栄養学

部品構造


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    • 部品: 栄養学とは
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    • 部品: 食事摂取基準
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部品定義


部品: 栄養学とは

栄養学(science of nutrition)とは、食品の持つ栄養素やその働きについて、科学的方法に基づいて系統的に研究・教育する学問である。
栄養学は生命科学の一分野である。
栄養学の領域には、基礎栄養学・食物栄養学・臨床栄養学・公衆栄養学などがある。
基礎栄養学(basic nutrition)とは、栄養の基礎的問題を課題とする学問である。
食物栄養学(food nutrition)とは、食物を中心とした栄養学である。
臨床栄養学(clinical nutrition)とは、個々の知類を対象とした栄養学である。
公衆栄養学(community nutrition)とは、集団や地域を対象とした栄養学である。
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栄養学は、保険・医療・福祉など、さまざまな領域に影響をおよぼす。
たとえば、栄養の改善によって不健康な知類を減らすことで、医療費や介護費を減少させられる。
とくに人知類のような雑食の動物は、さまざまな食品からどの食品をどれくらい食べれば生きていけるのかという知識が必要である。
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栄養素(nutrient)とは、生命を維持し、生活現象を営むため、外界から摂取しなければならない物質のことである。
生活現象とは、生きている生物に限ってみられる物質代謝・生長・生殖・運動・知覚などの現象のことである。
生活現象は、生命現象とも呼ばれる。
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植物が摂取する主な栄養素は、窒素・リン・カリウムが挙げられる。
動物が摂取する栄養素は、大別すると、有機栄養素と無機栄養素がある。
有機栄養素には、糖質・脂質・蛋白質・ビタミンがある。

部品: 欠乏症・過剰症

知類を含む生物の栄養状態は、栄養が過剰でも不足でもない適正状態を中心に、欠乏状態と過剰状態に大別できる。
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欠乏状態は、欠乏症と潜在性の欠乏状態に分けられる。
栄養欠乏症とは、栄養素の著しい欠乏が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。
潜在性の欠乏状態とは、健康な状態と欠乏症との境界にあり、栄養素の摂取量が不足し、さまざまな不定愁訴が現れやすくなっている状態である。
不定愁訴(indefinite complaint)とは、はっきりした理由や原因がわからない体調不良を訴える状態のことである。
ここでいう体調不良とは、たとえば、手足のふるえ・しびれ・めまい・発汗・動悸・頻尿・肩こり・不眠などである。
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過剰状態は、過剰症と潜在性の過剰状態に分けられる。
栄養過剰症とは、特定の食品を大量に摂取することで、栄養素の過剰摂取が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。
潜在性の過剰状態とは、健康な状態と過剰症との境界にあり、栄養素の摂取量が過剰で、さまざまな非感染性疾患が誘発されやすい状態である。
非感染性疾患(noncommunicable diseases)とは、循環器疾患や糖尿病など、感染性ではない疾患の総称である。
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栄養について、同じ者が欠乏状態かつ過剰状態という状態は起こりえる。
たとえば、糖質や資質については過剰摂取だが、ビタミンについては摂取不足という場合である。
このように、同じ者や同じ集団の中で、過剰栄養と低栄養が混在する状態を「栄養不良の二重負荷(double burden malnutrition)」と呼ぶ。
栄養不良の二重負荷は、経済状況や生活習慣の変化など、さまざまな要因によって起こる複雑な問題である。
そのため、栄養不良の二重負荷を解決することは難しく、各藩国の取り組みによって徐々に改善する必要がある。

