「Bow-chicka-wow-wow……Now bow chicka bow down……」

 品行など欠片と感じぬ、下劣な歌詞を口ずさむその男は、口にする言葉の品性のなさからは想像もつかぬ程に、整った顔立ちをしていた。
甘いマスクの男である。優男とも言うべき顔立ちであるが、カラーコンタクトではない、生来のものと見える、血のように真っ赤な瞳には、強い意思のような物が見て取れる。
親し気な雰囲気で近づいて、蜜より甘く、火よりも熱っぽい言葉を囁けば、『コロリ』と行ってしまう尻軽は、さぞ多かろう。
服装のコーディネートも、抜群だった。何処の服飾店に赴けば買えるのか定かではないが、恐らくは、上から下まで、それこそ靴に至るまでが、特注品の類だろう。
黒で、統一されていた。ドレスシャツにパンツ、ファーストール、革靴。全てが、黒。黒は、人気のあるカラーであるがしかし、着こなしが兎角難しい色である。
格の低い者が身に纏った所で、気障で似合わぬどころか、寧ろ陰気な空気を助長させるだけであり、言ってしまえば色に振り回されてしまうのだ。
だが男は違う。黒、と言う色をまるで己が手足か、半身かのように操っており、色に振り回されるどころかその逆。
黒と言う色を支配し、見る者に、ミステリアスで魅力的である、と訴求する事に成功しているのである。
これで、身体つきの方も、半端なジム通いや格闘家では及びもつかない程鍛え上げられていて、露出されている胸筋も腹筋も、見事なまでに磨き上げられているのだから、隙がない。

 総じて、女は勿論、同性である男から見ても、魅力的に映る男であった。
顔も、身体も、声も。全てが優れている。人を何処か惹きつける、蠱惑的な何か。それを全身から、発散させていた。

 ――そして、その男は、その両足をテーブルの上に乗せながら、己の行動によって産み出された副産物を眺め、ワインを嗜んでいた。
一辺10mを越える、長大なペルシア絨毯。靴越しからでも、摘み立ての生綿を踏んでいるようなその心地よい踏み心地は、
それが1000万以上の値段を誇る上物である事の何よりの証であった。その絨毯の上に、手足を切断され、胴体だけになった女性の死体が転がっていた。
いやよく見ると、女だけじゃない。スーツを着た男性の死体がある。彼は首を斬り落とされ、それが明確な死因となっているようだ。それ以外に外傷はない。
給仕服を着た年配の女の死体がある。胴体に、バスケットボール大の風穴を開けられていて、筆舌に尽くしがたい激痛を味わったようだ。死に顔の悶絶ぶりは、直視に堪えない。
最早性別すら判別不能な者の死体が飛散していた。ミキサーにでも掛けられてしまっているかのような、その挽肉具合。如何なる衝撃を与えれば、こんな死に方に至れるのか。

 そんな、部屋の様子と、男の様子を。心底から嫌悪しながら眺める、少年の姿があった。
死体から流れる血の及ばぬ範囲まで逃れ、壁に背を預け。非難と怒りに満ちた目で、彼は、己の呼び出したランサーを眺めていた。

「クッ、フフフフフフフフフ……。そうヘソ曲げないでよ、メグちゃん。滅茶苦茶やってる奴らを、滅茶苦茶にしただけだぜ。痛む腹なんてどこにもない筈だろ」

「だからと言って、これはねぇだろ。クソランサー」

 これ、とは言うまでもなく、ランサーと呼んだ男が成立させてしまった、この惨劇の事である。
誰が如何弁疏を並べ立てようとも、ここまでの惨状を正当化する事など殆ど不可能だ。過去現在未来、如何なる弁護士如何なるペテン師如何なる弁論術者でも、それは叶わぬ事であろう。

 とは言え、殺されぬ謂れが、無いとも言えぬ者であった。
聖杯戦争の参加者であるのもそうだが、彼は、この異界東京都において並ならぬロールを与えられていた人物でもあり、そして、本物の魔術師、呪詛師の類であった。
影の大物フィクサーと呼ばれる裏社会での重鎮で、直截な物言いになるが、人間の屑である。
ヤクザや韓国・中国などの大陸系のマフィアにも強い権力を及ばせている人物で、端的に言えば反社の大物だ。表社会で活動する為の、所謂フロント企業も大量に統括していて、使えない構成員や『カタ』にハメた一般人達を集め、自分のサーヴァントの活動の為の餌や燃料にしていた極悪人である。

 経緯から、語る必要がある。
召喚した瞬間からして、距離が近くて馴れ馴れしく、そして一目で、邪悪であると解ってしまう人物だった。 
そして同時に、存在としての『格』もまた、途方もない事が解る男だった。呪術師であるからこそ、解る。この男の底知れなさは、異常だ。呪霊だとか、呪術師の域では最早ない。
一級までの呪術師や呪霊など、この男にとっては存在しないも同然。カスそのものだろう。特級程の実力があって、漸く、それなりに食らい付けるか如何かと言った所。
事と次第によっては、あの五条や乙骨ですら、不覚を取りかねない。絶対に招聘してはならないあの式神を無理に召喚すれば、何とかと彼でも渡り合えるかと言う感じだが、
アレを呼び出した時点で最早勝利ではない。この男としては実質的な完全敗北だ。そんな人物が、現代のデバイスの使い方とその意義を見る見るうちに吸収して行き、
自分以上にこの異界東京都の情勢を探るのが早いのを見ると、身震いを覚える。強いだけじゃない。口も達者で知恵も周る。狡知に、長けているのだ。呪術師として、最も相手にしたくない手合いの人物であった。

