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さあ、私を祝福してくれ。君よ、どんなに大きな幸福ですら妬心なく見ることができる、静かな眼よ。
さあ、祝福してくれ。この溢れんばかりの杯を。水は金色に光り、杯から流れ出して至るところ君の歓びの照り返しを運んでいくだろう。
───『ツァラトゥストラはかく語りき』より。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「私が死んだら、君は悲しむ?」
───欠けた夢を見ていた。
雪の降り積もる、真っ白な夜の夢だ。
『何故笑う』
夢の中で、自分ではない誰かが言った。
戦いの後に広がるのは空ろな地獄だった。いつもそうだ。黒煙の立ち昇る戦場の荒野に散らばるのは、両陣営の残骸。鉄屑となった兵器たちと力尽きた人間たちだ。
黒煙のけぶる戦場にあって、不自然なものがいくつか存在した。それは重く垂れこめた雲の下でもさんざめく光であり、地上に残る痕跡であったりした。
主要な攻撃目標、及び敵方の主力兵器が、全て巨大な氷柱となっているのだ。
周囲の気温は低い。それこそ、「彼女」が戦ったという痕跡だった。
「……え?」
コンマ数秒の開きがあって、相手からの応答があった。
凛と鳴る鈴のような、ころころとした愛らしい声だった。その声音はただ不思議そうに、こちらを応えていた。
『君は、何故、今もそうして笑っていられる』
自分ではない誰か───今、自分が視点として宿っている少年は、不可解な思いを抱いていた。
彼が相対する少女は、戦いが終わった後、立ち昇る煙と荒れた戦域を俯瞰し、真っ先に自軍の安否を確認した。それこそ整備班や回収班よりも早く、だ。
そうして無事な相手には良かったと笑い、そうでない相手にも───やはり、笑った。
「あ……これ? なんだろ、なんて言うのかな」
少女は、ほんの少しだけ返答に迷い、
「せめて、笑ってようかなってさ」
『意味不明である』
「うん、私もあんまり……何の為とか、どうしてとか、そういうの説明できないけど」
また少し、間。
「泣くよりはいいと思うんだ。私が勝手にそう思ってるだけなんだけどさ。死んじゃったみんなを笑って見送って、私は心配いらないぞ、後は任せて、って笑ったほうがいいと思って」
『……それは、ただの自己満足だ』
「うん」
彼女は否定しなかった。百も承知なのだろう。
「でも、それしかないから」
帰投命令が下るまでの数分。
硝煙と粉雪が混在する戦場で、少女は───蜉蝣はその視線を空へと向けた。重い曇天を見上げるその姿は、雲の切れ間から光が差し込むのをじっと待っているようにも見えた。
───視点が切り替わる。
それはいつかの時代、凍えるような冬のことだった。
極東の島国『八洲』が繰り広げる戦争の終盤。もはや泥沼となりつつあった争いにおいて、『帝國』はある切り札を出した。
新型熱核爆弾。何もかもをひっくり返す、最後の手段だった。
これが本国で爆発すれば、八洲の全域に渡り甚大な破壊と深刻な汚染がまき散らされたであろう。帝國は全てに決着をつけるため、八洲の最高戦力を海域に引き付け、ステルス爆撃機での投下という作戦を組んだ。
あまりにも巨大すぎる一石は、帝國の側にとっても博打であり、それだけ両者が追い詰められていたという証左でもあった。
結果として八洲は後手に回り、爆撃を未然に防ぐことはできなかった。
ぎりぎりで予測された投下地点に間に合うのは、ただ一人の少女のみ。
それが、彼女だった。
そして彼女はただ一人、「物理的に」爆発を押し留められる可能性を持つ唯一の人材だった。彼女はそういう力を持っていた。
いつもの、怖いものなどないといった口調で。
「大丈夫だよ、私が止めるからさ」
その言葉を聞いた時に、少年の心中で渦巻いた感情は、一言では説明できない。
ただ、聞いた瞬間に体が動いていた。視界に入る敵を全て叩き落し、自分でも知らぬまま、少女のいる北へ進路を取った。
邪魔なものは全て撃墜した。動く動かないにかかわらず進路上にあるあらゆるものを砕いて振り切り、海と陸をいくつも跨いだ時、煤けた地平線の向こうによく知る反応を感知した。
『───柊!』
少年の叫びは届いたのだろう。
ノイズ塗れの回線が僅かに開き、たった一秒だけ彼女の声と息遣いが聞こえた。それが最後だった。
その時も、少女は困ったように笑った。
声にほんの少し、泣きそうな揺らぎを乗せて。
少年の視界で二種類の光がほぼ同時に爆ぜた。
熱核兵器の爆発の光と、刹那の後にそれを覆い尽くすように広がった「力」の光だ。
引き伸ばされたような感覚の中、光に比して遅すぎるように思えるタイミングで、空に巨大な亀裂が奔ったような音が轟いた。それから更に遅れて、極低温の冷気を伴う豪風が吹いた。
周囲の気温が一気に氷点下となり、少年の駆る機体表面にびっしり霜が迸った。何十キロも離れたこの地点でこれなら、中心部はどうなっているか想像もつかない。いや、それよりも。
