256 :VIP神父:2006/11/27(月) 21:59:01.67 ID:Mpa3D+CA0
素敵だ。
素晴らしすぎる。
目の前に広がる世界は一面,いろとりどりのお花畑である。
「イッツァ、パラダイス!ハハハハ、ハハハハ。」
俺は笑いながら、お花畑をどこまでも駆けて行く。
そして,その俺のまわりには無数の妖精サンが飛びかっている。
「アハハハ、待てー妖精サーーン。」
妖精サンと鬼ごっこだ。
257 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:00:12.32 ID:Mpa3D+CA0
楽しき時間・・・いつまでもこのままだったら良いなあ。
「ねえねえ、妖精サン。あなたのお名前なんてーの?」
俺は妖精サンの一人に訊いてみる。
「僕はね、カーツっていうんだ。」
そう言って妖精サンは、にっこりと笑う。
「へえ、カーツか良い名だね。」
「ありがとう、へへ。」
と、突然地面がゆれる。
259 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:01:01.73 ID:Mpa3D+CA0
「うわっ、な、なんだ?!」
地震かと思ったが、揺れは一向に止まらない。
「なにー?」
「きゃー」
「ど、どうしたのー?」
妖精サン達も慌て出す。
「カーツ!!大丈夫か?!」
261 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:01:41.93 ID:Mpa3D+CA0
そう言って俺はカーツの方を見る、すると、あの輝かんばかりの
カーツの笑顔は、徐々におぞましき老婆の顔へと変貌していく。
俺はその顔に見覚えがあった。
次の瞬間カーツが口を開いた、
「ハンコーー!ハンコーー!」
その声はさっき聞いた天使の囁き,小川のせせらぎのような
耳に心地よいモノとは程遠い、悪魔の咆哮、狼の遠吠えのような
まがまがしさを放っていた。
俺はその声に聞き覚えがあった。
そしてその間も揺れは酷くなる。
262 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:02:43.05 ID:Mpa3D+CA0
「くっ・・」
意識が遠くなる。
俺は薄れゆく意識の中、死相の濃い甲高い声の老婆に向かって問いかけた。
「ば、ばあちゃんか?・・・」
「タカシーー!ハンコーーー!!」
次の瞬間、薄れていた意識ははっきりと引き戻される。
「ば、ばあちゃん?!」
そこには紛れもないばあちゃんである。
263 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:03:34.46 ID:Mpa3D+CA0
「タカシー!ハンコー!」
相変わらずばあちゃんは、夢の中と変わらぬ声をあげている。
どうやら俺は、コタツで眠ってしまっていた様だ。
「どうした、ばあちゃん?」
とりあえず俺は目の前の問題を解決することにする。
「シンブンヤー!タカシー!ハンコー!!」
プチ痴呆のばあちゃんは単語しか喋らないので、俺はとりあえず解読を試みる。
264 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:04:24.87 ID:Mpa3D+CA0
多分こうだろう、「新聞屋さんが来たので、可愛い孫のたかしさん。ハンコを
持ってきてくれんかのぅ。おこづかいあげるから。」
と、こんなところだろう。(最後のとこは希望)
「わかった、ばあちゃん待ってろ。」
俺は走った、メロスの様に、タンスまでの5メートルを。
「ほい、ばあちゃん。」
俺は、ばあちゃんにハンコを渡すと、ホテルのボーイの様に指をこすり合わせ
チップの要求をした。
266 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:05:49.10 ID:Mpa3D+CA0
「シンブンヤー!」
そう言うとばあちゃんは、俺のプチポール牧には目もくれず、玄関に歩いていった。
「お前は別のホームに行け。」
俺はそう毒を吐くと、再びコタツに入りこみ、テレビをつけ、やたら関西弁をつかう
渡○徹に、
「糖尿め。」
と,また毒を吐いた。
267 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:07:06.79 ID:Mpa3D+CA0
ふと、疑問が残る。
「何故、新聞屋がハンコを?」
料金の徴収だけならば、ハンコはいらぬはず。
契約の更新か?いや、しかし・・・
俺はいても立ってもいられず、立ち上がり、テレビで腐れ旅館の説明をしている
ぜ○じろうに、
「3流め。」
と、毒を吐き、玄関に向かった。
268 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:08:38.25 ID:Mpa3D+CA0
するとそこには、今まさにハンコを押さんばかりのばあちゃんと、怪しげなパンチが
いるではないか!
