705 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 12:02:16.18 ID:0Nejrkjf0
「見たか?」
「これ・・・・・・この写真・・・・・・!!!」
「お前が校舎に侵入した写真だ。日付けが右下に記載されてるだろ。ちょうどお前の学校で
校舎の窓ガラスが割られる事件が起きた日だ。お前は知ってるか知らないが、学校は
警察に被害届け提出済みだ。俺がこの写真学校に送りつけるとどうなると思う?」
「や、やめて・・・・・・」
「さらに手首を切ったリストカットの写真だ。これは俺が知り合いの医者から内密で
買い取ったものだ。雪村のものだ」
「ゆ、ゆき・・・・・雪村さん・・・・・自殺・・・・しようと・・・し・・・したの・・・・?」

北村の声が震えている。事の重大さを理解したのだろう。

「ああ。別に驚かなくていい。お前の計画通りなんだろ?雪村を殺したいんだろ?」
「わ、わた・・わたし、殺したくなんて・・・・・ない・・・・」
「これをクラス中の皆の家に送りつけてやろうか?雪村が自殺未遂犯したこと
知るとどうなると思う?」
「・・・・・・・・・・・・わたし・・・・・」
「間違いなくリーダーのお前のせいにされるよ。お前人殺し。よかったなあ?雪村が根性なしで。
失敗してくれたもんなあ?」
「あなた・・・・なんなのよ・・・・・何が言いたいの?」
「写真を処分してほしかったら、10万用意しろ。簡単だろ?どうせ雪村からカツ上げしてんだろ?」
「あたし・・・・・お金だけは取ってない・・・・・・・」
「はいはい。寝言はいいから。じゃ明日またお昼に連絡する」
「ちょっと待って!!お金なんかわたし・・・・・」

ブツッ

電話を切った。



706 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 12:04:49.24 ID:0Nejrkjf0
演技とはいえ、心から疲れる。お金は受け取るつもりはない。あくまで北村に恐怖と後悔を
させるため。

15分程して雪村に電話をかける。

「雪村か」
「あ!電話待ってました。あたしびっくりしました・・・・・あんな北村さん初めて見ました」
「どんな様子だった?」
「心から何かに怯えたような感じで、顔面蒼白でした」
「俺の指示は?」
「ええ。あたし、正直北村さんなんかと喋りたくなかったんです。でも、あんな北村さん見てたら
演技じゃなくて、本気で心配してる自分に気付いたんです」
「そうか・・・・・」
「何を言ったんですか?」
「それは言えない。ただ、イジメ自体は今日のことで終わると思っていい。だがまだやる事がある。
お前は北村を自分のできる範囲で慰めてやれ。いいか?無理はしなくていい。今まで自分をイジメてた
相手だ。軽く声をかける程度でいい」
「わかりました」
「恐らく明日。最後の仕上にかかる。お前はもう一役かってもらう」
「連絡ください」
「ああ。分かった」

心底疲れた。学食で皆より遅い昼食を食べてると雫と小林が現れた。

「兄さん」
「先輩」
「おう。お前らも何か食べるか?」
「兄さんやりすぎ」
「先輩、北村さんさっき早退しましたよ。顔真っ青であんなの初めて見ました・・・・」



707 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 12:05:59.31 ID:0Nejrkjf0
「計画通り」
「計画通りならいいけど」
「明日仕上にかかる。小林に一つ頼みがある」
「何ですか先輩」
「時計を20個くらい用意できないか?できればこの懐中時計に音が似てるやつ」
「いいですけど、何に使うんですか?」
「北村の机に朝全部置いてほしい。電話で北村と話すとき、俺は常にこの懐中時計の音を
バックに流していた。恐らく北村は心底恐怖を感じるだろう」
「先輩分かりました」
「千春あたしも手伝う。あしたは早起き」
「うん。雫ちゃん」

学校の帰り公園のブランコに座ってボーっとしていた。
雪村には計画では制御できない一つの鍵となる役割をやってもらう。
あいつがその時どういう行動に出るのかわからない。

でも今日、雪村は北村の事を本気で心配したと言っていた。
大丈夫かもしれない。

ポケットから懐中時計を取り出す。
今回の事を通じて本当の意味で宝物になった気がする。
大切にしよう。絶対に。

翌日の朝五時雫に叩き起こされる。

「兄さん」
「雫、早起きだな」
「見つかると計画台無し。今から学校行ってセット」
「ああ。たのむ」



708 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 12:07:39.88 ID:0Nejrkjf0
「兄さん今日仕上でしょ。信じてるからね。兄さんを。私は誰も傷付いてほしくない」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「兄さん?」
「俺を信じろ」
「うん」

妹は小さく笑うと「じゃ、行ってくる」と言って出て行った。
朝の8時。登校途中に雪村に連絡する。

「雪村」
「はい」
「今日朝、一騒動ある。その後俺は北村を放課後屋上に呼び出す予定だ。
その時お前こっそり物陰から様子を見ててほしい。そしてその後どうするかは
お前にまかせる。お前の気持ちに正直に動いていい」
「・・・・・何かまたするんですね・・・・・・」
「ああ。仕上げだ」
「北村さんを・・・・・・・・脅迫・・・・ですか?」
「・・・・・・・・・ああ。お前にはもう何も強制しない。自分の気持ちに正直になれ」

そういうと、俺は返事を待たずに電話を切った。

教室で1限目の授業を受ける。もう一騒動あった頃だろう。

休み時間妹からメールが来る。

雫メール:兄さん。大変。北村朝登校してきて、自分の机の時計を見て顔面蒼白。
      気を失って倒れた。今保健室。
俺メール:戻ってきたらメールしろ。
雫メール:了解。



709 思い出の懐中時計(作引き出し) ◆49cq481bMY New! 2006/11/29(水) 12:08:58.65 ID:0Nejrkjf0
昼休みに雫からメールが来る。とりあえず教室には戻ったらしい。

再び北村に電話をかける。

「北村さん。こんにちは」
「ひっ・・・・・その時計の音・・・・・やめて・・・・・ください・・・・もう・・・・」
「金は?」
「・・・・・・・・・お金は親の盗んで・・・・・きました・・・・・・・」
「お前は今祖母と暮らしてるんだろう!!大変な孫をもったもんだ」
「何でそれ・・・・・・」
「放課後5:00に屋上に来い。金をもってな」

それから放課後までの時間がとても長く感じた。
うまくいくだろうか。全ては雪村しだい。

時間より15分前に屋上へ行った。雫と小林は物陰に隠れて待機。
様子を見守るように言ってる。

懐中時計を見つめる。夕日に照らされて竜の彫刻の目の部分がピカッと光った気がした。
やがて時間が来た。

屋上のドアがゆっくりと開く。面と向かって会うのは初めてだ。

「あなたは・・・・・・・・!?」

俺の顔を見て不思議そうな顔をしている。

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最終更新:2006年11月29日 21:54