- 601:◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/04(水)
19:32:09.22 ID:wXMh6kAO
- これは里美と立場が逆ならば切らずに待っていてくれるという確信が
かけ直すということをせずに電話をそのままにさせたのかもしれない
そのときどうしてか涙は出なかった。
特に悲しさも感じなかった。
自分の中にそれを遥か上回るものがあったからだろう。
里美が電話に復帰するまでおよそ五分かかった
里美「……ごめんね…。少しすっきりした。唯、何か用があって私に電話したんじゃない?」
そういえば…
しかし夢のことなんてこの状況で言えるわけもなかった。
唯「あ、いいの。大丈夫だから。里美も…」
なんて言えばいいのか一瞬戸惑った
里美「こんなんだけどさ、何か悩みがあれば聞いてあげるから。じゃね」
その声はいつもの里美の声に少し戻っていた
携帯電話を置き時計を見る。
電気が消えたままの薄暗い部屋の中で
何かを思い出しそうな自分がいた。
- 602 :◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/05(木)
16:31:15.33 ID:iea6OUAO
- ―――――――
加治木家 諒輔の部屋 23:15
加治木「うぁ~……」
ドサァッ(ベッドに寝転んだ)
なんかとても長い1日だった気がする…
あのあと警察署に連れてかれて
2人別々にだいたい2時間ぐらい怖そうな刑事さんに説教と犯人についてあれこれ聞かれた
犯人は顔を隠していたので詳しくは答えられなかったが
かなり異常なやつであることは確かだった
そして親を呼ばれ……うん。
警察署の中はかなりごたごたしていた
それはそうだろう、すでに4人おそらく同一犯に殺されているんだ
警察のメンツもあるのだろう
かなり偉そうな人も出入りしていた。
そして帰宅…明日も行かなきゃならないらしい…
学校から自宅謹慎するよう言われてたので何も問題ないけど…
ピリリリリリッ
電話が鳴った。八木からだ
- 603 :◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/05(木)
18:44:39.46 ID:iea6OUAO
- 八木「カジ…?」
加治木「ん?どうした?」
八木「大丈夫だった?」
2人別々になったあと会ってはいなかった。
加治木「あ、うん…なんか食堂でご飯奢ってもらったし」
八木「え…俺なんもなかったぞ」
加治木「そんなことよりどうしたんだよ」
八木「ん、あぁ…」
八木「電話の男のこと言った?」
加治木「あっ」
完全に頭から抜けていた。
それと助けてくれた男のことを忘れていたことも今思い出した
八木「やっぱりカジもか」
加治木「そっちも?」
八木「あぁ」
加治木「でもどうしてだろ…、八木に言われるまで完全に忘れてた」
八木「わかんない。でもさ…今気づいたんだけど…」
加治木「……?」
八木「電話の声とビルにいたやつの声…似てないか?」
そういえば…あの透き通った低い声…
頭の中で思い出してみた。
あのとき感じた感覚…確かに似ている。
八木「俺の推測ではさ…、電話の男と助けてくれた男は同一人物で、しかもどこかで俺達のことを見てた」
加治木「うん、俺もそう思う。でもなんで俺達なんかつけてたんだ?それに通り魔とはグルではなさそうだし…なんで助けてくれたんだろう」
八木「さぁ……。」
- 604 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/05(木) 19:08:03.81 ID:iea6OUAO
- 八木「でさ…もう一つ…あるんだけど」
加治木「推測?」
八木「うん」
加治木「電話の男が超能力者とか言うんじゃないだろうね」
八木「惜しい!俺の考えではあの男は魔法使いだと思う。むしろこれを推したい」
加治木「はい?」
八木…何を言っているんだ
魔法使いなんているわけないじゃないか…
八木は興奮気味に、
八木「見ただろ!?あの男が現れたら、ほら!通り魔のナイフが弾け飛んだりさ」
加治木「それだけじゃ魔法使いなんて言えないよ、石投げたんじゃない?それもすごいけど」
八木「いーや、じゃあ俺達の記憶が消えてたり通り魔のやることを言い当てたりしたのはどう説明すんだよ!」
いつものインテリっぽい八木には見られないような剣幕だ
加治木「た、確かにそれだと説明できるけどさ、どうしたんだよ?八木が魔法なんて言うとは思わなかったよ」
八木は少し興奮を抑えて言った、
八木「俺さ…今すごいワクワクしてるんだ」
加治木「ワクワク?」
- 605 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/05(木) 22:34:58.40 ID:iea6OUAO
- 八木「…俺さ、子供の頃から魔法使いになりたかったんだ」
八木の声はウキウキした喋りの中に真剣さがあった。
本気で言っているようだ
加治木「…」
そしてしんみりした声で、
八木「でも歳とるとさ、子供の頃は目輝かせてあると信じていても、現実みはじめて非現実的だって言う。俺はそれがなんか嫌でさ、今まで信じてた…けどどこかで有り得ないと心のどこかで思ってて…」
八木「で、今日の事件だよ!超能力者でも魔法使いでもなんでもいい!あれは絶対超科学さ!俺達はそれを目の前で見たんだ!実在したんだよ!それで今興奮してる」
加治木「……でもさ、まだそうと決まったわけじゃ」
八木がこんな夢みる少年だとは思いもよらなかった。
どこか子供じみたところは昔からあったけど、
もう高1にもなってあまりにガキっぽすぎる
八木「じゃあ説明できるのかよ」
加治木「うーん……」
確かに想像を超えることはあった
が、超能力っていうのはさすがに無理矢理じゃないか
しかしそれを自分の今ある知識では説明できなかった
仮定ばかりになってしまう
- 606 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/05(木) 22:52:57.16 ID:iea6OUAO
- 八木「説明できないだろ?」
加治木「うん…まぁ…」
八木「でさ、あの番号の紙持ってる?」
もう一度電話をかけるつもりらしい。
確かズボンのポケットに入れたはず……
なかった。どこにもない
上着にも、どこにも
加治木「ない、なくしちゃったかも…。けど絶対ズボンに入れたはずなのに…」
八木「……やっぱり!消したんだよ、魔法で」
加治木「………」
話題を逸らすことにした。
加治木「それより飯山はいいのか?殺された安田って飯山の友達だろ?」
八木の声が急に小さくなった
八木「うん…、メールで伝えてからそれっきり。電話も出てくれないし、相当ショックだったんだろな。って慰めにもいけないしな、謹慎中だし」
加治木「そっか…」
八木「あ、そうだ。明日学校臨時休校だってさ」
加治木「え?ほんと?」
八木「例の通り魔が真鍮の生徒ばっか狙うからだってさ」
加治木(結構簡単に休校にしちゃうもんなんだ…)
八木「俺もあと5人に伝えなきゃなんないし、学校から電話きてないの?」
加治木「親はなんにも言ってない」
八木「ふぅん…ま、明日警察署でな」
加治木「わかった、なんか違和感あるけど…」
電話を切った。
そして再びベッドに仰向けになって
天井の蛍光灯を見つめていると
ふとあの娘のことを思い出した。
加治木(大丈夫かな……)
そのまま目を瞑り、
疲れもあってかすぐに眠りについた
- 607 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/05(木) 23:25:43.17 ID:iea6OUAO
- ―――――――
寝たくなかった。
寝ればまた夢の中であのおぞましい光景を見せつけられ
思い出したくもない現実を自らの記憶の中に
蘇らせてしまうような気がしたからだ。
それがなってしまえば自分が正気を失ってしまうような
そんな強迫観念にとらわれていた。
ベッドの上で体育座りをして朝を待つことにした。
一体自分は何なのだろう
数日前まで思いもよらなかったようなことが頭の中を駆け巡り唯を苦しめる
何かを思い出そうとする自分と
それを拒む自分がいる
どちらが本当の自分なのか…
しかしどちらにも共通しているのは
どちらも絶望的な孤独感を内包していることだ
これは恐怖であり、思い出させることを躊躇させる
しかし今はなにがなんだかわからない、
とは言えないほど唯は何かぼんやりしたものが見え始めていた
うつむいた顔をあげ
暗い部屋の中にある蛍光色の時計を見る
『0:01』
そのとき、なにやら身体が温かくなったような気がした
そして、少しずつ意識が遠のいていく…………
………
…。
- 608 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/06(金) 19:08:23.00 ID:wHlQm6AO
- 意識の朧気の中、最後に現実に見たのは
体を纏う青い螺旋状の線…
――――――――
眼前にまどろう深淵すら見えぬ闇雲は
自分の悲しみの深さをそのまま反映したよう…
しかし、今日はいつもと違った
闇の中に無限と思える天井から青い光を放つ糸のようなものが垂れ下がっている
その青い光は夢であるにも関わらず
温かみを帯びていた
見ていると糸の中ごろでプツンと切れ
床ともわらぬ場所にまとまって落ちた
それがかたまり、宙に浮き、小さな人の形になるまで
おそらく10分ぐらいしたであろうか
しかしそれを見ているのに退屈は感じなかった
むしろそれが夢なのだと思った
そしてそれが人の輪郭を綺麗に作ったとき
女の声を発した。
(はじめまして…私はあなたの記憶とあなたを纏う僅かな魔力から生まれました)
夢…。夢だからかなんの疑問も感じなかった
その妖精らしきものは続けて
(すぐにあなたの前に現れたかったんだけど、術師の記憶を忘却させる術のせいで少し時間かかっちゃったの。でも完全ではなかったから、あなたは悪夢を見た。いえ、あなたは自らそれを思い出そうとして意識下である夢として見せたんでしょうね)
- 609 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/06(金) 19:42:02.57 ID:wHlQm6AO
- 唯はその妖精みたいなものが放つ言葉を理解し
反問する理性をもつことができていた
唯(誰……?)
(簡単に言えばあなたを助けるために生まれた…ってとこかしらね)
唯(助ける…?…何から?)
その妖精は含み笑いをし、
(ふぅん…あなたにはまず最初から説明しなきゃダメみたいね)
(いいわ。体の形も維持できるようになったし、あなたが私を外に出して)
唯(……出す?)
(そっ、起きたあと私の形を強くイメージして呪文を二回復唱して。好きな形イメージしていいけど、倫理上許される形にしてよね)
少し戸惑った。夢なのに驚くほど意識は鮮明である。
しかし妖精みたいなものが言うことは唐突かつ突拍子もないことだったので、理解を鈍らせた。
唯(あなたの言ってることがよくわからないんだけど…)
仮に夢だとしたらこの問いはあまりにもおかしいが
それほどこの状況は現実味を帯びていたということだ
- 610 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/06(金) 20:59:51.77 ID:wHlQm6AO
- (それを説明するからとにかく現実に出してって言ってるの。あぁもう…やっぱり心だけじゃ難しいのかしら)
唯(もし…失敗…したら…?)
(その時は何もわからず毎日悪夢に苦しむことね。もっとも、何回でもできるからいいんだけど……ってそうじゃなくて!いい!?何が起こっているか知りたかったらヴィヴィラスって二回唱えなさい!発音難しいからね、一つめのヴィは高めで2つ目のヴィは低く―)
唯(なんでここで言ってくれないの?)
(………。あのね…、多分ここで言ったことを全部覚えられないと思うの。ただでさえ夢という意識が薄い空間なんだから、目覚めた時には綺麗さっぱりでしょう。この呪文と私の言ったことさえ覚えてくれればいいの。私、二度同じこと言いたくないし)
唯(へぇ……そうなんだ、ヴィ…ヴィヴィラス…?)
(アトムでは具現化という意味よ)
唯(アトム……?)
(正式な発音はムを伸ばすんだけどね。アトムゥって。まぁそんなことはどうでもいいから、目覚めさせるわよ?いい?)