───届かなかった。
最初に、そう思った。
間に合ったところで何ができたのか、などと考えられなかった。あるのは事実のみ。
その翅も手も、遥か向こうで弾けた激烈な光に届くことはなかった。これはただ、それだけの話であった。
そして、都市は永遠の冬となった。
八洲北部にある防衛都市『落地』は、彼女の作った氷の世界となって全てを停止させ、二十年に渡り終わりのない雪を降らせている。
◇
「私が死んだら、君は悲しむ?」
───欠けた夢を見ていた。
自分ではない誰かが見た、それは泡沫の夢だった。
「もしそうなってもさ。できれば、さ。笑ってほしいんだよね」
『───』
答える言葉を、彼は持たなかった。その視点を介して見る、自分も、また。
「だめ、かな?」
そう言って、彼女は弱気な笑みを浮かべた。
雪の降り積もる、真っ白な夜の夢だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
柊は覚えている。
いつか空戦の訓練をしていた時、師であり自分たちのリーダーであった竜胆という男の言った言葉を。
勝負を決める「速さ」の話だ。古の武術の知識だった。
まず一刻を八十四に分割する。
そのうちの一つを、分と呼ぶ。これは人間の一呼吸分に等しい。
分の八分の一を、秒と呼ぶ。
秒を十に割ったものを絲。
絲を十に割ったものを忽。
忽を十に割ったものを毫。
そして毫の十分の一の速度を、雲耀と呼ぶ。雷光を意味する言葉。勝負は全て、その雲耀の領域で決まる。神経を研ぎ澄ませ、全ての機を見逃すな。
柊はその言葉を覚えている。そして、この場を制するにはまさしくその言葉を実践しなければならないと悟っていた。
雲耀に至れ、全てを見落とすな。
全神経を集中させて、ゆっくりじっくり手元を操作し、そー…っと、そー…っと。そーーーーーーーー……っと。
……ぼとん。
「うびゃあーーーーーーーーーーーー!!! 落っこちたーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
UFOキャッチャーの筐体に向かって本気で悔しがってる少女の姿が、そこにはあった。
「信じられない」みたいな目をして、ぱんぱんと小さく両手で台を叩きながら、お行儀悪く「うっそでしょ」とかほざいている。
日本人らしからぬ風貌をした少女だった。腰まで伸ばされた長髪は、一分の不純物も見られない真っ白なものだ。所謂染料や脱色による人工的なそれではなく、ごく自然にそうなったであろう、嘘臭さと粗雑さのない純白の髪。新雪の野を思わせるかのような。
冗談のように佳麗な白髪にそぐうように、その顔立ちもまた麗姿と呼べるものであった。高く整った鼻梁、およそ沁みとは無縁な白磁の肌、山吹色の瞳はぱっちりとした可愛らしい眼窩の形に縁どられ、今は何かを訴えるような上目遣いを見せている。
未だあどけなさを残しながら、あと数年もすれば誰もが振り返るであろう美貌を湛える少女ではあった。
しかし、今はその全てが台無しだった。
彼女は冬用のブレザーの上に白のダッフルコートとマフラーをかけた、つまりは学校帰りの服装をしていて。まあ要するに、明らかに高校生以上の外見をしているのである。
ゲーセンでガチ(意味深)になるには、少々いい年をしていると言わざるを得ない。
「これ絶対なんかおかしいって! だって私、アームの圧力も重量との摩擦比も全部mg単位まで完璧に計測したし、ボタンの操作タイミングだってちゃんと思考加速したから合ってるはずなのにぃ!」
「何やってんだお前……」
少女の後ろから、連れ合いと思しき同年代の少年の声が一つ。
困惑というか、呆れというか、ともかくそんな感情を滲ませて。
「いや本当に何やってんだよお前」
「2回も言わないでぇ」
しおしお……という擬音でも聞こえてきそうな情けない顔で振り返りながら、少女はへなった声で返す。
彼らがいるのは最寄りの駅の近くのゲームセンターで、時刻は午後の5時頃。つまりはパッと見の印象通り、学校帰りの寄り道であった。
寄ったことに特に深い理由はなく、というか遊びに出るのに明確な理由なんて必要ないだろう。少女の側が「あ、ねえねえあれ何?」と聞いてきたもので、素直に答えたところ、じゃあ寄ろうか、ということになったのである。
曰く、「娯楽施設なんて見たことないから」とのこと。
その辺については、深くは聞かなかった。
「……むー。じゃあ今度はフェイカーの番ね」
「俺?」
「そ。私ばっかやるのもなんだし、お手本も見せてほしいしね」
お金は私が出してあげるからー、と背中を押され、あれよと言う間に筐体の前へ。
「……まあ、久々にやってみるか」
仕方あるまい。かつて司狼と一緒に近隣のゲーセンを荒らしまくり、どっかのバカ集団と抗争になり、散々のバカ騒ぎの末、最終的には香純に二人まとめて頭ぶん殴られたその実力を見せる時が来たようだ。