 この男と対等な人物など、彼が知る中では、ただ、一人。
呪いの王とすら称される、平安時代の昔から現代にかけてまで、恐るべき呪詛の引力を振り撒き続ける者。両面宿儺を於いて、他にいない。
その評価は決して、行き過ぎではないだろう。この男の真名こそを、『ベリアル』と知っているのなら、なおの事。
キリスト教圏の世界にその名を轟かせる大悪魔と、このランサーの姿には、成程、何の乖離もないのであった。

 そしてそんな人物が、最初の標的を、的確に割り当てて来たのである。

 ――ああ、メグちゃん。俺もまぁ年頃でね、カッコつけて君を魅了してやりたいんだよ。こんな奴がいるんだが、酷いよなぁ。ちょっとお邪魔しに行こうぜ――

 そんな風な事を言って、今回襲撃した参加者の氏素性、性格、この世界での職業などを、聖杯戦争の参加者である事をも含めて、
プロファイリングした資料を、『伏黒恵』に持ってきたのがつい2時間前。より詳しく言えば、ランサーをこの異界東京都に召喚した一日後の事であった。
たった2日足らずで、この現代での生活に馴染み切る順応性には、舌を巻く。いや、順応するどころか、既に恵以上に、この世界での生活を心得ていた。

 罠だと、最初に思った。その気になればベリアルは簡単に、彼自身が有する邪悪な本性を隠し通せるであろうに、それを全くしない。
寧ろ、恵に対して見せつけるかのように、己の悪辣さと胡散臭さをアピールする。ために、今回の襲撃の件も、明らかに怪しいと思ったのだ。
だが、消極的なだけでは、この聖杯戦争は乗り切れないと言う確信もまたあった。大変不服だが、現状紛れもなく、恵の駒はこのベリアルなのだ。
どうあれ、彼と付き合わなければ事態は進展しない。取り合えず、敵のアジトである品川の邸宅まで赴いて、ブラブラして。気乗りがしなかったら、適当な理由を付けて、帰る。そのつもりであったのだ。

 ――ベリアルの口にしていた事が事実であった事を知ったのは、邸宅の敷地である裏庭に忍び込んだ直後。
呪術師で言う所の帳に似た結界を展開し、その中で、何処ぞから集めたNPC達を、召喚したキャスターに拷問させて魔力を抽出させている光景を目の当たりにした瞬間からだった。
指を斬り落とし、四肢を鋸に似た道具でゆっくりと切り進め、直火で炙り、皮を剥ぎむき出しになった筋肉に塩を掛け、熱した油を目に垂らして……。
吐き気を催す邪悪な催しを前にした恵が、何かを言うよりも前に、敵のキャスターが動き始め――それよりも更に早く、ベリアルは動いていた。

 結論を先に述べるなら、それは勝負と呼べる物ではなかった。一方的なワンサイドゲーム。虐殺、と呼ぶに相応しい。
ゼロカンマ2秒で、対軍宝具相当の威力の一撃を防ぎきる障壁で絶えず己の身を守っていたキャスターの身体が、頭頂部から股間に掛けて真っ二つになり、左右に分かれて絶命した。
其処から更にゼロカンマ1秒後、そのマスターの身体が、ゼロ距離で手榴弾の炸裂に見舞われたように爆散し、疑いようもない即死を辿る。
そしてその更にゼロカンマ1秒後、それまで拷問されていたNPC達の身体が、めいめいの所から、縦に横にとズレて行き、そのまま苦しみから解き放たれた。
裏庭にいた全員を、まさに瞬きの間に殺して見せたベリアルは、そのまま邸宅の中へ外壁をぶち抜いて侵入。その頃には1秒が経過し、其処から更に1秒後。漸く、恵が気付き始めた。

 屋敷の中に入った時には、最早、全てが後の祭りであった。
恐らく使用人、恐らく殺したマスターの家族。そんな者達の死体と、細切れの筋肉と骨片、血潮と糞便しか、残ってなかったからだ。
生存者が誰もいない。うめき声一つ、聞こえやしない。殺された、殺されようとしている。それを他のNPC達が認識するよりも早くベリアルは、文字通り、皆殺しを実行して見せたのである。
死体と血とを踏まないように歩いて行き、大広間に恵が辿り着いて――そうして、今に至る、と言う訳だった。

「強いのは、認めてやる。頭もキレるってのも、間違いない。まぁそんな事、初めて見た時から解ってたんだけどな」

「まるでべた褒めだな。嬉しくて勃起しそうだ。で、俺の初仕事。どう評価してくれるんだい? メグちゃん」

「100点満点中0点だ、クソサーヴァントが」

「ッハハハハハハハ!! 褒めたと思ったら今度は鞭か!! 良いねぇ、そそるよメグちゃん。君は女を殴っても、殴られた女が許してしまう罪の才能がある」

「褒めてんのかよそれ」

「当然」

 にわかに、恵には信じられない事だが、口ぶりを信じるのなら、意図は一つしかない。 
ベリアルは本当に、自らのマスターであるところの、伏黒恵に対して、活躍する姿を見せつけたかったから、こんな事に打って出たのである。
まるで、惚れた女に、自分の格好の良い姿を披露したがる不良少年のようなメンタリズムその物だ。そんな精神性を、まさか目の前の男が有しているとは……。

 言うまでもない事だが、戦闘能力については、最早疑いようがない。ぶっちぎりだ。
伏黒が使役する式神は勿論の事、特級の呪霊や呪術師ですらが、事と次第によっては、ベリアルにしてみればオモチャにしかならないだろう。
況してベリアルは、今回の戦闘に際して、己のサーヴァントとしてのスキルは勿論、召喚した当日に彼が出来ると口にしていた魔法の類も、宝具も、一切使っていない。
底が透けるような行動を一切見せていないという事であり、早い話、本気には程遠い戦い方をしていたのである。していてなお、あの鮮やかさ。
恵が使う十種影法術、その歴代の使い手――それこそ恵に至るまで――にとっての究極の夢であり野望とは、最強の式神である八握剣異戒神将魔虚羅の調伏かつその使役であるが、今現在恵は、強さだけならそれに匹敵するか下手すれば上回る存在を使役している事になる。限定的かつ違った形ではあるが、夢は確かに叶っているのであった。

