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儚くたゆたう世界を キミの手で守ったから
今はただ 翼をたたんで ゆっくり眠りなさい
永遠の安らぎに 包まれて love flew on eternity
優しく見守る私のこの手で眠りなさい
笑ってた 泣いてた 怒ってた キミの事覚えている
忘れない いつまでも 決して until my life is exhausted
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何かが違うと、少女は思った。
学園での生活に、不足や不満を覚えた事はなかった。
フランスから留学にやってきた、名家の令嬢である。太陽王として後世に語り継がれ、世界史に於いてその名を正しく太陽か、綺羅星かの如くに輝かせる大王・ルイ14世の統治時代から続く大商家。
これを母体とする巨大な株式会社のCEOの、末娘。それが、彼女の素性であった。
生まれに貴賤のあるなしかはさておいて、血筋、と言う面で言えば紛れもなく彼女は最上位の血統にあたるであろう。金銭もコネも、唸る程存在する。
勿論、学園と言う閉じた世界に於いて、これ程の少女が目立たない筈もない。その扱いは専ら、麗しい羽の胡蝶、高嶺の花、一粒の美しい宝石。それに等しい。
優婉な容姿の持ち主でもあった。煮溶かした純金を糸状に誂えたような、美しく照り輝く金髪に、エメラルドの様だと言う王道の表現がこれ以上となく相応しい緑の目。
加えてその可憐な顔つきと、女性的な曲線美と丸みを帯びた、身体つきである。大衆の中に紛れ込ませたとしても埋もれる事無く、その存在を彼女は主張出来るであろう。
飾らぬ言葉で言うのであれば、可愛らしい、と言うべきか。それだけでなく、声もまた、鈴を転がしてみせたかのように透明感のある綺麗なのだ。
笑みもまた、魅力的だった。屈託がなく、邪気もない。弾けるような明るい笑顔は、一目で、ああこの少女は善性の塊のような、優しい性格なのだろうな、と誰しもに納得させる魔力があった。
異性からの評価が、頗る良いのは言うまでもない。凡そ、この学園の中で、彼女の事を悪し様に言う男は、学生は勿論、教師ですら存在しない。
同性からも、同じ評価だった。あの娘可愛いからって、仕草や声が、男に媚びている。猫を被って、ぶりっ子ぶっているのが、イラつく。その様な評価が、まるでない。
男の心理は男が一番良く分かるように、女の心理をよく理解するのもまた女である。仕草や声の調子でコロリと男は騙せても、同じ性別の人間は、騙せないのである。
だから、皆、良く分かる。彼女の所作や声は、素のもの。天来より授かった自前のサガ。彼女の普段の行いには打算もなければ裏もない事を知っているのである。
自分でテリトリーを築こうと言う意思なく、勝手に居場所が作られて行く。そしてそれを誇る様子も、彼女にはない。こんなもの、嫉妬するだけ無駄である。
余人には、僻みにしか見えなかろう。そして、そんな人物にすら、彼女は優しいのであるから、彼女を嫌おうと言う人物からすればもうお手上げである。こんな事をされれば、好かざるを、得ないじゃないか。好いてしまうのが、人のサガであろう。
誰が言ったか、彼女を指してマドンナと称した。女神みたいだね、と誰かが言った。
言い過ぎだよと彼女は笑ったが、そこで、変な違和感を感じた。今見たいなやり取りではないが、そんなことを昔、言われた事がある。
誰もいない、黄昏の浜辺。踏んでも痛くない柔らかい砂の上を、白くて薄いドレスを着た自分が、聞いた事もないし、歌った事もない歌を口ずさんでいる。そんな記憶が、瞼の裏をチラついた。
その浜辺はいつも荒れる事無く、つねに、さざ波を波打ち際まで運んできた。同じ波は二度とこないし、繰り返さない。そうと言ったのは誰だったのか。
確かにそうかもしれないが、送られてくる波は何時だって、優しくも小さく、そして弱い勢いの波だった。彼女がその浜辺を去ってしまったとしても、永劫。
そんな気怠い波が緩やかに起こり続けるだけの浜辺であったことだろう。沖を遊弋する船もなく、空を舞うカモメもウミネコもまたない。
思えば、ヤドカリも小カニの類も、見た事がなかった。もっと言えば、沖の向こうに広がる水平線の先に、何があるのかすらも、気に留めた事がなかった。それを当たり前の物だと、認識していた。
――貴女に恋をした――