「いいか、こういうのにはコツってのがあるんだよ。計算とかそういうこと言ってるうちはスタートラインにも立てないってわけだ。見てろ、これが本物の……」
と、調子よく語りながら操作したアームは、思い切り景品へ向かい、
掠りもしなかった。
……少女が爆笑と共に、背中をバンバンと叩いてきた。
◇
「えへへー、もうけもうけ」
その後30分くらいして、二人の姿は外の雪降る路地にあった。
あの後も柊はああでもないこうでもないとゲーム台と格闘し、都合800円ほどを消費してようやくお目当てのもとを手に入れることに成功した。カエルをモチーフにしたキャラクターのストラップだった。正直趣味が分からない。
「……それ、向こうのコンビニで300円で売ってたぞ」
「いいんですー。こういうのは金額じゃなくて、思い入れとか思い出とか、とにかくそういうのが重要なんだから」
むふふー、と少女はストラップを胸に抱いて上機嫌だった。マフラーが揺れて猫の尾のようである。
思えば、彼女は最初からこうだった。
好奇心旺盛、と言えば聞こえは良いが。見るもの触れるもの何にでも興味を示し、目を輝かせて「あれなにあれなに!?」と逐一問うてくるのだから堪らない。
家の中やご近所だけでもそうなのだから、初めて都心部に出た時は凄かった。文字通りに目を丸くして、言葉を失っていたことを覚えている。彼女はただでさえ顔が小さくて目が大きいのだから、そうしていると本当に目が真ん丸だった。そこは見ていて面白かった。
『お前、いったい何時の時代の人間なんだよ』
『えーっと、確か昭和101年だったかな』
『……西暦で』
『せいれき?』
『いや、うん。OK、大体分かった』
まあつまり、そういうことなのだろう。
自分にとってこの東京の風景は、十数年の時が経っているとはいえ割とありふれたものではあるのだが。彼女にとっては、文字通り世界が違っていたのだ。
『あ、それとね。ひとつだけ訂正』
そしてもうひとつ、印象に残った言葉があった。
『私、人間じゃないんだよね』
その時の困ったような笑顔が、何故か、強く心に残っていた。
「どしたのフェイカー、難しい顔してるよ?」
ひょこっ、と柊が前に回る。
長い髪が動きに合わせて残像のように揺れた。色素の薄い彼女の髪は、街灯の明かりを受けてはほんのり銀色に光って見えた。
「……別に」
お前と会った時のことを思い出していた、とは気恥ずかしいので言わない。
柊は例の山吹色の瞳で、フェイカーと呼ばれた少年の青い瞳を覗き込む。彼は目を逸らす。視界を塞がれて甚だ迷惑です、と顔面を使って表現する。
「んむー、またその顔だよー。そういうの良くないと思うな、笑顔笑顔!」
「やめんか」
顔をほぐそうと柊の手が伸びて、それをしゅっと払う。
「おっ、やるねー。じゃあもうちょっと早くいくよっ」
しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ。
「寄るな動きが気持ち悪い!」
「あべしっ」
手と手の攻防、ボクシングのスパーのようなやり取りは、脳天にチョップを食らった柊という幕切れで終わった。
そんなこんなで、二人は夜の公園にいた。
帰り道の途中にある小さな公園で、今は雪が積もって人の気配もなかった。色とりどりの遊具はブランコの鎖に至るまで白い雪化粧に覆われて、街灯の小さな明かりだけが、暗い夜道と木々を照らしている。
フェイカーは木陰に立ち、柊は木柵フェンスの上に座って足をプラプラさせている。何が楽しいのか、相も変わらずニコニコと笑っていた。
話を切り出したのは、フェイカーだった。
「……お前さ」
「うん?」
「よく飽きないっていうか、いつも笑ってるよな」
出会ってから今まで、彼女はずっとそうだった。
街の景色に笑い、人との会話に笑い、未体験の食事に笑った。みんなが大好きでみんなが楽しい、あたかもそう言うかのように、彼女はいつも笑っている。
柊は、んー、と指を唇に当て、少しだけ考えて。
「まあ、実際に楽しいしね。それにさ。
今の私は、笑うしかできないから」
えへへ、とやはり笑って、柊は答える。
「フェイカーが何を言いたいか、流石に分かるよ。聖杯戦争が始まってるのに、お前何したいんだ、ってことでしょ」
「……まあ、それもある」
「ふふーん、私だってあーぱーじゃないんだもん。ちょっとは考えてるよ」
得意げに胸を張るように、彼女は言う。
「うーん、そだねぇ。話は変わるけど、フェイカーって夢とかある?」
「何だよ藪から棒に」
「いいからいいから! ほら、お姉さんに言ってごらんなさい」
何がお姉さんだ。まあ、こっちは享年17だから、肉体年齢では下かもしれないが。
フェイカーは暫し、押し黙る。柊の明るく気安い振る舞いとは裏腹に、込められた感情が切実なものであると気づいていた。だから、この質問には真摯に答える必要があると、そう思った。
「……正直、今の俺に叶えるべき願いはないよ」
「そういう大げさなものじゃなくてさ、もっと個人的なものだよ」
