学園都市とはずいぶん違うな、というのが率直な感想だった。
ツンツン頭の高校生、上条当麻はハンバーガーショップの二階席に座り、一番安いハンバーガーのセットをつまみながら、外の景色を見下ろす。窓ガラス越しに見えるのは駅前の雑踏だ。世界水準から十年二十年は進んだ科学技術を持つ学園都市なら、人混みにちょっと目を向けるだけで清掃ロボットのひとつやふたつは見つかるが、今現在の上条の視界にそんなものはひとつたりとも映らない。空に視線を上げてみても、そこにあるのはただの夕暮れだ。側面にニュース番組を映している飛行船なんて飛んじゃいない。
この街と学園都市。世間の一般的な価値観に合わせて考えてみると、まともな現実味があるのは前者だろう。
しかし上条当麻は、どこまでも現実的であるはずのこの街に、居心地の悪さを感じていた。
その理由は『今の』彼が生まれも育ちも学園都市であるが故に、外の世界に慣れていないからか。
それとも。
「聖杯で造られた仮初の世界に違和を感じずにはいられないかね」
むにゅっ、と。
上条の隣に並ぶようにして座っていた銀髪の少女が、トレイのポテトに伸びていた少年の右手を掴み、自分の胸へと強引に押し当てていた。
薄い青を基調としたダブルのブレザー型制服に包まれている小さな、されど自身の柔らかさをはっきりと主張している感触が、右手を通じて上条の神経に流れ込む。
その瞬間、先ほどまで窓の外の光景に注がれていたツンツン頭の意識が右手ひとつに総動員、更に一瞬後、爆発した。
「ぶへばがァッ⁉︎ 急に何しやがるんだアレイスター⁉︎」
「そうあからさまに挙動不審なのは良くないな、マスター。自分がこの街に紛れ込んだ異物だと喧伝しているようなものだぞ」
「いま俺が挙動不審なのは主にお前の所為なんだけど⁉︎ あとマスターって呼ぶのやめない? 中身がオッサンだと知ってても、そのツラとその声でそう呼ばれるのは、なんだかイケないことをしている気分に……」
「聖杯戦争の参加者になった瞬間に自分の右手に宿った令呪を、同じく自分の右手に宿っていた『幻想殺し』で破壊してしまった君は、誰が見てもマスター失格かもしれないが、それでも現在の君と私が主従関係にあるのは確かな事実だろう。それともここはクールジャパンらしく、語尾に甘ったるいハートマークを付けて「ご主人様」と呼んだほうが良いのかね? 御所望とあらば、霊衣をちょっと開放(いじく)ってメイド服に着替えることも可能だが」
「中身スケベオヤジの子持ち銀髪魔法少女って時点で属性過多なのを自覚してくれませんかねえッ⁉︎ それ以上属性を盛られたら俺の手に負えなくなるんだよ!」
「そもそも呼称に拘泥して変更を求めるなら、優先権があるのはこちらだろう。人前で私を呼ぶ時は、真名ではなくキャスターと言いたまえ」
かの歴史的な魔術師にして変人にして変態であるアレイスター=クロウリーと同じ名前で呼ばれた美少女は、上条の右手を自身の薄い胸元に押し付ける力を、より一層強めた。もにもにふにふにとかいう、聞くだけで癒しと興奮の促進作用がありそうなオノマトペの音量が上がる。
銀髪少女の中身が変態趣味のオッサンであることを知らなければ、上条の思春期が色々と限界を迎えていそうなシチュエーションだったが、揉まれている側であるアレイスターは、いっそ生体実験の経過観察でもするような目付きで自分の胸元、およびそれに触れている少年の右手……『幻想殺し』を見つめていた。
「簡単な実験さ」
今更ながらに上条からの「急に何しやがるんだ」という疑問に答えるアレイスター。
「『ブライスロードの秘宝』……君にとって先代にあたる幻想殺しは、魔術的な儀式によって異世界から召喚された者を元の世界へと追い返す為に使われていたこともある究極の追儺礼装だ。クラス・キャスターのサーヴァントという超常的な存在として召喚された私がそんなものに触れたら、いったい何が起きると思うかね? 好奇心がすっげえ刺激される実験じゃないか?」
「馬鹿じゃねえのッ⁉︎ 勝手に人の右手を使って自殺みたいな実験をするんじゃないよ!」
「時には自分の身を危険に晒す必要さえあるのが魔術師の本分というものだよ。……とはいえ、こうしてしっかりと揉みくちゃにされているのに何の変化も見られないということは、どうやら私の考察は外れたらしい。召喚直後ならともかく、一体のサーヴァントとしてこの世界に存り方を固定されているからか? それともかつて『クロウリーズ・ハザード』で顕現した私に君の右手が通じなかったのと同じ理屈かな? まだ試していないが、霊基の最奥にある霊核に触れられた場合はいったいどうなるのやら──」