 一方で、使役する式神として見た場合、ベリアルは疑いようがない程最低のサーヴァントだ。
式神にとって強さ以上に重要な要素とは、術者本人に絶対服従を誓っているかという事にある。つまり、逆らう余地がないと言う事であり、翻って、
主の為に身を粉にして働く以外の自由意志が存在しない事が望ましいのである。十種影法術の式神が、主に逆らって良い場面があるとすれば、調伏の儀の際の一瞬だけである。
あの魔虚羅ですら、――誰も調伏した事がない為確かめようがないが――調伏の儀をクリアさえ出来たのなら倒した主に絶対服従なのである。
そう、倒したのなら。恵はベリアルを倒したわけでも、実力で屈服させた訳でもない為、ベリアルの自由意志を認めないなどナンセンス極まる主張であるし、
そもそもある程度行動の幅を広げさせようとしたなら、自由意志は多少なりともあった方が展望が開けてくる。頭ごなしに、お前は絶対に従え、と言うような考えでは恵はない。
が、それにも限度は勿論あるのだし、ベリアルはぶっちぎりで酷い。先ず、NPCを此処まで虐殺する理由が存在しない。
それについて突っ込んだ所で、『目撃者何て生かしておく意味ないだろ?』と言う正当性で反論してくるだろうし、その意図は、不肖不服ながら解らないでもない。
だが、そんな言い分などベリアルにとっては二の次だろう。ただ、自分の悦楽の為。ただ、恵が困る様子を見たい為。この惨劇を引き起こしたに違いあるまい。
反省の色もまるでなく、恐らくは邸宅内の冷蔵庫かワインセラーから持ってきたであろうワインを空けるこの男の何処に、人を殺した慙愧を感じ取れるのであろうか。

 サーヴァントとして、使い魔として。最も重要な要素である戦闘力については比類なく、そしてその一方で、戦闘能力と同じ程に重要な資質である性格が最低を極むる。
目も眩むような長所を、それを補って余りある巨大なデメリットで帳消しに、使い勝手を何処までも悪くしているサーヴァント。それが、ベリアルであった。
恵から見たらこれは、クソ、としか言いようのないものだ。式神とは使役するものであり、そして、絶対に術者に牙を剥かない、裏切らない事が大前提となる。
信用が出来ない、と思わせてしまうとそれはもう式神としては落第なのだ。実際は裏切る事はないのだとしても、もしかしたら……?と言う可能性を頭の片隅に置いておくと、
術が鈍る、身体のキレもなくなる。不安で仕方がなくなるからだ。そんな物は、無い方が良いのは当然の話であって、斯様なifを抱かせる時点であり得ない話なのだ。
それを念頭に置くと、ベリアルは爆弾としか言いようがない程危険なサーヴァントだ。恵など歯牙にもかけぬ強さでありながら、自由で邪悪な性格をしていて。
そしてそもそも、恵はベリアルに対してなんの術も施していない為、呪術的に彼の意思も行動も制御・コントロール出来ないのだ。総合的に見れば、限りなく最悪のサーヴァント。それが、恵から見たベリアルなのであった。

「まぁ機嫌を直そう、マイ・ロード。何の罪もない者達の、血と汗と涙を搾取して買い上げた、御高いワイン。それで一先ずは、乾杯だ」

「未成年だ」

「見りゃぁ解るさ。羨ましい程若くて、青臭い坊やだ。だがそれが、酒を飲んじゃいけない理由にはならない。俺が許すさ」

 一先ず、恵は、危険だと解っていても、ベリアルに近づく事にした。
彼の座るテーブルへと近づいて行き、その対面の席に、恵は腰を下ろした。

「ベリアル、ともあろう者が酒泥棒かよ。名が廃るぞ」

「戦利品の収奪だと考えれば、結構遠慮した方なんだがねぇ。現ナマとか、宝石とか、貴金属のインゴットとか、株券とか? 腐る程あったけど、それらを無視してワインだけだぜ。寧ろ男が上がると思うんだが」

「そいつらは足が付くって解ってたから、取らなかっただけだろ」

「まぁそれもあるが、本当に興味はないさ。ルピ……ああ此処じゃ円、だったな。円も、ラグジュアリーも、金銀プラチナも、権利書も。人間が決めた仕来りだ。俺は欲しいと思わないな」

 言いながら、ワイングラスに、ものを注ぎ終えたようだ。2つのグラスの内の1つを手にしたベリアルは、シュッとその手を動かした。
テーブルクロスの敷かれた、直径にして十m程もある大きなテーブルの上を、滑るようにワイングラスがスライドして行き、やがて、恵の真ん前で止まった。
ワインは一滴も零れる事が、なかった。それどころか、ワインの液面には波一つ立っていない。神業、に近い技術である。

「安心しなよ、こう見えてソムリエでね。ワインに毒を入れる何て信条上、許せないんだ」

「そうかい、安心したよ」

 グラスを持ち、矯めつ眇めつ眺める事、数秒。
伏黒は、足元に転がる、切り離されたメイドの頭部のすぐ横に、ワインを零し始めた。頭に掛からないようにするのは、伏黒なりの、配慮であった。

「知ってるか? 中央アメリカの国には、酒を飲む前に先ず死者を弔う為に地面に酒を垂らしてどうぞ一杯ってする風習があるんだとよ。理不尽に殺された上、手向けのワインにまで毒を入れられてたら叶わないだろうからな」