「そう、だな。それなら……」
彼は顔を上げ、言う。
「俺は、俺の日常に終わってほしくなかった」
フェイカーと呼ばれた少年───藤井蓮に、元より大仰な願いなど存在しない。
時間が止まればいいと思っていた。今が永遠に続けばいいと思っていた。この日常に終わってほしくない。
いつか終わると、分かっていても。
彼はただ、それだけを望んでいた。誰もが当たり前に有する日常という普遍。ありふれた日々の情景を、ただあるがままに続いてほしいという、ささやかな願い。
結果として、それは永遠に叶うことはなかった。
非日常の殺し合いに巻き込まれ、何より大切だった友人たちを失った。街も学校も破壊し尽くされ、挙句の果てには世界の命運だなんだと分不相応な戦いの趨勢の矢面に立たされて。
最終的に、宇宙は全く新たな形に書き換えられた。
それは自分とて納得済みの結末だった。後を託した彼女は、全ての命を慈しむことができる、誰よりも神となるに相応しい女性だった。自分や、殺すことしか能のない黄金、我執に呑まれた水銀とは比べ物にならない、優しい神様だ。
だから藤井蓮は彼女に全てを託し、心穏やかに新世界を迎えた。輪廻転生の理を有する、誰もが最後には幸せになれる世界。その中で蓮は、神としての力を持たず、黒円卓の因縁など全くない真実ただの凡人として、人生を送るはずだった。
だがそれは逆を言えば、これまでの「藤井蓮」としての個我は死んでしまうということで。
今この自分として出会い、唯一無二として愛した氷室玲愛とも、顔と名前の同じ別人として生きていく他にないということでもあった。
だから、願うとするならば、結局はそれを置いて他にないのだろう。
彼は死者の生を認めず、死者の願いを聞き入れず、それは自分だとて決して例外ではないけれど。
「俺はもう一度、先輩と会ってみたかったんだ」
この身は既に、滅び去った第四神座に焼き付いた朧気な残像でしかないけれど。
本当の彼女は、新たな女神の治世において幸福な只人として生まれ変わっているけれど。
こんなことを願うこと自体が間違っているのだと、他ならぬ自分こそが何よりも理解しているけれど。
仮に、藤井蓮が願うとすれば。
それはやはり、これしかないのだ。
「ん……」
柊は、言葉なく耳を傾けていた。
ほんの少しだけ、笑って。これ以上なく真剣に、彼の言葉に向き合っていた。
「やっぱり君は優しいね。私の見込んだ通りだ」
「今の何を聞いてそう思うんだよ。お前こそ……」
蓮は顔を背け、続きを言わなかった。
本当に優しいのは、お前のほうだろう。
それは言うまでもないことであったし、多分、彼女が望むものでもないのだろう。
「私にもね、夢があるんだ」
言葉の通り、夢見るように、柊が言う。
「私のいた時代は戦争真っただ中でね。特に私のいた八洲はちっちゃくて、人も物資もなかったからジリ貧ってレベルじゃなかったんだ。
ぶっちゃけ戦争相手に勝てる要素なんて何一つとしてなかったよ。実際負けちゃったしね。それでも八洲が曲りなりにも戦争を続けてられたのは、私達がいたからなんだ」
鬼虫。八洲国軍が作り上げた、必殺にして絶対の国防超兵器。それは昆虫を模した鋼の機体と、それを統制する人型の主脳という二つの要素で構成されていた。
少女───無明の柊は、鬼虫八番式〈蜉蝣〉の適格者に選ばれた存在であった。
「鬼虫は強かったからさ、そりゃ私達は連戦連勝でブイブイ言わせてたよ。軍神様とか生き神様とか言われてさ、よせばいいのに有難がられたりして。
でも戦術レベルで勝ちを繰り返しても、戦略レベルの勝敗をひっくり返すことはできなかったんだ。私達は一人、また一人っていなくなってった」
弐番式〈蜘蛛〉・羅刹の巴は、敵の主要基地に突入を仕掛けたまま帰ってこなかった。
参番式〈蟷螂〉・夜叉の剣菱は、幾千の敵に単身切り込み、その全てを道連れに斃れた。
四番式〈蜈蚣〉・弩将の井筒は、傷ついた無数の歩兵の盾となり、立ったまま逝った。
伍番式〈蛾〉・奔王の万字は、敵のこれ以上の侵攻を防ぐため、自爆して散った。
六番式〈蟋蟀〉・鉤行の庵は、敵拠点の中枢を捨て身で撃ち、爆発と運命を共にした。
七番式〈蟻〉・霖鬼の楓は、三百時間以上に及ぶ超高速演算をやり遂げ、祈るように機能を停止した。
そして、八番式〈蜉蝣〉・無明の柊は。
この、いつも笑ってばかりいる不器用な少女は。
「敵の新型兵器で、凄い爆弾があってね。核分裂がどうこうって、難しくよく分かんないけど。それがいくつもポンポン投げ込まれたの。
そん時は残ってた鬼虫も他の戦場に釘付けになってたからさ。間に合うのは私だけだったんだよね」
後はもう、語るに及ばずというものだ。
柊はその身に秘めた力と共に、熱核爆弾の火を押し留めて逝った。
そのことに後悔はないと、彼女は言う。自分だけではない、彼らは彼ら自身の意思で、その死を選択したのだ。
それは誇るべきことだ。悲しみこそすれ、憐れむべきことではない。柊もまた、覚悟と決意の上で選択したことだった。