唯(わ…わかった…。ヴィヴィラス…ね)
パチン
妖精が指を鳴らす動作をすると
辺りの闇が青く照らされた
床には今まで見えなかったが
2つの胴体のない髑髏が転がっていた
―――――――
- 611 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/06(金) 23:54:57.94 ID:wHlQm6AO
-
- はっ…!
時計を見ると4時
そんな長い時間寝てたっけ…
辺りは静かだった。
唯(変な夢………)
ベッドから降りて電気をつけた
蛍光灯の光が点灯する
唯(あっ……そういえば夢の中で何か言われたっけ…?)
唯(確かヴィヴィラス…って唱えると…)
でももし変なことが起こったら嫌だな…
どうしよう…。
ベッドに腰掛けて少し考えることにした。
覚えているのは呪文と妖精みたいなものの姿だけ。
残虐な夢ではなかったにしても、意味不明な内容だったのは同じである。
疲労した心が今一歩踏み出すのを躊躇させていた
(今何が起こっているのか…)
もちろんこのどこから来るのかわからない心の苦しみや
毎晩見るようになった悪夢の原因が知りたい。
でも…それを知ってしまったらどうなってしまうのか
知ってしまってよいのだろうか。
とても迷っていた。
夢の話に迷うなんて馬鹿げてるように思えるが
彼女は真剣である。
――――――――
意を決したとき、日の出が始まっていた
部屋に太陽の光が差し込み影をつくった
-
- 615:1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/07(土) 18:06:49.96 ID:WtwTH2AO
- どうせ夢の話だ、
何も起こらなければそれはそれでいいじゃないか
何か悪いことが起こっても、何が起こっているのかわかったほうがいい
目をつむり、夢に出てきたものの形を強く想像し
覚えていた呪文を唱えた
唯「ヴィヴィラス…ヴィヴィラス……」
……………。
何も起こらない…
やっぱり夢は夢か…。
バカみたい…。
そのままベッドに倒れ込み
うつ伏せになって寝てしまった。
――――――――
ファァァッ……
(魔力が思ったより弱まってたから時間かかっちゃった)
…………
(あれれ?寝ちゃったの?)
(もう、せっかく美しい登場の仕方だったのにぃ)
…………。
唯「ZZz……」
(起こすのもかわいそうね…)
- 616 :◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/07(土)
21:23:43.20 ID:WtwTH2AO
- ――――――――
翌朝7:13
唯(………………)
唯「………」
母「唯~ご飯できたわよ~降りてらっしゃーい」
母の一声で目が覚めた。
目を開け、辺りを見回す
枕は濡れてない
唯(怖い夢じゃなかった……)
わるい夢は見なかった。
なにか少し心が軽くなったような気持ちだ
でも、あの変な夢はなんだったのだろう
唯(妖精なんているわけないし、やっぱり夢は夢だよね。少し期待して損しちゃった)
顔を洗い、髪をとかし
窓を開けて外の清々しい空気を入れる。
そして制服に着替えたところで気づく
唯(確か今日学校休みだったっけ…)
制服を脱いで部屋着に着替えた
- 617 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/07(土) 23:12:36.26 ID:WtwTH2AO
- 唯「おはよー」
母「あら?ちゃんと眠れた?」
唯「うん、今日はちょっとよくなった」
母「そう。じゃ朝ご飯食べちゃって」
リビングに入るといつも朝ご飯を食べながら朝刊を読む父はいなかった
先に仕事にいったようだ
席につき食パンとサラダを食べながらテレビをつけた。
もちろんやっているのは、
「現在までなんの罪もない女子高生3人と通り魔を捕まえようとした男性が残忍なまでの通り魔の毒牙にかかり命を落としました」
ピッ
「県警察は有狩警察署に捜査本部を設置し1500人体勢で犯人の行方を追っています」
「全く!警察は一体何をしていたんでしょうか!警察がちゃんとしていればまだ未来のある子供も正義感溢れる男性も命を失うことはなかった!国家権力が―」
ピッ
「犯人が使ったと思われるナイフはイタリアで製造されている軍事用のアーミーナイフであり、刃渡り25センチ以上あります。現在までに十万本以上が全世界に輸出されており犯人の特定には至らず…」
ピッ
「現場周辺の小中、高等学校は生徒の安全のため時間割りを切り上げたり集団下校をさせるなどしていますが、生徒が三人殺害された真鍮高校は今日は臨時休校となり―」
ピッ
- 618 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/08(日) 19:16:43.10 ID:F1vslYAO
- 「…た通り魔を追った20代の男性は犯人の逆襲にあい現場から200mほど離れた路地裏で刺殺死体で発見されました。なお刺殺された男性とともに通り魔を追った地元高校の男性2人は奇跡的に軽傷で済み…」
台所を片付けた母が席についた。
母「ほんと世の中物騒になったわねぇ」
母「通り魔に狙われてるのって真鍮高校の女子らしいじゃない…お母さん心配で心配で…当分外出控えなさいよ」
唯「うん…。今日は家で勉強してるよ」
テレビはひっきりなしに死んだ人達の将来の夢や
卒業文集を放送している。
亡くなった人達に今一番同情しているかもしれない。
母「早く捕まってほしいわねぇ……」
唯「ごちそうさま~」
食器を片付けながら今日何をしようか考えた。
勉強…はあんまりする気はない。
とあれこれ考えてると
ガッシャーン(食器を落とした)
唯「きゃっ!」
破片で裸足の小指部分が少しキレた
母「唯!大丈夫?なにボーっとしてるの」
キレた部分から血が滲み出てきた…
唯「うっ……いたっ…」
足の痛みと頭痛が同時に起こった。
まただ…血をみると…
母「どうしたの?大丈夫?」
母が背をさする。
唯「う…うん…少し休む…」
- 619 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/09(月) 17:01:59.58 ID:PFVOi2AO
- 母「やっぱり医者に看てもらったほうがいいんじゃないかしら…」
バタン
唯(またベッドに逆戻り…)
母に冷えピタと頭痛薬を貰いまたベッドに入った。
天窓から外の明るい青空が見える。
雲一つない快晴のようだ。
しばらく目を開けて耽っていた。
すると…!
空中で光が線を描いて浮いている
明るいはずなのにその光ははっきり見えた。
唯(!?)
そしてその光は目の前まで降りてきて
人の形となった。
唯(な……なに……!)
(改めて…はじめまして。リ……いや、今は唯ちゃんでいいかな?)
しゃ…喋った!?
その光は輪郭を整え
ついに、さっきまで見ていた青空のような青い髪、水色の布を纏った小さな女の子になった
小さな南の島の水のような色の羽も背中から生えている
見覚えがある…!
これは自分がイメージしていた……!
まだ夢が続いているのか、と何故か冷静に考えることができた
(さっ、起きて!今、何が起こってるのか説明してあげる)
- 620 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/09(月) 17:57:34.27 ID:PFVOi2AO
- 唯「なに?なんなの?これって夢なの?」
その妖精みたいなものは笑いながら
(ウフフ…夢なんかじゃないわよ、これは現実!全ては今起きてるの!)
唯「………あ……え?」
たった今、非現実的なことが目の前で起こっている。
小さな人間が飛び回っているのだ。
しかし、夢で見ていたからだろうか
恐怖は感じなかったし、どこか慣れている自分がいた
唯「あ、あなたは一体…何?」
(あなたを助けるためにここにきたの、…ってこれ二回目…。ま、安心して。あなたの一応味方みたいなもんだから。あ、名前を聞いてるんだったら、私は今名前はないからが好きなのつけていいわよ)
唯(よく喋るなぁ…)
唯「妖精…ですか?」
(うーん近いような近くないような…。ま、今こんな姿だし一応妖精ってことでいいわ。ってあなたが具現化したんでしょ、この姿に。私自身のこと聞いてるんなら今から説明するから)
かなり饒舌な妖精のようだ。
するとどこからともなく紙芝居の額が出てきた
(絵つきのほうがわかりやすいでしょ?じゃはじまりはじまり~♪)
唯「ま、待って!」
(ん?)
唯「一体何がなんだか…、全然状況が飲み込めないんですけど…」
(ま、無理もないわね。いきなり目の前にわけのわかんない妖精が現れてさぁ状況説明しまーすじゃ飲めるものも飲み込めないわよねぇ、うんうん)
唯「その…あまりにも、なんて言うか…」
(じゃあ、まずは簡潔に概況を言いましょう)
- 621 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/09(月) 18:12:04.84 ID:PFVOi2AO
- (あなたはこの世界とは別の世界の住人で、ある理由によって命を狙われています。ってとこかしら)
唯「え…」
(ま、その狙ってる奴はまだこっちにこれないから当分は安心していいよ)
唯「……」
(わかってない顔ね……。でもそのうちある程度記憶も戻ってくるはずだし)
唯「…私が見た悪い夢と何か関係が?」
(……。その夢はあっちの世界のあなたが見た光景を断片的にフラッシュバックさせているの。あっちの世界のあなたがね)
唯「…その夢で…殺されてた人って…その世界の私のお父さんとお母さん…?」
(……やっぱり少しずつ記憶が戻ってるのね。その通り、あれはあなたの父母よ。)
唯「………なんとなくだけど…そんな気がしてた…」
(……。とにかくあなたにわかってて貰わなきゃならないことを手短に話すから、紙芝居見ててね。はい、べっこう飴)
唯「あ、ありがとう」
- 622 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/09(月) 19:55:58.69 ID:PFVOi2AO
- 「はじまりはじまり~♪」
ササッ(なんかクレヨンでかかれた地球みたいな絵)
「今、科学文明が発達したこの世界とは別に魔法といわれる力が存在するアトムという世界があります」
ササッ(なんかクレヨンで書かれた人達)
「その世界には魔法使人と呼ばれる人々が存在し日夜、魔法の研究や軍隊に従軍して戦ったり、国に雇われて生活している人など様々な人達がいます」
「そしてあっちの世界、アトムでは、あなたはその魔法使人だったの。つまりあなたは魔法が使えます。ここまでで質問は?」
唯「なんで世界が2つあるの?」
動きがピタッっと止まった。
「……えーとね………それは…多分時期が来ればわかると思うわ」
唯「……魔法って今私使えるの?」
「残念だけどあなたは記憶を忘却する魔法がかけられてるからある程度は練習して思い出すしかないわ」
唯「…その魔法って誰にかけられたの?」
(結構ずけずけ聞いてくるわね)
「……それはまたあとで。しかもあなたは魔力をかなり消耗しているから今現在は使うのは無理ね」
唯「その魔力が回復するには?」
「特定の食物を摂取するか、休息を取るか…もしくは……」
唯「もしくは……」
- 623 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/09(月) 20:25:12.50 ID:PFVOi2AO
- 「…知りたい?」
唯「うん」
ちょっともったいぶりながら、
「…あのね…異性と契りを交わすの」
唯「ちぎり?」
その妖精は少し頬を赤らめて、紙をめくった
ササッ(チョメチョメする男女の図)
唯「………」
「つ、つまり、性行為をして相手の体液を自分の体内に入れるわけ///。これが最も効率よくかつたくさん魔力を蓄積できる方法なの」
衝撃的な話である。
唯「………///」
ササッ(チョメチョメする男女の図2)
「これに愛が加わればそのパワーは絶大!まさに!まさに!最終奥義みたいな!北信愛(?)みたいな!」
拳を握り締め力説する妖精。
唯「………、そ、それじゃあ魔法使人って女の人ばかりじゃない?」
「確かにね、アトムにいる魔法使人の八割は女性よ。男性もいるけど、かなーり大変らしいし」
ササッ(地図)
地図の真ん中あたりを指差し、
「続けましょうか。そしてあなたが生まれたのはここケトンって言う国。あなたのお父さんはこの国に仕える魔法使人でした」
- 624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/10(火) 00:19:31.09 ID:r.S7mG2o
- 青いつなぎを着て公園のベンチに座っている
男性の魔法使人の姿は街の風物詩である。
- 625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/10(火) 03:16:20.35 ID:vkX7scA0
-
>>624
こいつ・・・・・・できる・・・!