「フッ、ウフフフフフ……。面白いねぇメグちゃん。俺の目に狂いはなかった。やっぱり君は面白い、気に入ったよ」

 ベリアルも、恵に倣ってか、ワイングラスの中身を絨毯に垂らした。
……尤もこの男の場合は、恵と違って、足元でうつぶせに倒れる執事の死体にダイレクトに垂らしているから、配慮も何もあったものではないのだが。

「気に入った、じゃねぇよ。こちとらお前みたいな変態堕天使に気に入られて最悪の気分なんだよ」

「君は――」

 その言葉に、底冷えするような気風が内在されていると知ったのは、一瞬であった。
声音は何時も通り、浮かべている表情は相も変らぬ不敵で人を喰ったような微笑み。
なのに、纏う雰囲気に、震えを走らせる程の冷気を絡ませて。別種の生き物に、変わってしまったのかと思うような変貌ぶりに、伏黒の瞳が、やにわに鋭くなる。

「罪深い、魔性の男だ」

「何処がだよ。自分の顔に自惚れた事はねぇぞ」

「こう見えてもネゴシエーターでね、人を見る目には自信があるんだ」

 先程はソムリエと言っていたじゃないか、とは突っ込まない。
召喚当初に恵に対して「デザイナーなんだよ」と説明し、その2時間後には「デイトレーダーさ」と口にするような嘘吐きには、まともに付き合うだけ無駄なのだ。

「自覚がない……って言ってもこれは自覚する方が厳しいか。代わりに俺が言っておいてあげるけど、君は俺みたいな奴に好かれるんだよ」

「願い下げだ、そんなカリスマ」

「カリスマは、捨てるんじゃない。衰えるものさ。君はまだまだそいつと付き合っていかなくちゃあ行けない」

「で、何で俺はお前みたいな変態のデパートに好かれるんだ?」

「オモチャになってくれるから」

 聞かなければ良かったと、恵は思った。

「俺達の世界でも、良いリアクションを見せてくれる奴は好かれるんだよ。可愛げがあるからね。見ていて飽きない」

「もう良い、喋るんじゃ――」

「現に君は、もう誰かの御手付きだ」

 恵の言葉が、途中で止まる。ベリアルは、笑みを崩さない。

「自画自賛で面白くないだろうが、俺もセンスには自信があってね。だが君の才能を見出している人物も、中々良い美観を持っているらしい。良いよねぇ、トモダチは多いに越した事はない。出会えるのなら、あって話してみたいよ」

 誰だ、と恵は考える。
俺の交友範囲はハッキリ言って狭い。呪術師何てそんなもんだが、それにしたって覚えが――。
考えに耽る恵の意識を浮上させるように、ベリアルは、言葉を紡ぐ。

「どうせ共に働く事になるんだったら、面白い方が良い。つまらない奴だったら俺のモチベも萎えるってもんだが、君は見どころがある、伸びしろもだ」

 「だから、さ」

「君になら見せてあげても良い。世界の終末(おわり)って奴を、さ」

「……ハッ」

 諸手を上げて、恵は、ベリアルの提案を鼻で笑った。嘲りの、笑み。

「魂を対価に取る提案でもされると思ったが、終わりを一緒に見よう、かよ。笑わせるなよ、俺でも知ってる大悪魔が何を提案するのかと思えば、トー横にいるメンヘラみたいな事言いやがって」

「……」

 沈黙。ベリアルは黙りながら、恵の言葉を待つ。感情は、読み取れなかった。

「どんな底抜けの善人でも、どんな下劣な悪人でも、死ぬ時は1人なんだよ。今此処でお前に殺されようが、お前の言う終末を一緒に見届けようが、俺にしてみれば同じ。死の重みは平等だ」

「同じなら……別に良いんじゃない?」

「何時だったか言われたんだよ。呪術師に、悔いのない死は存在しないってな」

 魔は、人の心より生ずる。呪いと呼ばれる物の真理は、まさに其処にある。
怒り、恨み、恐れ、哀しみ、嫌悪、後悔、殺意、焦燥、迷い、憂鬱、欲望。人の思念は、ほんのきっかけと力場を与えるだけで、容易く形を成す。
正しい感情なら良い。だが、人間の負の感情とは、正の感情を塗り潰す程に強く、そして、形が与えられたその時、甚大な被害を与えてしまう。
負の感情より出でて、形を成したその呪われた存在を祓う者こそが、呪術師であり、そして彼らの歩む道は、茨で舗装され。果てぬ暗雲だけが立ち込める、辺獄(リンボ)への道程であった。
呪いに殺された者の死体を見る内に。人から産まれた魔その物を殺して行く内に。呪術師もまた、ゆっくりとその魔に、取り込まれて行く。
呪いを祓う者が転じて、呪いに呑まれて狂いだす。木乃伊取りが木乃伊になる、と言う所の話ではないが、往々にしてその様な事は起こり得る。
そして、それすらもが、呪術師の後悔の一例に過ぎぬ、と言う事実。伏黒恵はそれが解る。呪術師は今際に何を思うのか。身を退いて表社会で生きるべきだった?
この戦いには乗るべきではなかった? やり直せるのなら……? 恵は、もう、引き返せぬ門を叩き、その先を歩んでしまっている自覚がある。
今更、この道を引き返すつもりもない。その覚悟があっても、きっと、自分は後悔して死ぬと思っていた。それが何なのかまでは、まだ、解らないけれども。

 ――一つ、それを踏まえて言える事があるとすれば。

「俺はお前が嫌いなんだよ、ランサー。反吐が出る相手に看取られて死ぬなんて、死んでも嫌だね」

 要するにこれは、個人的な好悪の問題。
お前が嫌だから、一緒に死ぬのなんて御免被る。それだけで終わる話であるし、同時に、これ以上説明が要らない程納得の行く理由。
ただでさえ何かしらで後悔して死ぬ可能性が高い身であるのだから、解りきっている後悔の種を抱え込む必要など、欠片もないのであった。

