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「おいおいおいどーなってんだこいつはよぉ!?」

 あまりの理不尽に、男は空に向かって叫んだ。
 しかしその叫び声も背後から響く怒声にかき消され、どこに届く気配もない。
 追われる男、納村不道は愛地共生学園の元生徒だ。
 のっぴきならない事情により退学届を(人知れずこっそり)提出し、学園を抜け出そうとしていた。
 今まさに壁を乗り越え抜け出そうとしたその瞬間に、彼はこの異界東京都に立っていた。
 そう、なにやら大量に集まっていた不良たちの中心に、突然着地するかたちで。

「あんだよ異界東京都って、聖杯戦争って! 一体どこの漫画の設定だっつーの!
だいたい招待を受けてすらいねえのに拉致同然に連れてくるとはどういう了見だぁ!?」

 そうして、不道は数十人に及ぶ不良たちに追われている。
 突然脳裏に刻まれた情報に文句を言いつつ、見知らぬ道をただただ走る。
 しかし、どれだけ走ろうとも撒くことができない。

(何だあの不良共……体捌きは素人丸出し、だってのに突き放せねえ! 反射神経とかはクソ鈍いが、足の速さが人間じゃねえ、速すぎる!)

 不良たちの装束には『関東卍會』という文字が刻まれていた。
 見てくれはただの暴力慣れした不良、しかしその不良たちはなにがしかの力を得ている。
 今の不道は知る由もないが、彼らは一様に強化魔術を施されている『兵隊』なのだ。

「……ああッ、めんどくさ!」

 意を決めて、反転する。
 不良たちは一瞬たじろぐも、鴨がやってきたと立ち止まり鉄パイプなどの武器を楽しげに振りかざした。
 彼らに施された強化は凄まじく、それこそ下手なサーヴァントでも十人程で囲えば叩き殺せるほどのものだ。
 だが、しかし。

「おたくら、ホント素人だな」

 当てることができれば、の話だが。
 『雲耀』の動体視力を持つ不道は、見掛け倒しに惑わされることはない。
 一撃食らえばミンチになるような打撃であろうと、素人丸出しのテレフォンパンチ。
 数人の足を掬い、投げ飛ばす。
 転倒した不良は仲間を巻き込みもんどり打った。

「あばよぉ、とっつぁーん!」

 挑発混じりのウインクを送り、再び逃亡する。
 逃げ道がある限り、彼は逃げ続ける。戦うのはいつだって最後の手段だ。
 納村不道は自由と平穏を愛する、いつだって、どこであろうと。
 どれだけの理不尽に巻き込まれようと、彼はこのスタンスを崩さない。
 不良たちが起き上がる頃にはその視線を切り、不道はまんまと逃亡に成功した。

「あー、ちかれた。何だったんだぁあいつら……」

 適当な建物に入り、階段を上がり、屋上に出る。
 どうやら全部作りもんらしいこの街を、高い場所から眺める。
 手すりに乗りかかりぼんやりと景色を眺めていれば、訳の分からない現状が薄まっていき、昼寝でもするかという気分になってくる。
 もう、全部忘れてとりあえず寝るか、と思いかけてきた頃。

「どこかのサーヴァントの強化を受けてたんじゃないかな? 多分、だけど。あんな規模の強化、普通じゃ無理だと思うし」

「あん?」

 ふと、隣から声がかかる。
 一切の気配を感じさせること無くいつの間にかそこにいたのは、なにやらヒラついた服を纏うお嬢様然とした女だった。
 年の頃は不道と同じくらいだろうか、服装の所々にはゴツいベルトやポーチが取り付けられており、ただのお嬢様ではないことを実感する。
 何より、その眼差しの鮮烈なこと。
 不道はその瞳に、愛地共生学園の友人たちを思い浮かべた。
 彼女らもそれはまあ強い女たちだったが、このお嬢様の瞳は格別だった。
 『英霊』とやらが持つ物理的な強さではない、何処までも貫き通した心の強さを感じる。

「あー、おたく、ひょっとしてサーヴァントってやつ? ども、オレは納村不道」

「アーチャーのサーヴァント、ヴァージニア・マックスウェルよ。ええ、さっきからずっと一緒にいたわ」

「マジ? オレが不良に追われてた時も?」

「霊体化して一緒に走ってたわね」

「なら助けてくれよぉ!? 死ぬかと思ったんだが!?」

「うーん、そうしようと思ったんだけれどね?」

 アーチャーは少しだけ憮然とした顔で、首を傾げる。
 あの時の様子を顧みて、その上で、彼女はマスターを助けなかった。

「助け、必要だった? あの不良たちを蹴り飛ばして解決するような『助け』が。私には、そうは見えなかったんだけれど?」

「…………」

 その物言いに、道化じみた叫びを上げていた不道は瞠目した。
 何故なら、それは完全に図星だった。
 もし仮に、彼女が暴力によって不良を蹴散らすような解決策を取ったなら、不道はそれを『止める』側になっただろう。