……彼女が、黄金色の朝焼けが美しい浜辺に立ち尽くしていた時代において、その始まり、原初と呼べるまでに遡れる最初の記憶。
その瞬間に近い時に、そんな事を言ってやって来た男(ひと)が、いたっけ。擦り切れたような黒いローブのような物を身に着けた、
子供の頃に聞かされた童話に出て来る胡散臭いペテン師だとか詐欺師を思わせる語り口でしかし、話しかけた言葉は余りにも直截で、飾る気も何もない、真っ直ぐなプロポーズ。
人生でそんな事を言われたのは初めてだったから、その男を疑うよりも先に驚いてしまった事も、覚えている。
口を閉じれば、死んでしまうんじゃないかと思う程に、
良く喋る男だった。自分が話すだけ話して、中々本題に入らない。勿体ぶって話す人だと、初めの数分言葉を交わすだけで解ってしまう程であった。
その上、使う表現も、何処か、オーバー、大きすぎるきらいがあった。初めて聞いた時は、何処かおかしかったものだ。私の事を、『女神』だなんて――――――――――。
封じられた記憶の蓋が、一気に開放された。
何時までも懐に抱いていたい、懐かしくて愛らしい既視感が、一気に身体に叩き込まれる。
それまで他愛のない話をしていた、同じクラスの女友達達に目もくれず、彼女は走り出す。学園の福利厚生の一環。学生や教職員、用務員達に開放されている大食堂での話だった。
まだウェハースやコーンフレーク、アイス部分を大量に残したジャンボパフェをテーブルに放置し、急いで席を立って食堂から去って行く彼女の姿を、直前まで一緒だった女友達はキョトンとした表情で見つめていた。
階段を一足飛びに駆け上がって行きながら、彼女は屋上を目指していた。すれ違う生徒や教師が驚いて彼女を見ていた。学園では、落ち着いた娘として通っているからだ。
昔、大好きな人と一緒に、学校の話をした事を思い出す。歳の近い人たちと一緒に、同じ部屋で同じ事を学び、お昼の時にはそれぞれ違うご飯を食べて、思い思いの事を話して。
そして時間が来たら、外で遊んだり、同じ部活で汗を流したり……。そんな事が出来る世界がある事を、彼女は知らなかった。其処で、時間を過ごしてみたいと心から思った。
――その夢は、叶った。この土地に、彼女の知る大切な人間が誰もいない、と言う形でだが。
屋上の扉を勢いよく開け放つ。
いつかの時に話していたみたいに、大事な友達が、其処に集まっていてほしかった。
明るくて優しい香純が一人で盛り上がって、それを司狼がペットの機嫌でも直してやるみたいに窘めてて……。
そんな様子を一歩引いたところから、玲愛と螢、別の学校の筈なのになぜか混ざっているエリーが、めいめいの反応を見せつけて。
そして、そんな有り触れた、何処を切り取っても平凡な毎日に、楽しんでいるのか楽しんでいないのかと言う微笑みを浮かべ、身を委ねる、大事な人。胸に空いた穴を埋めてくれる、大切な――
「レン!!」
叫びながら開け放った先には、寝転がる青年が一人だけ。
雲一つない青空を眺めながら微睡んでいたその男は、昼休みのひと時を此処で眠って過ごしている……と言う訳ではないらしかった。
そもそも、纏っている制服が、全然違うのであるから。この学園の生徒ではない事は明白。
……そして何よりも、その青年を見た瞬間、情報の奔流が、爆発して行く。知らない筈なのに、知っている。まさに既知感の奔騰そのもの。クラスは、『セイヴァー』、その真名(な)を……。
「人違いだよ」
ゆっくりと起き上がって、少し眠たげな眼で此方を見ながら、青年は気だるげな声音でそう言った。
――これが、『マリィ』と呼ばれる少女と、『有里湊』と呼ばれる少年の、出会いの一幕であった。
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マリィにとって大切な人であるところの、藤井蓮に似ている。そんな青年だった。
年のころは、ドンピシャだろう。背格好も、近い。顔つきは勿論全然違うのだけれど、中性的と言うか、ともすれば女形に近い顔立ちと言う点では、蓮と同様の特徴と言うべきか。
何処か、超然とした雰囲気の男の子だな、とマリィは思った。達観している、老成している、とも言い換えられよう。
斜に構えているだとか、諦観だとか、否定からかかるような皮肉気な態度だとか、そう言うのとは違う。例えて言うのならそう、カリスマ、とも言うべき雰囲気である。
大人しそうな外見とは裏腹に、強い意思のようなものが、内奥から発散されているのである。宛らそれは、樹齢数千を超える大樹。神霊ですらが宿りそうな程の、巨大な神木が人の形をとっているかのような男子である。