- 626 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/10(火) 10:39:34.91 ID:zQqkoIAO
- 唯「ケトン…?」
「そう、ケトン王が君臨する王政国家ね。ここら辺は今は特に知らなくてもいいわ」
唯「ねぇ…」
「?」
唯「どこまでが本当のことなの?」
「全部」
唯「全部?」
「そうよ、全部事実」
唯「………」
「………」
唯「…続けて」
「………。信じてないわね。…わかった、魔法がどんなものか見せてあげる」
「右手のひらを頭より高い所に掲げてみて」
言われた通り掲げた。
「そのまま手のひらを見ててね」
と言うと、その妖精は唯の腕に掴まった。
すると、手のひらから青白い湯気と細かな光が立ち上り
空中で光がパチパチとはじけた
「これが魔法の原型よ。まだ魔力が乏しいからこの程度だけど、練習すれば皮膚が火傷するぐらいの爆発になるわ。どう?信じた?」
唯(なにか…見たことあるような…)
頭のどこかでこの小さな光景を見たような気がした。
しかし、そんな気がするだけで
覚えているわけではない。
唯「う…うん…」
「よかった、じゃ続けましょう」
かざした手を下ろし手のひらを見つめた。
自分の中で何かが起こっていることを改めて実感せざるをおえなかった
- 627:◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/10(火)
15:52:41.40 ID:zQqkoIAO
- あー…また長くなってしまいそうだ…
- 628 :◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/10(火)
16:40:43.08 ID:zQqkoIAO
- こんな簡単にこの世界の常識を考え改めなくてはならないとは思ってもみなかった。
魔法や呪術の類を信じていなかった自分がまさか魔法使いだったなどと。
あまりにもできすぎである。
妖精は続けて、
「あなたはその魔法使人の娘だった。しかし、ある術師…仮に悪い魔法使人としましょう。その悪い魔法使人はなんらかの理由で行く度々に魔法使人を*おう殺し、あなたの家まで辿り着いた。そして―」
*おう さつ 皆殺しの意
鹿 殺
金
その時ある言葉が思い出され
とっさに口から出た。
唯「世界を…統べる者…」
「………!。驚いたわ。あなたの口からその名がでるなんて。少しずつ記憶が戻ってるのね」
唯(何でだろ…何故か覚えてる…夢で…かな)
「そう、世界を統べる者。正体不明、目的不明の人物。そいつがあなたの父母を殺した」
唯「…………」
『世界を統べる者だ…』
パチパチ……!
「……!!」
みると唯の身体中から尋常でない白煙が立ち上っている。
唯「うぐっ………」
胸を締め付け息を詰まらせるような憎悪の感情が心の奥底から沸いてくる。
なにか…憎しみだけが心の中に蘇っているようだ。
「……止めて!早く!」
- 629 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/10(火) 18:03:48.59 ID:zQqkoIAO
- バチバチ…!
――――――
「な……なんなんだお前は……!?」
「……死ぬ前に教えてやろう……」
「世界を統べる者だ」
「……かはっ……千年も前に死んだやつがなぜここに……ぐっ」
「答える義務はない」
……バキッ
…………………
…………
――――――
唯「…うぅ……っ……」
「こっちを向いて!!」
パチッ!
唯「…あっ」
妖精の叫びで我に帰った。
「………。あなたはまだ不安定なんだから…。いきなり踏み込んだ話ししちゃった私も私だけど…」
(それにしてもどこからあんな力が……これじゃ完全に…)
唯「ゲホッゲホッ……」
急に湧いた憎悪のあとに残ったのは、…喪失感、虚無感。
自分の分からないところで自分の分からない憎悪が湧く、
しかしそれはどこかでぼんやりとわかってるのだ。
自分自身に言いようのない怒りがわいた。
唯「……私は……私は……なんなの!?一体!?別の自分がいるみたいで…!」
「………」
「あなたはその世界を統べる者があなたの親を殺す所をみた。それは強烈に、鮮烈にあなたの頭に焼き付き、記憶を忘却したにも関わらずあなたに夢として見せつけてるの、あなた自身がね。」
- 630 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/10(火) 18:49:45.36 ID:zQqkoIAO
- 「その時一緒にいたケイと言う魔法使人があなたの記憶を忘却したんだけど、どうやら時間もなかったし焦っていたんでしょう、術が不十分だったの」
唯「…………」
「そして内なるあなたは世界を統べる者に対して果てしない憎しみを抱き、未だにあなた自身にその憎しみを伝えている。ってとこかしら、あなたの記憶を辿ると」
唯「………私はどうしたらいいの?」
「それは自分で決めること。あなたは親御さん達の犠牲を払って生き延びたの。…復讐を果たすなりこの世界で生きるなり好きなようにすればいい。ただ…」
唯「……ただ?」
「……さっき話したケイっていうのがあなたをこの世界に転生させたんだけどね、その時あなたもケイも気づかなかったみたいね。その世界を統べる者が転世の*とびら…つまりあなたが通ったこの世界と繋がるとびらなんだけど…」
*門+去+皿のとびら。携帯の変換じゃ出ませんでした。門のとびらの意
「そのとびらに近づいた時、とっさにそいつが所有する魔族を放り込んだの…。つまり、あなたと一緒にこの世界に来てしまった可能性があるの。全く…抜け目のない奴よ…。」
唯「魔族?」
「そっか……そこからか…」
「魔族って言うのはこの世界で言う人語を喋るちょっと頭の弱いバケモノのことよ。その世界を統べる者は恐らく魔族使い…。要するにそのバケモノがもしかしたらあなたを狙ってるかもしれないってこと」
唯「バケモノならこの世界ではすぐ人にバレるんじゃ?」
「………そのはずだったの」
- 631 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 16:05:06.81 ID:5OkdmsAO
- ササッ(人間2人ととびらの絵)
「あなたが転生のとびらを通ってこの世界に来るときに、世界を統べる者が魔族をムリヤリとびらの中に入れたってさっき言ったわよね」
唯「…うん」
「人間同士が同時に通るならまだしも、人間ではない魔族と人間が同時に通るとなると話は別。この世界とアトムはいわば一心同体。
自分と同じ顔、体格、性格の人物がどこかにもう一人いると思った方がいいわね、性格は環境によって千差万別するけど。
転生のとびらを通るということはその相手世界の自分になりかわると言っても過言ではないわ。
つまりこっちの世界に魔族という身体は存在しないから、とびらを通ってもその魔族の受け入れ先は存在しないの。ただ、同じ心魂をもつ者は存在するかもしれない、いわばこの世界の仏教でいう輪廻みたいなものかしら」
唯「……じゃあ…」
「おかしなことになるわね」
唯「………」
「あなたは櫻井唯というこの世界の身体とすんなり入れ替わるはずだったの。この場合の入れ替わりって言うのは、櫻井唯の心とあなたの心を融和して櫻井唯の身体で過ごすってことなんだけど、
受け入れたほうの記憶や心理状態が優先されるから、一応ここでは櫻井唯として過ごすことに…」
唯は眉をしかめた。
唯「………???」
「…難しい…?」
唯「……えっと、ちょっとまって……そうだとすると元の私の身体は?」
「それは、この世界とアトムとの狭間、転生のとびらの中にちゃんと存在してる。でも…」
- 632 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 17:18:32.71 ID:5OkdmsAO
- 「その異常なことの影響によって、通常起こるはずの心魂の融和が中途半端になってしまったのよ。本当は魔族がとびらを通らないようにしてあるんだけど…」
「だから、あなたは櫻井唯に入れ替わる…はずだったんだけど、文字通り心と身体が入れ替わってしまった。あなたがこうして日常の記憶があるのは櫻井唯の身体だったから。過去の記憶が蘇ってきているのはケイの術が世界を越えてまでは永久に効力を持ち得ないからよ」
一瞬の沈黙のあと、
唯「じゃあ…じゃあ元の…自分は?」
「狭間にいるあなたの身体に入った可能性が大よ。そうだとすると…最悪の場合どこかに出てしまう可能性がある。と言うより最悪の事態すらわからない状態なの、何が起こるかわからないわ」
唯「そ…そんな…」
妖精はつづけて言う
「遠回りになっちゃったけど、その時一緒に入った魔族は幽離して自分と同じ、つまりこちらの世界の自分にムリヤリ入ったようなの。あなたを狙う可能性がある、と言うよりそうするでしょうね」
唯「ま、まって!…受け入れたほうの記憶が優先されるならどうしてまだ私を狙おうとするの?」
「それはおそらく魔族の方も入れ替わったんでしょう。悲しいかな、魔族に転生してしまった人がいるようだわ。身体は人間だから日常生活に支障はないはず、でもいずれボロを出すでしょうね」
唯の頭がだいぶこんがらがってきた。
唯「つ、つまり…私はその魔族って言うのに命を狙われていて、元のこの体の持ち主は行方不明…」
「そんなところかしら」
唯「………」
- 633 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 19:43:30.91 ID:5OkdmsAO
- この身体が自分のものではないと聞かされて、はいそうですかと受け入れられる人はどれくらいいるだろうか…。
しかし唯は違和感を感じないとは言えない心地ではあった。
確かになにか、自分がいるべき場所にいないような浮き立った気持ちがしていた。
それはこの話を信じるには十分だったのかもしれない…。
唯「……ただ殺されるのを待ってなきゃいけないの?」
「そこで私があなたを助けるの」
唯「どうやって?」
ササッ(魔法の絵)
「私があなたに魔法を思い出させて、その魔法で敵を撃退もしくは、倒す!ビビーって」
唯「…た…倒せるの?」
「結局は倒さなきゃダメなの!倒して私が心魂を元の体に戻す魔法をかけるから…(こんなのしか使えないけど)」
唯「直せるの!?じゃあ私達も元に戻せば…」
「片方の身体のみで戻せば死ぬわよ」
唯「え…」
ササッ(また2人の絵、片方バケモノ)
「要するに、片方の身体が行方不明のまま心魂を戻せば、片方の心魂は帰る場所を見失うの。行方知れずの心魂は呼び戻せるけど、行う術者は戻す場所を知らないから結果的に心魂を失った身体は腐り、帰る場所を失った心魂は世界の狭間で永遠に意識を持ったまま朽ちることもなく無限を生きることになるわ。死んだほうがマシかもね」
ゾクッ…
「どうせ魔族なんてどうなってもいいから言ってるんだけどね(本当は入れるはずなんかないんだから)」
「そこでぇっ!私があなたを特訓するために遣わされたってわけよ!おわかり?あーゆーあんだーすたんど?」
唯「ポカーン……」
- 634:1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 20:34:17.78 ID:5OkdmsAO
- ほんとうはどぅーゆーだがあえて間違えていることにしておこうと思う
…。
635 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 23:22:38.55 ID:5OkdmsAO
- 唯「誰に遣わされたの?」
「さぁ」
唯「知らないの?」
「うん」
唯「………どうして?」
妖精みたいな少女は空中を一回転して目の前に降り、
「フフッ、そういえばまだ私のこと話してなかったわね」
ヒュッ
「私のような者はアトムでは祖龍子(ドラコ)と呼ばれているわ。いわば世界の傍観者。神とまではいかないけど、世界の行く末を見守り、たまぁに気紛れで人間に知恵を貸したりしてるの。地域によっては結構神として崇められてるのよ!」
唯「へぇ~、すごいね~」
よくわからないけどすごそうだ。
「でね、まぁ積もる歴史を語るのはまた今度で…、どうして誰に遣わされたかわからないって言うのは…」
唯「うんうん」
「わからないの」
唯「えっ…わからないの?」
「うん。だってそんなのもう超感覚的なことだから。なんとなくあなたを助けにいかなきゃ、って感じよ、もう。言うなれば……祖龍子は世界と一心同体みたいなところあるから、世界があなたを助けるように遣わしたのかもねっ!」
唯「?」
世界が私を…?
