86 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:07:44.41 ID:LI43psce0
「・・・煽られるとな、こっちはこうなるんだよ。」

俺は目の前のこいつに覆いかぶさった。
両側に俺の手があり、後ろはシンク。
そして目の前に俺。
今の今まで、まさか男の同居人にこんな事をされるとは
夢にも思っていなかっただろう。

さようなら、さっきまでの平和。
さようなら、さっきまで我慢していた俺。
明日から、俺は学校のクラブに打ち込みます・・。
あぁ、クラブ辞めてなくてよかった・・(泣。

ぷっくらとした、柔らかい唇にキスをする。

長年の夢。
明日からは悪夢。

きっと明日にならずとも、この後すぐに頭を抱えて
後悔すること請け合いだ。

ビックリしたまま声も出ないのか、固まったままじっと
されるがままになっているこいつ。
 (やけくそだ。)
シンクにもたれた両手に力が入る。
軽く触れていただけの俺の唇は、今ではしっかりと
こいつを捕らえ、舌で唇を舐めたりもしていた。


90 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:14:36.69 ID:LI43psce0
驚いたまま半開きになった口に、俺の舌がツルリと容易に入る。
こいつはビクッと身体を震わせ、少しだけ顔を動かそうとした。
その瞬間、俺の舌はこいつの舌を舐めとった。
 くちゅっ・・・
「ん・・・!」
後ろに逃げようとする頭を、さっきまでシンクを持っていた手で抑えつける。
舌を絡め、舐め上げ、吸う。
卑猥な音がお互いの口の中から聞こえ、耳の中でこだました。

ちゅっ、くちゅっ・・・

こいつの手は俺のシャツの胸元をキュウッと握り、
「ん・・・ん・・・!」
と時折、苦しそうな声を上げている。
眉間にはしわがより、さっきまでの笑顔は完全に消えていた。
当たり前だ。
男にキスされて、喜んだりよがったりする男がどこにいる。


93 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:23:16.69 ID:LI43psce0
それでも俺はやめなかった。
 (どうせ最後の思い出になるんだ。)
 (ぶっ飛ばされるまで、こいつのヨダレ、舐めてやる。)
もう遠慮なんてしなかった。
こいつの口の端からはどちらのものとも分からないヨダレが垂れ、
俺の胸元のシャツを握る手には、力が入ったり抜けたりしていた。
「あ・・・・ぅ・・・。」
どれだけの時間キスしていたのか、俺は次の行動に移っていた。
計画的ではなく、無意識に。
こいつの首筋に指をなぞらせ、その後舌で舐め、キスをする。
俺は本能的に愛撫をしていた。
「あ・・あ・・・・っ!?」
ヨダレで光る口元から、甘いような、驚いたような声が出て、
俺のシャツを握る手に力が入った。
俺の左の肩に当たっていたこいつの頭がヒクッと動き、
舐めていたこいつの左側の首筋が、ピク、ヒクッと反応する。
俺の手は既に肌着の中に侵入し、ゆぅるりとあばらを撫でていた。
「や、やぁ・・っ・・。やめ・・・・!」
危うく肌着を脱がせそうになっていた俺は、その言葉を聞いた瞬間、
我にかえった。

「・・・・・・・これで分かっただろ・・・!」


98 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:32:45.03 ID:LI43psce0
俺はこいつの白い首筋から素早く顔を上げ、さもお前に
分からせるためにやったんだ、とばかりの言い方をした。
自分の肌着のすそと、俺のシャツを握ったこいつの手が震えている。
うつむいた白い肩に向かって、
「分かったら、誰にでも煽るような事すんじゃねぇ。」
と、吐き捨てるように言ってその場を離れようとした。

シンクの前を離れようとすると、何かが俺のシャツを引っぱっている。
ふと見ると、こいつが
「・・って言ったくせに・・・!」
「え?」
「可能性ゼロな人がいるって・・・!」
と、搾り出すような声で切り出した。

 (あっはっはっはっは。それお前だっつーの。)
 (でも言えねぇ。)
 (言ったら完璧変態扱いだろうな。)
 (言ったらダメだ。)
 (あぁ、でももう・・・)
 (俺に守るものなんて・・・。)
 (・・・・・・。)

「・・・お前だよ。」

「・・・?」


104 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:43:53.91 ID:LI43psce0
「・・・・・・・・?!?!」

俺のシャツを握ったまま、ピクリ、とこいつの身体が揺れた。
しばらくの間があって、ようやくその言葉の意味を理解したのか、
うるんだ目を大きく見開いて呆然としている。
俺がどういうつもりでこんな事をしたのか、
この後どうしたいのか、全部こいつにバレてしまった。

俺はこいつの顔を真っ直ぐ見つめながら、

「可能性ゼロの相手は、お前だ。」

と、言い切ってやった。

こいつは自分に何が起こっているのか、まだ分かっていないらしい。
こっちを見上げたきり目をまん丸にして、今度はピクリとも動かない。
「な?俺キモイだろ?こういう男だっているんだよ。
 これからは気を付けろよ。
 お前は何ていうか、男に好かれるタイプかもしれない。」
あいつが握っていた俺のシャツが、急にフワッと軽くなった。
ゆっくり両手を下におろし、軽くコブシを握って立ちすくんでいる。


106 :ふうりん :2006/11/24(金) 15:48:46.80 ID:LI43psce0
怒っているのか、男に本気でキスされた情けなさに気がついたのか、
そのコブシは小さくフルフルと震えていた。
 (ふっ・・・。)
 (終わった・・・。)
 (終わったよ・・・。)
 (さよなら、俺の恋・・・。)

「・・・ごめんな。
 俺、こんなヤツで。
 ・・・ごめんな。」

最後の別れを惜しみたくて、目の前のこいつの髪をそっと撫でた。
それからショックと恐怖から流させてしまった、幾筋も涙が伝った頬も。

「・・・俺、もう出て行くよ。
 荷物はまた今度取りに来る。」

「・・・・ごめんな・・。」

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最終更新:2006年11月27日 04:47