「ウワキしてそう」
「え、なんで」
マリィの口から飛び出た、名誉の毀損そのものみたいな発言に、湊は困惑する。場所をベンチに移していた。
「その顔の良さで、女の子をその気にさせる事を言ったりしたら、メっ、何だからね? 言ってないよね?」
「…………………………」
無言で湊は両の手で握り拳を作りだし、一本づつ、その状態で指を立てていく。
「ゆかりだろ、美鶴先輩だろ、風花だろ、アイギスだろ、エリザベスさん……」。小声でつぶやく言葉の意味をマリィが理解した瞬間、胸ポケットに入れていたボールペンを取り出して、それで湊のこめかみを小突いた。
「痛ッ」
ペン先は出してなかったものの、マリィは勢いをつけていた為か。かなり痛かった。こめかみを抑える湊。
「浮気する人は、抱きしめてあげません」
「……ハグ魔?」
向こうの国では久方ぶりの再会の時に、抱きしめ合ったり、何ならば、軽い接吻(ベーゼ)すら交わすと言うが、その類なのだろうかと、湊は考えた。
「いや、まぁ……僕も、いつも通りの日常が続いてたんだったら、付き合ってた女の子達に謝ったり、殴られたりもしたんだろうけどね……」
「むっ、責任逃れは更にマイナス5ポイントだよ」
「責任……逃れ、ね」
困ったような苦笑を浮かべ、湊は空を見上げた。ああ、蒼い。卒業式の時に、月光館学園の屋上で見上げた時と同じような、蒼い蒼い、空。
「特別なんだろ、何とかしろよ。そう言われた事もあったっけか」
「? セイヴァーの、特別?」
そもそもサーヴァントになる時点で、特別な存在であろうし、湊はそのサーヴァントの中でも更に特別な存在に宛がわれる、エクストラクラス。
セイヴァーの号を与えられている人物だ。今更、湊自身が言うまでもなく、特別な存在であろう事は、論を俟たないであろう。
「別に、自分で自分の事を特別とも、別格とも思った事もないんだけどね。人よりもちょっとだけ、出来るようになる速度が早いだけ、位の感覚だよ」
ふぅ、と一息吐いてから、更に言葉を続ける。
「少し出来る人間なりの、役割を全うした。それだけの事なんだけど。そのせいで、友達とも久しく遊べてないし、女の子達に責任を取る事も出来ないし、殴られも蹴られたりも、してないんだなぁ」
まだ、高校も卒業していない年齢だった。
世話になった先輩たちが、一足先に学園から羽ばたくのを見届けた後、今度は自分達が、来年の同じ日に羽ばたくまでの準備をしなければならない、そんな期間。それは、有里湊と言う人物から一切失われた。
親がなく、親類からも厄介者、腫物のように扱われた青年は、影時間と言う非日常のワン・アワーによって初めて、年相応の輝かしいジュヴナイルを送る事が出来た。
満ち足りた学校生活だったと、湊は思う。勉強もやった、部活にも励んだ、一足早い大人の遊びも経験したし、お金を稼ぐ大変さも身を以て味わった。
そして何よりも、それらがサーヴァントとなった今なお記憶の中で輝いているのは、その時一緒にいた友人や、親切な人々の姿があったからである。
勉強が楽しかったわけじゃない、部活が生きる糧なのではない、大人の遊びに魅力を感じたのも、日銭を稼ぐ大変さを耐えられたのも。其処に人がいて、彼らと繋がれたからに他ならない。
ああ、日常は楽しかった。気づいてしまえば、こんなにも、人生を彩る要素はあちらこちらに転がっているのだと、思わされた。
だけど同時に、非日常にも、楽しみがなかったのか、と言われれば、嘘になる。影時間を何とかしようと、尽力していたあの時、湊は間違いなく、生を実感していたのだ。
リーダーと呼ばれ、頼られる事が嬉しくなかったのか? 嘘である。楽しかったし、天狗にもなっていた。
影時間を消滅させ、その為に、シャドウを消滅させる為のあの戦いに、己のヒロイズムに酔っていなかったのか? 否、湊のみならず、誰もが少なからず、酩酊していたに違いない。
あの時間を楔にして、S.E.E.Sとは強い絆で結ばれたのだ。アイギスや、望月とも、出会えたのだ。無駄であったと、憎めるべくもない。
「僕が少し出来て、頼れるリーダーとしての居場所が確保されてたのは、本当に、どうしようもない非日常の世界での事なんだ。その世界が続いて欲しかった、と言う思いも、なくはなかった」
「だけど、さ」
「それじゃ、良くないよね」
「よく、ない……?」
「非日常の世界が当たり前になって、日常の世界に流出し始めたら、日常の世界でしか生きられない人達に迷惑だろう? 迷いはした。何なら、僕には非日常の世界が終わる位なら全人類を道連れに出来る権利もあった」