いつのまにか上条の右手を軽く手放すと、アレイスターは入店した時に注文していた、やけに鮮やかな色をしているフルーツシェイクに口をつけた。可愛いガワに寄ったチョイスをしているのが、なんだかあざとい。
聖杯戦争についての知識なら、上条だってこの異界東京都に呼ばれた瞬間に聖杯から与えられているけども、体育の授業の初回に一度だけ、それまでやったことがないスポーツの
ルール説明を受けた時のような理解度だ。この競技ではこの道具を使う、これをしたら勝ち、これをしたら反則、みたいな。
しかしアレイスターの場合、彼はそれを十全に理解した上で、『幻想殺し』を用いた更なる考証を試みていた。この辺りは流石、実験好きの大魔術師といったところか。
「『幻想殺し』がサーヴァントの存在そのものに有効だったら、今後の聖杯戦争における我々の立ち振る舞いが大きく変わっていたんだが、どうやらそういうご都合主義と縁がないのが、君と私らしい」
知った風な口を聞きながら、薄い青のブレザー少女は肩を竦めた。
今後の聖杯戦争、と彼は言った。
それはこれからどう過ごし、どう生き残り……、そして。
どう戦うか、ということだ。
その現実に上条は無縁ではない。
「…………、」
無縁でなんか、いられない。
「予め言っておく」
少年は言った。
「一刻も早く聖杯を掴むぞ。だけどそれは、いつも通りの日常が送れればそれだけで満足しちまうような、ちっぽけな俺なんかの願いを叶えるためじゃない。沢山の人間を巻き込んで殺し合いを強制するクソッタレの『聖杯』に、この『幻想殺し』をぶつけるためだ」
ギリ、と音がした。
少年が右手を握りしめた音だった。圧力を加えることで硬度が上がる人工ダイヤモンドのように、拳が持つ熱と固さは増していく。
聖杯戦争の参加者が殺し合うのは、その末に万能の願望器を名乗る聖杯が待ち構えているからだ。ならば、上条がその右手で聖杯を破壊してしまえば、それ以上争う理由は無くなり、戦争の激化にある程度の歯止めをかけられるだろう。
もちろん、これが最善策ではないということは理解している。
異界東京都には訳も分からないまま呼び出されて聖杯戦争に参加させられた者だけでなく、確固たる意志の元に戦っている参加者もいるはずだ。上条がやろうとしているのは、そういう者たちが血みどろになってまで求めている景品を破壊することに他ならない。ともすれば、普通に戦争に参加して他者を蹴落とす以上に周囲からの反感を買う可能性だってある。
更に、以上の計画を完遂するには、ゴール地点である聖杯を誰よりも先んじて見つけ出すことが大前提だ。
加えて言うなら、聖杯は上条が今いる異界東京都の創造主。その力は、新しい位相を差し込むことで世界を変えた魔神オティヌスと同等、あるいはそれ以上と見て間違いない。「そんな存在に『幻想殺し』をぶつけたところで、はたして通用するのだろうか?」という疑問を無視することなんて、不可能だ。
なんという無理難題。
ついでに言うと、そもそもこの計画は上条ひとりでは実現できない。
この異界東京都における上条のパートナー。サーヴァント・キャスター。アレイスター=クロウリー。
知己であり、かつての宿敵であり、共に戦場を駆け抜けた仲間であり、そして魔術と科学の分野において上条の遥か先を行く先達である彼の助力なくては、元からゼロに近い計画の実現性が完全にゼロになってしまう。こればかりは、日ごろから何かとひとりで抱えて突っ走りがちな上条であっても、認めざるを得ない。
もっとも、アレイスターが聖杯になんらかの願いを託すべく召喚に応じていた場合、上条たちの主従は、ここで致命的な決裂を迎えてしまうのだが……、
「聖杯にかける願い? あるはずがないだろう、そんなもの」
アレイスターはあっさりと答えた。
「この姿のイメージソースになったベイバロンが聖杯と縁のある神格なのは確かだが、十字教嫌いで名の知れた私が、かのカリスと同じ名を持つ願望器に頼るなんて、矛盾まみれのキャラ崩壊も甚だしいじゃないか。……まったく。そもそもなにが聖杯だ。くだらない。特に、たったひとつの限られた勝者の枠に収まるために殺し合いを強制されるというのが気に食わないな。時に儀式は犠牲や生贄を伴うものだが、このやり方はいくらなんでも雑すぎるだろう」
