深夜の山道を、学生と思わしき年齢の男たち数人が歩いている。

「なあ、やっぱり肝試しなんてやめようぜ?
 季節外れにもほどがあるだろ」

最後尾を歩く男が、わかりやすいおびえの表情を浮かべながら言う。

「帰りたいなら、一人で帰れよ。
 俺はここまで来て逃げ出すなんてごめんだぜ」

だが先頭を歩く男は、にべもなくそれを拒絶する。

「帰れって言われても、懐中電灯一つしかないじゃん……。
 夜の山道を、明かりなしで歩けって言うのかよ」
「スマホのライトでも、なんとかなるだろ?」
「だいたい、ビビりすぎなんだよ。
 この令和の世に、化物なんか出るかよ」

彼らがここに来たのは、この周辺に怪物が出現するという噂が流れているからであった。
もっとも彼らの言動からわかるように、その噂を信じているわけではない。
何か変わったことでも起これば儲けものという、暇つぶし感覚である。

「ん?」

突然、先頭の男が足を止める。
懐中電灯の照らす先に、人影のようなものを確認したからだ。
男は最初、自分たちのように噂につられた人間が他にいたのだと考えた。
だが相手が近づいてくるにつれ、それが間違いであることに気づく。
近づいてくる男の体は、腐っていた。
顔は見るも無惨に腐敗し、ウジ虫が這っている。
目も完全に白目を剥いており、一切の意思を感じさせない。
それは完全に、死体であった。
にもかかわらず、ゆっくりとこちらに近づいてきていた。

「ひいっ!」

まともに思考することもできず、男は本能に従って逃げようとする。
だが、それはかなわなかった。

「ぐぎっ!」

男が振り向くとほぼ同時に、短い悲鳴があがる。
男が見たのは、体から伸ばした触手で仲間たちの心臓を貫く、腐った女の姿だった。

「うわあああああああ!!」

絶叫。その数秒後に、男の意識は永遠に断たれた。


◆ ◆ ◆


とうてい人が来ぬであろう、山の奥。
そこにぽっかりと、洞窟が空いている。
そして一組のマスターとサーヴァントが、この洞窟を拠点としていた。
こんなへんぴなところを拠点にしている理由は二つ。
一つはマスターにロール……すなわち社会的身分が与えられていないこと。
そしてもう一つは、サーヴァントの宝具の特性上、人里近くに拠点を構えるのが困難であるからだ。

「やれやれ……。効率悪いですねえ」

自分の宝具により生み出された「兵士」たちを眺めながら、サーヴァントはため息を漏らす。
彼の名は、梶原景時。
源平合戦に参加した武将である。
厳密に言うと彼は「景時に成り代わった何者か」であり、景時本人ではない。
しかし彼の本名については一切記録が残っていないので、ここでは便宜上「景時」と呼ぶことにする。

「この世界の元となっているのは、21世紀の日本。
 この時代ではもはや、土葬の習慣は廃れています。
 そうなると、自分たちで数を増やしていくしかないわけですが……。
 あまり大量に殺してしまうと討伐令の対象となる恐れがありますし、そうでなくても他の参加者に目をつけられやすくなる……。
 まったく、困ったものです」

彼の前に並ぶ「兵士」たち。
その正体は、死体である。
中には、先ほど山を歩いていた男たちも混じっている。
死体を不死身のゾンビ兵士へと変え、操る。
それが彼の宝具である。
厳密に言えば生きている人間に使用することも可能なのだが、戦わせているうちに死ぬのでどっちにしろ同じである。

「僕から見たら、これでも十分多いんやけどなあ。
 魔界にこれだけの人間がおったら、大パニックやで」

そう口にしたのは、景時のマスターである顔色の悪い青年。
そのこめかみあたりからは、いびつな角が生えている。
彼の名は、アミィ・キリヲ。魔界で暮らしていた、悪魔である。

「マスターの世界では、人間は伝説上の生き物とされているのでしたか。
 人間である私には、今ひとつピンとこない話ですが……。
 オルフェノクやロイミュードに支配された世界もあるようですし、パラレルワールドの中にはそういう世界もあるのかもしれませんね」
「相変わらず、君の話はようわからんなあ」

418: 大悪行(かいしんげき)の夢をGO SHOW TIME ◆NIKUcB1AGw :2022/07/12(火) 23:19:23 ID:fvyL5QzA0

キリヲには景時の口にする固有名詞がよくわからなかったが、そもそも興味がないらしく軽く流す。

「まあそれより、戦力の補充が難しいって話なんやろ?
 どないするんよ、景時くん」
「そうですねえ」

キリヲの前に移動し、景時はもったいぶった振る舞いで言葉を続ける。

「我々も寄生しますか、他のマスターに」
「もうちょっと具体的に」
「他のマスターと、同盟を組むということですよ。
 少ないとはいえ、こちらも戦力を提供できますからね。
 手を組んでもいいというマスターは、決して少なくないでしょう」
「なるほど。そんで、ここぞという時に……」
「ええ、裏切ります」