「死ぬ時は、孤独か」

 ベリアルは、怒るでも不機嫌になるでもなく。平然とした態度で、恵の言った言葉を、反芻するだけにとどまった。

「真理だな。それに関しては君が正しい」

 意外なものでも見るような目。恵は驚いた。茶化すでも煙に巻くでもなく、素直にこの男が認めるなど。

「だが、少しロマンチストになった方が良い。キャベツ畑もコウノトリも信じないのは解ったけど、多少なりの夢位は持っていた方が、人生は楽しいぜ」

「悪魔の語る夢かよ。胡散臭い事この上ないな」

「孤独じゃない滅びがあるかも知れない」

 グラスにワインを注ぎながら、ベリアルは言った。

「憧れの人が、見たいと願って已まない光景を、共に眺める。言ってしまえばそんな簡単な夢さ」

「それがお前にとっては、世界の終焉、って事だろ」

「俺の夢でもあるが、同時に、俺の救世主(メシア)の夢でもある」

「救世主? お前と救世主は、敵同士じゃないのか」

 この世界に於ける救世主とは即ち、キリスト教における、大工の息子の方がとみに有名である。そして、彼と悪魔とは、反目しあう仲であった筈ではないのか。

「型にハマり過ぎだ、メグちゃん。俺を悪魔と呼ぼうが構わないけどね。悪魔にも、救世主は必要だろう? 悪には悪の救い主って奴が居るものさ」

ワインにグラスを注ぎ続ける。ベリアルは――止めない。ワインが縁から溢れ、零れ出し、テーブルクロスにシミを作り始めた。

「イカレた上司だったよ。己の知識と、それによって産まれる結果にしか興味がなくて、その出来る事を増やす為に、新しい知識を過剰なまでに求める、偏り過ぎた天才だった」

 「だけど、ねぇ」 

「既に自分の住む世界が、余りにも終わってる事に彼は気づいてしまったんだ。何を契機にして何時滅んでもおかしくない、破裂寸前の水風船(コンドーム)。そんな酷い世界を維持する為に、役割や契約と言う形で在り方を縛られ続ける獣達。そして、そんな世界をいつまでも改める気がない、やる気のない神サマ。俺の救世主様は、祈るでもなく、諦めるのでもなく、世界を滅ぼす事に決めたのさ。踏ん切りが付かないでグズついてる神サマの代わりに、リセットボタンを押してやろうってね」

「下らねぇ」

 長広舌になりそうなベリアルの主張を、一言で、恵は切り捨てた。

「お前の生きた世界がどんなクソな世界だったかは知らない。そんで、多分、頭がキレるお前の事だ。俺のいる世界がクソだって事も解るだろ? 呪術師何て奴らが世の中にいて、何も知らない人間が垂れ流した呪いを人知れず掃除する事で、平和が保たれてるんだからな」

 究極の所、呪術師とは何かと言われれば、人間の産み出してしまった負の感情の発露――呪いを祓う者達の事を言う。
体裁の取り繕った言い方をしたが、言い方を変えれば、スカべンジャーでしかない。人の命など容易く刈り取れる呪霊を命がけで祓い、人の世の平和を乱させない為の、歯車。
究極の所、大勢の人間が排泄した負の感情の表象物を掃除する、ゴミ処理者、社会の『ケツ持ち』に過ぎないという事。つまり人の世とは、一定数の呪術師に不平等を押し付ける事で、辛うじて回っているという事でもあるのだ。

 ――だが、しかし。

「人間は、全員に何らかの形で不平等を課せられている、という一点においてのみ、平等なんだろうと俺は思う」

 何て事はない、呪術師が非呪術師が産み出した呪いの掃除に追われると言う不平等を課されているのと同じように。
表の世界に生きる人々もまた、何らかの形で不平等や不幸せを強要されているのである。そしてその中でも最悪の形が、呪霊に殺される、と言う結末だ。
満たされないから、差別されているから、平等ではないから。であるが為に、呪霊は産まれるのである。

 そして、恵には、その不平等の犠牲者となってしまった家族がいた。
疑いようのない善人で、誰もが認めるお人よし。誰かを呪う事の無為さを誰よりも知っていて、大切な誰かを思う事の尊さを知る伏黒津美紀は、恵の義理の姉だった。
受ける報いなどある筈がない女だった。言うのが気恥ずかしかったけど、幸せになって欲しい人だった。だが、そうはならなかった。
貧乏くじでも引かされたように、運悪く彼女は呪われ、寝たきりの状態になって入院したその事実を認識したその時、恵は、因果応報と言うシステムはメンテナンス不足で錆び付いた、ポンコツのようなシステムである事を実感した。

 ベリアルの言う通り、世界と言うのは確かに、終わっているのかも知れない。
個人の思い付きと、たった1000年足らずの準備だけで、容易く終焉を迎えてしまう可能性があり、そうでなくとも、何処に出しても恥ずかしくない善人が呪われてしまう。
ああ確かに、酷い世界だ。現実は理不尽で不平等で、無慈悲極まる。恵だとて、そんな世界を呪おうとした事もある。

