男は恵まれた魔術師だった。
一族の中でも頭ひとつ抜けた才能を持ち、それを無駄にしないための努力を積み重ねた。
人一倍自尊心が強いところはあったが、それも力に見合ったものとして周りからは強い反感は持たれなかった。

そんな彼は運命のいたずらか、この異界東京都に召喚される。
最初はそのことになぜ自分がと怒りを覚えたが、一瞬で発想を変えてこれはチャンスだと思った。

元の世界でも噂に聞いていた聖杯戦争。
現物を見るまでは疑わしいところはあるが、真実であるなら根源への近道として有用なものは間違いない。
どうせ逃げ場がないのなら、それを目指すことにした。

そして彼は呼び出されたサーヴァントを見る。
サーヴァントのクラスはバーサーカー。
二メートルを超えた筋骨隆々の体躯の、緋色の瞳に灼炎のごとき烈しい髪を持つ大男。

格が違うとはっきり分かった。
今まで培ってきた自分の尺度など意味をなさないと感じた。

そうしてバーサーカーは目を開き、マスターである自分と目を合わせる。
これからこの存在を従えて戦うのかという不安と高揚感を感じ始めていた。
だからか、次の行動に反応できなかったのは。

「まずはお前か」

バーサーカーの第一声を聴いたと思った瞬間、男の身体はこの世から消滅していた。


◆     ◆     ◆


魔術師を消し飛ばしたのはバーサーカーの拳であった。
召喚された直後に自身のマスターを殺害するという暴挙をしでかしたサーヴァントはついさっき消し飛んだ己のマスターを見ていた。
自分を召喚したマスターだから、という理由ではない。
単純に自身の手で葬った男を見送っただけである。

彼にとって自身を呼び出したマスターなど関係ない。
自分と目を合わせ、互いに存在を認識したのだから倒すべき敵として全力をぶつける。
バーサーカー――バフラヴァーンとはそう言ったサーヴァントである。

「ぬ? ああ、そうだったな。この戦争はそういうものであったのを忘れていた」

そんなバフラヴァーンは自身の肉体が霧散し始めていることに気づいた。
先の攻撃で己のマスターを殺害したのだ、単独行動スキルも持たないバーサーカーでは当然のことである。

「ぬうぅぅん!」

そうした状況を把握したバフラヴァーンはそのまま霧散している身体に力を込めた。
そうすると霧散していたバフラヴァーンの身体の魔力が再び集まり、肉体の形を取り戻していく。

我力――我の強さで荒唐無稽な現象を実現させる意志の力。
バフラヴァーンはその世界において最強の我力使いとまで言われた存在である。
彼はその力でもって無理やり魔力の霧散を押し留めたのである。

無論これは誰でも出来る芸当ではない。
通常であれば例え押し留めてもそれを維持する消耗は避けられず消滅するのを早めるだけで、やる意味はほぼないと言っていい。

だがバフラヴァーンは第一戒律の宝具により消耗という概念が存在しない。
マスターからの魔力供給を必要とせず、魂喰いも行わずに存在を維持できるのがその証である。

「サーヴァントの肉体というものは窮屈なものだな。万全というにはほど遠い」

生前と比較すれば今の自分が劣ったことに少しばかりの憤りを感じていた。
サーヴァントになろうとも全力で戦うことを常態とすることに変わりはないが、万全の力をこれから戦う相手に見せられないのは不甲斐ない。
いずれはこの枠すら破壊して自らの強さを証明しなければならないと彼は思いを決めた。

そしてこのまま次の闘争へと赴く前に一度立ち止まって思案する。
元々の性分からすればあまり慣れないことだが、ゴールを定めておくのがいいと思い、今回の聖杯戦争で自分の目指す先を見据えようとする。

「聖杯に願うというなら俺にあるのはただ一つだけ。そしてそれを叶えるためにわざわざ全てを相手取る必要などない」

そう口に出しながらバフラヴァーンは失笑する。
戦う相手を選り好みするなど彼からすればあり得ないことである。
相手の強弱やどのような存在だろうと関係ない、どんな敵手だろうと全力をもって答えるのが己という存在だろう。

「もはや願いを自覚した今となっては全ての存在と戦うなど必要はないが、目の前にある闘争を無視して行くなどそれは俺という存在の否定になる。
ならばどうするか、決まっている」

そうしてバフラヴァーンはこの聖杯戦争においての方針を決めた。
かつて己に真実と敗北を刻んだ男を思いながら。

「この世界の者たちを全て打ち倒してから、奴との再戦へと臨む。単純明快で実に俺好みだ」

聖杯などあくまでその過程で手に入れればいい、どちらにせよ全員打ち倒せばどこかで必ず手に入る。
それが決まれば後は簡単、ただそれを成すために動くのみ。
やはりこれこそが自分だと改めて感じる。ここが何処だろうと関係ない、終わらない闘争行を歩き続けるのみだと。
これから行う全ての生命の絶滅。
規模で言えば奴の真似事とすら言えるものではないが、それに倣うようだと気づいたバフラヴァーンは少しばかり気持ちを逸らせた。