部品: 食事摂取基準

栄養素の摂取不足を回避するための指標として、推定平均必要量・推奨量・目安量などの基準値がある。
また、栄養素の過剰摂取による健康障害を回避するため、耐容上限量の指標がある。
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推定平均必要量(estimated average requirement)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団における必要量の平均値の推定値を示した指標のことである。
つまり推定平均必要量とは、ある集団の平均摂取量がこの値の近似値であれば、半数の者が必要量を満たし、残りの半数の者が必要量を満たさないと推定できる摂取量である。
推定平均必要量は、摂取不足の回避が目的であるが、ここでいう不足の定義は栄養素によって異なる。
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推奨量(recommended dietary allowance)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団に属するほとんどの者が充足する量のことである。
推奨量は、推定平均必要量と推奨量算定係数を用いて算出される。
推奨量が満たされていれば、対象集団に属するほとんどの者は欠乏症を予防できる。
そのため、栄養素の摂取を回避する際は、推奨量を目標とする。
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目安量(adequate intake)とは、推定平均必要量を測定できるほど科学的根拠が得られていない栄養素に対し、ある一定の栄養状態を維持するために十分な量のことである。
目安量は基本的に、多数の健康な者を対象とし、栄養素摂取量を観察した疫学的研究によって算定される。
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耐容上限量(tolerable upper intake level)とは、健康障害をもたらすおそれがないとみなされる習慣的な摂取量の上限のことである。
つまり、耐容上限量を超えて摂取し続けると過剰摂取によって生じる健康障害の危険性が高まることになる。
耐容上限量は、健康障害非発現量と最低健康障害発現量との間に存在する。
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健康障害非発現量(no observed adverse effect level)とは、健康障害が発現しないことが知られている習慣的な摂取量の最大値のことである。
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最低健康障害発現量(lowest observed adverse effect level)とは、健康障害が発現したことが知られている習慣的な摂取量の最小値のことである。
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種族・年齢・性別・傷病などにより、これらの指標で示される摂取量は変わる。
たとえば、同じ種族・年代・性別の者であっても、活発な運動習慣をもつ者は、静的な活動が中心の者よりも、多くのエネルギー産生栄養素の摂取が必要である。
また同じ年代の人知類の女性でも妊婦や授乳婦の場合、そうではない女性よりも、蛋白質やビタミンなどを多く摂取する必要がある。
妊娠の初期・中期・後期で必要な摂取量が変わる栄養素もある。
ただし、妊婦が過剰摂取することで胎児に悪影響を与える栄養素もあるため、注意が必要である。
なお、これらの指標で示される摂取量は、最新の研究結果を反映し、適切となるよう定期的に見直される。

部品: エネルギー産生栄養素とは

エネルギー産生栄養素(energy-providing nutrients)とは、食物中に含まれる身体に必要な栄養素のうち、エネルギー源となる栄養素の総称である。
エネルギー産生栄養素は、摂取量が多いため、マクロ栄養素(macronutrient)とも呼ばれる。
エネルギー産生栄養素は、炭水化物・脂質・蛋白質に分類できる。
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エネルギー換算係数とは、炭水化物・脂質・蛋白質を摂取した場合、各成分1グラム当たりの利用エネルギー量のことである。
エネルギー換算係数は、炭水化物・脂質・蛋白質を1グラムを空気中で燃焼させた際に発生する熱量とは異なる。
たとえば、紙を燃やせば熱エネルギーになる。
しかし、人知類は紙の成分であるセルロースの分解酵素をもたない。
そのため、紙を食べてもエネルギーにできない。
エネルギー換算係数は、その藩国や種族の平均的な食事内容から消化・吸収率を算定される。

部品: 炭水化物とは

炭水化物(carbohydrate)とは、エネルギー産生栄養素のひとつで、炭素・水素・酸素の元素から構成される化合物である。
炭水化物を多く含む食物に、穀物やイモ類がある。
穀物とは、農作物のうち、種子を食用として収穫するために栽培される作物や、その種子の総称である。
穀物(grain)には、米・麦・粟・稗・豆・黍などがある。
穀物から作られるパンや麺類にも、炭水化物が多く含まれる。
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炭水化物には、糖質と食物繊維がある。

部品: 糖質

糖質(glucide)とは、糖を主成分とする物質の総称で、動物の消化酵素で消化され、エネルギー源となる。
糖質は、糖類(saccharide)とも呼ばれる。
糖質は、単糖類・少糖類・多糖類に分類できる。
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単糖類(monosaccharide)とは、加水分解によってそれ以上低分子の糖に分解できない糖類のことである。
単糖類には、ブドウ糖(glucose)・果糖(fructose)・ガラクトース(galactose)などがある。
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多糖類(polysaccharide)とは、単糖類やその誘導体が、数分子から万を超える数まで脱水縮合して生じた分子の総称である。
多糖類は、消化性多糖類と難消化性多糖類に分類できる。
消化性多糖類には、デンプンやグリコーゲンなどがある。
難消化性多糖類は、食物繊維の仲間である。
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少糖類(oligosaccharide)とは、多糖類ほどは分子量が大きくない糖質である。
少糖類と多糖類を分類する境界は、結合した単糖類やその誘導体の数が、だいたい10個以下か・10個より多いかである。
少糖類は、オリゴ糖とも呼ばれる。
天然に存在する糖の多くは、二糖類である。
二糖類とは、ふたつの単糖類からなる糖質のことである。
二糖類には、蔗糖・麦芽糖・乳糖などがある。
蔗糖(sucrose)は、一般に砂糖とも呼ばれる。
麦芽糖(maltose)は、水飴の主成分である。
乳糖(lactose)は、牛乳に含まれる成分である。
二糖類は、少糖類に含まれる。
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一般的な人知類の食事の構成比率は、エネルギー比で糖質が過半数を占める。
ただし、摂取した糖質の大部分がエネルギー源として消費されるため、人体を構成する成分として、糖質は1パーセント以下である。
糖質が不足すると集中力の減少や疲労感が見られ、意識障害を起こすこともある。
糖質を過剰に摂取した場合、消費されなかった糖質が中性脂肪として蓄積され、肥満の原因となる。