だが、それでも。
「私はさ。月並みだけど、みんなに笑ってほしくて戦ってたんだ。
市民の人たちも、兵士のみんなも。そして……同じ鬼虫のみんなにも。
みんな笑って、平和に暮らせたらなって。そう思ってたんだ」
それは兵士が戦場に臨むにあたって、そう珍しくもない理由だろう。
誰もが大切なものを持ち、誰もがそれを守りたいと願う。それは例えば家族であったり、友人や恋人であったり、財産や地位であったり、ちっぽけなプライドであったり、あるいは譲れぬ願いであったりする。
柊の場合は、それがほんのちょっとだけ優しかっただけだ。
「だから、願いの半分は叶ってるんだよね。
ここは八洲じゃなくて、日本っていう別の国だけど。大きな戦争があって、負けちゃって、たくさんの人が死んで……それでもみんな頑張って、きっと大丈夫だよって支え合って、もうこんなことしちゃ駄目だなって反省して、今の姿がある。
それってさ、すごいと思わない? 八洲もきっと、いつか立派に復興してみんな幸せに暮らせるんじゃないかって、そう思えるんだ」
柊の好奇心は、生来のものも当然あったけれど。
それ以上に、そうした燻る思いが故のものでもあったのだろう。
敗戦を経験して一度は荒廃した国土。それが活力を取り戻し、多くの人の流れを生んだ。そうした人々の営みを、柊はずっと目に焼き付けていたのだ。
もう帰ることはできない、故郷の代わりに。
「……それは、自分で見ろよ。こうして生きてるんだ、なら時間も機会もたくさんあるだろ」
「もー、意地悪なこと言うなフェイカーは。
……そうしたいのは、やまやまなんだけどさ」
柊は、やはり困ったように笑って。
「気付いてるでしょ。私、もう寿命とかそういうの、ほとんど残ってないんだよ」
「……」
「だからね、此処が私の最期なんだよ」
機械という存在の「死」は、その境界が曖昧になりがちである。
特に鬼虫というものは、機能停止からの再起動は手段さえ整えば絶対不可能なことではない。それはただ一人生き残った九曜から聞いた経緯からも、明らかなことではあった。
蘇生不可能な状況、完全な死と定義づけられるのは、おおまかに二つ。
一つは、深刻な欠損やパーツの不足といった物理的質量の喪失。
そしてもう一つが、不可逆的な「変化」があること。
柊の場合は、後者が該当した。
彼女自身の特攻術の暴走。かつて迎えた「永遠の停止」という末路は、もう二度と目覚めることのない眠りであった。
「稼働限界っていうのもあったんだろうね。正直これはどうにもできないなぁ。
だから、ごめんね。私、君に聖杯をあげることはできそうにないや。君の夢、叶えてあげられない」
「そんなことはどうでもいい」
「ははっ、言ってくれるなぁ……うん、ありがとね」
それきり、二人は言葉を失くした。場に沈黙が下りた。小さな雪の結晶だけが、ひらひらと落ちるのみであった。
「……怖くはないのかよ」
ぼそりと、蓮が言った。
「怖いよ」
柊が答えた。
「最初の時はね、震えるほど怖かった。本当に怖くて、死ぬのが嫌で、色々わけわかんなくなって、必死だった。けど、今はそうでもないんだな」
それは、己に残された時間を指折り数えるように。柊は丁寧に、言葉の一つ一つを蓮に伝える。
「だって私が止まった後も、世界はちゃんと続いてたんだもん。それがはっきりわかったからさ。
私が止まっても、世界は知らん顔して当たり前に続いて、ちゃんと生きてる人がいて、時間は流れていくって分かったから。そしたらさ、何も怖くなくなっちゃった」
礎となること。
為すべきことを為し、戦うべき時に戦い、守るべきものを守り、託すべきものを託した。
運命を受け入れ、心配ないよと笑うことができた。後に続く時代の流れを信じ、残された者に全てを託した。
それに何より。
最期に、九曜に会うことができたから。
「だから、私にはもう、心残りって奴がないんだな」
「……」
「あ、でも心配しないで? 今すぐ止まるわけじゃないし、この聖杯戦争くらいなら平気だと思うから。
私はね、最後まで生きるよ。だから私は大丈夫。君に迷惑かけちゃうのは、悪いなーって思うけど」
柊は満面の笑みを浮かべて。
「だからさ、そんな顔しないで。ほら、笑って。ね?」
……その言葉に、自分は何を返したらよかったのだろう。
何も言えないまま。笑うこともできないまま。藤井蓮は、少女と向かい合っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
───欠けた夢を見る。
それは意識の共有であり、起きながらに見る夢であった。
垣間見えるは過去、そして想い。それらを内包する生そのもの。
その意識の奔流の中で、藤井蓮は欠けてしまった夢を見る。
───任務、飛行、鬼虫、戦争、
あと三機、自分だけが、───傷、高高度、暴風、───
