「何だよこれ…」

始まりは困惑からだった。
稀咲、鶴蝶、イザナの3人に襲われ、ナオトから託されて過去に戻るはずだった花垣武道は気がつくと異界の東京都に飛ばさられていた。
そのまますぐに聖杯戦争に関する知識を流し込まれ、さらに困惑の色を濃くしていく。

「異界の東京都? 聖杯戦争? いきなり意味分かんねえよ…」

タイムリープが失敗したのか、ナオトは無事なのか、なぜこんな所にいるのか、多くのことがありすぎて状況を飲み込めず混乱していた。
置かれている状況についてあまりにも不明点が多すぎる。
何をすればいいのかも分からないまま、途方に暮れそうになったとき、ふと冷たい気配を感じ、一度思考を中断する。
まるで人ではない何かが自分を見ているような。

「人形…?」

気配がある方へと振り返る、そこにはツルリとした顔の人形がいた。
何の飾り気もない人型の物、それがゆっくりと独りでに歩いている。
不気味に思っていた武道だが、それは自分の方に向かって来てるのが分かると背筋が凍った。

先ほどまでとは打って変わり、まるで獲物を見つけたかのように迫ってきたのだ。
あれは自分を標的に定めたものだと。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


人形がなぜ襲ってきたのか、そもそもこの人形は何なのか。
分からないことだらけだが、分かっていることは今その人形に殺されかけていることである。

元々喧嘩が特別強くはない武道が追い詰められるまではそう時間はかからなかった。

ジワジワとダメージを与え、反撃は避けることに徹する人形。
それは戦闘用というより無力な人間を狩るような動きで、これが初めてというわけじゃないのが察することができた。

(どうなってんだよ、一体。何も分からねえのにこんな矢継ぎ早に色々起こりすぎだろ…)

困惑のまま、武道はどうすればいいのか答えを見つけられず、ただ目の前の脅威と対峙するしかなかった。
召喚されるという共に戦うサーヴァントは未だ現れない。
知識しかない武道に自分から呼ぶことは出来ず、その原因が分からない以上はなんとかこの危機を自力で脱出するしかなかった。

そんな状態で何度目かの蹴りを入れられる、そのまま地面に転がされ、まだやれると立ち上がる。
そんなやり取りを何度も繰り返している。
今までの動きを見るにどうやら相手は生かしてどこかに連れ帰る算段なのだろう、無差別に狙っているのか脱落したマスターを狙っているのかは不明だが。

ボロボロになりながらも何とか食らいついているが、肉体よりも今の武道の精神的に追い詰められる方が大きかった。
突然飛ばされたこの東京に仲間になってくれたみんなはいない、たとえこの戦いを切り抜けたとしても自分はただ一人だけである。

そもそもここから元の場所に帰れるのだろうか、タイムリープ自体が不具合を起こしてる可能性もある。
もしかしたらナオトが死んでしまってその影響が出たのか、それとも実は自分が先に死んでてここは死後の世界だったりするのかもしれない。
二度と現代に戻れないかもしれない、よく分からないまま全てがもう終わってるのかもしれない。

そんな不安が傷つく度に脳裏によぎる、そんな結末を考えてしまう。
再び身体が吹き飛ばされる、起き上がろうとする、しかしそうすることが出来なくなった。
身体を起き上がらせる力が湧かない、顔を上げられない、抗う気力が失われていく。
熱が冷めていく、意識が薄れて遠くなる。

「ナオ…ト…?」

声が聞こえた気がした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『君を…この現代で初めて見つけた時絶望しました』

聞き覚えのある声がする

『こんな情けなさそうな奴に全てを託さないといけないのか…って』

これは俺が飛ばされる直前にナオトがかけてくれた言葉

『こんな奴の…どこに姉さんは惚れたのか…不思議でした…』

それは今でもそう思ってしまうときがあるよ

『何度も失敗する君を見てて今はこう思う』

そう、俺は何度も失敗してきた

最初の人生から何度も、何度も

『ヒーローってこういう人なんだ…って』

そんな俺でもお前はヒーローって言ってくれたんだ

『君は…僕の誇りです』

色々至らない俺をそう言ってくれた

『最後の握手です』

か細いものでだろうと希望を繋げようとしてくれた

『やっぱり死ぬのは怖いですね』

そう言って笑ったナオトの覚悟はどれほどのものだったか

『さあボクの…息があるうちに』

だから俺は絶対に諦めないと誓ったんだ

この手にある熱を絶やさないために


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


武道は覚醒と同時に武道は回収しようと近くにいた人形を殴り飛ばしていた。
しかし怯んだものの痛手を与えることは出来ていない。
むしろ殴った武道の手のほうが痛めたくらいだ。

「こんな所で…死ねないんだよ…!」

だが気力は十分すぎるほど滾っていた。
さっきまで失われていた熱は嘘のように、全身から湧き出すような感覚だった。

確かに分からないことだらけで、それは全く変わっていない。
このまま何も考えず突き進むのがいいとは限らないのかもしれない。

(でも今そんなことはどうだっていい…!)