銀髪の少女の形をしたアレイスターは、学生が提出したレポートの不備を指摘する大学教授のような口調で言った。
「万能の願望器を名乗るなら、まずはその不完全を是正すべきではないかね?」
「……ああ、そうだな。そういえば、お前はそういう奴だったよ、アレイスター」
上条は安心したような、あるいは納得したような口調で言った。
ブライスロードの戦いを、そしてイギリスにおけるコロンゾンとの戦いを経験した少年は知っている。
アレイスター=クロウリーはたしかにクソ野郎で、ロクデナシで、下ネタ中毒の変態で、悪評を積み上げていくだけでK2の山頂を簡単に上回ってしまうほどの異常者だけども。
それでも。
彼は不完全や理不尽によって起こされる悲劇を許せない、甘い人間なのだ。
「というわけで他の霊基ならともかく、キャスタークラスの霊基で召喚された私にとって、聖杯は不要どころか破壊すべき対象になるのさ」
「他の霊基……?」
「手段を選ばない獣ではなく叡智の聖母を呼べた自分の幸運に感謝したまえ、ということだ」
「?」
アレイスターの曖昧な台詞にいまいちピンと来ていない様子の上条だったが、銀髪少女はそれ以上の言葉を語らなかった。説明好きの多弁家なくせに、他者の理解を得ようとしないのは、彼の悪癖である。
「ところでマスター。この度めでたく一致した我々の方針を成就させる為に、ひとつ頼みごとがあるんだが」
「頼みごと?」
「現在、君と私の間にあるべき魔力のパスは、令呪の破壊と共に失われているだろう? それに関する話だ」
「あー……、それってマズいんだよな? たしか、サーヴァントって魔力がないと存在できないって聖杯から聞いた気が」
「まあパスが残っていたところで、それを通じた君からの魔力供給なんて期待できるはずもないのだし、却って好都合だよ。現界と戦闘に用いる程度の魔力なら、自前で十分用意できるからな。しかし、それはそうとリソースを得られる手段があるのなら、実行しない理由はない。その協力を君に頼みたいんだが」
「そんな方法があるのか?」
「魔力の大元となるエネルギー、つまり生命力の物理的な摂取。今の君はガソリンの精製工場がない油田のようなものだ。そこから原油を頂戴し、私の体内に流し込んで、魔力へと変換すればいい。通常の魔力供給には及ばないだろうが、やらないよりはマシだ」
「なるほど! そんな便利な方法があるならやるしかないな! で、具体的になにをすればいいんだ?」
「生命力を含有する体液の供与。つまりセック
「シリアスな話からド下ネタに繋げるんじゃねえよ! 馬鹿野郎ッッ!」
上条は頭を抱えて小刻みでプルプルと震えた。
対する銀髪美少女アレイスターちゃん(最後まで変態オヤジたっぷり)は小首を傾げ、可愛らしい上目遣いで上条を見る。
「えー、駄目か? 割と真剣に名案なんだが」
「思いついたそばからとりあえず計画を実行してはポンコツに終わってる超近視眼が言う『名案』なんて乗れねえよッ! 少なくともその案は絶対に無理!」
「チッ、仕方ない。また別のタイミング……「このピンチを打破するにはこの手段しか残されていない」みたいなタイミングが来るまで待つとするか」
「なんてこった。こりゃ絶対に気の抜けない戦争が始まりそうだぜ……!」
令呪も無い身でこのド級の変態の射程距離内にいるという事実に、改めて恐怖を感じる上条当麻だった。
いざという時は殴ってでも止めよう。そんなことを考えながら、全部平らげたトレイを手に取り、席を立つ。
ちなみに異界東京都における上条の懐事情は、元の世界のものとおおむね同等だ。その再現度には驚かされたし、財布の残高を確認して更に驚かされた。というか、悲鳴をあげた。
そんなわけで本来、上条当麻はたとえ一番安いハンバーガーセットであろうと、外食なんて気軽にできるはずがなく、家で質素にもやし炒めを食べるという『腹が減っては戦はできぬ』とは真逆の食生活を送る必要があった。しかし外を歩いていた時にアレイスターから「ちょっと休憩だ」と半ば無理矢理店内に引き摺り込まれた結果、現在に至るというわけである。望まない外食でおっさんの下ネタトークに付き合わされる以上の不幸って中々ないんじゃないか?