「ん~…今のは漠然すぎるかもしれないからあんまり深く考える必要はないわよ」
何か急に話が大きなったようだ
唯「んー……、そういえば…えっと…えっと…」
質問をしようと思ったが相手をなんて呼べばいいのか一瞬迷った。
妖精は悟ったのか、
「名前?祖龍子に識別固有名なんてないから好きなようにつけていいわよ」
唯「…じゃあ…えーと…」
「かわいい名前がいいなー」
少し考え、頭にとっさに浮かんだ名前にした。
唯「じゃあ、ナトリーで!どう?かわいいでしょ?」
- 636 :1◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/11(水) 23:40:13.88 ID:5OkdmsAO
-
話をまとめる能力が乏しいため
相当説明がくどくなってしまいました。。。
申し訳ない。
要するに
地球世界⇔転生のとびら⇔アトム世界
しかし、地球世界からアトム世界へは転生することなく地球世界の身体のままゆけます
制約がかかるのはアトム世界から地球世界だけです
これはアトム世界には魔族や魔法があるためで
これを筒抜けにすると
地球世界が大変なことになっちゃうからです
ですから、地球世界が発展し科学文明が発達したということは……おっと。
てか今どのくらいの方が見てくださっているのでしょう…
淡々と投下しておりますが
- 644
:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/12(木) 18:42:50.94 ID:cVsej4w0
- ノ
保守いらないから書き込まないだけかと
頑張ってくだしあ
- 645
:1
◆DlyW/s8ibQ[sage saga]:2009/02/12(木)
20:44:04.78 ID:fh6bmcAO
- 「!?」
唯「…?、ダメかな?」
「べ、別に私は構わないけど…いいの?」
唯「何が?」
もちろんこのときの唯の頭には母の名だという認識はない。
ただ唯の頭に微かに残っていた…という程度のものである。
「ううん…何もないわ、いい名前ね。それで何かしら?」
(…自分の母の名と気づいたときどうするのかしら……)
唯「確かあ…ナトリーは私の記憶から生まれたって言ってなかったけ。それってどういう意味かなって」
ナトリー「…覚えてたの!?」
唯「うん」
ナトリー「ええとね…」
ナトリーが問に答えようとしたその瞬間、
コンコン(ドアを叩く音)
母「唯、入るわよー」
唯「!……ちょ、ちょっと待って!!」
唯「ナトリー!ど、どうするあなたを見たらお母さん…!」
ナトリー「大丈夫、大丈夫」
ナトリーは焦る様子もなくただ頷く。
母「どうかしたの!?」
ガチャッ
- 646 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/12(木) 21:44:05.36 ID:fh6bmcAO
-
>>642-644
ありがとう。
最初はネタとして始めた話ですが
自分でもこんなに膨らむとは思ってもみませんでした。
おそらくとても長いお話になってしまいそうです…。
まだ物語全体の中でも恐らく3章まででも全体の何分の一かもわからないくらいです。
この方向性でよかったのかどうかは分かりませんが
いつか大団円で締めくくれるよう
お付き合いのほどよろしくお願いします。
- 647 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/12(木) 22:03:12.21 ID:fh6bmcAO
- 唯「わっ」
唯「…待ってって言ったのにどうして入ってくるの!」
母は部屋を一通り見回し、
母「ご、ごめんね。最近何かと物騒だから、唯に何かあったのかと思っちゃって」
唯「もうっ……」
母「何を言いにきたっていうとね、お昼食べるんでしょ?下に用意してあるから調子が良くなったら食べなさいよ」
それだけを言うと母はドアを閉め下に降りていった。
そうかもうそんな時間か。
時計を見ると12時を過ぎていた。
唯「あービックリした!」
ナトリー「どう?ずっとここにいたけど気づかれなかったでしょ」
唯「どういうこと?お母さんには見えてないの?」
ナトリー「そういうこと。魔力を持たない者には私を視ることはできないの。少しでも魔力を持っていれば見れるんだけどねっ」
ナトリー「多分これからあなたと行動を共にすると思うから、この方が便利でしょ?」
唯「なんか……」
ナトリー「?」
唯「すごいっ!」
ナトリー「え?」
唯「こんなの…こんなの…すごすぎるよ!」
急に心がこの非現実に興奮し始めた。
自分が魔法使いで他人には見えない妖精と一緒に過ごすなんて
小さな子供なら一度は夢みることだ。
それが今、まさに起こっている。
実感するほどに胸が高鳴る心地がする
- 648 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/12(木) 22:54:47.36 ID:fh6bmcAO
- ナトリー「そ…そう?」
唯「うん!」
ナトリー「…まぁ何にせよ、笑った顔が見られてよかったわ」
ナトリーは初めて唯の笑顔を見た。
恐らく唯の方も久しぶりに笑えたようだ。
有り得ない未知の願望が目の前に出現し、それを実感するとき人は自然と笑うのかもしれない。
ナトリー「話を戻すけど、」
ササッ
ナトリー「本来私達、祖龍子が現世、つまり地上に現れるには魔力を媒体とする必要があるの。」
ナトリー「その際に魔力を持つもの、あなたのような人に憑き、会話をするには相手の心の記憶を取り込むことが必要となってくるわけ」
唯「なんで?」
ナトリー「まず相手の思想、言語を知らなきゃ会話できないでしょ?それに、相手が悪い奴だったりしたら困るじゃない」
唯「うん」
ナトリー「後は記憶を共有することによって相手を知ることができるの」
ナトリー「つまり、祖龍子の心魂、魔力、記憶を合わせることによって現世に存在できるわけ。ってここまで言っちゃっていいのかしら…」
喋りすぎである。
唯「なるほど。でも魔力なんてどこから…」
ナトリー「あなたを護っていた防御魔法よ」
- 649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/13(金) 01:55:52.68 ID:ZdzFP36o
- シリアス怖いよー
- 650 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/13(金) 19:57:30.30 ID:EJWhiIAO
-
>>649
このあともグロい描写が多少あると思うよ~(^O^)
- 651 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/13(金) 21:39:10.89 ID:EJWhiIAO
- 唯「防御…魔法?」
ナトリー「そう、しかもとても古く、そしてとても単純で、かつ術者の意思が力となりやすい魔法よ。あなたのお母さんが死ぬ間際にあなたを助けるためにかけたの」
唯「………」
ナトリー「俗に言われる言い方が螺旋円ね。それがあなたの身体と心にかけられて、さらに世界を越えてもまだ持続している。これって相当すごいことよ?」
ナトリー「これがなかったらあなた自身の微量な魔力に頼らならければならなくなって、私があなたの前に現れるにはさらに二年くらい伸びていたでしょうね。感謝しなきゃ」
唯「…そうなんだ……」
そうか、夢の中に出てきたあの人が…。
ナトリー「その魔法が単純だったからこうして魔力を媒体にできたの、運よかったって言ったらあれだけどさ―」
ぐ~…
唯「あっ…//」
ナトリー「…あらら、ちょっと話過ぎちゃったかしら。お昼食べてきたら?」
唯「う、うん…//」
12:40
―――――――――
- 652 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 00:11:54.39 ID:5ERhuMAO
- 同日午前10時20分ごろ
清々しくカラリと晴れ、
まさに洗濯物日和となった午前のとある閑静な住宅街
加治木家の門前に壮年の男性2人が乗った警察の車両が止まった。
更なる通り魔についての情報を聴取するために
警察がよこしたのだった。
一応任意という形だが断れもせず
半ば強制といった感じだろう。
さらにこの通り魔に面と向かい会話まで交わしたのは加治木・八木の少年2人のみであるから
警察もこの2人から搾れるだけ
情報を搾りたいのであろう。
玄関先まで警察の車両で迎えにきたのは
通り魔が口封じに2人に危害を加える恐れがあるためである。
それにこの事件のために増員され
人員に余裕が出たからでもあろう。
事実、昨晩は家の前には警備員がいた。
車の中で刑事っぽい人が
テレビで1500人体制と言ってるが本当は800人ぐらいで、犯人を威圧するためだとか、
犯人に繋がる物がほとんどなく、捜査が進んでいないから君達が頼みの綱、
とかいろいろ話してくれた。
警察署に着くと入り口は報道陣でごった返していた。
その後ろには報道車両がわんさか停まってる。
刑事っぽいおじさんが、
入り口はまずいから地下から入ろうか。
と言って地下の駐車場から入ることになった。
- 653 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 00:13:43.11 ID:5ERhuMAO
- 細かいけど修正…
情報を搾りたいのであろう×
情報を搾りたいのである○
- 654 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 11:41:35.36 ID:5ERhuMAO
- 車から降りて中に入ると
おじさんに200円渡され、これで好きなもの飲んでていいから少し待っててくれんか。
と、待合室で待つように言われた。
待合室に入ると数人のスーツを着た人が椅子にもたれ掛かるように寝ていた。
おそらく深夜組の人達だろうか…。
そして紙コップ用と缶の自販機が数台置いてあり、
基本的にどれも100円であった。
一分ほど悩んだ末、サイダーとコーヒーにし
パイプ椅子に座り、熱いコーヒーを啜りながら音量を小さくしてテレビをつけた。
ピッ
「現在有狩警察署前から中継です。」
加治木(あっ…すぐ前だ…)
「事故現場では現在もブルーシートがかけられ、警察関係者が出入りし………献花台にはたくさんの故人を思わせるものが……」
もし殺されていたらあそこにも自分の写真が置かれていたかと思うと背筋がゾッとした。
「記者会見で発表された犯人の様相は身長170cm、黒のパーカーに黒のニット坊で痩せ形ということですが……心辺りのあるかたは下記の電話番号へご連絡ください」
ガチャッ
八木「あっ、カジ!」
加治木「…シーッ!」
八木「あ…ごめ…」
八木はすぐ隣に座るなり、
八木「またカジだけおごってもらってるじゃん…」
何も貰えなかったようだ。
加治木「じゃあこれまだ飲んでないからあげるよ」
しょうがないのでサイダーをあげた。
- 655 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 16:53:38.94 ID:5ERhuMAO
- 八木「昨日は眠れた?」
加治木「まぁね」
八木「そっか。俺なんて夜の12時まで起こられてて、しかも全然眠れなかったから…この通り…」
よくよくみると目の下にクマができてた。
さらによくみると昨日の服のままだ。
どうやらそのまま寝たらしい。
加治木「………」
八木「…どした?サイダー飲みたかった?」
加治木「…すごいよ……」
八木「何が?」
加治木「…ヤギがだよ」
八木「………どこが?」
八木には自覚がないようだ。
それが加治木の嫉妬心を少しばかり煽ることになった。
加治木「…あんな殺人鬼を追える勇気にだよ…」
八木は特に気にする素振りもせず、
八木「カジも追いかけたじゃん、それもすごいと思うよ。同じだって」
加治木「…全然同じじゃないよ。俺はヤギについていっただけ。立ち向かっていったのもヤギ。俺震えてただけだもん」
八木「………」
加治木「……こんな話するのも変だけどさ、俺達中学のとき差なんて無かったのにさ、どうしてこんなに違ってしまったんだろってたまに思うんだ」
差がなかったという辺りになにか変な自尊心が見え隠れするのに自分では気づいていた。
八木に対する嫉妬の表れなのかもしれない。
八木はメガネの位置を戻し、
八木「確かに…俺は里美に出会ってから変わったかもしれない。でもさカジも女が出来れば変われると思うよ」
加治木「……やっぱり?」
八木「うん」
- 656 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 20:53:28.04 ID:5ERhuMAO
- 加治木「……そっか…」
八木「俺だってさ、正直昨日の夜は怖くて怖くて眠れなかったんだよ。あの時はたまたま頭真っ白になってさ…うん…。だからあんまし自慢なんかできないよ」
ガチャッ
刑事さん「おう、じゃあちょっとこっちきてくれんかね」
八木・加治木「は、はい!」
温厚そうな刑事さんに連れられ
会議室みたいなところに通された。
好きな席に座るよう促され
席に着くと早速2人くらいの人がきて前の席に座った。
