66 :ふうりん :2006/11/24(金) 11:44:21.98 ID:LI43psce0
俺の料理で喜ぶあいつの顔を、早く見たくてしょうがなかった。

「ただいま〜。」
「おう。お帰り。」
「あ、鍋だ!やったー!!」
一人暮らしが長かったせいか、今でもこいつは鍋や
大皿料理をすごく喜んでくれる。
「水炊きだよね?水炊きにしてくれた!?」
男のクセにアッサリ好きで鶏肉をこよなく愛するこいつの好物は、
もちろん水炊きだ。
「おう。取りあえず着替えて来いよ。」
「やった!マロニー山盛り入れといて!」
「へいへい。山ほど買ってあるから安心してくれ。」
部屋に入ったと思ったら、いやに早く着替えて出てきた。
よく見ると下にワイシャツも肌着も着たままだ。
「おまえなぁ・・・いくらなんでも暑いだろ。」
「いい。それより早く、鍋!鍋!」
「えーい、手を洗ってウガイをせんか!!」
「もーーーー!カーチャンみたいな事言うなよ〜。」
「ダメ!」
箸を持とうとした手の甲を、軽くペシッと叩きながら
「ついでに下に着てる余計なもんも脱いでこい!」
「ケチーーーーーーー!」
これもほぼ毎日のように同じやり取りを繰り返している。
朝のやり取りもそうだが、俺はこういうのが大好きだ。
このやり取りを想像するだけで、ご飯3杯は軽く食える自信がある。


67 :ふうりん :2006/11/24(金) 11:53:35.57 ID:LI43psce0
子供のように廊下をドドド・・・と走りながら、
「洗ってきた!鍋!鍋!」
と真っ直ぐダイニングテーブルに向かってきたが、
やはり下に来ている服はそのままだ。
「こら。脱いで来いって言っただろ。」
「鍋。」
「あーもう。学校指定のワイシャツにポン酢のシミがついたらどうすんだよ。」
「気にしないからいい。鍋。」
「ダメだって。ほら、シャツ脱げ。」
上から重ね着をしただけの、ちょっと厚手のTシャツを脱がせ、
ワイシャツのボタンに手をかける。
「お前は幼稚園児か。」
「早くして。鍋食いたい。」
さすが過保護で過干渉のカーチャンが作り上げた息子。
この年で自分の事をさせるのに、何の抵抗も持たないとは。


68 :ふうりん :2006/11/24(金) 12:02:45.87 ID:LI43psce0
ワイシャツのボタンを3つほどはずしたところで、
(・・・・・やべぇ・・・。)
とよこしまでワイセツな妄想が頭の隅に浮かびだした。
(このまま肌着を脱がせて、少し汗臭いはずの首筋に・・・。)
いかんいかん、と頭を振り
「ほら、続きは自分でしろ!お坊ちゃまもいい加減にしないとモテねぇぞ!」
と冷静を装いつつ、その場から逃げようとした。
「じゃあこのまま食う。」

俺は耳を疑った。
お前はそれでいいのかと。
貞操の危機だという自覚はあるのかと。
それより何より、人に着替えをさせるなんて王侯貴族様ですか、と。

こちらの呆れ顔をよそに、こいつは上半分のボタンをはずした状態のまま
テーブルにつこうとしている。
手には既に箸が握られ、立ったままだというのに今にも
鍋に襲いかかりそうだ。


71 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:01:51.05 ID:LI43psce0
「はいストップ。ポン酢のシミは落ちねーぞ。早く脱げ。」
「ん。」
こちらに「脱がせろ」と言わんばかりに胸を張る。
どうやら握り締めた箸を離す気は毛頭ないらしい。
「早くしないと鍋が煮える!」
「・・・・はいはい。そうでございますね。」
渋々とボタンをはずし、ワイシャツを脱がせる。
腕を脱がそうとしたところで何かにつっかえた。
「箸を置け、箸を!!!お前はおバカなお猿さんか!」
「だって早く食いたい。」
「お願いですから協力してください。」
何故か着替えさせているこちらがお願いするはめに。
不思議だ。
これが末っ子マジックか。
周囲を巻き込み、自分の意のままに操る魔法でも持っているのか。
(ただ単にほれた弱みだろ。アホか俺は。)
冷静に一人ノリツッコミを脳内で終了させたとき、いよいよ大物、
肌着を脱がせる時がやってきた。
(これは無理。いくら何でも俺には無理。)


73 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:06:46.40 ID:LI43psce0
「お前、いい加減にしろって。肌着くらい自分で脱げって。」

(脱いだら裸じゃないか。)
(最初から裸のままの方がまだマシだろ。)
(気がついたら襲ってしまいそうだし。)
(あ、チンコ立つかも。てかもう半起ちだ。)
「じゃ、鍋食うね。」
俺がちょっと余計なことを考えて、一瞬手を止めたすきに着席。
そうして肌着のまま、既にマロニーをポン酢の入った食器に移して食っていた。
「ゆ・・・油断もすきもねぇ・・。」
安心したような、ガックリしたような、複雑な気持ちを抱えたまま
その日の夕食はものすごい勢いで終了した。