「……ああ、そうだなぁ。オレはそんな助けは必要なかった。『暴力で何とかする』なんてのは、それしか無くなった時の最後の手段だ」

「それでしか止めることのできない悪だって、世界にはいるわよ?」

「オレは自由と平穏を愛する男だ。だから誰かの自由を奪うようなことは極力したくないね」

「なら自由に過ごしてみる? 戦わないままことを終えることは、難しいけど不可能じゃないわ」

「冗談。降りかかる火の粉は払わなきゃな。今のオレは首に縄かけられてるようなもんだろ?」

 この見えない縄がある限り、自分はどこにも行けやしない。
 それは彼にとって許し難いことだ。
 そう、この聖杯戦争とかいう、人様の行き先を強要するような自由を奪うものの存在は。

「クレーム受付って何処だと思う?」

「さあ? 強いて言うなら、この戦争の賛同者じゃないかしら」

「おたくは違うって?」

「私は正義を貫くわ。私なりの正義、私の信念を決して裏切らない。そのためには戦うことも、手を差し伸べることも。
そして、『戦わない』ことだって、私は選ぶ」

「へえ、そりゃ奇遇だな。オレもオレの信念を曲げたことはねえんだわ。ま、おたくは多少……いやかなりお節介だと思うが」

 強固な信念同士がぶつかり合えば、そこに生まれるのは必然反発だ。
 納村不道とヴァージニア・マックスウェルのスタンスは似ているようで微妙な行き違いがある。

 不道は悪行を見逃す外道ではないが、自ら首を突っ込み探しに向かうほど酔狂ではない。
 一方ヴァージニアはトラブルに首を突っ込みたがり、それを解決したがる。

 不道の求める『平穏』には、程遠いものだ。
 しかし、それでも。

「これから辺りを見回ろうと思うんだけど、一緒に来る?」

「おいおい、厄介事に首突っ込むのはゴメンだぜ。お断りだお断り」

「その割には、ついてきてるようだけど?」

「バーカ、これはアレだ、たまたま道が同じなんだよ」

「あっそ。それって、何処まで同じなのかしら」

「さあなぁ。数秒先かも知れんし、何処までも先かも知れねえな」

「素直じゃない男の子ねえ。そういうの、めんどくさいって言うのよ?」

「時代は男のツンデレがトレンドなんだよ」

「貴方みたいな男の子、ひっじょーに覚えがあるわね。素直じゃないマスターさん」

「オレもおたくみたいな女子、ひっじょーに覚えがあるわ。後そのマスターってのやめろ、なんか従えてるっぽくてヤダ。
おたくのことはヴァージ……ヴァー……ヴァー……めんどくせ、ヴァーって呼ぶわ」

「ヴァージニア! 人の名前を呼ぶ時はちゃんと呼ぶ! じゃあ、私は不道って呼ぶから――」

 互いのピンチを助け合い、時に譲り、譲られる。それがどれほど強固な信念であろうとも、仲間のためであるならば。
 仲間のためであるならば、誇りはあれど亀裂は決して生じ得ない。
 その言葉の交わし合いはまるで数年来の付き合いのように、『主従』ではなく『新たな友人』として、彼らの歩みは始まった。

 信念とは曲げるものではなく受け入れるものであれば、その心は何処までも王道に、強烈に。
 正すべき歪みをその瞳に捉えた時、放たれるのは拳か弾丸か、それとも。

 自由とは、自身を由とすること。
 自由とは、自らの力で道を切り開くことである。


【クラス】
アーチャー

【真名】
ヴァージニア・マックスウェル@ワイルドアームズ アドヴァンスドサード

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運A+ 宝具D

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:C
魔力への耐性。
ランク以下を無効化し、それ以上のものはランク分軽減する。
第二節以下の詠唱による魔術を無効化するが大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C
マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。
依り代や要石、魔力供給がない事による、現世に留まれない「世界からの強制力」を緩和させるスキル。
Cランクであればマスターを失っても1日は現界可能。
旅立ってまもなく運命の出会いを果たした彼女の強さの本質は仲間(チーム)ありきのものであり、故にスキルランクは高くない。

道具作成:C
ミスティックスキルから派生したもの。
傷を癒やす薬草であるヒールベリーや、属性魔術攻撃を可能とするジェムなどの消耗品を作成可能。

【保有スキル】
鋼鉄の決意:EX
彼女は己の間違いを認めても、決して他者の意見に呑まれること無く己のまま強靭に成長し断固たる『正義』を貫き続けた。
その意思の具現たるこのスキルは巌窟王に匹敵するEXランクの強度を備え、同ランクの勇猛と沈着スキルを包括する。
彼女の意志力は肉体の限界を凌駕し、宝具級の精神攻撃を受けようとその心は損なわれない。
決して迷いがないわけではない、しかし時に迷うことを知るからこそ彼女の決意はより強固に王道を往く。
こと『意志のぶつけ合い』において彼女は無類の強さを持つ。

