42 :ふうりん :2006/11/24(金) 03:47:38.34 ID:LI43psce0
(何が捻挫だww)
(バレバレじゃねーか、俺www)
あいつが試験前でいつもよりずっと早く帰ってくるのに、
クラブなんてやっていられない。
ただでさえ普段一緒に過ごせる時間が短いのに、こんなチャンスを
ふいにしてどうすんだ。
チャンスと言っても何もしないし出来るわけがない。
ただ、二人で一緒に過ごし、同じ時間と空間を共有するという事が大切なのだ。
うんうん、と自分を説得するように言い聞かせ、
スーパーの野菜売り場で足を止めた。
「晩メシ、何しようか・・・。」
末っ子で甘やかされて育ったあいつと違い、長男で弟がいる俺は
カーチャンの代わりによく台所に立っていた。
もちろん小学生の頃は、目玉焼きやインスタントの鍋ラーメンくらいしか作れない。
それでもキャリアウーマンでバリバリ稼ぐカーチャンがいない事に慣れていた弟は、
美味い美味いと言って何でも食ってくれた。
たとえ、失敗したしょっぱい味噌汁でも。
年齢を重ね、料理本やネットで得たレシピの内容を理解出来るようになるに従い、
俺の料理の腕はメキメキと上がっていった。


61 :ふうりん :2006/11/24(金) 11:21:48.93 ID:LI43psce0
相変わらず稼ぎまくるカーチャンの代わりに、高学年になる頃には
まるで主婦のように台所に立ち、買い物から後片付けまでこなしていた。
そしてそうなるまでに、それほど年数はかからなかったと思う。
今では弟も大きくなり、カーチャンの仕事にも余裕が出来たせいで
その任務から解放してもらえたが、当時から「料理代」としてもらっていた
多すぎる小遣いの額は変わらないままだ。
きっと遊びたい盛りの子供の貴重な夕方の時間を、自分の仕事のために
潰してしまったと思っているカーチャンからの、お詫びのしるしなんだろう。
だけど俺は、実際そんなに苦にはしていなかったのだ。
料理の技術がつたない頃は、夕方のアニメを見たくても我慢していたけれど、
慣れるに従って時間の使い方が上手くなっていったから。
要するに、アニメの時間を下ごしらえにあてたのだ。
学校帰りに早めに買い物を済ませ、献立を組み立てて用意万端整えておく。
下ごしらえなら少々手が遅くなろうが手を止めようが問題ない。
そうして同年齢の子供達との会話に乗り遅れる事もなく、
小遣い稼ぎであり、趣味でもあった料理とアニメを兼用する術も覚えていった。


62 :ふうりん :2006/11/24(金) 11:31:50.66 ID:LI43psce0
しかし高校生でクラブをしているとなるとそうもいかない。
夕方のアニメと違って、夜の8時前までしごかれる事が多々あったからだ。
下手をすると買い物に行けず、ロクな材料がない日も多かったが、
「必殺幽霊部員」
の技を駆使するようになってからは、そんな苦労もなくなってきた。
(いっその事、クラブ辞めちまおうかな・・。)
特売の白菜を吟味しながらそんな事を考える。
あいつに言ったら間違いなく怒られる。
当分の間上手く誤魔化しておかなくては。
「今日の晩メシは鍋だな。」
特売品が白菜、長ネギ、しいたけの時点でメニューがほぼ決定した。
あいつの好きなきのこ類とマロニーを探し、カゴに入れる。
(俺のキノコも食ってくんねぇかな。)
またしてもそんな事を考えつつ、水炊きに入れる鶏肉コーナーに足を向けた。
レジを済ませ、飛ぶような足取りで帰宅する。
今日はあいつと長くいられるはず。
早く帰って出迎えてやらねば。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年11月27日 04:40