見るからに結構疲れているようだ。
「ごめんな、昼過ぎまでには終わるから」
トントン
北条「えっと、私がこの事件を担当してる北条と…こっちが武田ね。」
武田「よろしく」
軽く雑談したあと、すぐに本題に入った。
2時間くらい、犯人について覚えていることはないか、や
何か他に気づいたことはなかったかなど
ありとあらゆることを聞かれたが、
ほとんどは昨日と同じことだったので
そのまま同じことを答えた。
- 658
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/14(土)
21:29:20.40 ID:5ERhuMAO
- 北条「いやね、ほんとのところ全然犯人の目星がつかなくてねぇ。頼りは君達だけなんだ。もっと何か気づかなかったかい?」
八木「いえ、話したことが全部だと思います」
北条さんは白髪混じりの頭をかきながら、
北条「そうかい…いやー困った困った…。」
武田「これだけじゃ犯人を特定するのは不可能そうですね…。鑑識からも新情報が出てきてませんから…」
2人とも肩を落とし顔を落としてしまった。
何も有力な情報を提供できない自分達がなんだか申し訳なく思えてきた。
武田「君達の話では犯人はかなり危険な性格、かつ残忍、そして快楽で殺人を行うようだが」
加治木「はい…相当危ないやつでした…」
武田「こういうやからは必ずと言っていいほど殺人を繰り返すんだ。顔を見られたと勘違いした通り魔がもしかしたら君達を狙うかもしれないからね」
北条「事が収まるまで我々が警護に当たるから一応は安心してくれ。学校も我々が送迎するよ。それ以外は外出を極力控えてほしい」
八木「わ、わかりました」
北条「おっと、もうこんな時間か。腹減ったか?」
加治木「えぇまぁ…」
そう言うと、ポケットから紙を二枚取り出し、
北条「この食券で好きなもの食っていいぞ。下の食堂にいっておばちゃんにこれを渡せばいい」
八木「あ、ありがとうございます…」
北条「飯食い終わったら外にいる警察官に家に帰してくれって言えばいいからな、ガハハハ」
北条「武田、じゃ俺は仮眠とるからなんかあったら起こしてくれや」
武田「はい、わかりました」
背広を肩に掛けて北条さんは部屋からでていった。
- 659 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 21:55:11.11 ID:5ERhuMAO
- 武田「じゃ、私も失礼するよ」
ガタッ
八木「あ、あの、武田さん!」
八木が立ち上がって
いきなり今日一番と思われる大きな声を出した。
武田「なんだい?」
八木「どうして通り魔は真鍮高校の女子ばかりを狙うんですか」
武田さんは少し困った顔をしたあと、
武田「多分、真鍮高校の女子に何か怨みがあるんじゃないかな。バカにされたとか、過去に真鍮高校の女子のせいで何か被害を被ったとか。私達もその線を今洗っている最中さ」
武田「君達の話では、人違い、と犯人は言ったようだから、おそらくは個人への怨みの線が濃い可能性があるね。」
八木「もしそうなら、なんで無関係の人達を殺すんですか!?」
武田「……。君は正義感が強いみたいだね。私も様々な事件を見てきたよ。全く無関係の人が短絡的な犯人の動機によって殺されるのをね。」
八木「………」
武田「世の中にはそういうおかしな奴がいっぱいいるんだよ。だけど君達。正義を盾にした蛮勇っていうのは時として正義でもなんでもないんだ。命は一つしかないんだから、今度からはこれを肝に銘じて危ないことはするんじゃないよ」
そういうと、部屋を出て行った。
八木はなんだかおさまりが悪そうな顔をしている。
- 661
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/14(土)
22:24:31.25 ID:5ERhuMAO
- 加治木「…ヤギ、飯食いにいこ」
八木「……あぁ」
捜査本部が置かれているため
たくさんの人が行き交う警察署内を掻き分け
なんとか食堂に辿り着いた。
メニュー表を見回すと、有狩名物カレーおかゆなるものが。
怖いものみたさで2人ともこれにし
番号札を貰って空いてる席についた。
八木「………」
加治木「………大丈夫かよ」
八木「なぁ…カジ。なんか忘れてない?」
加治木「なにが?」
八木「……やっぱな。助けてくれた男のこと」
加治木「…あぁっ!!」
完全にまた忘れてた。いや、もはや忘れるとかそんなんじゃなく頭から消えていた。
加治木「一応あとで言いにいこうか?」
八木「無駄だよ。さっきの待合室まで覚えていて、しかもメモまで握ってたのに刑事さんが入ってきた瞬間から忘れてたんだ。今から言いに行ってもまた忘れるだけさ」
クシャクシャになった紙を机に出した。
加治木「………」
まさか…そんなことが…。
- 662 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/14(土) 22:59:49.81 ID:5ERhuMAO
- 八木「……やっぱ魔法か超能力だよ。俺達はその超科学にかかってるわけさ。すごいことだよ!」
さっきとは一転、八木の表情は明るくなっていた。
加治木「………魔法……」
加治木(魔法があれば櫻井唯ちゃんに、あんなことやこんなことを…)
八木「なににやけてるんだよ。まさか!、魔法でエロいこと考えてた?」
八木のこの勘の鋭さは一体なんなのだろうか。
「98番と99番の番号札でお待ちのかた~」
加治木「お、俺がとってくるよ!」
――――――――
県内某港
プルルルル…!ピッ
「もしもーし」
「久しぶりだね、龍造寺くん」
「…へぇー、しばらくお話ししないうちに日本語が上手になったね」
「フフッ日本語は言語の中で難とされているけどそんなに大したことはなかったよ」
「へぇー。それで、何の用かな」
「ちょっと日本に用があって今空港まで来てるんだけど、迎えにきてくんないかな」
「また革命ごっこの連中に武器の流しかい?」
「まーそんなところさ。で、順調かい?そっちは」
「今探してる最中だよ。でも探してる最中に結構面白そうな子を見つけてね、今どうしてやろうか考えてるとこ」
「あんましやる気が感じないなー、まぁいいや、迎えに着てね、じゃ」
ツーツー…
(はぁー、久々の接待かぁ…)
- 663 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/15(日) 00:11:44.07 ID:WoM/8wAO
- ―――――――
足戸町のある家 12時34分
「もうっ!すぐそこのコンビニに行ってくるだけって言ってるじゃん!」
「危ないんだから!言うこと聞きなさい!」
「五分で帰ってくるから!」
ガチャッ!タッタッタ…
「もう…!晩ご飯抜きにするんだからね!」
タッタッタ…
(そこら中に警察がいるんだから大丈夫!心配性なんだからお母さんは)
バッ!
「あ……っ」
「あれあれ~?外に出たらダメなんじゃなかったのかな~?悪い子だね~ギチギチ」
「た…たすけっ…や…!」
ザギッザクヅ!!
プシュュゥゥ!!
ドサァッ
「まーたハズレだよ、まっ、いいんだけどさ~ギチギチギチ…楽しいからね~」
「なーんか目的があったようななかったよーなぁ…まっいいか~、その内思い出すさ俺!頑張れ俺!」
―――――――――
- 664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/15(日) 00:48:50.92 ID:oV6ILaAo
- 支援。
つか、国公立まであと2週間だろうから、そっちがんばれww
- 665 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/15(日) 18:32:20.72 ID:WoM/8wAO
-
>>664
そうですね。控えめにします
- 666 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/17(火) 16:32:35.13 ID:JAWO/oAO
- 有狩警察署 食堂
モグモグ…カチャッ…
カレーおかゆなるものを無言で食べる2人。
一体この異色な組み合わせの食べ物について何を話せばいいのか
考えさせなくしてしまう食べ物だった。
やめとけばよかった、とは言えないし、そこまでまずくもない。特徴と言えばご飯部分にかかる謎のたまごふりかけである。
これを表現する言葉が浮かばない。
半分食べたところでやっとスプーンを置いた…。
加治木「…………」
八木「…………」
加治木「……まぁ……うん……いいんじゃない?」
八木「……誰だよ考案したやつ。ドロドロのものとネチャネチャのもの混ぜて何がしたかったんだよ。しかもなんだよこのふりかけ、なんか意味あんのかよ」
加治木「俺は…悪くはないと思うけどさ…。発想は悪くないけど何かを見失ってる感じはするなぁ…」
八木「不味くはないのが腹立つ…」
タダで食べさせてもらってるのもあって
ぶつくさ言いながら?2人とも残さず食べた。
食べ終わった後、どうせやることもないのでもう少し食堂にいることにした。
加治木「……さっきの話だけどさ、魔法はちょっと現実離れしすぎじゃない?もっと…こうさぁ…いつの間にか催眠術にかかったとかさぁ」
八木「そんな都合のいい催眠術なんてないよ」
加治木「でも一種の洗脳状態にすれば人に話すという行為をしようとすると話せなくしてしまうことができるらしいけど」
八木「じゃあなんで俺達では話せるんだ?それにそんな催眠をかける暇があったか?」
- 667 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/17(火) 18:50:38.89 ID:JAWO/oAO
- 確かに…。
催眠術にしてはあまりにも都合がよすぎる。
しかもあの状況で催眠をかけるならどうやって?
ならば通り魔が…?いや、あの男の行動からみてグルではない…。
やはり、魔法という答えが一番適当かもしれない
加治木「………」
八木「魔法にせよ催眠術にせよ、その男がなにか知ってるのは違いないよ。よし、俺達でその男を捜そうぜ!」
加治木「えっ…。ってか…ヤギなら犯人を捜そうって言うかと思った」
八木「ムリだよムリ!昨日の俺達思い出して見ろよ、全然勝ち目なかったじゃん。まだ死にたくないし」
八木はあの男になら勝てると思っているのだろうか
加治木「大体どうやって捜すんだよ。俺達当分軟禁状態だよ?」
八木「そんなの一日中見てるわけじゃないんだから隙をみて抜け出せばいいんだ。」
加治木「しかも捜すにしたってもし通り魔に見つかったらさ…」
八木「見つからないように行動すればいいんだ」
加治木(んなむちゃな…)
八木「…なんかさ、今この機会を逃すと一生出逢えないような気がするんだよ」
加治木「なにに?」
八木「この世界の常識を打ち破ってくれるようなものにさ」
加治木「憧れてんだっけヤギは。でもガキっぽすぎじゃない?」
八木「カジは夢がないよ」
確かに、現実的だとはたまに言われるけど…。
自分も男だから気持ちはわからないでもないが
あるかどうかも分からないものに命をかけるヤギにはさすがに共感できなかった。
- 668 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/17(火) 19:40:39.70 ID:JAWO/oAO
- 加治木「俺だって…少年の心ぐらい……ブツブツ…」
八木「じゃあ俺一人でやるよ」
八木はちょっと怒ったような声で言った。
こう突き放されるとしがみつきたくなる性格の加治木は
まんまと八木の計略にはまったのかもしれない。
だんだん心が傾いてきた。
八木は昔からこういう性格の加治木をうまいこと操っていたのだった。
おもむろに席を立つ八木
それを制止するように、
加治木「……ヤギさぁ」
八木「なんだよ」
加治木「その男の顔知ってんの?」
八木「あ…」
そこまでは考えていなかった。
どっちにしろ加治木が必要じゃないか。
加治木「俺がいないとダメじゃないか」
八木「…………」
加治木「しょーがないなーわかったよ、付き合うよ。でも通り魔に出くわしたらヤギを生け贄にするからな」
八木「…生け贄は困るよ…。よし、じゃあ早速街をうろついて…」
ガタンッ
その時食堂の入口のほうで誰かが駆け込んできて
「足戸町で通り魔発生!ガイシャが出てる!動けるものは至急現場に向かってくれ!!」
食堂は一気に騒然となった。
- 669 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/18(水) 00:04:30.07 ID:fmAzz.AO
- 「くそっ!またかっ!」
「周辺の封鎖はできてるんだろうな!」
「なにやってたんだ!巡回班は!」
そして…
一気に人が外に出て行った。
残ったのは加治木と八木だけである。
加治木「……ヤギ」
八木「………。多分やられたのはまた同じ高校のやつだろう」
加治木「………許せないよな」
許せない…それは当たり前だ。
ちょっと不自然な言葉である。
八木「………」
加治木「…とりあえずさ、どうやって帰ろうか?警察の人みんな忙しくなったみたいだし」
八木「歩いて帰ろう」
また何を言ってるんだ八木。
たった今通り魔があったばかりだぞ?