「美味かった〜水炊き最高!」
「へいへい。よろしゅうございましたね、お坊ちゃま。」
「何だその坊ちゃんってのは。」
「お前・・・自覚ゼロか・・・?」
(タチ悪ぃ。てか手強い・・)
「何が?」
「お前はある意味すげぇよ。違う意味で感動した。」
「だから何がだよ!」
「誰にでもあんなことさせるんじゃねーぞ?
 世の中ノーマルな人間ばっかりじゃねぇからな。」
ガチャガチャ、と食器を揃え、流しに置きながら話す。
 (現に俺がそうだしな。)


74 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:11:52.05 ID:LI43psce0
「あんな事???何だよちゃんと教えろよ。
 というか教えてくださいませ。」
俺が次の文句を考えていると、お願いのポーズ(両手を合わせてる)
をしつつ、ゆっくり近づいてきた。
隣にピッタリ寄り添い、ジリジリと俺の身体に体重をかけながら、
「なんだよ〜〜〜。お〜〜し〜〜え〜〜ろ〜〜よ〜〜。」
と、甘えた口調でくっついてくる。
その時、白い肌着からチラリと白い胸が見えた。
俺は慌てて目を反らせつつ、
「うるせぇバーカ。片付けの邪魔・・・・!!」
言い終わらないうちに、テーブルを拭こうとして前かがみの
姿勢をしている俺の背中に、こいつは乗っかってきた。

軽い。

ハッキリ言って軽い。

そして・・・・・・・・


                         幸せ・・・・。( ´ー`)


75 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:41:49.43 ID:LI43psce0
「うお!何してんだこのバカ!!」
照れ隠しと動揺を悟られないためか、ついつい大声になる。
俺の背中にオンブの姿勢でしがみついているこいつは、
「な〜〜教えろよ〜〜〜。」
とまだ言っていた。
「ほら降りろって!危ねーだろ狭いのに!」
白くて細い腕が俺の肩から首に回されている。
俺の背中にこいつの胸がピッタリと張り付き、
耳の後ろにはこいつの唇が・・・。

男のくせに甘い香りがするのは気のせいだろうか。
まさか香水なんてつけていないだろうし、
俺を誘うためのフェロモンでも出しているのか。
お前はアレか。
俺の精神状態をメチャメチャにするために作られた破壊兵器か。
それともブラクラか!?


76 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:44:05.09 ID:LI43psce0
俺にとっての最終兵器と言っても過言ではないこいつを
何とか振り落とそうと、シンクとテーブルの間で
オンブしたままクルリと回る俺。
シンクに手をつきながら、右手に持っていたフキンを流しに放り投げた。
まとまらない思考でゴチャゴチャと考えていると、俺の耳元で
「教えてくれないと降りてやんねぇ。」
と囁く。
お前は悪魔か。
いや、この場合、俺にとっては淫魔ってヤツだな。

お前は自分の貞操の危機だと言うこt(ry

 (あーーー!!もうダメだ!限界だ!!!)

「ほら!降りろってば!」
かっこ悪いけど、ちょっと必死になっていた。
それなのに俺の気持ちも知らず、俺の耳にピッタリ唇をつけ、
「いや〜〜〜。」
と子供のような返事をするこいつ。
耳元で甘えた口調で話されて、俺は完璧にパニック状態になっていた。


77 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:47:35.87 ID:LI43psce0
全身に鳥肌が立ち、間違いなくチンコは半勃起。
こいつがくっついている部分は火がついたように熱くて、
ますますもって俺から冷静さを奪っていく。
俺の唯一絶対の武器(冷静さ)は、もろく、はかなく、どこかへ
消えていったのだった。
「いい加減にしないと・・・!」
「しない。教えてくれないお前が悪い。」
ギュウッと首に回された手に力が入った。
もはや何を教えるのかすら、お互いに分からなくなっていた。
ただのふざけっこだったはずだ。
そのはずだったのに・・・!
抱きしめられている、というシチュエーションが、俺の
最後のひとかけらの理性まで奪っていった。

「てめぇ、襲うぞ・・・・・・・・・!!!!」

その瞬間、俺の思考は完全停止。
目の前が真っ暗になった。

絶対に言ってはいけないセリフ。
絶対に気付かれてはいけない気持ち。

舞い上がった俺は、ついつい最も口に出してはいけない言葉を叫んでいた。


78 :ふうりん :2006/11/24(金) 14:54:02.53 ID:LI43psce0
俺の気持ちを知ってか知らずか、こいつは
「いいもーん。」
と言いつつまだ離れない。
そりゃそうだ。
男が男にこんな事言われてビビるはずがない。
けれどその言葉を吐いた俺にはその気があり、
半分以上、いや殆ど全部が本気なのだ。
「てっめぇ・・・!」
俺は俺の首に回された細い腕をつかむと、
グイッと思い切り俺の前に引き寄せた。
「わっ・・・・!」
よろけながら俺の真正面に立たされ、後ろのシンクでシリを打つ。
驚いた表情をしつつ、その顔から笑みは消えていなかった。
「な、なに?怒った?」
シンクに両手をつくと、必然的にこいつの顔がまん前にくる。
「お前な、煽るって分かるか?」
「あおる?」
「その気も無いくせに、相手をけしかけようとするんじゃねぇよ!」
「けしかける?」
もう完全に脳みそが飛んでいた。

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最終更新:2006年11月27日 04:45