それでもここで諦めて終わらせるのは断じて違うと奮起する。

燃え上がる炎と立ち上る黒煙の前での誓い。
場地さんと千冬から託された東卍の未来。
そして、ここまで自分を導いてくれたナオト。

今までどれだけのものを託されてきたのか。
一体どれだけの誓いを立てたのか。

あの時逃げて全てが終わるはずだった自分の運命はここまで変わった。
だがそれでもまだ足りない、奪われたものを取り戻すにはまだ足りない。

目の前の人形に勝つ算段も一向に立たない、ただこのまま何も出来ずに殺されるだけである。

(だけど諦めねぇ! このまま終わらせちゃいけねえんだ!)

ここで死ねば完全に無駄死にだ、そんな結末は全てが無に帰すことになる。
自分一人だけのものじゃない、今まで繋いでくれた彼らの分まで背負って進んでいるんだと踏みしめる。
止まってはいけない、進まなくてはいけない。彼らから受け継いだ"熱"を絶やしてはいけない。

拳を振り上げて迫っていく、ただひたすらに人形を打ち倒すことだけを考えて。
その瞬間、拳の甲にある令呪が輝きを放つ。

彼のサーヴァントが今ここに召喚された。

「初めからその有様でまさかこの『私』を呼ぶなんて、随分と数奇な運命を辿っているのね」

声が響いた途端、突如出現した槍が今まで武道を苦しめていた人形を一瞬にして跡形もなく消し飛ばした。
あまりにも突然の出来事に呆然としていたが、すぐ我に返って召喚された自分と契約するサーヴァントとようやく邂逅する。

それは予期しなかったイレギュラー、あり得ないはずのタイムラグ。
元の世界における影響か、タイムリープから直接この異界に来たことによるズレか。
それらによる影響か、はたまた別の要因か。
召喚と同時に人形を容易く屠ったサーヴァントは自身を召喚した者へと身体を向ける。

「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ参上したわ。貴方が私のマスターかしら?」

通過儀礼とも言えるサーヴァントとしての口上を述べたサーヴァントと武道はここでようやく相対した。
その見た目は幼い少女であった、とても歴戦の強者とは思えない容姿だった。
だが一目で普通の少女でないことも分かっていた。
それは様々な装飾が施された大きな槍を携え、蝙蝠の羽を持つ――吸血鬼である。

「俺の名は…花垣武道って言って、マスターなんてガラじゃない。あくまで呼び名がそうなってるだけで、つまり…」

常人のものとはまるで違う威圧に押され、答えようとする武道の言葉がまとまらない。
だが退かず、今はただ自分の言うべき言葉だけを言おうと奮起する。

「奪われた仲間たちを救うために俺に力を貸してくれ、ランサー!」

武道はランサーの少女に頭を下げる、あくまで主従ではなく協力者として力を貸して欲しいと言ったのだ。

「そう…全てを取り戻すために戦うというのね。貴方は」

ランサーは目を細めてそう言った、武道の姿にどこか感じ入るものがあったように。

「この邂逅はもしかしたら私たちの運命を取り戻す旅に繋がるものかもしれない…。いいわ、共に戦う者として我が真名と宝具の名を託しましょう」

そうしてランサーは改めて自らの名を告げる、仮初めのものではなく自らの運命に刻まれた名を。

「我が真名はレミリア・スカーレット、そしてこれは我が運命の鏡像――グングニル・ムスペルヘイムよ」

これから自分は帰るべき場所に帰るために、彼女と戦うのだと武道は拳を握る。
彼らの想いを未来へとつなぐために。

「ああ、これからよろしくな。レミリア」

「ここで呼ぶときはランサーって呼びなさい武道、私も不本意だけど面倒になるもの」

「えっあっ、いやすみません…」

「そんなかしこまらなくてもいいわ、今の私はただのサーヴァントよ」

「ただのってサーヴァントの時点でなんか物凄いっていうか…」

ここに契約は結ばれる。
本来の運命から外れた者たちによる、運命を取り戻すための戦いがここから始まる。


【クラス】
ランサー

【真名】
レミリア・スカーレット(L80世界群)@東方Lostword

【属性】
混沌・中庸

【パラメータ】
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:A 魔力:A 幸運:D+ 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【固有スキル】
吸血鬼:B
ランサーは伝承にある種族吸血鬼そのものである。
高い身体能力や再生能力を持ち、吸血スキルや変化スキル、戦闘続行スキルを兼ね備えている。
ただし陽光や流水などの伝承にある弱点を持つ。