そのぶっ飛んだ答えに少し呆気にとられた。
八木「今俺達に構ってる暇なんてないだろ?しかも今あの辺りは厳戒体勢だろうから大丈夫でしょ」
この冷静沈着な八木に少し困惑した。
ふっ切れてしまったのだろうか
加治木「と、とりあえず受け付けの人に俺達が帰ること伝えておこうよ」
八木「あぁ」
- 670 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/18(水) 15:29:11.83 ID:fmAzz.AO
- ――――――――
かわって櫻井家―13:04
ヒュルルル…(飛んでる)
ナトリー「あら、お母さん出かけちゃったみたい」
唯「そうみたい」
キッチンの机の上にはお母さんお手製のミートスパゲティがハンカチをかけて置いてあった。
それをリビングに持って行き少し遅めの昼食をとった。
ナトリー「お母さんいないから気兼ねなく話せるわね。ん…?この変なものなぁに?」
唯「テレビのチャンネル。あれ?知らないの?」
ナトリー「うん。こういうものまでは知らなくってさ。で、テレビってなに?」
ナトリーがチャンネルに腰かけると、
ピッ
ナトリー「うわっ!」
昼ドラ「―うしてのりおさんに付きまとうの!?私知ってるわよ!あなたがのりおさんの子供を昔―(略)」
唯「今喋ってるあれがテレビ。そのリモコンで好きな番組を見られるの」
ナトリー「へぇー…テレビってなんかすごいこと言うのねぇ」
唯「昼ドラだからね…」
ピロリロリン!ピロリロリン!
ナトリー「あっ、なんか文字が出たぁ」
ナトリー「FLSニュース速報…?足戸町連続通り魔事件で五人目の被害者。刺された少女(17)は即死……」
唯「…!?」
- 671 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/18(水) 17:19:23.11 ID:fmAzz.AO
- ナトリー「なにこれ?」
唯「…………」
ナトリー「……。どうしたの?急に黙っちゃって?」
唯「また近くで人が殺されたみたい…」
ナトリー「……お知り合い?」
唯「さぁ、そこまではわかんないけど、知ってる人かも…」
近所で17歳の女性と言えば
唯には数人見当があった。
ナトリー「こっちの世の中も物騒ねぇ。真っ昼間から女の子が暴漢に襲われるなんて」
唯「……うん」
殺されたのがもしかしたら知り合いかと思うと
急に食べ物が喉を通らなくなってしまった。
当然と言えば当然かもしれない
昼ドラ「殺してやるぅ!殺してや…プツン」
ナトリー「………テレビって怖いわぁ……」
「えー、この時間はドラマ「七人の妻」の予定でしたが予定を変更いたしまして、足戸町連続通り魔事件についてお送りいたします」
ナトリー「えー」
- 672 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/18(水) 21:56:40.87 ID:fmAzz.AO
-
>>671
どうでもいい訂正
予定を変更×
番組内容を変更○
気づいたとこだけ訂正していきます
- 673 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/19(木) 00:11:51.02 ID:TPCL1kAO
- 「今日午後12:40分ごろ、足戸町南区の住宅地で足戸町に住む地元高校に通う17歳の女性が通り魔に襲われその場に駆けつけた警察官によって死亡が確認されました。」
ナトリー「……へぇー…こんなことまで喋るのかぁ」
「現場に残こされた凶器から一連の通り魔事件と同一犯とみて県警は捜査を進めています。これでこの連続通り魔事件の被害者数は5人にのぼり、戦後最悪の連続通り魔殺人事件となりました。」
「また、近隣にご在住の方の外出は極力控えるようお願いします。そして女性の方は特に独りで出歩くことはやめてください。繰り返しお伝えします。今日午後……」
ナトリー「…このテレビってのは、周りで起きたことを自動的に話してくれるの?」
唯「なんていうか…まぁそうなんだけど」
ナトリー「ふぅーん。話を聞いて察するに女の人が狙われてるのね?」
ナトリーは考える人のポーズになり
慌ただしく喋る人間が写っているテレビ画面を見つめながら言った。
唯「うん…。私と同い年くらいの女の子ばかり…」
ナトリー「なんだか臭うわね」
唯「何が?」
ナトリー「ちょっと気になることがあってね。この殺人鬼についてもっと情報はないの?」
情報といってもテレビはそんな詳しいことまで報じないし…
あっ、インターネットならなにかあるかもしれない!
唯「ま、待ってて。今ノートパソコン持ってくる」
ナトリー「ノート…パソコン?」
- 674 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/20(金) 12:35:43.72 ID:yDTjtQAO
- そう言うと、食べかけのミートスパゲティをラップしてキッチンへ持って行ったあと
すぐさま二階にいき、
タッタッタ…ガタンッ…ガタンッ
なかなか真新しいノートパソコンをもって戻ってきた。
カチッ…ビュィーン…
ナトリー「へぇー…これがノート、パソコンねぇ…何か書いてあるの?」
唯「そのノートじゃなくて…。多分ノートのように薄いからノートパソコンなんだと思うけど…。これでね、通り魔についての情報を色々と見ることができるの」
ナトリー「これでねー…ふーん…まさに文明の利器ね」
ナトリーは不思議そうに、この文明の利器を眺めた。
カチャカチャカチャ…
唯「足戸町連続通り魔事件……と」
唯「えっと…とりあえず詳しそうなとこは…これかな」
―足戸町連続通り魔事件
6月13日、足戸町商店街で地元高校に通う女子高生が帰宅途中に何者かに刺殺されたのを皮きりに
同月14日、有狩町の繁華街で女子高生2人が何者かに刺殺され
さらに逃走した犯人を追いかけた県内の大学に通う20代の男性も犯人に刺殺された。
また、一緒に犯人を追いかけた地元高校に通う男性2人は軽傷だけで済んだ。
一連の犯行が同一犯と断定したのは
犯行に使われた凶器がどれも
イタリアで製造されたサバイバルナイフであり
また、殺害方法が一貫して相手の頭部をナイフで突き刺して殺害するからである。
(追走した男性は胸部を刺された)
- 675 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/20(金) 18:19:35.58 ID:yDTjtQAO
- また15日にも犯行が行われ
地元高校に通う足戸町の女性が殺害された。(続報がはいりしだい追加)
憶測ではあるが、被害者の女性はいずれも真鍮高校に通う女子高生であり
犯人は真鍮高校に通う女子生徒に恨みを持つものの可能性が高い。
またとおりざまに頭蓋骨にナイフを突き立てられるほどの力から
犯人は相当な腕力をもつものと思われる。
だが犯行現場に犯人のものと思われる遺留品が全くなく
周辺の防犯カメラにも写っていないため
警察は犯人の特定に至っていない。
犯人の身体的特徴は
身長170から175cmの20代の男性
犯行当日黒のニット帽に黒のパーカーを着用し
灰色のズボンを履いていた。
痩せ型で言動から精神に異常があるものとみられる。
犯人に似ている人物を発見または聞いたときには
決して近づかず、最寄りの警察に通報してください。
唯「………どう?」
ナトリー「13日と言えばあなたがこの世界にきた日ね」
唯「つまり……」
ナトリー「もしかしたら、犯人の中身は例の怪物かもしれないわ」
唯「………と、という事は……私が…狙われてるってこと!?そんなっ!?」
ナトリー「推測でしかないけど、恐らくはあなたの顔を知らないわ。もし仮に知っているなら他の人を殺さなくて済むもの」
唯は複雑な気分になった。
ナトリー「多分知っているのは女性で、あなたぐらいの年齢ということだけかしら。これから判断するなら」
ナトリー「もしくは知っていたが記憶を失った。または曖昧になっている。それかあなたを知っていると仮定するなら、この行動からは快楽で殺人をしていると見れるわ、または探すうちに殺人に快感を覚え中毒になっているか…ね」
- 676 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/20(金) 18:50:45.96 ID:yDTjtQAO
- ナトリー「でもまだ卓上の空論よ、決まったわけじゃない。まぁどちらにせよ用心してあまり外に出ない方がいいわね」
唯「……うん。でももしそいつが怪物だったら…どうしたら…私殺されちゃうの…?」
黙って殺されるのも家に隠れてるのも唯には嫌だった。
平穏な日常の生活にいきなり現れた自分に向けられているかもしれない理不尽な死。
これは恐怖以外の何物でもない。
ナトリーは小さな腕を組み自信満々そうに
ナトリー「私が殺させないわよ。そのために来たんだから。」
唯「どうするの…?」
ナトリー「あなたを強くする」
唯「強く…?」
ナトリー「要するに、そこいらの殺人鬼なんかに負けないようにすること」
唯「…私格闘技なんかやったことないんだけど…」
ナトリー「だぁれが腕力で負かすなんて言ったのよ。魔法よ魔法!」
唯「魔法…」
ナトリー「そして最終的にはこの世界にきている魔族をその魔法で倒す!」
唯「………。……たっ倒すの!?」
ナトリー「もちろん、誰かが葬らなきゃ。あなたの力量ならたぶん倒せるはず!たぶんね」
唯(たぶん…)
ナトリー「まぁ35%くらいの確率だけど、その通り魔が魔族ね。違ったら違ったで捕まえればいいんだし」
- 677 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/20(金) 20:36:53.82 ID:yDTjtQAO
- 唯「………」
ナトリー「結局はあなたが、人間だろうと魔族だろうとそいつを倒せる力があればこれ以上の犠牲はなくせるわ。その力があなたには備わっているはず」
唯「……私が………」
魔法なんてものが存在し
それを自分が使えるなんて
昔の自分が聞いたら声をあげて喜ぶだろう。
ナトリー「でも…あなた自身が決めることよ。好きな方を選んでいいわ。もしかしたらあなたの人生を180度変えることになるかもしれないもの」
唯の中では答えはすでに決まっていた。
唯「私…やってみる」
ナトリー「後悔はしない?」
唯「うん!」
はっきりと答える唯の表情は真剣そのものであった。
ナトリー「じゃ…練習は明日からね」
唯「なんで?」
ナトリー「あなたはまだ微量の魔力しか有していないし、ある程度の魔力がないと練習するにも何もできないしね」
唯「そ…そうなんだ…」
ナトリー「それより、まずは相手が本当に魔族かどうかを少なからず確かめる必要があるわ。この、ノートパソコンにある軽傷で済んだ男2人。もしかしたらやつの顔を見ているかもしれない」
唯「顔?」
ナトリー「魔族と心魂が融和したら外皮や顔面になんらかの異常が出てくるはずなの。例えば目が真っ黒になったり鼻が伸びたり…ま、必ず何かしら異常があるはずよ。外面で判断するにはそれしかない」
唯「へぇー」
ナトリー「その子達が何かしら異常があったのを見たなら魔族である可能性は飛躍的にあがるわ。まずはこの2人に会ってみましょ」
唯「会うって…名前もわからないのに?」
- 678 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/21(土) 00:26:16.88 ID:Exl0W2AO
- ナトリー「心当たりはない?」
唯「うーん………」
ナトリー「わかった。とりあえず魔法の練習を優先していきましょ。あなたもできるだけ情報を探ってみて」
唯「わかった。……あのさぁ」
ナトリー「?」
唯「あなたって言う呼び方やめない?せっかく私が名前をつけたんだからナトリーも名前で呼んでよ」
ナトリー「そうねぇ…。いいコミュニケーションにはまず気軽に呼びあえるってのは必要かしら…。わかったわ、じゃあ唯ちゃんでいい?」
唯「ちゃんは…」
ナトリー「じゃ、唯さん」
唯「さんってなんか堅くない?」
ナトリー「唯殿」
唯「ふざけてない?」
ナトリー「アハハ、じゃあそっちが決めてよ」
唯「唯、でいいよ、もうっ」
ナトリー「それじゃ…唯、明日からがんばろうね」
唯「あ、うん…//」
ナトリー「でさ、このノートパソコンって言うの部屋に持っていける?」
唯「大丈夫だけど、何するの?」
ナトリー「ちょっと文明の利器とやらをこの手で触れたくて、ね」
唯「?」
こうして、祖龍子ナトリーの下で魔法の修行をすることになった唯。
果たして、先に警察が通り魔を捕まえるのか
唯が先に捕まえるのか…どちらであるかはまだわからない…。
だが、いずれにせよ、被害者は出続けている。
- 679 : ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/21(土)
11:48:36.01 ID:Exl0W2AO
- 世界観がむちゃくちゃでかくなってきた~(^o^)
広げた風呂敷畳めるのかこれ~
何章で終わるんだろか~
果てしないわ~
まだ群雄割拠ぐあいも出してないに~
ある程度テーマ性を持ちたいんだが
思ってたより結構難しいのね、これ
- 680
:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 12:27:28.93 ID:4oFAnl.0
- どうやって最初に繋げるのかwktkしてる自分がいる
時期が時期だから余計にこんがらがりやすいのかもよ
- 681
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/21(土)
14:05:26.13 ID:Exl0W2AO
-
>>680
こんがらがる、と言うより
あれもこれもとやりたいことがありすぎて
最終的にきちんと風呂敷を畳めるのか?