遥か遠くの地平線と水平線、視界の果てで混ざる色、空気の臭い、大気を切り裂く笛に似た音、差し込む陽、確かあの日は晴天で、眼下に広がる灰色の街、地面、空、影に差す何か、間に合、彼方に飛び去る黒い鳥、───無音、───遠く、───全て、
───怖、
爆発。
『「止めなきゃ」』
「止、めな、」
意識に連なる声が、実像を結んだ。
「めなきゃ、止め、止めなきゃ、私が止めなきゃ、あれを、あれを私が、私が私が私が!」
喉を枯らす絶叫が続く。
それは爆発を止めた最後の時、彼女自身すら胸中の深くに封じ込めた心からの本音だった。
やがて彼女の意識は叫ぶのをやめた。涸れた喉から掠れた吐息が何度も漏れ出る。しばしの沈黙が続き、そのうち、喉の奥から搾り出る細い泣き声が聞こえた。
柊が泣いている。
子供のように、しゃくりあげて泣いている。
「こわいよぉ」
涙交じりの震えた声は、勇気も使命感も諦観も納得も何もかも取り払った、心からの本音。
「しにたくないよぉ」
夢で見た、最後の姿を覚えている。
彼女はその時でさえ、泣きそうな声で笑っていた。
これはあの時に封じ込めた柊の、心の声なのだろう。幾つもの戦場を駆け抜けた最強の鬼虫、その八番式として前線の在り続けた一人の兵士。初めて出会った時からずっと明るく、違和感を覚えるほどにいつも微笑み続けていた彼女。その笑顔こそ、彼女の強靭な精神力がなせる業だったことを、今更になって蓮は知った。
無明の柊は二十年もの間、爆炎と共に身を焦がす恐怖と、絶対零度の死の実感に囚われ続けていた。
俺は、その声を聞いて───
「―――莫迦が」
吐き捨てて自己嫌悪する。それは、決して願っていいことではなかった。
彼女の決意を踏み躙り、我欲で以て蹂躙するに等しい蛮行であった。
それでも、願わずにはいられない。
分かっている。これが酷く愚かしい思いであることなど。
運命を覆してみんな助けて、ご都合主義のハッピーエンドを迎える。
そんな都合のいい選択肢があり、俺にそれを選べるだけの力があったなら、そもそもこんな面倒事にはなっていない。
ここに来るまで、何十人何百人も死なせていない。
でも、だからこそと思う気持ちも真実で。
迫る刻限。尽きる命運。遠からぬ内に分かたれる生と死、明暗。
俺は。
俺の選択は……
「――――」
諦めない。
そうだ、今までどれだけ零してきたと思ってる。
どれだけ誤りどれだけ後悔してきたと思ってる。
甘いと言われようがなんだろうが、俺はもうこれから先、納得のいかない結末なんて何一つ認めない。
『だからね、此処が私の最期なんだよ』
心の中で反芻されるその言葉。笑いながら告げられた、それを。
「……なあ、知ってるかよバカ女」
こんなところを、お前の最期にだなんて、させてたまるか。
「主人公って奴は、いつだって無敵なんだよ」
俺にはもう、叶えるべき夢はないけれど。
せめて、お前の見る夢だけは守りたいと、そう思うんだ。
【クラス】
フェイカー
【真名】
藤井蓮@Dies Irae
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運A+(E) 宝具A++
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
単独行動:C
マスター不在でも行動できる能力。
水銀汚染:-
藤井蓮はその生まれから自分は自分でなかった。
神に魂を玩弄され、真実の己を見失い、出生を呪われ、運命を縛られ、未来を簒奪された。彼の人生は彼自身のものではなく、神の敷いた筋書きによって予め決定されたものだった。
───その呪縛を、彼は乗り越えた。真なる覇道と共に己の真実を掴み取った彼は、束の間とはいえ親たる水銀の蛇の思惑を超越した。
彼がフェイカーのクラスで呼ばれる羽目になった最たるスキル。現在の彼は水銀の蛇による汚染を払拭しているが、サーヴァントの霊基としてはその以前の状態で呼ばれているためなんか付いてきた。本人としては結構不服。
【保有スキル】
エイヴィヒカイト:A++
極限域の想念を内包した魔術礼装「聖遺物」を行使するための魔術体系。ランクAならば創造位階、自らの渇望に沿った異界で世界を塗り潰すことが可能となっている。
その本質は他者の魂を取り込み、その分だけ自身の霊的位階を向上させるというもの。千人食らえば千人分の力を得られる、文字通りの一騎当千。
また彼らは他人の魂を吸収し、これを自己の内燃エネルギーとして蓄えられると言う都合上、魔力の燃費が極めて良い英霊にカテゴライズされていて、
具体的には、余程ノープランな運用をしていない限りは、魔力切れのリスクがかなり低いと言う事。
肉体に宿す霊的質量の爆発的な増大により、筋力・耐久・敏捷といった身体スペックに補正がかかる。特に防御面において顕著であり、物理・魔術を問わず低ランクの攻撃ならば身一つで完全に無効化してしまうほど。
人間の魂を扱う魔術体系であり殺人に特化されているため、人属性の英霊に対して有利な補正を得るが、逆に完全な人外に対してはその効力が薄まる。