「選んだの? セイヴァー」
「まさか」
即答し、マリィの問いを湊は否定した。
「現実の厳しさも良く分かってたけど、『楽しい事が用意されているのもまた現実の世界』なんだって僕は知ってるんだ。じゃあ、非日常に逃げる必要性はない。現実にだって、耐える事も出来るよ。人の嫌がる事はしちゃいけない、当たり前の話だろ? だから、道連れ何て、僕には選べないさ」
影時間と言う非日常を放置し、その時間の間存在する悪夢の楼閣であるところのタルタロスを無視する、と言う事は。
逃れ得ぬ滅びとイコールである、『ニュクス』の来臨を口を開けて待っているのと同じ事であった。
降誕の暁には、地上に如何なる結果が齎されるのか、それは最早改めて説明する程のものではなかった。その通りの結果しかない。地球上の全ての生命体が、一切の例外なく滅び去るだけだ。
非日常の幻想の中でしか生きられない存在がいる事を、湊は知っている。
そして、その幻想が崩れ去るのなら、と言って、自棄になる人間の胸中もまた、理解は出来る。
湊もまた、両親を一時に突然失い、生きる活力も目標もなくした時、同じような事を微かながらにでも抱いたからだ。
だが、湊が非日常を生き抜く為の力の糧とした絆の力は――高校2年生の1年間を楽しいと思えた理由は、どうしようもなく、日常と現実の中でしか生きられない者達によって齎されたもので。
そして、彼らの多くが、辛い現実に直面しながらも、それでも、湊との出会いを切っ掛けにもう少し前を向いて歩いて行こうと心に決めた者達で。
ああ、彼らを切り捨てられない。彼らの死を、願えない。特筆するべき所なんて何もない、英雄的な所なんて何もない。湊は今でも自分をそう思っている。
何処の誰とも知らない何者かが尊ぶ破滅願望と不可分の非日常と幻想よりも、湊が良く知る大切な人が生きたいと願う日常の方を、選んだに過ぎないのである。
「自分に特別な才能があったとすれば、選べる自由が少なからずあったって事で、そしてその選択は、まぁ、自分一人が犠牲になる事と引き換えに世界が存続するって事で……」
「……寂しい?」
後悔している? とは、マリィは聞かなかった。していないと言う確信があったからだ。
「……うん。寂しくは、あるかな」
やや、間を置いてから、寂寥の念を感じさせる笑みを浮かべ、湊はマリィの問いを肯定した。
許されていた罪悪感が、きゅっ、と。マリィの胸を締め付ける。片時も忘れた事はないけれど。蓮も許してくれたけど。しこりとしては、それはやはり、彼女の心に残っていた後悔。
「でもみんな、僕がいなくても楽しく、上手くやってそうだからね。それでいいんだ」
ああ、似ている。
日常の中に降り注ぐ陽だまりに焦がれ、それを求め、取り戻そうと足掻き、結局、望んだ形で取り戻す事が終ぞ出来なかった、あの青年。
マリィが地獄へと誘ってしまった、藤井蓮に、余りにも、彼は似過ぎていた。
「セイヴァーは、貴方をそんな風にしちゃった人達を、許せる?」
「許してるし、感謝もしてるよ。彼らも大切な、友達だ」
どうあれ、自らの身体にデスのシャドウを封印しなければ、今の湊は存在しなかったし、世界も破滅していた。
また、湊の中に封印されていたデス……ファルロスもまた、湊に対しては友誼のような物を抱いていて、世界に滅びを齎す事に対しては否定的だった。
彼らがいなければ……そうと考えた事もあるし、そう言うifも実際あったのだろう。だが、結果論的な話ではあるが、彼らがいたから、彼らに人格があったから。
世界も救われたのだし、湊が守りたかった日常もまた、暖かなままで守られた。それで、良かったのだ。これで、いいのである。
「わたしの大好きな人と、同じ事、言う」
湊の言葉に、マリィは言った。優し気で、しかし、寂し気な声。
「わたしはね、大事な人を、酷い所に行かせちゃったんだ。いっぱい痛くて、血を流して、歯が震える程怖くて……人が、たくさん死ぬところに」
自分がいなければ……自分がもっと、カリオストロの目にも留まらないような、凡俗な女の子だったらと。マリィは考える事がある。
マリィと藤井蓮の在り方は、不可分であり、コインの裏表である事は、彼が如何なる目的でこの世に生を授かったのかを考えれば、マリィが凡俗であったのなら、と言う仮定は前提から破綻している。
だがそれでも、と思うのだ。もし自分が凡俗だったら? もっとカリオストロが別の目的で藤井蓮を創造していたのだろうか? そうであったのなら、彼は、幸せだったのか?