店員からの「またのご来店をお待ちしております」という定型文を背中に浴びながら、自動ドアをくぐる。びゅう、と音を立てて冬の寒気を含んだ風が出迎えた。さっきまでツッコミやらアレイスターからのセクハラやらで火照っていた体が一気に冷やされる。暖を求めて自分を抱きしめるような格好で腕を擦りながら、上条は更に一歩、外に出ようとした。
その時だった。
とてつもない大きさのタコが、眼前を通過したのは。
「おおおおおおおおおおおおァアッ!?」
大質量の移動に伴って発生した突風。それに吹き飛ばされた上条は、絶叫しながら地面を転がる。被害はそれだけに留まらず、タコが通過したコンクリートの地面はディッシャーを通したアイスクリームのように抉れており、路上に停まっていた大型トラックは蹴飛ばされ、ティッシュの空箱のように軽々と宙を舞っていた。人間があんな速度で動く大質量の直撃を受ければひとたまりも無さそうだが、タコは通行人の隙間を縫うようにして器用に走っていたため、人的被害は奇跡的にゼロだった。
路上を爆速で走行するタコなんて、明らかに非現実的であり、聖杯戦争に関係する異物であることは間違い。
だというのに上条は、その異形に見覚えがあった。
「クロウリーズ……ハザード?」
季節は真冬だというのに頬に生ぬるい嫌な汗を滴らせながら、先程ハンバーガーショップの店内でアレイスターが呟いていた単語と同じものを口にする。
クロウリーズ・ハザード。
かつてアレイスター=クロウリーが起こした、地球規模の大災害。
彼が持つ10億8309万2867通りの『可能性』が分身の形で世界各地に顕現して暴れ回るという終末系パニックホラー映画みたいな現象だ。
そして今し方、上条が見たタコは間違いなく、かつてイギリスの海岸で目にしたアレイスターの可能性のひとつだった。
ギギギ、と油の切れたゼンマイのように首を動かす上条。視線の先には銀髪少女のアレイスターが立っていた。
「えーと……、我らの頼れる先生アレイスたん? この状況に説明を求めても?」
「……私としてもこの状況には不可解な部分が多いが、いくつか仮説を挙げることは可能だ」
講義をする教師のような振る舞いで、アレイスターは言った。
「まず私がサーヴァント化したことで、生前の逸話である『クロウリーズ・ハザード』が宝具として再現されたという仮説。……いや。この私にそんな宝具は登録されていないから、違うか。だいたい、地球全土を埋め尽くす勢いだったあの『クロウリーズ・ハザード』が完璧に再現されたとなれば、たかだか東京二十三区程度の面積なんて、今頃10億8309万2867通りの分身で埋め尽くされているはずだ。そうなっていないということは、あくまで『クロウリーズ・ハザード』に似ているだけの、分身数が大幅に減った劣化版のような現象か? そう、たとえば、私という極彩に輝く魂を持つ英霊がサーヴァントというひとつの器に収まろうとした際、収まりきらずに溢れた魂によって起こされた現象と考えると納得がいくな。もっとも、たとえ劣化版であろうと、数多の私が顕現すれば、それは充分立派な脅威になるというのは、今し方君が目にした通りだがね」
「……ええと、つまり?」
「このままだとこの街、めちゃくちゃになっちゃうかも☆」
「ふざッッ、けんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアァッ!!」
少年の咆哮が冬の空に木霊した。
【クラス】
キャスター
【真名】
アレイスター=クロウリー@とある魔術の禁書目録シリーズ
【属性】
混沌・悪・星
【ステータス】
筋力E 敏捷E 耐久E 魔力A++ 幸運E 宝具C(召喚時)
【クラススキル】
道具作成:A+++
下記の『人間の智慧』スキルと合わせて発動すれば、宝具級の兵器・霊装を作成することすら可能。
