冒険者の皆さんにアンケートです Part.2
PC:シノ
ねりねり、ねりねり、ねりねり、ねりねり……。
少し離れた席に座っている痩躯の青年は、何をやっているのだろう。
ワタシの知らない何かをしている。必要だから? 楽しいから? やらなければならないから?
人というものは、本当によく分からない。分からなくても無理はない。
何せワタシは、自分のことすらよく分かっていないのだから。
でも本当に、何をやってるんだろう、アレ。ねりねり、ねりねり、ねりね……ね、ねり……。
舟をこぎ始めた頃、誰かがやってきて、彼は手を止めた。知り合い、という訳でもないらしい。
いくつか言葉を交えていたと思ったら、声をかけた人が怪訝な顔をした。ワタシもよくあんな顔をされる。
痩躯の青年と話が合わなかったのだろうか。気分が悪そうなのは青年の方だったけれど。
青年はそのままその場を後にした。憶えているのはそこまで。
誰かに肩を揺すられて、目が覚めた。さっき青年に声をかけていた人だった。
ワタシに何の用があるのだろう。ワタシには心当たりが無い。忘れているだけかもしれない。
忘れてしまったなら、その程度の用事だったのだと思うことにしている。
「え、『あなたの好きな言葉は何ですか』?」
何故ワタシにそんなことを聞くのだろう。分からない。でも、答えてみることにした。
ワタシの中にあるものを、ワタシの言葉で表して、誰かに理解してもらいたいから?
でも、ワタシの中に一体何があるのだろう。何を伝えられるのだろうか。
「……『こんにちは』?」
誰もが会ったときに交わす挨拶。最初の言葉。交流の始まり。
これが無ければ、ただすれ違うだけ。楽でもあり、辛くもあり。
分からないのなら、知ってもらいたいのなら、ここから始めるしかないんだろう。きっと。
だから、目の前のこの人に。いつか会う誰かに。ワタシの知らないワタシに。
「こんにちは」
そういえば、この人には言ったっけ?
最終更新:2014年11月06日 00:30