「俺を追っていた時のザリチェやタルヴィもこんな気持ちだったのか?
なるほど、確かに。これは悪くない気持ちだ」

かつての同志に思いを馳せてたところでバフラヴァーンはそこで気づいた。
互いにその存在を認識した、ならばその時点で開戦の号砲が鳴る。

俺を見たな。俺を知ったな。俺と同じ空気を吸い地に立ったな。

瞬間、バフラヴァーンの全力が放たれ、また命が散る。
虫や草花であろうと例外はない、彼の通った道に無事なものなど存在しない。

暴窮飛蝗――それがバフラヴァーンの魔王としての二つ名である。


【クラス】
バーサーカー

【真名】
バフラヴァーン@黒白のアヴェスター

【ステータス】
筋力:A++ 耐久:A+ 敏捷:A 魔力:D 幸運:B 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:EX
バーサーカーは正常な思考力を持ち、普通に会話することも可能である。
ただしその精神性はまさに狂戦士と呼ぶに相応しく、通常のそれとは隔絶されたものである。

【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

我力:EX
我の強さで荒唐無稽な現象を無理矢理に実現させる力。
身体能力の強化や自身の攻撃に毒のような回復を阻害する効果を付与したり、衝撃波を抑えて威力そのままで規模を縮小するといった芸当も可能。
不老不死の実現も可能であり、高位の魔王達は強靭な意志の力で、寿命すら超越して千年以上もの間存在し続けている。
バーサーカーは最強の我力使いと言われるほどの我力を持つ。
ただし今回はサーヴァントで召喚されたこととマスターを失った状態で無理やり現界を維持するのに幾分かの力を常に割いている。

戦闘続行:EX
宝具の効果によりどのような致命傷を受けようと戦い続け、肉体が消滅するまで戦闘が可能である。

勇猛:EX
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
どんな特殊な能力を持ち強力な相手だろうと一切臆すことなく突撃していく。
ここまで来ると気狂いの類である。

【宝具】
『殲くし滅ぼす無尽の暴窮(ハザフ・ルマ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自身)
第三位魔王、バフラヴァーンの第一戒律。
戒律とは己自身に禁忌を設け遵守すると心に誓う。
自身に破ってはいけない制約を課す代わり、その制約が重いほど反動として強力な特殊能力を行使できる。
バーサーカーは出会った者とは誰であろうと全力で戦わねばならない代わりに、体力・持久力の消耗しない永久機関になる。
己こそが最強、それを証明するための戒律、消耗がないため死の寸前まで全力で戦える。
出会った者の定義は相互認識した者に限り、それは虫や草花に至るまで例外はなく全力で戦わなければならない。
そのためバーサーカーの攻撃は無差別な範囲攻撃等で虐殺を行えば破戒扱いとなってしまうため、我力によって認識した相手にのみ攻撃が当たるようにしている。
なおこの縛りは必ず相手を殺す必要はなく、同時に認識している相手が複数いるなら中断して標的を変えることも可能。
欠点として自分を認識していない相手には一切の殺傷が不可能になることと自分を意図的に意識から外している相手には攻撃できなくなる。

『終わりなき群生する暴窮(マルヤ・アエーシュマ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自身)
第三位魔王、バフラヴァーンの第二戒律。
孤独を恐れず戦い続ける代わりに、己と寸分違わない分身を作り出す。
この宝具は深層意識下で課している戒律のため、条件を満たさない限り自身でも任意に発動させることができない。
その条件は非常に伯仲した実力の持ち主か、近い性質の者と戦った場合、即ち「自身と同種の存在と戦った時」に発動する。
分身は思考回路と性格も含めて一切の差異がない正真正銘の本物であり、結果起こるのは増えたバーサーカー同士によるバトルロイヤルである。
結果として相手は最強の座を求めて自分同士で殺し合うバーサーカー達の全力の殺し合いの真っ只中に巻き込まれ、増殖したバーサーカー達に袋叩きにされてしまう傍迷惑極まりない荒唐無稽な宝具である。
極度の興奮と昂揚が宝具発動のトリガーなので、この宝具が発動している時、バーサーカーは一種のトランス状態となっており、自分が増えている事実を認識できない。
本来は増殖数に限りはないのだが、それが起こり得る相手は1人だけであるため、彼が召喚されない限りは今回の聖杯戦争で無秩序な増殖は起こらないと考えられる。

【人物背景】
頂点に君臨する絶対悪、『七大魔王』の一角、千年以上も君臨していた第三位魔王暴窮飛蝗バフラヴァーン。
二メートルを超える体躯と桁外れの筋肉を持つ、灼炎のごとき蓬髪の男性。
「この世のすべてと戦い、倒し、最後に残った者が最強である」という子供じみた狂気の野望を掲げて宇宙を渡り歩き、その思想の前には老若男女も不義者も義者も関係ない。
武の道を行き、最強を目指し、実践する。最終的に宇宙すべての生命を倒そうとしている究極の戦闘狂。 口癖のように「俺の方が強い」と言い放つ最強を目指す。
そうして彼は自身が最強を証明するために戦い続けた長き旅路の果てに好敵手を見出す。
その戦いの中で彼は自身の真の望みを知り、敗北した。

【願い】
異界東京都の全てを打ち倒し、マグサリオンと再戦する


【マスター】
不明@???

【マスターとしての願い】
不明。

【weapon】
不明。

【能力・技能】
不明。

【人物背景】
才能があって努力もしていた魔術師。
バフラヴァーンによって殺害される。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年07月17日 01:16