『歌姫(ディーヴァ)プロジェクトだと…?
能力者の完全支配だと…?
…くだらん』

紅白の甲冑を身に纏った少年は、そう吐き捨ててボクに銃口を差し向けた。

『皇神(ヤツら)のようなクズが、バケモノどもを律したところで――
その先に待つのは、破滅だけだ
だからこそ…能力者(バケモノ)どもは一匹残らず根絶やしにしなければならない…
オレたち“人間”が生き残るために…』

その瞳は憎悪に燃えている、何を言っても無駄だろう。
理解はできない。だが彼の言い分には理があり同情できるものだった。

「アスタラビスタ…GV」

彼は、正しかったのだろうか。
己の父とも呼べる人間から撃ち抜かれたボクは、そんなことを考えた。
胸から血がとめどなく溢れる。

「君もだ、シアン」
霞む意識の中、倒れこむシアンの姿が見えた。
彼女に渡しそびれた小さな宝石を、強く握りしめる。
ボクは彼女を守れなかった、それだけを考えてボクの意識は闇の中に沈む。

この悲劇は長きに渡る惨劇の始まりに過ぎない、そのことをボクはまだ知らなかった。

「あれ…ここは?」

聞き覚えのある声に呼ばれた気がして目覚めたボクの網膜に映るのは、目まぐるしく変わる窓越しの夜景と、眩しい蛍光灯。
がらんどうの電車の車内に、ボクはいた。
眼前で己の手を握っては開く。手の感覚はある。
窓ガラスを見ると、反射した己の蒼い目線と視線が合い、電車の動きに合わせて揺れる己の金の髪を見た。
影もある、間違いなく生きている。
先ほどまで見ていたのは、ただの夢だったのだろうか。

「ごめんなさい、起こしちゃった?」
横から聞きなれた声が聞こえた、目覚める寸前に聞こえたあの声と同じ声。
夢の中で倒れた彼女、シアンの声だ。
やはり、先ほど見たものはただの夢だったのだろう。

「大丈夫だよシアン、気にしないで。」
彼女に心配を掛けぬ様落ち着いて答えたが、一間あって返って来た彼女の声にボクは凍り付いた。

「シアン…って、誰?」

彼女は何を言っているんだ。
動悸が止まらない。何かを言おうとした口が開かない。
目の奥がチリチリする。
見てはならないものがボクの横に居る。ボクの第六感はそう告げていた。

「マスター?どうしたの?」

心配する彼女の声に応じて、ボクの首はようやく動いた。
顔を横に向けると、白い長い髪の少女が視界に入った。
ボクを見つめるその瞳は、シアンと同じ。いや、アキュラと同じ紅の美しい色をしている。
ボクの隣にはシアンとは違う少女がいた。

「ごめんキャスター、寝ぼけてたみたいだ。」

あれは、夢ではなかった。
死んだはずのボクは何故かこの東京に呼ばれ、そして彼女を召喚したのだ。
「…ミチル。」

アキュラの双子の妹、シアンの持つ電子の妖精のオリジナル。
それがボクのキャスター、神園ミチルだった。

「うなされていたけど、大丈夫?」

「夢を見ていたんだ。
 アキュラに…ボクの大切な人。色々な人が出てきたよ。」

「アキュラくん、アキュラくんか…」

実の兄の名を彼女は噛みしめるようにつぶやいた。
僕とシアンの亡き後、何が起こったのかは先ほどと同じように夢を見て知った。
端的に言うと、悪夢は繰り返された。

「アキュラくんにはね、幸せになって欲しかったんだ。」

「うん。」

アキュラは、あの後戦い続けた。
例え己の敵を誹れる身体で無くなろうとも、例え父の無念を晴らせずとも。
自分の頭で考え、追い求め続けた。

「結婚して、家庭をもって…毎日笑顔で暮らせるようになって欲しかったんだ。」

「うん。」

そして、ボクが彼女(シアン)と出会った時から始まった全てに終止符を打ってくれた。
ボクにはできなかったことを彼はやってくれた。
幸せになるべきはボクのような孤独な人間ではなく、彼のような家族と、社会と、人類と関わって互いに支え合える人間だ。
ボクもそう思う。

「でも…私は足手まといで…。私のせいでアキュラくんも、人類(みんな)も誰も幸せになれなくて…世界が…無茶苦茶に…。」

そんなことはない。
その言葉が、喉で止まった。
その無茶苦茶になった世界で、誰よりも苦しんだのは他ならぬ彼女(ミチル)だ。
ボクが彼女(シアン)と出会って救われた一年にも満たない日々のために、あの果てしない地獄を肯定しろというのか。
気休めの言葉すらかけられず、ボクは沈黙したまま項垂れるしかなかった。