「友達思いでね、無意識に女の子をその気にさせちゃうウワキな人でね、時々馬鹿な事しちゃう人なんだけど……わたしの大好きな、優しい人」
「……そうか」
湊は、黙って、マリィの話を聞いていた。
「わたしとかね、カスミが酷い目に合うと、レンは本気で怒るの。それだけ、わたし達の事を大事に思ってくれてるんだけど……わたし、知ってるんだ。レンは、怒る事が、苦手な人なんだって」
勿論、蓮は実際に全く怒らない人間だった訳じゃない。
寧ろ、マリィの知る蓮は、何時だって、怒っていた。自らの日常を完膚なきまでに破壊した黒円卓に、それを率いる黄金の獣、ラインハルト・ハイドリヒに。
そして、斯様なふざけた絵図を描いた、カール・クラフト・メルクリウスに。蓮は、何時だって、嚇怒の念を抱いていたのだ。
彼らが、蓮にして来た仕打ちを考えれば、許されないのが当たり前だった。それ程の所業を、彼らは犯したのである。
しかしそれでも、蓮は、彼らに歩み寄ろうとした。理解しようと、尽くした。終ぞ彼らの思想に賛同する事はなかったが、それでも、許さないぞ、殺してやる、と言って。
話し合いもしないで殺しあいにかかりは、しなかった。彼らであろうとも、そう言う事をしなかったのだ。そうしたとて、誰も文句を言わない境遇に身を置かされていたにもかかわらず。
マリィについても、同じだった。
彼女がいなければ、蓮が大事に思っていた香純は、人殺しのカルマを負う事もなかっただろう。それに対して、非難する資格は蓮にはあった筈なのだ。
だが、蓮はマリィを赦した。恨み言を言い放っても許される。大嫌いだと突き放されたとて、おかしくない。それなのに、蓮は、マリィを赦した。抱きしめた。
理不尽に日常を奪われた青年は、逆に言えば、そうでもされなければ怒りを抱けないと言う事の証明であった。
陽だまりにずっと当たっていたい、一緒にいて楽しい人物達の時間に永遠に身を委ねていたい。青年はこの願望を、地獄しか生まないと心底卑下していたが。
マリィは、その渇望が、藤井蓮と言う青年が生来宿していた、優しさと子供っぽさからくる、切なる祈りである事を知っていた。
蓮と湊は、当然の事、生い立ちは元より、顔だって違うし身体つきだって違うし、細部の性格だって全然違う。
だが、『自分がいなくなってでも、大事な者を守りたい』と言う思いが余りにも強い、という事を、マリィは感じ取っていた。
怒るのがヘタクソで、最後は自己犠牲で解決を図ろうとする。それは、マリィと言う少女が、何よりも愛し、幸福を祈り、そして、抱きしめたいと思う人物の姿であった。
「レンは多分、今、とっても怒ってると思う。わたしに酷い事した人を、絶対にゆるさないって、強く思ってる」
マリィは、全ての人物の幸福を祈る女神としての地位を、恐るべき少年の手によって、力尽くで以て追放され、今こうして、聖杯戦争の開催地に招かれているに至る。
身体が拉げ、やがて砕け散り、飛散した肉片の一つ一つに厚みがなくなるまで踏み潰された時に、マリィは、思った。
ああ、あの時の因果が巡って来たのかも知れない。大好きな男の子を地獄に誘い、それでいて、許されてしまった罪。
痛いだとか、どうしてそんな酷い事が出来るのだろうか、と。踏み躙られていた一方で、こういう形で清算される過去もあるのかと、冷静に感じ入っていた自分が、確かにあの時存在したのである。
「だからね、出来るんだったら……また、会えるんだったら。『落ち着いて』、って。言ってあげたいかな。レンは、思い切ったら、後は真っ直ぐ行く人だから」
私の仇を取ってと言う事はしない。自分の滅びは、受け入れているから。
だけど、怒らないで、とも言わない。自分の為に怒ってくれる事は、確かに、嬉しいから。
少しだけ、冷静でいて欲しいのが、マリィの願いだった。あなたは倒すべき誰かを間違えない人。多分、あなた程の人が倒すと心に決めたのだから、それは正しく敵であるのだろう。
倒したいのなら、落ち着こう。そうと伝える為だけに、マリィは、彼にまた、逢いたかった。
「でもその為には、聖杯戦争、だっけ? 勝たなくちゃいけないんだろう?」
そう、それこそが最大のネックであった。
これが昔の、蓮の為のギロチンとして在れる事が嬉しかった時代だったのならば、兎も角。
女神として昇華され、痛みと幸福を知った彼女が、今更、嘗て諏訪原の街で引き起こされたような、スワスチカを巡る殺しあいのような真似は、到底出来ない。
「……」
それに対する答えは、まだ、見つかってない。
考えてみれば、あの戦いに於いて、マリィと言う存在は受動的な存在だった。
諏訪原の街に被害を出さない為の立ち回りとは? みんなを守る為には? それを考えていたのは、藤井蓮なのであって、マリィではなかった。
もっとあの戦いに、積極的に蓮と言葉を交わしておけば良かったとマリィは思う。退屈だからと寝ていた自分の頭を、叩きたくもなって来た。
蓮の為の力として活躍していればよかったあの時と違い、今度は正真正銘、マリィ本人が独立して、自分の意思と頭で選び、勝ち抜かなくてはならないのだ。
自分に、出来るだろうか?
アレだけ頑張った蓮だって、その手で守り切れずに取りこぼしたものがいっぱいあったと言うのに。
座にいた頃の力を剥奪された今の自分に、この戦いを生き残る事が――今の自分に、殺しを選ぶ事が、出来るのか?