フェイカーのものは『座』から直接流入する力を利用したもの、というよりかつて覇道神として流出に至った己自身の力をスケールダウンさせた代物であるため、通常の創造位階よりもランクが向上している。
覇道の魂:EX
かつて神域に至ったフェイカーの渇望(精神)そのもの。
サーヴァントとして現界するにあたりその霊基は創造位階の時点で固定され、彼には神格・永遠の刹那として揮った権能は存在しない。
しかし彼が流出に至ったという事実、そしてその領域に達するに足る精神を持つことだけは、サーヴァント化による力の矮化では消すことができない。
霊基上限による力の制限とは全く別の話として、彼の精神は今も流出に至った時と強度を同じくしている。
フェイカーに対して精神的・概念的に干渉し影響を与えるには、最低でも「単一宇宙を超える規模」でなければならない。
如何に強力な精神操作であろうともそれが対人のものならば意味はなく、広域に作用するとしてもその範囲が宇宙以下であるならば原則として無効化される。
これは何某かの特殊な術式等によるものではなく、単純に「フェイカーの持つ魂と精神の質量が宇宙以上である」ことから発生する物理的現象でしかない。
一見してド外れた、無敵のようにも聞こえるスキルだが、これはあくまで精神・概念干渉に対してのみ働くもの。
殴る蹴るといった物理的干渉、直接的に肉体を害するタイプの魔術や呪術に対しては、このスキルは一切機能しない。
在りし日の黄昏:EX
黄昏の女神の恩寵。
いつの時代、何処の世界線であろうとも施される太母の愛。全ての命を慈しむ女神の抱擁。
彼女と袂を分かった彼には、かつて存在した女神の魂はもう宿っていない。しかし彼を包む女神の愛は加護という形で彼の霊基に現れ、一つのスキルにまで昇華された。
フェイカーが形成するギロチンによる攻撃に、超高ランクの洗礼詠唱に匹敵する浄化能力を付与する。彼女は触れるもの全てを斬首する罰当たり子ではなく輪廻転生の主として目覚めているため、かつてのような接触即死の力は失われており、首を攻撃した際のダメージボーナス程度に落ち着いている。
余談だが、フェイカーの幸運ランクの高さはこのスキルに由来する(本来のランクはE)。
【宝具】
『罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジュスティス)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
形成位階・人器融合型。
18世紀フランス革命時に使用された処刑用のギロチンを素体としており、聖遺物の形成に伴って右腕を覆う巨大な一振りの刃となる。
マリィの魂を有していないため、「斬首した対象を必ず殺す」不死殺しの力は失われているが、上記スキルにより首に当てた際にダメージボーナスが発生する。
また、マリィがいないとはいえ術者であるフェイカー自身の渇望深度により非常に頑強。「斬る」「人を殺す」という性質に極端に振り切れた概念礼装であるため、対人の近接武装として非常に剣呑な威力を誇る。
『超越する人の理(ツァラトゥストラ・ユーヴァーメンシュ)』
ランク:EX 種別:対神秘宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
■■位階・特殊発現型。
自律活動する聖遺物。フェイカー自身が生きた宝具であり、固有の権能を宿している。
その本質は「聖遺物を操る聖遺物」であり、彼が手にした聖遺物・概念武装・宝具に至るまで、その性質はそのままに十全に扱うことが可能となっている。
同様の宝具である「騎士は徒手にて死なず」と比較した場合、支配権の上書きによる性質変化や非宝具の低ランク宝具化といった事象は起こせないが、代わりに精密操作の面で遥かに優れており、例え固有の所有者にしか扱えない代物であろうとも万全の性能を発揮し、真名解放まで行使することが叶う。
それでも弱点は存在しており、聖約・運命の神槍や約束された勝利の剣など、「その世界観における最上の神秘」に関しては使用に際するキャパシティが足りず、無理やり扱うことはできないという点がある。
ただし、それさえ所有者や宝具自身の承認さえあればその限りではない。
『美麗刹那・序曲(アインファウスト・オーベルテューレ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
創造位階・求道型。
元となった渇望は「大切な時を無限に味わいたい」。
能力は時の体感時間を遅らせることによる自己の時間加速。純粋に速度に特化した能力であり、運動エネルギーの増大による推進力の獲得ではなく時間ごとの加速であるため、知覚能力も同様に加速されている(主観的には自分が速くなったのではなく周囲が遅くなったように感じる)。
求道創造という自己の体内に形成される異界法則であるため、他者に一切影響を与えることができない代わり、自分の法則を破られる可能性もまた低い。