俺は思いっきり助走をつけ、妖怪ハンコばばあにドロップキックをお見舞いする。
するとばばあは、ゴム人形の様にあらぬ方向に反り返り、もんどりうって崩れ落ちる。
俺は玄関で燃え尽きている、妖怪干物ばばあは無視してパンチを見る。
「てめえ何しやがんでぇ、もう少しでばばあがハンコ押すところだったのに。」
パンチもとい伸びきったパンチは俺を睨み付ける。
269 :VIP盗賊:2006/11/27(月) 22:09:43.62 ID:Mpa3D+CA0
「オイ!伸びきったパンチもといプチアフロ!貴様、新聞勧誘人だな!!」
俺はコナンばりの名推理でヤツを指差す。
「な、て,てめえ何もんだ。しかし、ばれちゃあ仕方ねえ。そうだ俺は、新聞勧誘人!
人呼んでヤスだ!!!」
やはりそうか。
俺は、その名前には聞き覚えがあった。
チホーキラーのヤス。
ボケている老人ばかり狙う新聞勧誘人。
329 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:09:18.44 ID:VFa+GkxW0
「残念ながら狙う家を間違えたな、ヤス。この家には貴様のとこの腐れ新聞を読む人間は
いねえ!!!」
俺は、人呼んでの使い方すら知らない、ローアイキューにそう言ってやった。
「ハンコ、ハンコっと。」
しかし、ヤスは俺の言葉は無視して、ばあちゃんの落としたハンコを今まさに、怪しい書類に
押さんばかりではないか!
俺は前かがみになったヤスの顔面めがけ、跳び膝蹴りを食らわした。
332 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:13:27.59 ID:VFa+GkxW0
「ヒジャビ!」
ヤスは、北斗の拳でしか聞いたことのない擬音を口にして、
「今度あの公園で待ち合わせしようよ。」
「ああ、あの噴水の綺麗な公園?」
ばりに勢いのある鼻血を噴出して、ばあちゃんの上に崩れ落ちる。
気のせいか、ばあちゃんの体から、白っぽいものが出ていったような気がした。
いいか、俺・・・ゆっくりだ・・・ゆっくりだぞ・・・・
334 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:15:48.06 ID:VFa+GkxW0
「くっ。」
ヤスは這いつくばって、玄関の外へ這い出る。
「ふ。ざまあねえな、ヤスよ。」
そう言うか否か、ヤスが勢いよく立ちあがる。
「くくく、ふぁっはっはっは!」
ヤスが、
「ねえ、お母さん。あの滝、綺麗だね。」
「まあ、ほんと。赤いわぁ。」
なみに鼻血を垂れ流し、デーモン小暮のように笑い出す。
335 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:16:59.40 ID:VFa+GkxW0
「貴様、気でも狂ったか?!」
するとヤスは、右手に持った紙を俺に見せる。
「ま、まさか!」
俺は感嘆の声をあげる。
「そうだ!契約書だ!!」
そう言うとヤスは、満面の笑みを浮かべる。
俺は思いがけず、さっきまで書類のあったところを見る。
すると、書類はまだそこにあるではないか!
337 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:19:56.38 ID:VFa+GkxW0
もう一度、ヤスの握っている書類をよく見てみる。
それは、八百政のチラシだった。
「これさえありゃあ、こっちのもんだぜ!」
そう言って、ヤスは一段と強く、八百政のチラシを握り締める。
「そう言ってもらえりゃあ、(八百政の)親父も喜んでるだろうぜ。」
俺はそう、ヤスに言ってやる。
338 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:21:37.18 ID:VFa+GkxW0
「へへ、てめえもやっと降参した様だな。だがこれはやれねえぜ。」
そう言ってヤスは、八百政のチラシをピラピラさせる。
「来月の新聞楽しみにしときな。それじゃあな、あばよ。」
そう言うとヤスは、八百政のチラシを大事そうに抱え、脱兎のごとく走り去っていった。
「グッバイ、ヤス。」
340 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:23:27.64 ID:VFa+GkxW0
やれやれ、やっと一息つける。
そう思い、ふと玄関を見る。
そこには、血だらけの老婆の姿が!