「答えは、今じゃなくても良いよ」
黙りこくり、目を伏せ、思案に耽るマリィを見て、湊は言った。
「多分、今どれだけ考えた所で、それはやっぱり、理想論じゃないかな。マスターは、今の自分を全力で楽しみながら、時が来たら、僕と一緒に、頭が痛くなるほど考えればいい」
「――そうだね」
「今は、今を楽しもう。答えの方が、近づいてくるまで。明日の死が、見えて来るまで。何て言ったっけ……これ……。――ああ、そうだ」
思い出したかのように言葉が浮かんだ湊。マリィも、同じ事を思い出したらしい。
「メメント・モリ」
「メメント・モリ」
memento mori。ラテン語で、死を忘れる事なかれ、と言う意味を示す警句である。
古代ローマの時代には広く受け入れられていた概念であり、ヴェスヴィオ火山の噴火によって一夜にして地図と歴史から消滅したポンペイの街からは、
この警句をイメージ図化したモザイクのテーブル天板が出土した位である。つまりそれだけ浸透し切っていて、家具のモチーフに使われていた程なのだ
尤も、ローマの民は、どうせ死ぬのなら、めい一杯人生を楽しもう、と言う意味合いで使っていたようであるが。
「よく知ってたね、マスター」
「私を守ってくれてた人が良く言ってた言葉だから。……あまり好きな言葉じゃないんだけどね」
それは、言葉自体が受け入れられないと言うよりは、今も、彼……黄金の獣に対する苦手意識があったからなのであるが。
「セイヴァー。……それじゃ、わたしの大好きな人に会えるまでは、一緒にいてくれる?」
「いいよ」
即答する。
「う、ウワキじゃないよ。その辺りは、その、かんちがい、しないでね?」
「そんな事したら怒られそうだからしないよ」
いや本当に、話聞いてる限りだと、マスターの彼氏怖そうだもん。
「……でも、全部が終わったら、セイヴァーを、抱きしめてあげたいな」
それは、マリィの本心であった。
セイヴァー……有里湊は、見るからに儚くて、だけど強い意思を心の裡に秘めていて。
……何よりも、見ていて、幸福であったと言う気配をまるで感じさせない程、幸の薄そうな、青年であったから。そして、そう言う人の魂をこそ、マリィは、抱きしめてあげたかったから。
「……悲観される程、薄幸の人生を送って来た訳じゃないぜ、僕も」
有里湊の人生は確かに、悲劇的であり、それでいて、余りにも短い人生であったが。
それでも、湊は自分の選択を後悔した事もないし、自分の辿って来た足跡を、誰かに哀れまれる程、幸せの息吹も芽吹きもない人生であった訳じゃないのである。
「だけど……そうだな。もしも、マスターが許してくれるのなら……」
「? 許して、くれるのなら……?」
次の言葉を紡ぐのに、湊は、数秒程の間を必要とした。
言おうか言うまいか、迷っている様子だった。思い付きはしたが、言うのが気恥ずかしいみたいで。照れ臭そうな態度で、頬を掻きながら、こう言った。
「……膝枕の方が、良いかな」
今際の際に、機械の乙女の膝に身体を委ね、見上げた空が綺麗だった事を、湊は、今でも覚えているから。
マリィが蓮に逢える事を夢見ているように、湊も、女神のような人物にそう言う事をして貰えるのは、悪くはないかなと思っていた。
「あっ、それ……蓮にもやってあげたいかも」
抱きしめるより、そっちの方が良い事もあるかな、と一瞬思った。
ならば、蓮にも……カリオストロが羨ましそうにしてたら、彼にも、試してあげたいな、とマリィは、思った。
「してあげたら良い。その方が、喜ぶだろうしね」
ふっと笑みを浮かべ、湊は空に目線を投げた。良い天気だ。死ぬには、良い日かも、知れない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
眩く輝くひととき みんなと一緒だった
かけがえのないときと 知らずにわたしは 過ごしていた
今はただ大切に 偲ぶよう I will embrace the feeling
キミはね確かに あのときわたしの そばにいた
いつだって いつだって いつだって すぐ横で笑っていた
無くしても取り戻す キミを I will never leave you
【クラス】
セイヴァー
【真名】
有里湊@PERSONA3
【ステータス】
筋力C 耐久D(EX) 敏捷C 魔力A++ 幸運E 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
境界にて:EX
死の境界、そのもの。セイヴァーは己の魂を以て、あらゆる生命体に絶対の終焉を齎す存在、『ニュクス』を封印する為の閂。
そして、人類が抱くどうしようもない、死滅への願望、自滅衝動が、ニュクスに触れる事を防ぐ為の大扉である。こうなる事を、セイヴァーは選んだ。
そう言う存在であるからか、セイヴァーは『死』、『滅び』、『終焉』と言った、過程を無視して行き成りこういった事象を齎す現象を、ランク問わず全て無効化する。
言い換えれば、即死に対する完全耐性。
対概念:EX
宇宙一つと、等価の少年。