部品: 食物繊維

食物繊維(dietary fiber)とは、動物の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分のことである。
消化酵素(digestion enzyme)とは、生体内で食物を消化する酵素の総称である。
食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に大別できる。
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水溶性食物繊維には、ペクチンやイヌリンなどがある。
ペクチン(pectin)とは、柑橘類の皮やリンゴなどに多く含まれる食物繊維で、増粘安定剤として加工食品に添加することが認められている。
イヌリン(inulin)とは、ゴボウやキクイモなどキク科植物の根に多く含まれる食物繊維で、腸内細菌が利用できる。
水溶性食物繊維を摂取することによって、「コレステロールの吸収を抑制する」「グルコースの吸収を穏やかにする」などの効果があるとされている。
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水溶性食物繊維には、セルロース・ヘミセルロース・リグニンなどがある。
セルロース・ヘミセルロース・リグニンは、いずれも木材・草・竹・稲わらなどの植物の主要な成分である。
不溶性食物繊維を摂取することによって、「便のかさを増やす」「腸内環境を改善する」などの効果があるとされている。
牛・羊・山羊などの反芻動物は、セルロースを糖に分解する微生物が胃の中にいるため、セルロースを消化できる。
また、シロアリやカミキリムシなどの昆虫、カタツムリもセルロースを消化できる。
このように、人知類以外の動物の中には、食物繊維をエネルギー源として消化できるものもいる。

部品: 脂質

脂質(lipid)とは、生体成分のうち、水に溶けにくく、エーテル・クロロホルム・ベンゼン・エタノールなどの有機溶媒に溶ける物質の総称である。
脂質は、常温で液体のものを油、固体のものを脂と呼ばれる。
脂質は、体内では水分の次に多く含まれており、単純脂質・複合脂質・誘導脂質に大別できる。
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単純脂質(simple lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子から構成される脂質の総称である。
代表的な単純脂質として、中性脂肪がある。
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複合脂質(complex lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子以外に、リン・窒素・硫黄などの原子を含む脂質の総称である。
代表的な複合脂質として、リン脂質や糖脂質がある。
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誘導脂質(derived lipid)とは、単純脂質や複合脂質が加水分解してできた化合物のうち、水に溶けにくく、有機溶媒に溶ける物質の総称である。
代表的な誘導脂質として、脂肪酸やステロイドなどがある。
脂肪酸は、さらに二重結合の有無によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別できる。
不飽和脂肪酸は、植物や魚の脂に多く含まれる脂肪酸である。
二重結合がひとつの不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と呼ばれる。
また二重結合が複数ある不飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸と呼ばれる。
α-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸は、人知類の体内で合成できないか、合成量が少ないため、必須脂肪酸と呼ばれている。
不飽和脂肪酸は、熱や光で酸化しやすいため、食物として摂る場合、揚げ物や炒め物よりドレッシングなどが適している。
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藩国の食文化によって異なるが、現代のにゃんにゃん共和国において、通常の食生活で脂質が不足することはないと考えられている。
摂取する脂質の量を極端に減らすと、肌が乾燥しやすくなる。
逆に、脂質を過剰に摂取すると、肥満や高脂血症などの原因となる。
脂質を多く含む食品として、バターやマヨネーズなどがある。

