ボブは残る片親が亡くなった日、重厚なヴィクトリア朝の家具を山ほど受け継ぎました。

そういう家具はボブの好みではなく、今の生活空間にも大き過ぎるのですが、思い出があるのでずっと手放さずにきました。

ところが、とうとう家具にがんじがらめにされているような気分になってきたのです。

ボブは小さい教会から通りを隔てたところに住んでいます。

日曜日になると、通りにずらっと車が止まります。

もちろん、彼の家の前にも。

ある日曜日、ふと吹っ切れたように勇気が湧いて、遺産の一部であるビロード張りの古くて大きいソファを庭まで引きずり出し、看板を立てました。

「売りたし。一番いい値段で!」

日曜の礼拝が終わって十分後には、三人の人が寄ってきて、そのソファを買おうと値をつけ合いました。

この様式の家具がほかにもあると聞くと、それも買いとらせてほしいということでした。

高橋ナツコ
最終更新:2014年10月28日 10:54