独力で唯一、ユニバースのアルカナ、即ち、根源に等しい場所に辿り着いた少年は、本来、単一の宇宙に於いて成せない事は何もないと言われる程の、全能の存在。
まさに、『宇宙』を体現する存在であった。いわばセイヴァーは、人間大の宇宙、歩く人型の特異点である。
その性質の故、セイヴァーの身体をもしも概念的な攻撃や支配の類で影響を与えたければ、文字通り、『宇宙一つを丸々支配出来る範囲の物を用意せねばならない』。
大海に墨の一滴を零した所で、全海が黒一色に染まる事などあり得ないのと、これは同じ事。
催眠の魔術や呪法を行おうとも、それが対人の物であるのなら一切意味を成さないし、広範囲に渡る広域精神操作であっても、単純にそれが宇宙全土の範囲に影響を与えられねば意味がない。
また、魔法手前とも言われる大魔術である固有結界や、精霊種などが行う空想具現化ですら、上述のように宇宙一つが範囲でなければ、セイヴァーをその影響下に置く事が出来ないどころか、
単純に質量及び範囲の面でセイヴァーに負けるので、『固有結界や空想具現化の方が内から張り裂けるように砕け散る』。
要約すれば、精神に作用する攻撃や概念的な改変や支配攻撃や行動は、宇宙以上のレンジをカバーして初めてセイヴァーに影響を与えられると言う事を証明するスキル。
一見すれば無敵の力だが、これはあくまで上述の効果にのみ有効なものであり、『直接的に相手を殴る蹴ると言った物理攻撃や、肉体を直接損なう魔術や呪術』には一切作用しない。用は、ダメージを与える系の行動については、素通しする。
【保有スキル】
根源到達者:D-(EX)
「 」から生じ、「 」を辿るもの。宇宙の渦であり、全ての始まりであり、全ての終わり。根源と呼ばれるところに、到達したかどうか。
根源接続者と違う点は、『生まれついてその場所に接続していたか否か』の違いであり、このスキルの場合は、後天的に自らの力で到達した事を示す。
ランクEXとは、到達しただけで奇跡と言われる根源の、更に最奥に到達した事を証明する。事実セイヴァーは、すでに説明した通り、全能の存在とニアリーイコールであった。
だがセイヴァーは――己の全能性の全てを、絶対の死であるニュクスを退ける事と、人類の想念がニュクスに触れないようにする鉄扉になると言う事に注いでいる。
その為、サーヴァントとして召喚されたのとは別に、その全能性を十全に発揮する事は出来ない。その為セイヴァーに出来る事は、己の振るうペルソナ能力の超広範化に特化している。
セイヴァーは装備したペルソナによって己のステータスやスキルを変動させる事が出来、装備したペルソナ次第によっては、高ランクの対魔力や無窮の武錬、勇猛、再生スキルを得る事が可能。
またセイヴァーは、単一の力のみでミックスレイドと呼ばれる力を発揮出来る、唯一のペルソナ能力者でもあり、また、魔力の消費によって、受胎と呼ばれる、装備したペルソナ由来の宝具を生み出す力にも覚醒している唯一の人物である。
死の淵:EX
戦闘を続行する能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負っても戦闘が可能。戦闘続行と呼ばれるスキルの、ウルトラ上位版。
自らの意志が健在である限り、身体の過半が吹き飛ばされようが、戦う事を止めない。セイヴァーは、死そのものの直撃を受けてなお、戦う事を。立ち向かう事を、止めなかった。
カリスマ:D+++
人を惹きつける力。大軍を率い、国家を支配すると言ったような魔的なそれではない。
が、セイヴァーの場合は対人でのやり取りに於いて、その効果は強く発揮される。具体的には、魅力的な青年に映る。
【宝具】
『絆、宙へと続け(コミュニティ)』
ランク:E~A++ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:22
セイヴァーが他者と交流し、絆を深めることによって22の大アルカナに対応したコミュニティが形成される。
コミュニティの数やランク(交流の深さによって変動する)に応じてセイヴァーのステータス・スキルに上昇補正が加わる。
『心の宇宙(ユニバース)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
嘗てセイヴァーが築き上げ、そして到達したとされる、アルカナの旅路の果てに存在すると言う宇宙/世界。
この宝具に覚醒したセイヴァーは、その身で出来ない事など何一つとして存在せず、森羅万象から奇跡の意味を消し飛ばす存在となる。
生身での宇宙空間の活動や、次元防御や一切の概念防御を無効化する絶対の『死』ですらも、彼の身体を害する事は不可能となる。
その本質は、セイヴァーが結び、縁を育てた絆の力の真の到達点。セイヴァーでなくとも人間ならば誰しもが有している、
現実の流れを些細にでも良いから変える力が、究極のレベルにまで高められたそれであると言っても良い。言ってしまえばセイヴァー自体がある種の願望器である。
サーヴァントとして召喚されたセイヴァーは、生前のような無茶は初期段階では出来ない。――但し、様々な存在と縁を育んだ場合は、別である。