部品: 蛋白質とは

蛋白質(protein)とは、アミノ酸がペプチド結合で連結された高分子化合物である。
生体を構成する成分として、蛋白質は、水分の次に多い。
蛋白質は、筋肉・骨・血液など、体を構成する主成分である。
蛋白質は、体内でさまざまな役割を営み、機能性蛋白質・貯蔵蛋白質・構造蛋白質に大別できる。
機能性蛋白質は、さらに酵素蛋白質・輸送蛋白質・収縮運動蛋白質・調整蛋白質・防御蛋白質に分類できる。
食事によって摂取した蛋白質は、消化されてアミノ酸として吸収される。
吸収されたアミノ酸の一部が、筋肉を構成する蛋白質に利用される。
蛋白質の摂取量が不足すると、体力の低下や貧血などの悪影響があるとされている。
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クワシオルコル(kwashiorkor)とは、蛋白質の摂取不足による蛋白質欠乏症である。
クワシオルコルは、発展途上国の小児に多い。
クワシオルコルは、エネルギー不足よりも蛋白質の欠乏した食事に由来する栄養失調である。
クワシオルコルになると、髪が赤くなり、皮膚が暗赤色を呈する。
クワシオルコルの患者は、著名な筋萎縮にもかかわらず、皮下脂肪が比較的保たれ、脂肪肝をみとめる。
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消耗症(marasmus)とは、蛋白質とエネルギーの摂取不足によって起こる栄養障害である。
クワシオルコルにエネルギーの欠乏症を加えたものが、消耗症である。
消耗症は、食糧事情の悪い地域に多い。
消耗症の患者は、著名な痩せにもかからわず、腹部が膨満する。
消耗症になると、皮下脂肪がなくなり、筋肉が萎縮する。

部品: アミノ酸

アミノ酸(amino acid)とは、ひとつの分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物の総称。
アミノ酸はアミノ基の位置によって、「α-アミノ酸」「β-アミノ酸」「γ-アミノ酸」などと呼ばれる。
自然界には様々なアミノ酸が存在するが、蛋白質は基本的にL体の立体構造を有する20種類のα-アミノ酸で構成されている。
L体とは、D体の鏡像異性体である。
鏡像異性体(enantiomer)とは、掌性をもつ分子の異性体である。
異性体(isomer)とは、同じ分子式だが、異なった物理的・化学的性質をもつ化合物のことである。
掌性(chirality)とは、ある分子の立体構造において、その分子とその鏡像とが互いに重なり合わない性質のことである。
掌性は、分子の回映対称の欠如による性質である。
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蛋白質を構成するアミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類できる。
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必須アミノ酸とは、体内で合成されないアミノ酸のことである。
体内で合成できるが、必要量を合成できないアミノ酸を必須アミノ酸に含む場合もある。
人知類の場合、バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・スレオニン・ヒスチジン・トリプトファン・フェニルアラニン・メチオニンの9種類が必須アミノ酸である。
犬知類や猫知類の場合、必須アミノ酸の種類が人知類より多い。
必須アミノ酸は、不可欠アミノ酸とも呼ばれる。
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非必須アミノ酸とは、体内で合成されるアミノ酸のことである。
人知類の場合、グリシン・アラニン・セリン・アスパラギン酸・アスパラギン・グルタミン酸・グルタミン・アルギニン・システイン・チロシン・プロリンの11種類が非必須アミノ酸である。
ただし、アルギニンは速やかに分解されるため、必要量を合成できない子どもの場合、必須アミノ酸となっている。
非必須アミノ酸は、可欠アミノ酸とも呼ばれる。
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アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標である。
アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸のうち、もっとも含有量が少ない必須アミノ酸の水準に制限される。
食品のアミノ酸スコアが低ければ、その食品を食べても、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されにくくなる。
アミノ酸スコアは食品単体の評価であるため、アミノ酸スコアが低い食品であっても、足りない必須アミノ酸を他の食品から補うことで、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されやすくできる。

部品: 微量栄養素とは

微量栄養素(micronutrient)とは、必要な摂取量が微量だが、心身の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な栄養素のことである。
微量栄養素には、ビタミンと無機質がある。