二人の顔に、満面の笑みが浮かびます。

「それは楽しみやなあ。いい絶望を見られそうや」
「私はそういう趣味はありませんが……。
 まあ、マスターが喜んでくれるなら何よりです」
「そしたら、他の参加者の情報も集めないとあかんな」
「それなら、マスターが動いてくださいよ。飛べるんですから」
「えー? 僕が人間の中におったら、目立ってしゃあないやろ」
「それをいうなら、ゾンビの方が目立ちますよ」
「まあ、それはそうやけど」


方向性は異なる。
だが、二人がいずれも常軌を逸した精神の持ち主であることは間違いない。
邪悪な主従は、今はまだ牙を隠して潜伏する。


【クラス】フェイカー
【真名】梶原景時
【出典】小説仮面ライダー電王 デネブ勧進帳
【性別】男
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:C 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
単独行動:A
マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。
Aランクは1週間現界可能。

偽装工作:C
ステータスおよびクラスを偽装する能力。
自らの真名は最後まで隠し通したものの、「偽物」であること自体はあまり真剣に隠そうとしていなかったためランクは低め。

【保有スキル】
軍略:C
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

詐欺師の話術:A
交渉においてあえて相手を不快にするような物言いをし、冷静さを奪うスキル。
相手はフェイカーの思惑を正しく理解することが困難になる。

タイムジャッカー:B
歴史を自分に都合よく改変しようとする、時間犯罪者。
時間停止能力を持ち、自らは時間操作系の能力にある程度の耐性を持つ。
ただしサーヴァントという枠にはめられたことで、時間停止は大きく魔力を消耗するようになっている。

【宝具
『菌の軍勢(マッシュルーム・オブ・ザ・デッド)』
ランク:C 種別:対人~対城宝具 レンジ:理論上無限大 最大捕捉:理論上無限大
動物に寄生するタイプのキノコを遺伝子改造することで生み出された、生物兵器。
人間に寄生し、フェイカーの意のままに動くゾンビ兵士に変えてしまう。
ゾンビ兵士は頭や心臓を潰しても止まらず、バラバラになっても触手で体をつなぎ合わせてしまう。
また複数の個体が融合することにより、巨大な怪物になることも可能。
対処法としては火で燃やしたり、爆発で再生できないほど木っ端微塵にしたりなどがある。
宝具そのものはゾンビ兵士ではなくわずかな質量の菌であるため、消費魔力のコストパフォーマンスは非常によい。
一方で宝具でないがゆえにゾンビ兵士は常に実体化しているため、現代日本では隠しておくのに難儀するという難点もある。

【weapon】
平安時代の武具。
もっとも、本人が直接戦う気はあまりないが。

【人物背景】
平安時代末期~鎌倉時代初期の武士。
当初は平氏側として源平合戦に参加するが、後に頼朝の下につく。
壇ノ浦の戦いで義経と戦略を巡って対立し、それを頼朝に訴えたことが兄弟の確執を生むきっかけになったとされる。
……というのは、我々の世界の歴史における梶原景時である。
この景時は、未来から来て本物の景時に成り代わった時間犯罪者・タイムジャッカー。
その目的は、ゾンビ兵士の力を使い「源氏による世界征服」を成し遂げること。
計画にはおのれの死すら織り込んでおり、世界の頂点に君臨したいわけではなく「歴史を変えること」そのものが目的だったようである。

【サーヴァントとしての願い】
せっかくのチャンスなので、もう一度歴史改変に挑む。

419: 大悪行(かいしんげき)の夢をGO SHOW TIME ◆NIKUcB1AGw :2022/07/12(火) 23:20:28 ID:fvyL5QzA0


【マスター】アミィ・キリヲ
【出典】魔入りました!入間くん
【性別】男

【マスターとしての願い】
魔界の秩序を崩壊させる

【weapon】
なし

【能力・技能】
『断絶(バリア)』
アミィ家の家系魔術(一族に代々伝わる魔術)。
任意の場所に、透明な壁を出現させる。
壁の強度は非常に高く、破壊しても瞬時に修復される。
完全破壊は、高ランクの宝具でなければ難しいだろう。

【人物背景】
悪魔学校「バビルス」の2年生で、魔具研究師団団長。
生まれつき魔力に乏しい体質だったため家族から冷遇された過去を持ち、
魔具の発展により実力による上下のない世界になることを願っている。
その正体は、長い歴史の中で失われた悪魔のネガティブな部分が蘇った「元祖返り」の一人。
他人の絶望する姿を見ることを何よりの喜びとし、上記の思想も「魔界の常識が崩壊し、阿鼻叫喚になるのを見たい」というのが真の理由である。
参戦時期は、収穫祭後。

【方針】
聖杯狙い

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最終更新:2022年07月17日 01:05