684 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 10:15:40.23 ID:0Nejrkjf0
しばらく話を中断して食事を取っていた。こういう所は高いわりに量が少なくて
あまり好きではない。なんというか雫もそれを知っていて「じゃあ、とりあえず量があれば
いいのかしら」と思ってるのか知らんが、無言で俺の皿に自分の皿のおかずを置いてくる。

「おい雫」
「援助」
「いや、二人だけの時にしてくれ」
「空腹は?」
「大丈夫。ていうか小林が不思議そうな顔してるだろ」
「千春は賢い子」
「いや、あれは雫が嫌いなおかずを俺の皿に乗せてると思ってるぞ」
「それはそうと、雪村と北村のケータイ番号は入手済み」
「そうなのか」
「同じクラスの人のはほぼ調査済み」
「ほんとにお前の調査してるとこ見たいよ」
「それと兄さんにとって大切な情報一つ」
「何だ?」
「北村は離婚した母の旧姓。前の苗字は美原」
「・・・・・・なんだって?マジか」
「ええ。兄さんに宝物くれた女性の父親が美原。北村の実の父親」
「・・・・・・・・あの時俺に懐中時計くれたお姉さんの妹になる訳か・・・・・・」
「兄さん。大丈夫?私は話したほうがいいと思ったから話した」
「いや、ありがとう雫。これは・・・・・・絶対成功させなきゃな。この懐中時計に誓って」
「あたしと千春応援する」
「そうです先輩!!どんなストーリーを考えてるのか知りませんけど、クラスのためだもん。
協力しますから何でも言ってください」
「ああ。最期に一つ。雫、頼むから情報源を教えてくれ」
「女の秘密は美しさ。詮索無用」



685 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 10:17:58.25 ID:0Nejrkjf0
「お前はほんと凄いな。どこから調べてくるんだか」
「雫ネットワーク」
「まあ、じゃあとりあえず変声機とプリペイド式ケータイが揃えば作戦開始だ。小林君」
「はい!先輩!!」
「君には今後メールでイジメ関連の件は指示を出すから、読んだらメールは削除だ」
「はい!削除ですね」
「兄さん念入り」
「ああ。絶対に証拠は残すな。万が一他人に自分のケータイを見られてもいいようにだ」
「分かりました先輩!!何か、たくらんでる先輩輝いてます!!」
「ふっふっふ」
「でも兄さん。イジメ解決法でワクワクするのってどうなの」
「いや、俺はワクワクしてない」
「兄さん嘘つくと眉毛ピクピク」
「先輩そうなんですか!!いい事聞きました!」
「・・・・・・・・・・・・・・」

帰りに雫と夜の月を見ながら帰った。
満月の光りが夜道を照らす。

「雫焼きプリン買ってくれるんだろ」
「購入済み。冷蔵庫の中」
「イジメ対策うまくいくといいけど」
「兄さん。当人2人を親友にした上感動させるって本当?」
「そのつもりだ」
「私には不可能に思える」
「そこは俺のマジックだ」
「でも信じてる。兄さんはふざけてるようで、本当は本気でいつも考えてくれてる。
だから私はある意味安心してる」



686 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 10:20:02.73 ID:0Nejrkjf0
「そう言う事をいうな。感動するだろ」
「淡々と言われても」
「そうだな」

次の日、俺は例のものを購入した。プリペイド式携帯。本人を特定されないためだ。
購入時身分証の提示が義務付けられているので、友人が購入したものを買い取った。

そして変声機。これは玩具みたいなもんだが、これを通して喋る事で機械的な声が出せる。

「さてまずは雪村から行くか」

妹にメールを打つ。
「雫、今雪村どうしてる」
返信がすぐ来た。
「いま屋上にいる。誰も他にはいない」

好都合だ。大きく深呼吸して懐中時計を見つめる。近くに持ってくると以外と大きな音で
カチッカチッっと聞こえる。

プルルルル

「はい・・・・・・グスっ・・・・・・ゆ、雪村ですけど・・・・・・」

かすかに泣いている様子が声の調子から伝わってきた。一人屋上で泣いていたのだろうか。

「雪村だな」
「だ、誰ですか!その変な声!イタズラはやめてください!!」



687 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 10:21:15.11 ID:0Nejrkjf0
「俺の正体なんて雪村君には関係ないだろう。それより差し迫った問題があるはずだ。
君イジメられてるんだろう。北村をリーダーとするクラス中から」
「何で知ってるんですか・・・・・・・私いじめられてなんか・・・・・・・イジメ・・・・うっ」

ここがポイントだ。突然電話してきた俺にある程度の信用を持ってもらう必要がある。

「辛かったな雪村君」
「え?」

思いがけない台詞に戸惑ったのだろう。素っ頓狂な声が聞こえた。

「俺が雪村君を救ってやろう」
「いい加減な事言わないで下さい・・・・・・私がどれだけ辛い目にあってるか・・・・・・・・」
「君は正直、自殺を考えたか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「正直に言ってくれ。自殺を考えたか」
「・・・・・・・・・・・ええ。リストカットしましたこの間」
「痕は残ったのか」
「しっかりとのこりました。怖くて本気で切れなかった私・・・・」

これは使える。

「君に選択肢が今二つある。選ぶのは君だ」
「なんですか・・・・・・・・・」
「このままクラスからいじめられ続けるか。俺に協力してイジメから脱出するか」
「・・・・・・・・本当に脱出できるんですか?」
「約束する。協力してくれたらな」
「何をすればいいんですか・・・・・・・・」



689 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 11:01:29.07 ID:0Nejrkjf0
「その前に俺がやる事には一切口出ししない事。いいな」
「はい・・・・・」
「口出ししたら、その時俺は手を引く。好きなだけいじめられればいい」
「約束します」
「よし。じゃあまずは手首の痕を写真に撮って封筒に入れ駅のコインロッカー100番に入れろ。
時間を指定する。明日の夕方5時に入れて、お前はすぐ帰れ。絶対に俺を探そうとは
するな。見張ってるからな」
「・・・・・・・・・・・分かりました」
「じゃ、また連絡する」

すかさず小林にメールを打つ。
「明日の夕方5:10分に駅のコインロッカー100番から封筒を一つ取り、雫に渡せ」
すぐに返信が来る
「何が入ってるんですか!」
余計な返信はいらんのになあ・・・・・
「中は見ないほうがいい。あと、このメール削除忘れるなよ小林君」
「了解です」

翌日、学校から帰った雫から封筒を受け取った。

「兄さん中身何?」
「見ないほうがいいぞ」
「私達作戦の仲間」
「雪村のリストカットの写真だ」
「雪村さん電話した時どうだった?」
「正直ワラにもすがりたいって感じだった。俺の事は多少怪しんでるだろうが、それよりも
イジメから救ってやるという一言が効いたな」

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最終更新:2006年11月29日 21:47