陣地作成:EX
工房となる陣地を作成する能力。
科学サイドの総本山である学園都市を作り上げたのは勿論のこと、そもそも本来ならば統一された理論で説明可能だった世界を人間の普遍的な共通認識を操作する技術である『原型制御(アーキタイプコントローラ)』によって科学と魔術のふたつに切り分けたアレイスターは、このスキルを規格外のランクで所有している。
このランクになると、作成されるのは『陣地』を超えた『時代』となる。
【保有スキル】
人間の智慧:A+
世界最高の科学者と名高く、科学力が外部から数十年は進んでいると言われている学園都市の統括理事長を務めていたアレイスターは最先端の科学を知り尽くし、自在に行使する。
また彼は魔術の道でも天才と評されており、その実力は魔術を極めた先にある神の領域に足を踏み込んでいてもおかしくないほど。
一部の例外を除き、科学や魔術に関連する知識・技術を高ランクのスキルとして発動できる。
霊的蹴たぐり:EX
キャスターが得意とする魔術の一種。
卓越したパントマイムによって対象の脳とリンクし、アレイスターがジェスチャーした武器の威力を対象だけに叩き込む。
例えばキャスターが剣を握って振るパントマイムをすれば、標的は彼の手に剣が現れて斬られたように感じ、体が勝手に切り傷を開いてしまうし、キャスターが銃を発砲するパントマイムをすれば、標的は彼の手に銃が現れて撃たれたように感じ、体が勝手に銃創を作ってしまう。
リンクした標的の想像力を利用する攻撃なので、リンクから外れている第三者は、この魔術で出現した武器を認識することもないし、それによる影響を受けることもない。つまり、このスキルによってどれだけ大規模・高火力な攻撃を行ったとしても、その威力を叩き込む対象に含めてない第三者や周辺環境に被害が及ぶことはない。
あくまで極まったパントマイムによって相手が自分から傷ついていくプラシーボ効果のすごい版のようなものなので、消費される魔力量は型月世界における投影(魔力によって武器を物質化する魔術)と比べると格段に少ない。
ちなみに生前のキャスターはこの魔術を用いて、クレイモアやフリントロック銃、航空支援式ビッグバン爆弾などを再現していた。
黄金の呪詛:A
魔術結社『黄金』を破滅へと導き、最終的にキャスター自身にも牙を剥いた呪い。
このスキルによってキャスターの行動には常に失敗が付き纏い、何事も想定通りには進まない。しかし彼は「成功も失敗も問わず、前に進み続ける」という思想で自身の目的を達成しようとする。
【宝具】
『衝撃の杖』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ねじくれた銀の杖。
……のように『霊的蹴たぐり』でイメージを再現した補助術式。
その効果は『魔術の効果(威力、射程、大きさなど)を標的が想像する10倍に増幅する』というもの。
対象は術式のみならず、魔術的な儀式によって召喚・使役した存在にも適用される。
一度この術式で10倍に増幅した魔術的攻撃を受けた標的が、それに対応しようとした場合、次にこの宝具で増幅される術式は、当然ながらその想像を基準として更に10倍、つまり元の100倍の効果となる。
『我が掌上にて運る学園都市』
ランク:E 種別:対人~対都市宝具 レンジ:4000000 最大捕捉:1
カードサイズのスマートフォン。もしくはそれと接続されている人工衛星。
アレイスターが学園都市の統括理事長だったことの証。
この宝具には彼が生前に築き上げた科学の街、学園都市の全権限・全機能が内包されている。
これを用いることで、指先ひとつで学園都市製の様々な兵器を大気圏外を旋回する人工衛星から地表へと送り込み、取り扱うことが可能。