が、何の事はない。ヤスの鼻血がついたばあちゃんだった。
「しかし、とんでもない量だな。」
ヤスの血が、ばあちゃんから転々と、玄関の外の方まで続いている。
さながら、殺人現場である。
俺は何も見なかったことにして、もう一度コタツでテレビを見ようと思った。
341 :VIP村人m:2006/11/28(火) 00:25:24.03 ID:VFa+GkxW0
傍らには、ドクターペッパーとベビースター〈チキン〉、準備は整った。
何でも決め付けにかかる、飯○愛に不快感を募らせつつ、俺はNHK教育にチャンネルを合わせる。
「ちょうどはじまったとこか。」
TVのスピーカーからは、JAPAN・ENKA界のゴッド・ファーザーことサブ北島の、
「まったりなー」の歌声が響き渡っている。
362 :U´・ω・)ワンワン ◆kiranCF8/A :2006/11/28(火) 01:01:31.52 ID:VFa+GkxW0
「やはり、この日本三大”おじゃ”アニメを見逃してしまっては、流行について行けなくなるからな。」
皆も知っているとは思うが、もちろん日本三大”おじゃ”アニメとは、おじゃる○、おじゃ魔女ド○ミ、
あとはあのジブリも映画化した名作、おじゃま○が山田君のことだ。
「逃げるッピー!逃げるッピー!」
物語も終盤、俺がひよこもどきの真似をしつつ、エンディングを待っていると、突如ただならぬ雄たけびが聞こえた。
「をををををおおおおおおーーーーっっ!!!とぉめぇーーーーーーー!!!!!」
大地を揺るがすその咆哮、
「やつだ・・やつしかあるまい・・・」
363 :U´・ω・)ワンワン ◆kiranCF8/A :2006/11/28(火) 01:04:01.30 ID:VFa+GkxW0
俺は声のした玄関の方へ向かった。
そこには予想通り、じいちゃんがいた。
「ど・・どうしたんだ、じいちゃん。」
俺の呼びかけに、じいちゃんは怒りとも悲しみとも取れる表情を俺に向け、
「たかし・・ばあちゃんが・・・」
と、言った。
「!!ば・・ばあちゃん!!!」
俺はさも、はじめて見たような振りをした。
365 :U´・ω・)ワンワン ◆kiranCF8/A :2006/11/28(火) 01:07:24.59 ID:VFa+GkxW0
それは先ほどのじいちゃんの顔に、往年のスター、ブルース・リーの姿が見て取れたからだ。
合気道3段、柔道5段、そして近所の空手の道場の師範をつとめるじいちゃんに、
俺のシックス・センスが危険をいち早く察知したのだ。
俺はそのまま演技を続ける。
「あ!!そういえばさっき怪しいプチアフロが、この辺をうろうろしてた!!」
9割方、俺のやったことだったが、ヤスに犠牲になってもらうことにした。
366 :U´・ω・)ワンワン ◆kiranCF8/A :2006/11/28(火) 01:10:24.21 ID:VFa+GkxW0
「な、なにぃ!!!!」
じいちゃんが食いつく、
「ああ!!そーだ!!あいつはヤスだ!!チホーキラーの新聞勧誘人、ヤスだ!!!!」
俺がたたみ込む、
「やろぉ!!!!やぁすぅ!!!!」
じいちゃんが、怒りに震え出す。
今の奴は地上最強であろう。
スカウターも瞬殺である。
「今ならまだ近くにいるかもしれない!!」
俺の言葉を聞くや否や、
「殺っちゃるぅ!!!!」
と、危険な言葉を発しながら、じいちゃんは飛び出していった。
「グッバイ、じいちゃん。そしてグッバイ、ヤス。」
と、俺はヤスにもう一度、今度は別の意味のサヨナラを言った。
最終更新:2006年11月28日 11:41