ミスティック:C
アイテムの効果をより強力に引き出す神秘の力。
Cランクの場合アイテムの効果を魔術化し、効果対象を任意の味方4人までに拡大する。
またこのスキルの持ち主はキャスタークラスでなくとも『道具作成』が同ランクで付与されるが、その場合スキルランクが1段階下がる。

荒野のカリスマ:B
弱肉強食の荒野に生きる無頼漢たちを従えるカリスマの亜種。
国家や集団を統率する力ではなく、逆境において最も信じるに足る存在であることを示す、決して折れない信念の発露。
嵐の如き女傑はその風であらゆるものを巻き込み、立ち塞がるものを吹き飛ばす。

【宝具】
『バントライン93R&プリックリィピアEz』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大補足:1人
ARMと呼ばれる精神感応兵器。共通の特性として構造が複雑であるほどに、高威力であるほどに高い精神力を要求される。
ヴァージニアの持つ二挺一組の拳銃型ARMはそれぞれ両親であるウェルナー・エカテリーナ夫妻から一挺ずつ継承したもの。
グリップや銃身に精緻な装飾が施されており、純粋な戦闘用というよりは儀礼用色が強く、メインウェポンである以上に精神的な支えである。
火力は劣るものの非常に軽量かつ構造も単純で扱いやすく、ヴァージニアはその特長を活かし二挺撃ちによって威力の不足を補っている。
ARM改造は装弾数に5回、重量に10回のバランスで割り振っている。
夢魔ベアトリーチェを打倒した逸話からこの宝具には『実体無きもの』への特攻能力が付与されている。
これにより彼女は射程圏内であれば霊体化したサーヴァントさえも感知し攻撃をヒットさせることができる。

【weapon】
バントライン93R&プリックリィピアEz
各種属性ジェムによる魔術攻撃
蹴り(ファイネストアーツ)

【人物背景】
正義と信念を貫く女。元は田舎の名士の箱入り娘だったが、抑えきれぬ正義感と行方不明の父を探すため荒野へと飛び立つ。
幼い翼は幾度も現実に直面し、未熟な正義感はそのたび打ちのめされ続けた。しかしそれでも、彼女は己を曲げなかった。
ただ己を曲げなかったその先に、世界を救うも冤罪で追われ、たとえ悪党と謗られようと、それでも彼女は後悔だけはすることなく荒野を行く。

【サーヴァントとしての願い】
己の正義を貫く。ただ、引き金を引くことだけが、強さではない。


【マスター】
納村不道@武装少女マキャヴェリズム

【マスターとしての願い】
自由に過ごす。願いだの何だのとかいうセールスは受け付けてません。

【能力・技能】
薬丸自顕流の奥義『雲耀』から派生する内功『魔弾』。
どのような姿勢からも放つことができ、肉体の頑健さを無視し対象の内部に打撃を与える。
物語当初の彼の雲耀は不完全なものでありそれ故の魔弾だったが、現在は雲耀の領域に到達している。
敵の攻撃に対しては防刃性の黒革手袋を装備しパリィする。

【人物背景】
自由と平穏を愛する男。自由を侵されることを何より嫌い、どのような状況であろうと他者からの強要を受け付けない。
来るものを拒まず、去るものは追わない。しかし、『去るものは追わない』については大きな事件があり、自身を見つめ直した。
参戦時期は原作終了直前、共生学園に退学届を出しこっそりと抜け出そうとしているタイミングとする。
異界東京都にて与えられたロールはとある不良校の学生。

【方針】
自分から仕掛けることはないノムラと厄介事に首を突っ込みたがるヴァージニアの方針は一見相反している。
しかしノムラもヴァージニアも相容れないことなど慣れっこで、そこからぶつかり合うこと、妥協点を探すことを既に知っている。
ヴァージニアはノムラを連れ回すつもりはないし、ノムラはヴァージニアを従えるつもりはない。
ただそう、各々が己の信念に従った結果危機的状況に飛び込むのなら、それに付き合ってやってもいい。
その様な関係を『友人』と呼ぶのだろう。

【備考】
反骨精神主従。何者にも従わないのが信条。
ヴァージニアは素の火力が低いが、サポーターとして回復や範囲魔術攻撃もこなせる上敏捷が高いため小器用な立ち回りが可能。
そのスキルは精神力に特化しており特定の敵に対しこれ以上ないほどに突き刺さる。具体的には突然火力が10倍に跳ね上がり防御を無視したりする。
魑魅魍魎はびこる聖杯戦争に、その精神力の強さで殴り込みをかける主従……否、盟友となるだろう。

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最終更新:2022年09月01日 14:34