衛星から射出される最先端の科学兵器は落雷のような電子ビームや人間を細胞レベルで分解するミクロ兵器など、どれも強力だが、最先端の科学の産物であるが故に神秘的なランクは低い。
『10億8309万2867通りの可能性』
ランク:- 種別:- レンジ:4000000 最大捕捉:1083092867
アレイスター=クロウリーが召喚されると同時に、彼の『ありえた可能性』である分身が聖杯戦争の会場内各地に顕現する。
アレイスターという極彩に輝く魂を持ち、数多の可能性を保有する人間が『キャスター』というひとつの霊基で召喚された結果、ひとつかぎりの器に収まりきらなかった魂がサーヴァント未満の霊基をもって外部に溢れ出した結果起きた現象。
発生経緯こそ違えど、彼が生前に起こした『クロウリーズ・ハザード』と同じようなもの。
キャスターが生前に起こした『クロウリーズ・ハザード』とは違い、10億8309万2867通りのクロウリーが一気に召喚されて聖杯戦争の会場が埋め尽くされることはないものの、それでも膨大に過ぎる数の分身が広範囲かつ継続的に顕現する。
クロウリー達は男性、女性、子供、老人、聖人、囚人、魔術を極めたクロウリー、魔術をすっぱり諦めたクロウリーなどといった人間に近い形を持つ可能性から、恐竜やタコのようななにか、もはやイキモノの形を保っていないものまで様々な姿をしている。
クロウリーズ・ハザードが殺されるたび、彼らと並列の存在であるキャスターのクロウリーは『血の供儀』によって『分岐先』を失って効率化・最適化され、その結果キャスタークラスでありながら三騎士クラスのトップサーヴァントと近距離戦をおこなえるほどにまでステータスが上昇していく。
なので、キャスター本人からすれば、クロウリーズ・ハザードはガンガン殺してもらった方が好都合だったりする。
正確に言えば、これはキャスターの召喚時に起きた不具合であって、正式な宝具ではない。
また、キャスターが本来有しているはずの『単独顕現』スキルはこの現象に吸収されており、効力を失っている。
【weapon】
【人物背景】
学園都市統括理事長。
もしくはかつて魔術結社『黄金』に所属していた至高の魔術師。
『運命』だとか『どうしようもない現実』によってもたらされる『理不尽な悲劇』を一掃して『誰もが当たり前に泣いて当たり前に笑える世界』を作るために、世界中を巻き込んだ壮大な計画を企んでいたひとりの『人間』。
原作の歴史において、アレイスター=クロウリーはれっきとした男性であり、此度の召喚で現界した銀髪少女は、あくまでクロウリーズ・ハザードの際に出現した、アレイスターが持つ数多の可能性のひとつにすぎないのだが、マスターである上条当麻が、イギリスにおける大悪魔との戦いでこの姿のアレイスターと背中を任せ合いながら戦ったという縁から、この姿での召喚となった。
【方針】
聖杯の破壊
【マスター】
上条当麻@とある魔術の禁書目録シリーズ
【weapon】
上条の右手に宿る力。
異能に触れるとそれを破壊する能力を持つ。対峙する異能の威力や量があまりに膨大だった場合、完全に打ち消すのは不可能だが、それでも右手で干渉したり掴んだりすることが可能。
【人物背景】
どこにでもいる普通の高校生。
強いヒーロー気質を持っており、その為なにかとトラブルに乗り込みがち。
【方針】
聖杯戦争を止めるために、聖杯を破壊する。
【備考】
異界東京都内各地において『クロウリーズ・ハザード』が発生しています。
あらゆる可能性のアレイスター=クロウリーが現れるという性質、そして原作において世間がいつの間にか『クロウリーズ・ハザード』という現象名を認知していたというエピソードから、そう遠くない内にアレイスターの真名が広まるかと思われます。
最終更新:2022年07月01日 14:37