「人や、世界の無惨さを呪った所で、疲れるだけだろ。悪魔に説教何て出来る柄じゃないが……お前も、大切な奴の事だけを思ってみたらどうだよ。ランサー」

「……ふむ」

 其処で漸く、ベリアルはワインをグラスに注ぎ続ける事を止めた。
自らの意思でやめたのではない。瓶の中身が、空になったから、止めざるを得なくなっただけである。

「参考までに聞きたいんだが……メグちゃん、バージン?」

「あぁ?」

 意味が、解らない。話の前後の文脈を、余りにも無視しすぎている。

「バージンって……。男に使うんだったら、童貞、だろ」

「知ってるさ。俺の個人的な美意識の問題でね、童貞って言葉は好きじゃない。品がない。バージンの方が、響きが都会的だろ?」

「知らねぇし、質問の意図が掴めない」

「女の受け売りだろ、今のメグちゃんの言葉」

 驚きが、恵の瞳に灯る。解るのか、あの程度の会話で。

「面白い男だよ、メグちゃんは。俺はもっと知りたい。だが初めてなのにガッつかれるのは、君は嫌いなクチだろ? だから、今はこれだけを聞いておきたいな」

 瓶を、後ろに放り投げる。死体の頭にぶつかり、がしゃんと、砕け散った音。

「どんな女がタイプなんだい?」

「……その質問には、いい思い出がない。答えたら殺されかけたからな」

「えぇ……傍若無人過ぎないかいそいつ」 

 それは、そう。今思い出しても恵は納得が言っていない。
だが、この質問に関しては、はぐらかす理由も特にない。答えは決まっているし、迷いようがない。 

「好みとか、タイプとかじゃないけどな……」

 目をベリアルの方に向け、彼の赤い瞳を見据えたまま、口を開いた。

「揺るがない人間性があるんだったら――俺はそれ以上何も求めない」

 つくづく、俺はシスコンだなと、内心で自嘲する恵。言っている傍から、彼の脳裏に、津美紀の笑顔が過っていた。

「……揺るがない、か」

 恵の言った言葉を舌の上で転がし、ベリアルは、頭上のシャンデリアを見上げた。

「俺もそれに惚れたんだっけね……」

 彼は……ルシファーは、何時頃から、あんな性格だったのであろうか。
本人の口から、それが語られた事もないし、多分ベリアルに語るようなセンチな性格ではないであろう。
彼に生み出された時には既に、ルシファーは、星の民の間ですら異端児扱いされる程、知識を得る事に対して偏執狂的な執着を抱いていた狂人であった。
世界の在り方に気づいたのは、何時頃だったのか。当に終わっている世界の終末を成就させようと決めた理由は、何だったのか。ルシファーは、それを黙して語らない。
だが、ベリアルにしてみればそんなものはどうでも良い。終わった事など、過ぎた事など、些末である。
今のルシファーは、美しかった。その事実だけで、良いのである。

 何処まで行っても自分本位。
過剰なまでに知を求め、それをアウトプットし世界を滅ぼす事に尽瘁する、その凄烈なまでの、狂気!!
その危険性が露わになり、あらゆる者が敵に回っても。最高傑作と称し、常にその動向に気を配っていたルシフェルに、間違っていると喝破され、一閃の下に引導を渡されても。
ルシファーは、揺るがなかった。知った事か、それでも俺は成し遂げる、何も間違っていない。そうと言わんばかりの態度で、敗北を受け入れたあの男は、余りにも、気高かった。

「つまらない、って言わないんだな」

 恵の言葉を、ベリアルはかぶりを振るって否定する。

「俺の好みのタイプと全く同じだ。やっぱり俺達は、運命の相手のようだよメグちゃん」

「気色悪ぃ」

 舌打ちと同時に、不機嫌な表情を浮かべる恵を、面白そうに眺めるベリアル。

「さっきの提案に対しての答えを、今此処で言ってあげるよ」

「さっきの……?」

 ああ、と恵は思い出した。世界を滅茶苦茶にする事なんてやめて、大切な人の事を思って見ろ、という趣旨の事を言ったっけな。

「今も思ってるさ」

 「寧ろ――」

「思い過ぎて、壊れちゃったんだよ、俺。笑っちゃうよなぁ、恋煩いも良い所だ」

「テメェが惚れる位なんだ。相当イカレた女(ひと)なんだろ?」

「そうだよ、2000年経っても忘れえぬ男(ひと)だ」

 こんな奴に惚れられるなんて、難儀なのもいるもんだ、と。思ったところで、恵は席を立つ。

「出るぞ」

「結局ワインに口を付けずに終わったな。君の顔なら幾らでも女の子を落とせるだろうけど、ピロートークに付き合う位の愛想は見せてあげた方が喜ぶぜ」

「死臭の中で酒何て飲めるかよ」

「成程確かに」

 ヘラヘラと笑うベリアル。

「……二度と俺の命令を待たずに殺すんじゃねぇぞ」

 今の今まで、表に出す事をずっと抑えていた、ベリアルに対する本気の怒りを、その一言に滲ませる。地の底から響いてくるような、重くて低い声音だった。
忘れていた訳でも、見て見ぬ振りでも、なかった。なぁなぁで、済ませる訳にも行かなかった。
機を、窺っていただけだ。伏黒恵は、今回のベリアルが齎した惨禍を、決して許して等いない。激怒すら、していた。

「泡沫の夢の世界の住民に、命なんてあるのかな?」

「だとしても、だよ」

 ベリアルの言い分は解る。いやそれどころか、聖杯戦争を勝ち抜くと言う点で言えば、彼の意見の方が本来的には正しい。
NPC、である、人間という呼び名を使わず、RPGゲームにでも出て来る、同じセリフしかしゃべらないような連中と、同じ名前の生命体なのだ。
違うのは、本当の人間そっくりの思考回路と言葉を使う事。殺せば――悲鳴を上げて血を流す事。
この世界での罪は、恵の元居た世界の罪ではない。それは解る。サーヴァントとの戦闘の余波で被害を被ろうが、一切の関係がない。実際それはそうなのだろう。
聖杯戦争が終われば最早用済みの生命体に、良心の呵責を抱く事など何もないのだし、彼らに遠慮して勝てる戦いを取り零す事の方が、寧ろ愚かであるのだろう。