セイヴァーのステータスやスキルランクは、上述の宝具によって縁を築き上げた人物の数が多ければ多い程無限大に上方修正されて行き、場合によっては新しいペルソナにも覚醒する。
育んだ人々の縁が多ければ多い程、奇跡を消し去ると言われた程の力をセイヴァーは取り戻す事が出来、事実上セイヴァーの強さは青天井にも等しい。
【weapon】
ペルソナ能力:
セイヴァーが、ユニバースに覚醒する前から得意とする能力。セイヴァーの様に、複数のペルソナを使い分けられる存在を、『ワイルド』と呼ぶ。
才能のせいもあるが、身体にデスと呼ばれる特殊なシャドウを封印された影響で、その才能が奇特な形で頭角を現してしまった。
無銘・小剣:
セイヴァーは様々な武器の扱いに長けるが、とりわけ得意とするのがこういった小ぶりな剣である。
装備したペルソナによっては、本職の三騎士サーヴァントを圧倒する程の力を発揮する事も可能。
【人物背景】
知恵の実を食べた人間はその瞬間より旅人となった。カードが示す旅路を巡り未来に淡い希望を託して……。
とあるアルカナがこう示した。強い意志と努力こそが唯一夢を掴む可能性であると
そのアルカナは示した。心の奥から聴こえる声なき声…それに耳を傾ける意義を。
そのアルカナは示した。生が持つ輝き…その素晴らしさと尊さを。
そのアルカナは示した。あらゆるものに毅然と向き合い、答えを決するその強さを。
そのアルカナは示した。己を導く存在、それを知る事の大切さを。
そのアルカナは示した。他者と心が通じあう…その喜びと素晴らしさを。
そのアルカナは示した。目標に向かって跳躍するその力こそ、人が命から得た可能性であることを。
そのアルカナは示した。何もかもが不確か故に、正しき答えを導かねばならぬことを。
そのアルカナは示した。時に己を見つめ、自らの意思で道を決するべき勇気を。
そのアルカナは示した。永劫、時と共に回り続ける 残酷な運命の存在を。
そのアルカナは示した。どんな苦難に苛まれようと、それに耐え忍ぶ力が必要なことを。
そのアルカナは示した。避けようのない窮状においてこそ、新たなる道を探すチャンスがあることを。
知恵の実を食べた人間はその瞬間より旅人となった。アルカナの示す旅路を巡り、未来に淡い希望を抱く。
しかし、アルカナは示すんだ。その旅路の先にあるものが、絶対の終わりだということを。いかなる者の行き着く先も絶対の死だということを。
――青年はその死を、乗り越えた。その先に、宇宙を見、奇跡を成し、そして、自らの旅の終わりに、魂を捧げる事で、皆の幸せを約束した。
【サーヴァントとしての願い】
特にはない。女神の膝枕ってのも、悪くはないのかな
【マスター】
マルグリット・ブルイユ@Dies irae
【マスターとしての願い】
レンとまた逢いたい
【weapon】
【能力・技能】
神としての魔力:
マリィは覇道神と呼ばれる存在になる前からして、当代の絶対神に該当する存在が、次の代を引き継がせるに相応しいと確信させる程の魂の質を誇る存在だった。
実際彼女は、その神の手からなる戯曲を経て、神の座に座る事が出来た。が、最強最悪の邪神に神の座を追われた今では、覇道の神としての性質もその当時の魔力はない。
なので、覇道神になる前。即ち、求道の性質を持っていた頃と同等程度の魂の質、魔力を有する程度に留まる。
程度に留まる、と言ったが、その魔力量は極めて膨大で、Aクラスの攻撃宝具を何発も行使した程度では、到底其処を見せぬ程には圧倒的な総量を誇る。
但し、これだけの魔力を以てしても、セイヴァーが持つユニバースの力を無理に引き出そうとすれば、一瞬で枯渇するし、彼女自身も消滅する。
呪い:
彼女が有していた、斬首の呪い。彼女に触れた存在は、首が飛ぶ。これは比喩ではなく、物理的に、ギロチンを落とされたように首が宙を舞うのである。
その呪いの程は極めて強固。聖杯戦争のマスターとしての召喚、かつ、神の座を暴力によって追われ滅茶苦茶にされた今では弱体化こそしているが、それでも、
対魔力を持たぬサーヴァントは彼女に振れた瞬間首が切断され即死。持っていたとて、触れ続ければ時間差で首が舞う。
粛清防御レベルの防護手段を以て初めて、数分は触れていても耐えられると言う程で、例え粛清防御があったとしても、それ以上の接触は危険水準となる。
但しセイヴァーの場合は、既に述べたような、概念的な力に極めて強い防御手段を持っている為、マリィに触れても平気である。
【人物背景】
嘗て女神と呼ばれ、そして、水銀の蛇の導きと、超越者との二人三脚で、女神の座に至った少女。
全てを愛し、全ての幸福と健やかなるを祈り、そして抱きしめた聖女。その性質の故に、最悪の邪神の生誕をも祝福してしまい、当たり前の様に、その邪神に仇を返された。
マリィルート後、うんこマンによってクソミソにされ、神咒神威神楽に至る前の時間軸から参戦。
【方針】
聖杯戦争に対する意欲は低い。取り合えず、今は頑張ってがっこうせいかつ
最終更新:2022年08月16日 17:03