加速率は魔力残量の他、当人の精神状態にも左右される。魔力供給さえ間に合えば理論上限界点が存在しないということだが、逆に言えば潤沢な魔力があれど心折れては十全な加速はできないことの裏返しでもある。
『涅槃寂静・終曲(アインファウスト・フィナーレ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
創造位階・覇道型。
元となった渇望は「大切な時を失わせず堰き止めたい」。
能力は上記時間加速を発動させると同時、周囲には同等の時間停滞を押し付けるというもの。百倍に加速すれば百分の一の停滞を押し付け、相対的に万倍の加速を得るという、時の縛鎖。
更にフェイカー自身の肉体と霊基も変化を起こし、聖遺物たる罪姫・正義の柱と一体化。幸運以外の全ステータスがA+~A++に修正され、全身は赤黒く変化し、背中からは形成時のギロチンが十数本も翼のように生え、凶眼からは血涙を迸らせる。
この状態のフェイカーは一挙手一投足の全てが聖遺物による攻撃に等しく、視線や呼吸に至るまで概念的な魂破壊の圧が付与される。単なる絶叫のみで周囲一帯を砕き、疾走した軌跡は空間が捻じれ砕けてしまうほど。
覇道創造においてはラインハルトの城に並ぶ究極形とされ、効果範囲は視認可能な全域。一見すると暴走状態にも見えるが、むしろ聖遺物の力を完全にコントロールした状態である。
欠点は甚大過ぎる魔力の消費。
【weapon】
罪姫・正義の柱
【人物背景】
陽だまりに帰れなかった、誰より足の速い男。
玲愛ルート三つ巴決戦の後より参戦。
【サーヴァントとしての願い】
死人に願いなんざ聞くなよ気持ち悪い。
【マスター】
無明の柊(幸村陽緒)@エスケヱプ・スピヰド
【マスターとしての願い】
いきたい
【能力・技能】
鬼虫:
後天的なサイボーグ。人間を超越した身体能力と知覚領域、物体や熱源の感知センサー、ステルス能力、対毒分解、高速演算、高度電子戦能力など、サイボーグと聞いて連想する機能は大体ついてる(適当)。
凍結結界〈ゼロ〉:
柊が有する特殊攻撃術。冷気を操る力であり、射程範囲は本体のみでも数十~百m程度。
より厳密に言うならば、この能力の本質は運動の停止。空間そのものに働きかける力であり、広域に作用する絶対的な法則である。
柊は平時において、それを分かりやすく「大気に働きかけ」「冷気として操っていた」に過ぎない。それでさえ瞬間的に絶対零度にすることなど造作もない。
9種の特殊攻撃術の中でも特に超常の域に達した能力であり、半ば科学の分野から外れた特質を持つ。その行き着く先は時の停止とも。
それでも科学技術の産物であるためサーヴァントを殺傷することはできないが、空間そのものに働きかけるためサーヴァントの動きを固定して足止めすることは可能。
全てが止まり、存在しない無明の世界。固有法則に支配された領域の作成こそが、彼女の真骨頂である。
蜉蝣は置いてきた。マスター枠であんなん持ってこれるわけないだろ(正論)
【人物背景】
「そんな顔しないで。ほら、笑って?」
冬の陽だまり。歩くのが遅い女。
原作6巻終了後から参戦。
【方針】
使命は果たした。想いも告げた。心残りは何一つとしてない。
それでも。
それでも私は、最後まで生きていたい。
【人間関係】
柊→蓮:
良い人だよ、素直じゃないけど。自分の我儘と寄り道に付き合わせちゃってることについては、割と申し訳ない。
蓮→柊:
バカ、危なっかしい奴。見た目は先輩だけど中身はバカスミ。勝手に命を諦めてんじゃねえよ絶対生かして帰すからなテメー。
柊→九曜:
初恋。やっと追いつけた背中。自分の行動に後悔は一つもないが、最期に酷いものを押し付けてしまったことについては、ちょっぴり胸が痛む。
九曜→柊:
大切な戦友。小生は結局、君に何もしてやれなかったな……
九曜→蓮:
叶葉と同じ市井の出から英霊へと昇華されたこと、心より敬服する。心苦しくも力添えは出来ぬが、せめて英霊の座よりその武運を祈らせてほしい。
熊本先輩→蓮:
時と世界を超えてもこんなに私のことを想ってくれるなんて、藤井君の妻として私も鼻が高いよ…
熊本先輩→柊:
こいつ私とキャラ被ってない?
香純→柊:
☆(ゝω・)v
柊→香純:
(っ>ω<c)
黄金→蓮:
宿命の相手にして最大の好敵手。機会があればまた語らいたいものだな。
水銀→柊:
至高なるは礎となって死ぬこと。然り然り、その幼さでよく真理を弁えているものだ。取るに足らぬ価値なき塵芥はせめて新たな地平の大地となればよい。ならば君も幸福であったことだろうな?なにせ君の尊ぶ世界と民草とやらのために死ねたのだ。全くもって愉快愉快、我が息子もこの殊勝さを見習うべきだと愚行するが、如何かね?(CV.鳥海)
蓮→水銀、黄金:
死ね。お前らは英霊の座の記録にすら残さん。
最終更新:2022年08月14日 01:26