っていう不安がありまして…
もちろん、話や設定に矛盾が生じないようにするのに
頭こんがらがってますが…
- 682 : ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/22(日)
01:15:28.05 ID:ygppywAO
- ━━━━━━━━┓
目をおおってしまうような残酷な殺人事件が起こった町の空は
皮肉にも雲一つなく、
まさに初夏を思わせるようなものであった。
警察署を出た2人は、
事件のあった有狩町の商店街を通って家路につくことにした。
八木の予想通り、道にはパトカーが何台も止まり
テレビ局、野次馬、背広を着た人が何人もブルーシートのかかった事件現場に群がっていた。
しかし八木曰わく、足戸町で再び事件が起こったため
残っているのは昨日の四分の一にも満たないという。
警察の検問を通り
有狩商店街を抜けた。
確かに、そこら中で屈強そうな警察官が三人行動でパトロールしている。
まさに蟻の這い出る、這い回る隙はない。
そして、
足戸町商店街に差し掛かったとき…
加治木「あ……!」
加治木の目線の先は町の小さなおもちゃ屋だった。
八木「カジ、どした?」
加治木「今あの中に入っていったの…」
八木「誰?知り合い?」
加治木「あの男だ!」
八木「!?」
加治木「あの後ろ姿…多分間違いない!俺に話しかけてきた男だ!」
そのおもちゃ屋はメルヘンという店名で
加治木が産まれる前からここで営業している。
店頭のガラスケースには子供の好奇心をくすぐるようなプラレールの模型が組み上げられ
幼少の加治木はこの模型を見たいがためによくここを通っていた。
現在は、幼児用玩具からゲーム機まで幅広く取り揃えている。
- 683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/22(日) 01:15:51.98 ID:yxgp9jA0
-
>>681
畳めない風呂敷がないように
やりたいこと一つずつでも盛り込んでいってたらいつかは必ず終わらせれるから
気にせずじゃんじゃん書いていけばいいと思うよ
読んでるこっちとしては新しいことがわんさか出てきてwktkが止まらないんだからw
- 684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/22(日) 02:18:43.74 ID:qyPUpdYo
-
>>679
まぁ、すえながくよみますよ~。
だがいまはべんきょうしろww
- 685 : ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/22(日)
22:30:38.25 ID:ygppywAO
-
>>683-684
ありがとう。
応援してくださるのはとても嬉しいです。
と、言うわけで勉強もせにゃならんので
あんま更新できませんが
以前に書いた、アトム全土の地図があるので晒します。
国境線が引かれてませんが
また今度、引かれているものを晒しますので…
お待ちのほどをば
http://imepita.jp/20090222/794400
赤い点がその国の王都または支配者の居城であります。
全土でだいたいアフリカ大陸ぐらいの大きさでしょうか
世界観は無駄におっきくしたほうがやりやすいので…ね
- 686 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/23(月) 23:11:40.01 ID:TI3k3sAO
- スラリとした体型と黒が混じった茶髪…ほぼ間違いない。
しかし、こんなに簡単に見つけてしまうとは思いもよらなかった。
ましてやまだこの近辺にいたなどと。
とりあえず何をしているのか、ガラスケースから見つからないように店内を覗きこむことにした。
男はカウンターにいる髭を生やした店長らしき人と話しているようだ。
「すいません、ラドンクエスト8って置いてありますか?」
店長「あー、ラドンクエスト8ね。実は発売日延期しちゃったんだよ。発売日未定になってるからいつ店頭に並ぶかはわかんないんだ、ごめんね」
「そうですか…」
「じゃあ何か他に面白そうなロールプレイングゲームってないですか」
店長「うーん…そうだね、今売れてるのはこれなんだけど…」
だいたい五分くらい店長と話し込んだあと、やっと会計までいった。
八木「何買ってるんだろう…」
加治木「ロールプレイングゲームって聞こえた」
八木「へぇー…ロープレ買うのかぁ…へぇー…」
八木は男の一挙一動をとても興味深そうに見つめていた。
男が会計を済まし店から出てくると2人は近くの物陰に隠れ男の様子を窺った。
端から見て怪しい2人が警察に職務質問をされなかったのは奇跡といっていいだろう。
男は大通りの方へ向かっていった。
- 687 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/24(火) 21:19:51.69 ID:D/8HwoAO
- 八木「カジ、どうする?」
加治木「どうするって…どうしようか?」
八木「俺は後をつけるよ」
加治木「だ、大丈夫かよ!?」
八木「もちろん。ここで逃したらもう見つかんないかもしれないしな」
八木「それにしても…、カジの言うとおり格好良さそうな奴だな。あれは結構モテるタイプだろうなぁ」
加治木(………)
そして、後をつけはじめて五分ほど経つと、
男が大通りに入る直前に家と家の小さな道に入っていくのが見えた。
2人もそれに続き、さらに後をつけてゆくと少し古い家屋が立ち並ぶ住宅街にポツンと広がる
小さな駐車場に出た。
車が五台止まれるほどの小さな駐車場である。
両側には古めかしい木造のアパートがまるで駐車場を覆うように建っていて、
そのためか晴天にも関わらず少し薄暗かった。
2人が駐車場に出たとき、前を歩いていた男はいなかった。
八木「しまった!まかれた!」
加治木「…あの時点でバレてたかもね」
あの時点とは大通りではなく住宅街に入っていったときである。
八木「はぁ…せっかく何かすごいことがわかるかと思ったのに…」
八木は肩を落とし見るからに落胆を表情に表していた。
加治木「そう落ち込むなって。やっぱり相手も―」
「すごいことってなんだい?」
2人の後ろから声がした。
それは言うまでもなく…。
追っていた男の声だ
- 689
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/24(火)
22:44:09.77 ID:D/8HwoAO
- 八木「う、うわぁぁぁっ!!」
加治木「うぁっ…ぁ…!」
あまりに驚いたため
2人とも腰を抜かし真新しいコンクリートの上に尻餅をついた。
「酷いなぁ…。僕に用があるのは君達のほうだろ?でも…フフッ、あんな分かりやすく後つけられたのは君達が初めてだよ」
その男は稀にみる爽やかな笑顔で座り込む2人を見て、穏やかな口調で言った。
その包み込まれるような雰囲気に2人の警戒の紐は意図せずに緩み始め、
緊張の糸も緩んだのか顔がにやけてきた。
「さっ、立って」
すると、脚に力が急に入り
すくっとすぐに立ち上がることができた。
八木「あ…あの…あなたは…」
「今日はあんまり時間がないんだ。わざわざつけてもらって悪いんだけど質問はそれぞれ一つまでにしてもらえないかな?」
なんなのだろう、この余裕は。
つけられたことに怒るどころか
笑顔で、2人の質問に答えるというのだ。
2人は全くの予想外な事態に困惑し顔を見合わせた。
相手が時間がないのに質問を受けると言うのだから、
2人は急いで頭を張り巡らして疑問を探し始めた。
「ギブアンドテイク、もちろん僕も君達に質問をする」
これもまた意外であった。
そして優しい抑揚で、
「君達の名前はなんて言うんだい?僕は龍造寺銀(しろかね)(藤原頼道みたいな抑揚)。フフッ、変な名前でしょ」
龍造寺「それで君達は?」
八木「……八木拓哉……」
加治木「……加治木諒輔」
龍造寺「よろしく、八木くんに加治木くん」
全く相手の意図が掴めないでいた。
しかし、その龍造寺銀と名乗る者の包容力のある声に2人は主導権を完全に握られ
相手のペースにはまっていた。
- 691
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/25(水)
18:47:58.84 ID:w1JFSYAO
- 受験は一通り終わったので
やっとこちらに注力できます
応援して下さった方々ありがとうございました
- 692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 19:34:14.30 ID:.Dz.q2so
- お疲れ様
良い結果が出るといいな
- 693
: ◆DlyW/sibQ[sage saga]:2009/02/26(木)
00:42:46.51 ID:PjT0JwAO
- 龍造寺「さっ、人と待ち合わせてるんだからさ、早くしてよ」
と、急いでる動作をして、白いシャツから覗く高級そうな腕時計を見ながら言った。
何故か2人の中に急がなかればならないという気持ちが生じ、
(相手の雰囲気がそうさせたのか)
焦った加治木が珍しい八木より先に喋った。
いきなりの展開に加治木の頭は整理しきれなかったのだろう
もっと重要なことがあるはずなのに
自分の頭の奥底に沈んでいた最も単純で純粋な疑問を言った。
加治木「…ど、どうして櫻井唯って娘を捜してるんですか!?」
八木(カジっ…!?えっ…それっ!?)