使い魔(蝙蝠):D
蝙蝠を使い魔として使役できる。
契約は必要なく、思念を送るだけで可能。

運命看破:B-
対象の様々な運命を見通すランサーの能力。
ある種の過去視や未来視とも言えるが、あくまで見通すのは運命のみであるため、漠然としたものしか分からない。

運命を操る程度の能力(消失):EX
数奇な運命を手繰り寄せると言われた能力だが、このレミリアは一度その能力を消失した。
そこから能力を徐々に取り戻していったのだが、それは復元や再現ではなく新たな能力として形を変えた。
『失われた言葉を取り戻す』という事象に関連するものには望む運命の糸を力強く握り、昇っていくことができる。 必ず、それができる。
その点だけが、かつての能力と違っていた。
今回の聖杯戦争においては自身と宝具の繋がりを強める以外には使用できる状況はないだろうが、もしこの戦いに取り戻す運命に繋がる何かをあるのならばその力を行使できるかもしれない。

【宝具】
『紅魔が背負いし運命の神槍(グングニル・ムスペルヘイム)』
ランク:EX 種別:結界宝具 レンジ:1?50 最大捕捉:1000人
ランサーが取り戻した『紅魔館』が、槍へと形を変えた姿。
物質的な紅魔館ではなく、紅魔館に刻まれた記憶を集積したような概念であり、いわゆる『情報体』なのだが、膨大な情報量が凝縮されている影響で形ある物体として顕現している。
ランサーは真名の解放をすることで名を失くした住民たちの記憶を限定的に召喚して援護させたり、、あるいはその力を槍に纏わせることで自身の力として使用するといった芸当が可能である。
同時に使用できる記憶に最大5つだが、使用した分の魔力を消費するため、最大数使用の多用は禁物である。
使用できる記憶は以下の5つである。
『虹色の門番』:気を操る武闘家の門番
『瀟洒な従者』:ナイフを武器に時間を操るメイド
『小さな使い魔』:魔力を扱える小さな悪魔
『精霊魔術師』:あらゆる属性の魔術を扱える魔術師
『紅魔の妹』:破壊の力と炎の剣を振るう吸血鬼
なおこの宝具は会話能力こそないが意思を持ち、『彼女』はランサーに忠誠を誓いランサー以外の者に使われることを拒否する。
また仮に奪われたとしても『運命』は必ず『彼女』をランサーの元へと帰すだろう。
『彼女』の運命はとこしえに主と共に。
『彼女』の宿命は紅魔館に住む者全てと共に。

【weapon】
『グングニル・ムスペルヘイム』
単純に槍としても使用可能、それ以外にも魔力を刃にして飛ばしたり、直線上にビームを放つといったこともできる。
投擲することも可能であり、投げた槍はすぐ手元に戻る。

【人物背景】
幻想郷にある紅魔館の主で、500年以上の歳月を生きてきた吸血鬼の少女。
なのだが、このレミリアがいた幻想郷は『ロストワード異変』と呼ばれる大異変により一度全存在が消滅した。
当然レミリアも一緒に消滅したのだが偶然か何者かによる干渉か、彼女は無から復帰した。
ロストワードの影響で従者や親友、妹の名は失くし、自身も彼女らの名を呼べず、思い出すらも失くしてしまった。
そうして彼女は紅魔館唯一の住民として奪われた運命を取り戻すため、異世界を渡る旅へと出たのだ。

こうした経緯からか、今の彼女は尊大な態度が鳴りを潜め、いくつもあった二つ名を名乗らず、ただの吸血鬼であると自称している。

【聖杯への願い】
奪われた運命を取り戻すことだが黒幕から直接取り戻すため、不確定要素もある聖杯は不要
ここではマスターの従者としてその務めを果たすつもりである


【マスター】
花垣武道@東京卍リベンジャーズ

【聖杯への願い】
失った者たちを救いたいが、誰かを犠牲にして願いを叶える聖杯は受け入れられない
だから今の自分が望むのは無事元の世界へと戻ること

【weapon】
なし

【能力・技能】
タイムリープを所持してるが、現在は条件が満たせないため使用不可

身体は中学時代のものとなっている。
喧嘩の実力は平凡で強敵には敵わないが、根性だけは誰にも負けないものを持っており、頑丈さだけで言えばかなりのもの。

【人物背景】
タイムリープ前はボロアパートに住み、毎日頭を下げる最低な日々を送っていたが、何者かに電車のホームで突き飛ばされ、殺されかけたことがきっかけでタイムリープに目覚める。
それからは中学時代の彼女だった橘日向を救うために弟である直人と共に奔走。
その中で出来た仲間達と共に、最悪の現代を変える戦いに身を投じる事になる。

呼ばれた時期はイザナと稀咲に殺されかけ、直人との最後の握手からタイムリープ直後。
直人とのタイムリープから直接異界東京都へと召喚された。
彼らに奪われた運命を取り戻すために、今まで背負ってきた想いの分まで戦うことを誓った。

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最終更新:2022年08月30日 20:56