燃える、燃える。

島が、金が、命が燃えてゆく。

「い、嫌だ...」

私は震える喉で声を絞り出す。

死にたくない。

私はまだありあまる金を、バイカル湖から溢れんばかりの全ての金を使い切りたい。

だが、命乞いをしようとも奴らは、職業・殺し屋は止まらない。

当然だ。

殺しの権利を安く買いたたく逆オークション。そんなリスク無用の痴れ事に興じる奴らが、そんなことの為に命を賭けられる奴らが、金の力に惑わされるはずもない。

私の莫大な金の力が効かない奴らはまさに天敵としか言いようがない。

「イワノフぁぁぁ!!」

殺し屋の男が雄叫びと共に右の拳を振るう。

その時、私の見たものは...奴の右腕の枷に彫られていたのは、東洋の教典だったろうか。

そしてその瞬間、私は理解した。

これまで神ですら私を裁けないと思っていたが、それは間違いだった。

私は実は裁かれる者だったのだ―――そう、神(ポーフ)に。

そして、神はついに私の命を潰さんと目前にまで迫った。


「クックククク....ハーハハハハハハッッッ!!!」

私は腹の底から愉快だと笑い声をあげる。

そう。あの時、私は神に裁かれるはずだった。

それがどうだ。あの恐ろしき殺し屋共は何処へと消え去り、私の命は繋がれ。

更には、戦いに勝ち残れば勝者の願いを叶える願望器まで手に入るというではないか。

「結局、神は屈したのだ。金の力に...このイワノフ・ハシミコフの力に!!」

やはり金こそが最強の矛であり盾である。

金さえ払えば、戦士だろうが女だろうが兵器だろうが土地だろうが、神羅万象地球上に存在する如何なるものでも手に入る。

金さえ積めば、殺人だろうが人身売買だろうが、如何な罪を犯そうとも赦される。

金さえあれば―――神すら、その前に頭を垂れる。

「私に聖杯とやらを直接渡さなかったのは、神であるためのせめてもの抵抗かもしれんが...なに、そこはソレ。すぐにでも貴様が金に屈したことを証明してやろう。
そうは思わんかね、アーチャー」

私は背後の英霊、アーチャーに嗤いかける。

「私は私の思い通りにならないやつらが大嫌いだ。その点、キミはわかりやすくていい。
英霊の身でありながら、御大層な大義名分ではなく金に従い金の為に戦う素晴らしい存在だ。お陰で交渉がつつがなく進んだというものだ」
「ま、ずっとそうやって生きてきたんでね。契約金分はしっかり働きますよ」

私は彼の肩に手を置きながら観察する。
私の言動にも顔色ひとつ変えず、己が金の走狗であるのを平然と肯定する。
その様子から、この男が根っからの傭兵であるのは容易に窺い知れた。

これはグルガ以上に『当たり』の駒かもしれない。

グルガ―――私が主催する裏格闘技トーナメント、ロシアン・コンバットの絶対王者を務めてきた男。
奴は強かった。私を良きパートナーと認識していたかはわからなかったが、牙を剥くこともなく私の見たい死合いを幾度も見せてくれた。
だが、奴の唯一の欠点は抑えが効かないこと。
一度本気になれば、命すら平然と奪うファイトスタイルは私の渇きを癒してくれたが、一方で命惜しさに奴を本気にさせまいとBook(イカサマ)をする闘技者が増えたのも事実。
もしも奴が英霊として呼ばれ、肝心な時にあの癖が発露してしまえば私自身にも危険が及ぶかもしれない。

奴に比べて、骨の髄まで傭兵であるこの男は、聖杯戦争を勝ち抜く上ではこれ以上なく心強い存在になるだろう。
徹頭徹尾金の関係であるため、金が切れればそこで終了してしまうだろうが、幸いにも私は大金持ち。
勝ち抜いた暁には百億だろうが千億だろうが一兆だろうが払うことができる。
そんな契約金を払えるマスターがどれほどいるだろうか?いや、いない。
このイワノフ・ハシミコフを差し置いて、いるはずもない。

「待っていろ神よ、そして職業・殺し屋どもよ!この戦いを勝ち残り示してくれようぞ!最強の力は私の金であることをな!!」



「......」

何度目かわからないマスターの高笑いを眺めながらも、俺の心は一糸も乱れなかった。
平和ボケした連中はもちろん、そうでない奴から見てもこのイワノフ・ハシミコフという男が下衆であることには変わりないだろう。
だが、それがなんだ。
聖者だろうが愚者だろうが、人間は殺す時には誰だって殺す。
理想を掲げ。大義名分を掲げ。
それを成す為にに相手が邪魔だから排除する―――突き詰めればそれが全てだ。
そこに私情を挟めば目が濁り、心がどよめき、屍を晒すだけだ。

その点で言えば、金はわかりやすい。
命がけで捻りだした一億だろうが、片手間に払われる一億だろうがそこには何の差もない。
多い方が正義。感情が介入できない、ただそれだけのシンプルな強さだ。
己の力量と釣り合った金額を見極めれば、屍を晒すことなく人生を謳歌できる。
英霊となった身で人生云々を語るのもおかしな話かもしれないが。

とにもかくにも。
金の前には性格云々は何の意味もなさない。
欲っする金を払えるかどうか。余計な柵のないただそれだけの世界だ。
だから俺は雇い主が誰であろうと構わない。

