青山優雅は、裏切り者である。
彼は、ヒーローを目指す学生だ。
だが同時に、世界を脅かす巨悪「オール・フォー・ワン」の息がかかった者でもある。
「個性」と呼ばれる特殊な力を持っているのが当たり前の世界において、青山は個性を持たずに産まれた。
子供が差別されることを恐れた彼の両親は、オール・フォー・ワンの力を借りて息子に個性を与えた。
その代償が、悪への服従だ。
両親の安全をネタに脅され、青山は自分の通う雄英高校の情報を提供する内通者となった。
絆を育む友を、尊敬する師を、裏切り続ける日々。
気が狂いそうなくらいに辛かった。
それでも青山は、耐えた。愛する家族を守るために、悪の下僕であり続けた。
そしてある日、彼はそんな地獄から解放される。
聖杯戦争という、新たな地獄に招待されたことによって。
◆ ◆ ◆
「はあ、はあ……」
青山は、涙をボロボロとこぼしながら走り続けていた。
どこか目的地があるわけではない。単なる逃避行動だ。
青山には、この状況でどうしたらいいのかわからなかった。
聖杯を手にすることができれば、裏切り者としての立場から脱することもできるだろう。
だがそれは、他の参加者を殺すということだ。
正当防衛ならばまだしも、自分から他者の命を奪ってしまえば、二度と光の当たる道は歩けないだろう。
だが聖杯を手にできなければ、死以外の結末はない。
つまりは八方塞がりだ。
(僕は……僕はどうしたら……)
答の出ない疑問で頭をいっぱいにしながら、青山は走る。
血のにおいにも気づかぬまま。
「え……?」
突如視界に飛び込んできた惨状に、青山は唖然とする。
血まみれの不良らしき男たちをさらに切り刻む、巨漢の剣士。
地獄のような光景が、そこには広がっていた。
「なんだぁ? わざわざ人のいねえところで、死んでも騒ぎにならねえようなクズを魂食いしてたってのによぉ。
いるんだなあ、こういうところに出くわしちまうバカが」
剣士の傍らにいたサングラスの男が、ニタニタと笑いながら青山を見る。
「こいつもやっちまってくれ、セイバー」
指示を受け、剣士も青山の方へ向き直る。
(セイバー……ってことは……)
サングラスの男が用いたフレーズにより、青山は理解する。
あの男は自分と同じ聖杯戦争の参加者であり、剣士はそのサーヴァントなのだと。
(ど、どうする……?)
青山のサーヴァントは、まだ姿を見せていない。
ここで抵抗するのであれば、青山自身が戦わなければならない。
しかし相手は、ただのヴィランではなくサーヴァント。
神秘の力を帯びた、古代の英雄だ。
プロヒーローならまだしも、青山一人で勝てる相手だとはとうてい思えない。
(それでも……ここで逃げるわけには!)
ガタガタと震えながらも、青山は臨戦態勢を取る。
不良とはいえ一般人を虐殺するこの主従の行いは、間違いなく悪だ。
それを放置して逃げてしまえば、青山に残された最後のプライドさえへし折れてしまう。
そうなれば、二度と立ち上がれない。この聖杯戦争で、むごたらしく殺されるだけだ。
それを理解しているから、青山は立ち向かう姿勢を見せる。
だが相手のマスターからすれば、それは愚者の行動にすぎない。
「おいおい、まさかこいつに立ち向かうつもりか?
思ってた以上の大バカ野郎だな。
それとも、お子様番組のヒーローにでもなったつもりなのか?」
心ない言葉をぶつけられても、青山は揺るがない。
944:君が二度と悲しまないためのヒーロー ◆NIKUcB1AGw:2022/08/21(日) 00:21:50 ID:fjTKYEWI0
涙の溜まった目で、目の前の悪を見据える。
「なんだ、その目つきは……。
むかつくぜぇ。
セイバー! できるだけいたぶってから殺してやれ!」
マスターのさらなる指示を受け、セイバーが動き出そうとしたその時。
突然、轟音が周囲一帯に響き渡った。
それは、バイクの排気音だった。
「おいおい、暴走族でも近づいてきたか?
クソうるせえなあ」
顔をしかめるマスターとは対照的に、青山は不思議な感覚を覚えていた。
まるで、この音が自分を鼓舞しているかのように、彼には感じられていた。
やがて、1台のバイクがその場に現れる。
それに乗っていたのは、昆虫のような顔の男だった。
「すまない、マスター。遅くなってしまった」
穏やかな、しかし力強い声で、男は青山に語りかける。
「じゃあ、あなたが……」
「ああ、君のサーヴァントだ。
ライダー、これより君の力となる」
そう告げるとライダーはバイクを降り、セイバーの主従に向き直る。
「はっ、何を大物ぶってやがる……。
バイクなんぞ乗ってるってことは、ごくごく最近の英霊ってことじゃねえか!
そんな神秘もクソもねえザコが、俺のセイバーに勝てるわけねえだろう!