フッ
一瞬あの笑顔が消えた。
そしてすぐに元の笑顔に戻ると、
龍造寺「ふぅん…、うーん…まぁ簡単に言えば、必要だからかな」
加治木「…必要って…どういうことですか?何に必要なんですか!?」
龍造寺「…それは答えられないな。もし答えても君はそれを知ってどうするんだい?君はその娘を知らないのはずなのに。それとも…知っているのかな?」
加治木「…い…いえ…」
知っているとは言えるはずもない。
相手の言うとおり、この質問は自分が櫻井唯を知っているから聞いたのだと取られるだろう。
それに気づけるほど加治木の頭は回っていなかった。
だが何も言わずニコリと微笑み、
龍造寺「それなら聞かないほうがいいよ。じゃ次ね」
と言うと、八木の方に顔を向けた。
固まっていた八木は溜まったものを吐き出すかのように、
八木「あなたは超能力者ですか?…それとも魔法使いなんですか?」
龍造寺「え?」
加治木(…えっ!?)
八木「だって僕達が誰にも龍造寺さんのことが言えなくなったり、通り魔が事件を起こすことを予知したり、通り魔に襲われたときだってナイフが何もないのに飛んでいったり…」
八木「普通の人間にはできないことをあなたはやったってことは、あなたは何か超越した能力を持っているってことじゃないんですか!?」
一瞬場が静まり返った。
- 694 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/26(木) 09:00:30.10 ID:PjT0JwAO
- 珍しい×
珍しく○
- 695 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/26(木) 13:22:17.35 ID:PjT0JwAO
- 龍造寺「…………」
龍造寺「ふっ…あははっ」
八木「………」
龍造寺「何を言い出すかと思えば、ふふっ、僕が魔法使い?超能力者?」
いきなり笑いだした相手に対して八木はただ真剣な表情で相手を見ていた。
龍造寺「まさか、そんなストレートに聞いてくるなんて、正直思いもしなかったよ。君達は純粋なんだね。うん、やっぱり気に入ったよ」
八木「………?」
龍造寺「おっと、もう時間だね。…超能力者か、魔法使いか…それは君達の目で判断するといい」
そう言うと、左手の人差し指と親指で輪っかを作り顔の位置までもってきて、
龍造寺「また会うことがあれば…、そうだね、また質問に答えてあげるよ。じゃあね」
ブシュー!!
輪っかの中に男が息を吹くと
穴から青い煙が勢いよく吹き出して
あっという間に男を包み込み
次の瞬間には男はそこにはいなかった。
あっけにとられた2人はただ呆然と立ち尽くし
消えゆく煙をただ眺めるだけであった。
加治木「…………」
八木「…………」
八木「なぁ……カジ」
加治木「……ん?」
八木「奇術師っていう選択肢もでてきた」
加治木「…え?」
八木「……いや…なんもない」
加治木「……どうする?」
八木「……とりあえず俺んちに行くか?近いし」
加治木「通り魔は?」
八木「大丈夫だろ」
加治木「そうだな」
2人は終始無言で来た道を戻ることにした。
- 696 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/26(木) 20:49:56.27 ID:PjT0JwAO
- (物陰)
龍造寺(ふぅ…さすがに瞬間移動はできないから、煙に巻くぐらいしかできないけど…)
龍造寺(それにしても……、右側の彼はもしかしたらもっと仲良くなれるかもね、フフッ…楽しみ)
━━━━━━━━━
少し時間を進める。
―緑青空港
ツカツカ…
龍造寺(………)
龍造寺銀は空港で待ち合わせている人を探していた。
国際便が多いこの空港は、多種多様な人間がせわしなく行き交い
人を見つけるのには苦労するかと思われていた、が
目のいい龍造寺はすぐに待合い席に座る目的の人を見つけた。
どうやら携帯ゲーム機で遊んでいるようである。
龍造寺「やっ」
その人物は龍造寺の顔もみずにゲームに没頭していた。
「…遅いぞ。あんまり遅いからさっき買ったゲームがもうラスボスまで行っちゃったじゃないか」
龍造寺「ごめんごめん、ちょっとした用事があってさ。お詫びに、これ買ってきたんだ」
「ラドクエか?」
初めて顔をあげ、龍造寺の顔を見上げた。
龍造寺「ラドクエ8は延期だってさ。代わりにこれで我慢してよ」
「ふぅーん…龍造寺くんのおみあげだし、ありがたくやらせてもらうよ」
龍造寺「じゃさ、車用意してあるから、とりあえず外に出ようよ」
「うん、わかった」
2人は歩きながら話をした。
スタスタ…
龍造寺「しばらく見ないうちに…うん、なんかかわいらしくなったね」
「そうか?世辞であれ本音であれ正直なところあまり嬉しくはないな」
かわいらしいと言ったのは服装ではなく、顔を見てだ。
化粧はしていないがこの人物は誰がどうみても女性のような顔立ちであり、女性の声だった。
しかし、毛糸の帽子で髪を隠し少年のような男装をしているため端から見れば男子に見えるであろう。
何故そんなことをしているのか?
龍造寺「ふふっ…体は正直なんだね」
「一年振りに再会したのにまたからかうのかい君は」
- 697 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/26(木) 22:46:50.59 ID:PjT0JwAO
- 龍造寺「ごめんごめん」
龍造寺「それよりあのしかめっ面のボディーガードはどうしたんだい?クビにしたの?」
「いや、今日は僕はプライベートってことにしてあるし彼等にも休暇をやったんだ。ま、実際はうまいこと逃げたんだけどね」
龍造寺「へぇ、でも一国の宰相の息子がいくら日本の治安がいいからって単身で来るのはまずいんじゃないかい」
「構わないよ、身分証やパスポートなんて簡単に偽造できるし。何より、僕らを相手にできる奴がこの世界にいるかな?」
龍造寺「いないね」
「だから大丈夫さ」
正面出入り口をくぐり外へ出ると、
入り口の正面にそびえ立つ前衛的すぎるおかしな時計台は16時20分を指していた。
龍造寺「あっちの方に車用意してあるから」
「一国の宰相の家族を送迎するのだからそれなりの車だよね」
龍造寺「もちろん。でも運賃は君の国もちで…ね。借りるのも君の国の名前使ったし」
「そんなことだろうと思ったよ」
龍造寺「フフッ、僕の財布じゃ無理だからね」
出た場所から三分ほど歩いた道路脇に
黒光りしたリムジンが停車して
車の隣には運転手が扉を開き2人が来るのを待っていた。
- 698
:1
◆DlyW/s8ibQ[sage saga]:2009/02/27(金)
00:51:46.51 ID:.MXQVIAO
- ガチャッ
「有狩ロイヤルホテルへ」
運転手「かしこまりました、ここからでしたらお時間30分ほどになります」
龍造寺「はい、お願いします」
「さて、と」
車に乗り込むなり、カバンからゲーム機を取り出し車内に付属しているモニターに接続してゲームをし始めた。
カチカチ…
「今すんごい強いボスが現れてさー、すんごい苦戦してるんだよねー。もう五回目の挑戦なんだ」
龍造寺「へぇ~、君をそんなに手こずらせるなんて結構難しいんだ?」
「ん、まぁね。でも簡単に進められてしまうのもなんか興醒めじゃない?僕は困難な道を乗り越えるのが好きだからさ~」
カチカチ…バン!バン!ピロリロリ~
龍造寺(相変わらずゲームが好きだな~……)
「…あの女だけど」
龍造寺「…」
「今は探さなくてもいいよ、当面は適当に泳がしておく。こっちの世界に来ているのは確かだし、焦ることもないさ」
龍造寺「わかった。でもいずれは…でしょ?」
カチカチ…カチカチ…ズバーン!エレメンタルフォース!
「……僕達の新しい世界に必要だから、もちろん…ね。あっ、くそぉ、回復追いつかないや」
龍造寺「フフッ、楽しみだねぇ。」
パキューン!パキューン!
龍造寺「そういえば、ニュース見た?」
「うん、飛行機の中で。通りで街中にポリスが多いわけだ」
龍造寺「あの犯人…モンスターだよ」
「………モンスター狩りは勇者に任せるよ。魔王は勇者が現れるのを待ってるんだからさ」
- 699 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/27(金) 11:20:47.03 ID:.MXQVIAO
- 龍造寺「フフッ、勇者なんか本当に現れるのかな」
「現れるさ。そして魔王を倒しにくるよ」
龍造寺「君倒されるの?」
「僕も黙ってやられるつもりもないけどさ。でも…倒されてしまうなら僕は黙ってそれを受け入れるつもり」
龍造寺「はてさて…主人公はどっちなんだろうね」
「それは、より楽しんだほうさ。自分を楽しめた方が主人公」
ピコピコ、パキューン
龍造寺「そういえば勇者の素質がありそうな子をみたよ」
「へぇ~。でも最初のステージでやられなきゃいいね。最初のボスにやられてたら僕もつまんないし」
龍造寺「一回GAMEOVERになりかけてて僕が救ったんだけどね」
「ふぅーん、ま、最初のプレイにはよくあることだよ。僕も救済キャラがいなかったら―」
龍造寺「それで、僕はこれからどうすればいいかな?」
「君の部屋はもう取ってあるから数日は僕と行動を共にしてよ。それからまた何をするか決めるからさ」
龍造寺「おーけぃ」
バーン!チャラララ~
「うあ゙ぁ~またやられた~!!もうっ!今の装備じゃ無理だよこれ!」
- 700 :1 ◆DlyW/s8ibQ[sage
saga]:2009/02/27(金) 20:55:41.93 ID:.MXQVIAO
- 一呼吸ついて腕と脚を伸縮し
コントローラーを床に投げて
手元のボタンを押して窓を全開に開けた。
車窓からはビルが立ち並ぶビジネス街が見え
スーツ姿の人々が右往左往とせわしなく歩いている。
それはいわば蟻の行列のよう
行き交う人々を冷たい眼で見つめ、呟くように、空に言うように、言った。
「三年前にここに留学しにきてから思ってたよ。少しも変わらない。いや、むしろ悪くなっているかもしれないね」
龍造寺は、なにが?とわざと問うた。
「見てみなよ、外にいる奴らはみんな目が死んでいる。まるで意思をもたない脱け殻が操られて動いているみたいだよ」
「ただ毎日同じことの繰り返しで嫌にならないのかな」
その言葉には侮蔑も含まれていた。
「人間の知性の根源でもある、冒険心や好奇心はどこにいったんだろう。この下らない社会構造の歯車の人生を全うして果たして彼等は何が残る?子孫?そんなもの猿だって残せる。結局は欲を満たす金や女を貪るだけ貪り、死ぬんだ。ほんとにそんなもので満足なのか?」
「宝とも言える子供の頃に持ち得た冒険心新しい物に対する感動は、周りを見渡せる身長と情報社会が掻き消してしまった。文明が追求した人類のための快適さは同時に人間の大切な部分を削ぎ落としたんだ。これは変えなきゃいけないよね」
龍造寺「あぁ、もちろん」
「ありとあらゆるところを見渡せるこの世界においては冒険という言葉は死語かもしれない。もはや宇宙や海底や密林の奥地にしかこの言葉が通用しないかもしれない。」
「初めて、歩いて知らない場所にきたときの高揚感。信頼できる仲間とともに目標を達成したときの達成感…。他社とは違う大きな力を手に入れた時の優越感。僕は彼等にもう一度その純粋な気持ちを思い出してほしい。そして冒険してほしい…、あわよくば自分の限界を知って潔く死んでほしい」
「そのためなら僕は魔王になるよ、どんな汚い手も使う、どんなひどいことだってする」
龍造寺「彼等は変わってくれるかな」
「大丈夫さ、みんな主人公になることを望んでるんだ。こんな宗教と欲と金で凝り固まった醜い世界なんかすぐに忘れるさ」
「そう…この世界を剣と魔法のファンタジー世界を作り変える。失った冒険心、好奇心を取り戻してもらう!」
最終更新:2009年09月23日 16:25