公明正大を掲げ虐殺と餞別を繰り返す日陰者だろうが。
絶対女王制を掲げ弱者の拠り所となる使い捨ての英雄だろうが。
金食礼讃を謳う、人心掌握に長けた社長だろうが。

俺は俺の要求する金を払える奴の下に着くだけだ。

それは、英霊となった今も変わらない。




【クラス】
アーチャー

【真名】
火防 郷@血と灰の女王

【ステータス】
変身前 筋力:D 耐久:D 敏速:D 魔力:D 幸運:C 宝具:D

(変身時)筋力:B 耐久:B 敏捷:C(スラスター使用時はB) 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
単独行動:B
マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。
2日は現界可能(吸血鬼として人の血を吸えば期間を延ばせる)


対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能。
この英霊は特に炎の系統の魔力に対しての耐性が高い。

【保有スキル】
吸血鬼(ヴァンパイア):A
魔力を一定量消費し変身することができる。
伝承の吸血鬼とは異なり、日光を浴びても消滅することは無い。
また、霊核を傷つけるか破壊されない限り死ぬことは無い。
ただし、変身することができるのは夜のみである。
その為、昼は例え暗闇においても人間体のままでしか戦うことが出来ない。
死ぬと遺灰物(クレメイン)という手のひらサイズの心臓を遺し、それを食した英霊は一際強力な力を手に入れられる。

変身体:A
このアーチャーが変身した姿。
頭部からつま先まで纏われた燃え盛る鎧に、身体中に仕込んだナイフや銃や地雷など、近接においても遠距離においても十分な力を発揮できる。
また、身体から出る炎を利用して簡易的な陽炎を作り敵を惑わすこともできる。


沈着冷静:B
如何なる状況にあっても混乱せず、己の感情を殺して冷静に周囲を観察し、最適の戦術を導いてみせる。
精神系の効果への抵抗に対してプラス補正が与えられる。特に混乱や焦燥といった状態に対しては高い耐性を有する。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
長年の戦場で培ってきた観察眼と経験値は己の危険を的確に知らせてくれる。


【宝具】
『W・M・D(ウェポンズオブ・マス・ディストラクション)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ: 最大捕捉:100
変身体の時にのみ発動できる宝具。この宝具は一夜のうちに一度しか使えない。
数多の大砲やミサイルなどを一斉掃射することで敵を撃ち滅ぼす。



【weapon】
人間体の時は、傭兵の経験を活かし、銃火器やナイフの扱いに長ける。

【人物背景】
男。金の為に場所を問わず戦う傭兵。
一番新しい職業は食糧輸出会社・ゴールデンパーム。
表面上は気安い好漢だが、その裏では傭兵らしく非常に冷静沈着且つ冷徹。
人を殺すことに躊躇いがなく、如何な状況でも情に支配されることもない。
常に金の支払いの良い雇い主のもとに就いている。
容貌はゴリラに似ており、本人もわかりやすい容姿を売りの一つにしているのか、ゴリラと呼ばれてもまったく気にしていないどころか受け入れている。
その為、あだ名は「ゴリファイア」「火ゴリ」「ゴリさん」などゴリラにちなんだものが多い。
火山灰を浴びて吸血鬼となり、以降はゴールデンパーム社長:ユーベン・ペンバートンを王にするという契約のもと戦っている。





【サーヴァントとしての願い】
イワノフを生還させ、己も受肉し大金を貰う。

【把握資料】
漫画 血と灰の女王 6巻以降の登場。
現状の主な活躍は6、11、12、14、15巻が中心となる。



【マスター】
イワノフ・ハシミコフ@職業・殺し屋

【マスターとしての願い】
生還し、自分を殺そうとした職業・殺し屋たちを始末した後は思う存分に金を使い欲望を満たす。

【能力・技能】
莫大な金。金は力なり。


【人物背景】
ロシアの石油王。超が付くほどの大金持ち。
貧困で育った彼は、成り上がったことで絶大な自信と欲望を抱くようになる。
己の自己(エゴ)を見開かすのをなによりの愉しみとしており、己に逆らう者には容赦なく経済制裁をはじめとした罰を与え、なにがなんでも屈させようとするほどのエゴイスト。
その為、普段は紳士的な態度で接しているが、興奮すると後先が見えなくなり、重大な問題が起きても「金で解決すればいい」とかなり短絡的になる。
ロシアン・コンバットという裏格闘技大会に執心しており、己の金の力で創り上げた最強の闘士・グルガの力を通じてイワノフ自身の力を見せびらかすのを愉しみとしていた。
だが、プロレスラー:アイアン・ペガサスこと天野和馬を半ば強制的に参戦させ、死に至らしめたことで彼の命運が決まる。
天野和馬の娘、天野メイが敵討ちの為に、イワノフ自身が与えた20億の賞金で雇った職業・殺し屋の二人により、グルガとイワノフは激闘の末に命を断たれることに。
イワノフが縋った金の力も、約20億の依頼金を8万円で買い取った卑しい狂人共には通用しなかった。


【参戦時期】
赤松に顔面を砕かれる寸前。


【把握資料】
漫画 職業・殺し屋 7~9巻『ロシアン・コンバット』編

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年07月28日 20:51