良い感じに古ぼけた感じの良い服飾店、それが今日の仕事場。
しかしながら、私の紡いだ言の葉はこの頑固親父の耳には中々に届かないわけで……

「えーと、どれもぱっとしないわね……」
「地方のデザイナーでもこのぐらいがんばってんだから、もっとこうないわけ?」
「だからイメージを爆発させるのよ! 閉ざされた世界を解放させるの!」

なんでも『今日の勝負服』とかいう企画をするんで店内でインチキ占いをしてくれというので来てみれば
どうにもこうにも、こんな品揃えでは勝負にならない。
こんなの着せて勝負させたんじゃ敗北間違いなし、私の恋占いにもケチがついてしまう
王都いちばんの美少女占い師としては、なんとしても勝たせなければ……。
そういう訳で天才である私が知恵を貸して上げてるってのに!
なのに、この店主は肌触りだの保温性だの着心地だのとくだらないことをペラペラと!
服屋の常識だの、前例がないだのと、そんなんだから客が居ないのよ。
わかってないのよね……恋する乙女の戦闘服っていうのを!
こんなんなら履いてない方がまだ勝機があるってもんだわ!

「いいこと、だから生地なんて薄くて良いのよ! ペラペラで透けてていいの! もういっそ無くてもいいの!」
店主「!?」
店主の引きつる顔が心地よい、常識に囚われない、そういえば御婆様も仰ってたわ♪
「そうよ!どうせ邪魔でしょ!」
店主「しかしそれでは……」
まだ言うか! ほんとこのぼんくら店主は事の重大さが判ってないようね……。
「いいこと!こんな色気の欠片もない、綿のちんちくりん見せられてどこのどなた様がお喜びになられるかしら?」
「この企画の肝心なところは、一撃で敵の理性を奪うところでしょうに!」
「着心地とか保温性とかそんなのはどうでも良いのよ!」
「あんた馬鹿だからわかりやすく説明したげるわよ」
「生地が少ない方があんたも儲ける!お客は勝負に勝てる!脱がす手間も省ける!みんな得するの!」
「誰も不幸にせずに、みんなが幸せになれるのよ! 女神様だってできないことを貴方が成し遂げれるのよ!」
「わかった?」
「これは恋の電撃戦なの! 必要なのは電撃戦用パンツなの!! 鉄壁の籠城戦してどうすんのよ!」
「勝負よ! 勝負! 決闘なの、恋の一騎打ちなの!!」

ペシーン

私は騎士の決闘を思わせる動作で、店主のデコに出来損ないのパンツを投げつける
店主「……はぁ、はあ」
「はぁ……はぁ……」
なんでこんなに息が切れるほど力説しなきゃなんないのよ……
もうこの仕事降りようかしら……
微妙な空気が流れる店の中に、カランカランっと扉が開く音
同時に元気の良い少女の声が響き渡る

声「こんにちは!」

あら? 迷える子羊の登場かしら……

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最終更新:2014年11月09日 23:16