「合わせる顔が、なくなるだろ……」

 それでも恵は、自分の人間性を捨てたくなかった。
呪術師は、絵本の中に出て来るような、ハッピーエンドを齎す正義のヒーローでもなければ、ご都合主義的に全ての事態を解決させるデウスエクスマキナでもない。
呪いを祓えるだけの、人なのだ。飯も食う、眠りもする、セックスもするし糞もする。先立つ金だって勿論いるし、住む場所だって必要なのだ。
全く、市井の市民と変わらない。ために、全てを救うなんて以ての外。好き嫌いのある人間なのだから、あらゆる人間を平等に救う事も、人間心理的に先ず、不可能。

 解っていて――伏黒恵は、人を助ける側に立ちたかった。
平等じゃない。不平等に人を助けるのである。死すべき者は切り捨てるし、自分が優先して助けたいと思う者は助けたい。
反吐が出る程自己満の塊、独善極まるエゴイストだ。そんな事は解っている、ヒーローとは程遠い、単なるわがままな糞餓鬼な事は恵自体が百も承知である。
解っているから……帰るべき場所があるから。恵は、身綺麗でありたかった。底抜けの善人の傍にいて、辛うじて許される、自分でいたいから。
ふとした日常の、何気ないワンシーンで、殺す、などと言う選択肢が浮かび上がるような人間に、なりたくなど、なかったから。

 ベリアルが殺したとは言うが、それは彼を御すべきマスターである恵が、未熟だったから、上手く制御してなかったから。
引き起こしてしまった結果であるのだ。俺は悪くない、と言って言い逃れる事は出来ないし、許さない。この堕天使の罪は、伏黒恵の罪なのである。

「――零れたワインを、元のグラスに戻せる世界に興味があるんだったら、俺を頼って欲しい」

 なみなみと、ワインで満たされたグラスに、人差し指を第一関節まで突き入れて、ベリアルが言った。

「俺と一緒に、堕ちるとこまで堕ちよう。君の理性、バターみたいに溶ける様子が俺は見たいよ」

 話す事が何もなくなったのか。
恵は、言葉を返す事もなく、部屋を後にした。その様子を見届けたベリアルは、指についたワインをペロリと舐めてから、恵の後を追った。
後には、屍だけが広がる大広間と、一杯のワインだけが、残されるだけになるのだった。



【クラス】

ランサー

【真名】

ベリアル@グランブルーファンタジー

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷A 魔力A+ 幸運A 宝具A

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。事実上、魔術ではランサーに傷をつけられない。
星晶獣、と言う括りの中で最も格の高い天司であり、その中でも最古かつ最上位の存在であるルシフェルと、同時期に作成された存在。それがランサーであり、高い対魔力性能を宿している。

【保有スキル】

星晶獣:A+++

「実は俺は王子様なんだ。厳しいしきたりが嫌でね、抜け出して来たんだ」

数千年の昔、彼方よりやって来た星の民と呼ばれる種族によって創造された、星の民に対しての奉仕種族。星晶獣であるかどうか。基本、作成時期が初期に遡れば遡る程高位の星晶獣である。
ランクAは作成時期が初期である事もそうであるが、司る権能が極めて高度な概念的なもの、広範に影響を及ぼす物、そして何より、星晶獣の中でも特に高位の存在である、
天司に相当する存在であるか如何かと言うランク。ランサーは天司、その中でも最古かつ最高位の格に相当する星晶獣であり、あらゆる星晶獣の中でもトップクラスの格を有する存在である
最古の星晶獣であるルシフェルと殆ど同時期に作成された存在の為か、獣としての特攻よりも神性、天使に対する特攻が乗る。

信仰の加護:EX

「本当は神父なんだ。神の思し召しを疑った事なんて一度もない」

一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。
尤も、ランサーが信じるのは神でもなく、それに類する最高存在でもなく、彼が心の底から崇拝する男ただ一人だけ。精神攻撃を完全に無効化する。

狡知の使途:EX

「本当は弁護士って言っても信じないだろう? 人を信じる事が一番大切なんだ」

星晶獣としてランサーが司る物、それがスキルとなったもの。権能の一種であり、このスキルは封印されない。
ランサーが司る物とは『狡知』であり、より言えば知識全般の事である。知識として体系化されている物であれば、ランサーは己が技術として振るう事が出来る。
ランクにしてA+相当の魔境の叡智、蜘蛛糸の果て、邪智のカリスマを内包した複合スキル。特に、本人の知識に依る物が大きいスキルに関しては、これを完全コピー出来る。

終焉の担い手:C

「それじゃ、良き週末を」

終わりを運ぶ者、破滅を呼ぶ者、結末を齎す者。その世界観、或いは神話体系に於いて、破壊や滅びや終局を担っているか。或いは、担ったか。
本来であれば神霊の振るう権能に相当するスキルであり、勿論の事、権能相応の力を発揮する事は、サーヴァントにまで零落した身では不可能である。
そのため、一挙手一投足に粛清防御を貫く貫通効果が付与され、相手を破壊する、抹殺すると言う行為の全てに有利な判定を得る程度の効果にこれは留まる。
ランクCは世界の滅亡手前まで策謀を進められるたかと言うレベル。本来の世界線に於いても、異なる世界線に於いても、ランサーが世界の滅びを叩き付けられていない。

単独行動:C

「俺との夜は長いぜ?」

本来はアーチャークラスのクラススキル。マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能

【宝具】

『楽園は閉ざされり、其は刑死を打ち据える者(Paradise Lost)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
原初の星晶獣である天司の中に於いて、最強と謳われた存在であった、星晶獣サリエルから奪った翼が、宝具となったもの。
発動すると、まさに万人がイメージする所の悪魔そのもののような、角が生え、恐ろし気な顔つきになり、本気になると展開される蝙蝠の翼が八枚にまで増えるようになる。
全ステータスが1ランクアップする他、宝具ランク相当の勇猛スキルが追加され、更に、スキル・終焉の担い手のスキルランクが1ランクアップする。
また、刑死を司ると言う星晶獣から奪った宝具の為、副次効果として、『罪』を抱いている者に対する特攻効果を得るようになる

『堕落のすゝめ(チェイン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ランサーが己の魔力を用いて創造出来る、チェインと呼ばれる鎖飾り。これを全般的に宝具として扱う。
装備するだけで攻撃力の向上、攻撃のクリティカル率の上昇、耐久力のアップや全体的なスピードアップなど、様々な恩恵が得られるようになる。
また、このチェインの中には、装備するだけで本人には意識できないデメリット、耐久力の低下や無意識的なスリップダメージ、宝具発動後大ダメージなど、
無視出来ぬ甚大な被害を及ぼすものまで存在する。なおそのデメリット付のチェインは、ランサー本人が装備した場合に限り、それが起きなくなる。チート?