「…キミの本当の願いは何?」

「私が生まれてくると、みんなに迷惑が掛かっちゃうみたい。」

シアンにはほんの一時の安らぎしか与えられなかった。
アキュラとミチルにはボクとシアンの悍ましい再演を押し付けてしまった。
無能力者は淘汰され、能力者は万民頭の中の自由すら許されぬ管理が待っている。
彼女が言っていることは正しい。

「だから、私は…私を産まれてこなかったことにしたいの」

その選択であれば、確かに大勢の人間は救われる。
ただ、シアンと出会えないボク一人を残して。
目を瞑り、彼女に最後の問いかけをする。

「それが、キミの願いなんだね?」

「うん。」

耳に聞こえるのは彼女と同じ声。
ボクの戦う理由はそれで十分だ。
自分に言い聞かせるように、決意するように己の目をゆっくり見開いた。

「わかった。ボクとキミで一緒に聖杯を勝ち取ろう。」

ターゲットは電子の謡精(サイバーディーヴァ)。
人々の絶望の抹消。
けれど躊躇っているこの感情(ココロ)の残滓は拭い去れない。

いつかの日と同じように、電車は動き始めた。


【クラス】
 キャスター

【真名】
神園ミチル@白き鋼鉄のX

【パラメーター】
筋力E 耐久EX 俊敏C 魔力A++ 幸運E 宝具A++

【属性】
 混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:EX
自らに有利な陣地を作成するスキル。
電子の謡精の使い手たる彼女は、電脳空間上に謡精のライブステージを作成可能。

道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成する。
宝具:兄妹を導く、青い鳥を探す童話(ガンヴォルトクロニクルス)により蒼き雷霆の使用者の装備を作成可能。
詳細は宝具欄にて記載。

【保有スキル】
セプティマホルダー:A++
旧人類を少数派として駆逐した存在。
(サーヴァントを除く)人間属性に対する攻撃力が大幅向上。

恒久平和維持装置:A
世界のためにその命を捧げられた証。高度な再生能力を誇る。
このランクであれば頭部の霊核を粉砕破壊されるまで再生可能。

自己改造:A+++
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
ランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

【宝具】
電子の謡精(サイバーディーバ)
ランク:A++ 種別:対精神宝具 レンジ:100 最大補足:7000000000
モルフォと呼ばれる蝶を模した電子と音波で構成されたビジョンを介して他者の精神に干渉する精神感応能力。世界を産み直すクイーン。
高次元の生命体・霊体の波長を感知・操作することが可能であり、無能力者の生きた人間であればモルフォを介した破壊能力で干渉するのみであるが、セプティマホルダーと呼ばれる人種であればソナーによりその所在を把握することや精神干渉を行うことが可能。
また電子的な干渉能力や高度な情報処理能力も兼ね備えており、能力範囲が届けば全人類規模の能力者の監視統括も可能とする。
これだけの干渉能力がある分、本体が弱いはずはなく電子障壁(サイバーフィールド)と呼ばれるバリアを張ることや魔力弾の発射まで可能であり、楽園幻想と呼ばれる広範囲の音波攻撃もSPスキルとして持つ。

兄妹を導く、青い鳥を探す童話(ガンヴォルトクロニクルス)
ランク:A+ 種別:対雷霆宝具 レンジ:10 最大補足:7
数多の時代・世界で電子の妖精の守護者として立ちはだかる蒼き雷霆の使用者(GV・アシモフ・アキュラ・RoRo・ブレイド・他キャスターの観測外のため不明)を召喚する。蒼き雷霆版レジデントオブエデン。
本来は単独行動スキルを持たない蒼き雷霆の使用者を一時的に召喚し、能力者や機械であれば電子の謡精の能力で強制的に従属させる宝具だが、装備品のみを現界させることやマスターたるガンヴォルトに魂の断片たるABスピリットを憑依させることで各技能を使用させることが可能。

The One(ザ・ワン)
ランク:- 種別:対命宝具 レンジ:100 最大補足:1
死に瀕した己の愛するものを蘇生させる電子の謡精の究極の力。
マスターたるGVはキャスターの愛するものではないため当然範囲外ではあるが、副作用である覚醒状態を呼び出すことは可能。

【サーヴァントとしての願い】
己の存在の抹消。


【マスター】
ガンヴォルト@蒼き雷霆ガンヴォルト

【weapon】
キャスターが作成する蒼き雷霆使用者たちの武器。
彼本来の武装としては避雷針を打ち出すダートリーダーである。

【マスターとしての願い】
キャスターに聖杯を捧げる。

【参戦時期】
蒼き雷霆ガンヴォルト ノーマルエンド後

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最終更新:2022年07月04日 23:51