とっととぶっ殺しちまえ、セイバー!」
今度こそ、セイバーが動く。だが、ライダーは動じない。
「たしかに俺の歴史など、100年にも満たない。だが……」
ライダーが右の拳を握りしめ、思い切り振るう。
「ライダー……パンチ!!」
拳が、セイバーの胸に叩き込まれる。
セイバーの身につけていた鎧は木っ端微塵に砕け、本人は苦悶の表情を浮かべて膝をつく。
「力なき者を一方的に蹂躙するような、邪悪な連中に……。
仮面ライダーは、負けん!」
ライダーは続いて地面を蹴り、大きく跳躍する。
そして、空中で一回転。右脚を突き出した姿勢で、落下する。
「ライダー……キック!!」
衝突。セイバーの体は子供に蹴られた石ころのように吹き飛び、爆発四散した。
「は……? あぁ……?」
セイバーのマスターは状況が飲み込めず、呆然と立ち尽くす。
だがやがて、スイッチが入ったように怒り狂い始めた。
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!! てめえみてえなゴミクズに、セイバーが倒せるはずねええええ!!
どんなインチキしやがったぁぁぁぁぁ!!」
怒りのあまり我を忘れ、セイバーのマスターはナイフを構えてライダーに突撃する。
だがそんなものが、ライダーに通用するはずもない。
ライダーは冷静にナイフを叩き落とし、敵の腕をひねり上げる。
「がああああ!!」
「退け」
静かな声でそう告げ、ライダーは手を離す。
セイバーのマスターは脇目も振らず、その場から逃げ出した。
「すごい……」
青山の口から、思わず言葉が漏れる。
その強さももちろんだが、何よりライダーが纏う雰囲気。
それは、あのオールマイトを彷彿とさせるものだった。
(この人は、本物のヒーローなんだ……。オールマイトと同じ……。
僕みたいな薄汚い偽物とは、格が違いすぎる……)
危機が去った安堵と自己嫌悪により、青山はその場にへたり込む。
ライダーはその青山にゆっくりと歩み寄り、語りかける。
「俺はまだ、君のことを何も知らない。
君がどんな人生を歩んできたか、わからない。
だが、これだけは言わせてくれ。
……よく、がんばった」
「あ……ああ……」
心に染み入る、ライダーの言葉。
青山はただ、泣いた。
945:君が二度と悲しまないためのヒーロー ◆NIKUcB1AGw:2022/08/21(日) 00:22:56 ID:fjTKYEWI0
【クラス】ライダー
【真名】仮面ライダー1号/本郷猛
【出典】仮面ライダーシリーズ
【性別】男
【属性】中立・善
【パラメーター】筋力:B 耐久:EX 敏捷:B 魔力:C 幸運:E 宝具:B(変身時)
【クラススキル】
騎乗:EX
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。
「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
本郷猛は、日本でもっとも多く「ライダー」と呼ばれた男である。
ゆえに日本の一部を模したこの地では、知名度補正が最大限かけられる。
【保有スキル】
原初のヒーロー:A
人類の自由と平和のために戦い続けるヒーローたち、「仮面ライダー」のオリジン。
ただその場に存在するだけで善なる者には絶大な安心感を与え、邪悪な者には強い苛立ちと動揺をもたらす。
不滅のヒーロー:A
「戦闘続行」の上位スキル。
彼は何度となく「死」に遭遇しながらも、そのたびに蘇り人々を救ってきた。
マスターの心が折れぬ限り、どんなに傷つこうと彼は戦闘を続行する。
ライダーキック:A
光の巨人の光線と双璧をなす、日本における「必殺技」の代名詞。
彼が悪属性のサーヴァントに対して飛び蹴りを放った時、その攻撃には中確率で即死属性が付与される。
このスキルによって撃破されたサーヴァントは、必ず爆発を起こす。
【宝具】
『回れ風車(タイフーン)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
本郷の体に備え付けられた、変身ベルト。
真名の解放により、本郷猛は仮面ライダー1号へと姿を変える。
『走れ疾風(サイクロン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:1人
本郷が愛用してきた、高性能バイク。
最高時速は400km/h。
さらに魔力消費により、「改造サイクロン」「新サイクロン」へとパワーアップさせることができる。
【weapon】
基本的に格闘で戦うが、一般的な武器ならたいていのものは使いこなせる。
【人物背景】
仮面ライダー、本郷猛は改造人間である。
彼を改造したショッカーは、世界制覇を企む悪の秘密結社である。
仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと……そしてあらゆる人類の敵と戦うのだ!
【サーヴァントとしての願い】
マスターを生還させる。
946:君が二度と悲しまないためのヒーロー ◆NIKUcB1AGw:2022/08/21(日) 00:24:12 ID:fjTKYEWI0
【マスター】青山優雅
【出典】僕のヒーローアカデミア
【性別】男
【マスターとしての願い】
生きて帰る
【weapon】
「ヒーローコスチューム」
個性の補助具であるベルトを組み込んだ、西洋騎士の鎧を思わせるコスチューム。
へそ以外の箇所からビームを出せるギミックが内蔵されている。
【能力・技能】
「ネビルレーザー」
へそからビームを放つことができる個性。
後付けの個性であるため体質に合っておらず、一定時間以上連続使用すると腹痛を起こしてしまう。
【ロール】
普通の高校生
【人物背景】
雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒。
つかみ所のない言動を繰り返すナルシスト。
その正体は、巨悪「オール・フォー・ワン」が雄英に送り込んだ内通者。
脅迫により従わされているだけで本人は善良な人物だが、それ故に仲間を裏切る罪悪感に苦しみ続けていた。
参戦時期は、内通者であることが発覚する以前。
【方針】
生還
最終更新:2022年08月23日 02:07