厳密に言うとこの宝具は、ランサーが生前使っていた宝具ではなく、ランサーを倒したある人物が、彼の残した霊的材料を加工して作り上げたものが、
逸話としてランサーの宝具に登録されたに過ぎない。ランサーはそのある人物の事をよく知っており、絶対にやりそうな人物である事もよくよく理解している。

「俺にしては珍しく真面目な忠告をした筈なんだけどなぁ……。本当に特異点……空の民って言うのはさぁ……」

【weapon】

サイス・オブ・ベリアル:
ランサーが所持する大鎌。一品物の場合は紫色を基調としているが、量産品を投影する場合は透き通った赤色になる。
ランサークラスの適性を満たす道具であり、一品物も、投影した量産品も、強い闇の属性を秘めており、対天使・対聖なる者特攻。
他の天司達が特異点に力を与えている様子を見ていたランサーは、彼らの真似をして、そして、特異点を堕落させる為にこの槍と言うか鎌をを進呈した。
結果として特異点は堕落寸前まで行ってランサーの操り人形になりかけたが、なんと仲間達の声に呼び戻され、意識を戻したばかりか、ついでに堕落していたら得られた筈の力まで、
そのままくすねて復活してしまい、終わってみれば堕落はしないわ敵に塩を送る形になるわ何かパワーアップしてしまうわでもう滅茶苦茶。これには流石にランサーも呆れたという。

投影魔術:
上述の大鎌以外にも、小回りの利く武器を投影出来る。非情に頑丈で、Aランク相当の武器系宝具との打ち合いにすら、容易く耐える程。

魔術:
下手なキャスタークラス、笑止、と言える程卓越している。

【人物背景】

原初の星晶獣であり、星の民ルシファーの直属として堕天司を自称する存在。
知性の進化の一環として「狡知」を司る。かつて原初獣達を煽り、叛乱を促した。その性格は下品で下劣、最低最悪な不埒者として知られている。

【サーヴァントとしての願い】

ルシファーに代わって、終末の成就。メグちゃんが堕落する様子を見るのも、悪くはないかな?



【マスター】

伏黒恵@呪術廻戦

【マスターとしての願い】

願いはあるが、聖杯を使ったら終わりだろ

【weapon】

各種銃器:
携帯性に優れる拳銃を主に用いる。

【能力・技能】

十種影法術:
影を媒介とした十種の式神を召喚する術で、禪院家相伝の術式の一つ。手で影絵を作ることで、対応した式神を顕現させることができる。
式神は最大で一度に二種顕現させる事が出来、この術式で呼び出された式神は自由意志や戦闘能力と言う点で非常に優れる。
だが一方で、完全に破壊されるとその式神は二度と顕現できない、正真正銘の一品もの。だが破壊されて終わりかと言うとそうではなく、
壊された式神の遺した術式と力は、他の式神に引き継がれる。また拡張術式によって二種類の式神を合体させる事も可能で、総じて、あらゆる点に応用が利くオールラウンダーな能力。
また、影を操ると言う能力の都合上、恵本人も己の影や他人の影に潜航する事が出来る他、己の影に道具を落とし込む事で、秘密裏に道具の持ち出し等も行う事が出来る。
但し道具の持ち出しについては、入れた道具の重さがダイレクトに術者に伝わる為、重すぎる物を影に入れてしまうとその分スピードが落ちると言うデメリットを負う。

嵌合暗翳庭:
領域展開。
領域内を液体状化した己の影で覆い尽くし立体的な影の沼を構築。その影を媒介に印を省略した無数の式神の即時展開を可能にする。
加えて領域内は一種の底なし沼のような状態になるため、足に呪力を流していないと他者は影の底に沈んでしまう。
領域内では、上述の式神の同時に顕現させられる数の縛りが撤廃され、影を変化させて同じ式神を無数に出せるようになる、という、手数が単純に倍増。
他にも、全体が影である為恵本人は自由に影を潜って攻撃を回避出来、影を滑る事で高速移動も可能になり、影を変形させて自分そっくりの分身も作成できる。
影が広がるのは足元だけでなく頭上も、なので頭上からでも式神による攻撃が可能となり、文字通り全方位が攻撃対象となる。
極めて応用力に優れているが、これでもまだ未完成であり、発展の伸びしろが残されている。
また領域であるが為、領域内で恵は120%のポテンシャルを発揮でき、それに合わせて術式性能も大きく向上する。
但し作中に登場する他の領域展開使用者のように、何もない屋外では展開する事は非常に難しく、屋内のように閉じられ区切られた空間でなければ展開が出来ないのが弱点。

【人物背景】

不平等に、人を救うと決めた少年。決して自分は、ヒーローになれない事を理解している

渋谷事変終了後の時間軸から参戦。使用出来る式神などは、その時間軸で使えているものとリンクする。

【方針】

急いで元の世界に戻りたい。あとこの変態糞堕天使とはマジで縁切りしたい

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最終更新:2022年08月27日 23:36