500 :男:2006/11/28(火) 12:01:49.92 ID:lHgEg1QX0
─────
言ってしまった。
目の前で、涙目の友がキョトンとした顔をして俺を見上げている。
……言う気なんか無かった。
もし言うんだとしても、こんな場面で打ち明けるつもりじゃなかった。
でも、勢いで言ってしまった。
これ以上泣いている友を傷つけることはできなかった。
本当の気持ちを、知ってほしかった。
「……な……」
「何…言ってんの……?」
「だから……」
「……俺は……友のことが好きなんだ」
ここまできたら、もう後には引けない。
夕日の色に染まって、友の顔色は、赤なのか青なのかもわからなかった。
ただ、固まったように黙って何も言わなかった。
涙はもう出ていなかった。
501 :男:2006/11/28(火) 12:04:57.41 ID:lHgEg1QX0
「……」
「……じょ……」
友がようやく静かな声でしゃべり始めた。
「冗談……やめろよ……」
「冗談じゃない……」
「……友達と…して……?」
「違う」
「……嘘……なんだろ……?」
「嘘じゃない!!」
「……お……」
「……オレ……」
「……男だよ……?」
「………」
「……関係ない……!!」
ガシッッ!!
「…!!!」
502 :男:2006/11/28(火) 12:08:12.42 ID:lHgEg1QX0
友の細い両肩を、俺は両手に力をこめて握った。
体がビクッと怯えたように震えたのがわかったが、それでも俺は止まらなかった。
抱き寄せて、無理やり自分の唇に友の唇を押し付けた。
「……!!!」
電流のようなものが体の中を突き抜けていく気がした。
……あれ?
……この感触って……
そこに俺は、確かに何か違和感を感じた。
503 :男:2006/11/28(火) 12:10:36.42 ID:lHgEg1QX0
友……おまえ……
眼前で友の大きな瞳が、さらに大きく見開かれている。
突然のことでどうしようもできなくなっているのかもしれない。
俺はその違和感の正体を確かめようとして、友の胸にそっと手を当てた。
「……!!」
その瞬間。
バチンッッ!!!
「ぐわっ!!!」
強烈な平手打ちが俺の左頬に炸裂して、俺の身体は後ろへ大きく弾き飛ばされた。
506 :男:2006/11/28(火) 12:19:06.27 ID:lHgEg1QX0
「はあっ……はあっ……」
肩でゼイゼイと息をしながら、友の身体はわずかに震えていた。
顔には恐怖とも怒りともとれない複雑な表情を浮かべて、俺のことを睨んでいる。
そして、そんな表情のままの瞳から、一度は止まったはずの大粒の涙が、
再びボロボロとこぼれ落ちていた。
「友……」
「………」
ダッッ!!
「友っ!!!」
友は勢いよく屋上の出口へと向かって走り出した。
俺の方へは一度も振り返ろうとはしなかった。
507 :男:2006/11/28(火) 12:20:46.45 ID:lHgEg1QX0
ガチャーーン……
「………」
友が学校の中へと消えて、誰もいなくなってしまった後も、俺はずっと黙って出口のドアを見つめていた。
陽はいつのまにか完全に沈み、頭上の空は紫色へとその姿を変えていた。
「………」
……俺は、キスをすればなんとなくだが、その相手のことがわかる。
変な能力……とまではいかないが、だいぶ前からそうだった。
……でも…友は……友の身体は……
511 :男:2006/11/28(火) 12:22:52.96 ID:lHgEg1QX0
勘違いかもしれない。
でも……友の…あの唇は……
……あの柔らかさは、絶対に男のものなんかじゃなかった……
わからなかった。
だから、胸を触って確かめようとした。そしたら
わずかにだが確かに、そこに柔らかい小さな感触があった。
……ような気がした。
「………」
わからない。ただの思い過ごしかもしれない。
いや、もしかしたら、それは俺の願望なのかもしれない。
だけど……
「友……もしかしておまえ……本当に……」
最終更新:2006年11月28日 12:41