃ。結局俺ってカーチャンの過干渉から逃げられないんだw」
「俺はカーチャンに頼まれてお前を保護する義務があるからな。
きっちり見張ってちゃんと報告しないと。
彼女が出来たらすぐに連絡するよう、くれぐれも言い付かってるんだぞ。」
「えー!?報告したら怒る!」
嘘だ。
カーチャンのためなんかじゃない。
俺自身のためにやってるんだ。
いささか心は痛むが、カーチャンと俺は目的を同じくする同士。
ちょっとくらい言い訳に使わせてもらってもバチは当たらないだろう。
33 :ふうりん :2006/11/24(金) 03:14:48.46 ID:LI43psce0
「彼女か・・受験も終わったことだし、いっちょ本気で作ってみるかな。」
「あ、それカーチャンに報告しとくw」
俺は内心穏やかではいられなかったが、無理に笑顔を作っていた。
「!やめろってば、いちいち送るの!」
「はいはい。そんでお前、彼女にしたい子がいるのか?」
「教えない。メールされたらイヤだし。」
「メールしないから。絶対。」
「マジで?」
「うん。だから教えろって。」
もう俺の顔から笑みは消えていた。
カーチャンのためじゃなく、俺のために知りたいってのが
すぐにバレるくらい、眉間にしわを寄せ、緊張している。
そんな俺を怪訝にも思わないのか、
「いないって。
可愛い子いるけど皆彼氏いるし。
附属高校なんて行くもんじゃねーな。
附属の中学校から上がってきたヤツラ、
人数多いしシッカリ先に手ぇ出してるし。」
「へ・・へぇ〜。そんなもんなのか。残念だったなw」
眉間のしわが消え、みるみる笑顔になっていくのが自分でも分かる。
(あぁ俺って嘘のつけない、演技が出来ないタイプだったんだなぁ。)
35 :ふうりん :2006/11/24(金) 03:19:59.15 ID:LI43psce0
「そういうお前こそどうなんだよ。」
「俺もないない。好きなヤツいるけど可能性ゼロ・・・・・!」
そう言いかけた時、驚いた顔をして俺を見る目で気がついた。
しまった!
ホッとしてつい余計な事を・・。
「あ、もうこんな時間だ。俺行かなきゃ。」
私立高校の朝はちょっぴり早い。
朝のわずかな時間も自習をしなくてはいけないそうだ。
学校に着くなりカバンを放り投げ、机につっぷして
ヨダレを垂らして寝ている俺達と何て差だ。
それに加えて附属高校まで遠く、電車で通学しているせいで時間もかかる。
当初、いつまでも幼さの残るこいつの白い顔を見ながら、電車の中で
変態に痴漢でもされたらどうしよう・・・と激しくウツになったりもした。
まさかその時は、俺の方がその変態と同じ事をしたくてしたくて
たまらなくなるとは、思ってもみなかったが。
「そんじゃ行って来るからな!晩飯頼むよ!」
「おうよ。気をつけてな。」
毎朝繰り返される同じ会話。
世に許された夫婦のようで、たまらなく大好きだ。
「さっきの話の続き、帰ったら聞かせろよ!」
「だが断る。」
最終更新:2006年11月27日 04:34