部品: ビタミン

ビタミン(viamin)とは、炭水化物・脂質・蛋白質・無機質以外のもので、正常な発育や代謝の維持に必要な有機物のうち、体内で合成されないか、合成されても必要な量に足りないものである。
ビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別できる。
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ビタミン欠乏症(avitaminosis)とは、ビタミンを含む食品の摂取不足・吸収障害・必要量の増加などで起こる症状である。
ビタミン欠乏症は、一次性欠乏症と二次性欠乏症に分類できる。
一次性欠乏症とは、食事としての摂取量の不足によるビタミン欠乏症である。
二次性欠乏症とは、吸収障害・利用障害などによるビタミン欠乏症である。
二次性欠乏症は、吸収不良症候群や肝胆道疾患、薬剤などにより生じる。
ビタミン欠乏症は、欠乏するビタミンの投与で、劇的に改善するが、他のものでは代用できない。
二次性欠乏症では、ビタミン補給に加え、原疾患の治療もあわせておこなう必要がある。
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プロビタミン(provitamin)とは、生体内の反応や紫外線照射などでビタミンに変化する化合物である。
たとえば、ビタミンAに変化するカロテンがある。
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ビタミンと類似した生理作用をもつ物質に、ビタミン様作用物質がある。
ビタミン様作用物質(vitamin-like active substance)とは、ビタミンと同様に、生理的に必要であり、微量で有効な有機化合物であるが、体内で生合成できるため、必ずしも栄養素として摂取する必要がない一群の物質である。
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脂溶性ビタミン(lipid-soluble vitamin、fat-soluble vitamin)とは、水に溶けにくいイソプレン(isoprene)の誘導体である。
脂溶性ビタミンは、体内で脂質とともに代謝され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。
脂溶性ビタミンは、尿中には排泄されず、胆汁中に出現しやすく、排便中に排泄される。
脂溶性ビタミンを過剰に摂取すると、貯蔵組織に蓄積し、ビタミン過剰症(hypervitaminosis)と呼ばれる中毒症状を起こす。
脂溶性ビタミンには、ビタミンAやビタミンEなどがある。
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水溶性ビタミン(water-soluble vitamin)とは、水に溶け、一般に血液などの体内の液性部分に分布するビタミンである。
水溶性ビタミンの血清濃度が組織の飽和濃度を超えると、尿中に排泄される。
水溶性ビタミンを過剰に摂取しても排泄されるため、一般的に毒性は低い。
水溶性ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCなどがある。

部品: 無機質とは

栄養学において、無機質(mineral)とは、生体を構成する主要な元素、酸素・炭素・水素・窒素以外のものの総称である。
無機質は、体内で合成できないため、食物として摂る必要がある。
無機質の中で、栄養素として欠かせないことが確定しているものを必須ミネラルと呼ぶ。
必須ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルに大別できる。
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多量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が多い無機質のことである。
多量ミネラルには、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなどがある。
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微量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が少ない無機質のことである。
微量ミネラルには、鉄・亜鉛・銅・ヨウ素などがある。
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ミネラルの主な働きは、よっつに整理できる。
ひとつ目は、骨や歯など硬組織を形成する働きである。
硬組織の形成に関与するミネラルに、カルシウム・リン・マグネシウムなどがある。
ふたつ目は、蛋白質や脂質の成分となる働きである。
ふたつ目の働きに関与するミネラルに、リンや鉄などがある。
みっつ目は、生体機能の調整をおこなう働きである。
生体機能の調整とは、具体的には浸透圧の調整や酸塩基平衡、筋肉や神経などの刺激に関与するものである。
生体機能の調整に関与するミネラルに、カルシウム・リン・カリウム・ナトリウム・塩素などがある。
よっつ目は、酵素の補助因子やホルモンの成分となる働きである。
よっつ目の働きに関与するミネラルに、マグネシウム・銅・亜鉛・マンガンなどがある。
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ミネラルもビタミンと同様に、摂取量の不足や過剰などによって、心身に悪影響を与える。

部品: 鉄

鉄(iron)とは、元素記号Fe、原子番号26の元素である。
栄養素として鉄は、人知類を含む多くの生命体の正常な生理機能にとって、必要不可欠な必須ミネラルである。
たとえば、植物の光合成の働きは葉緑素によるものだが、この葉緑素の合成には鉄が必要である。
また、生体活動の源となるエネルギーを産生しているミトコンドリアが働くために最も大切なミネラルである。
人知類の体内にある鉄は、その過半数がヘモグロビンに存在する。
また、ミオグロビンなどにも少量の鉄がある。
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ヘモグロビン(hemoglobin)とは、赤血球中に存在するヘム蛋白質である。
グロビン(globin)という蛋白質に、ヘム鉄が結合したものがヘモグロビンである。
ヘモグロビンは、鉄原子に酸素を着脱することで、肺で受け取った酸素を、全身の細胞へ運搬する役割を担っている。
また、ヘモグロビンは弱酸としての性質によって、二酸化炭素の運搬にも重要な役割を果たす。
鉄が不足すると、ヘモグロビンを合成できないため、赤血球自体が小さくなり、赤血球の数も減少する。
ヘモグロビンのグロビン各鎖は、それぞれ異なった遺伝子の支配を受けている。
その遺伝子に変異が起こると、その支配下のグロビン各鎖に質的・量的異常をまねく。
ヘモグロビンは、血色素(blood pigment)とも呼ばれる。
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ミオグロビン(myoglobin)とは、筋肉組織に存在する蛋白質である。
ミオグロビンは、筋肉への酸素供給を助ける役割を担っている。
そのため、筋肉中のミオグロビンが減ることで、筋力低下や疲労感といった症状が起こる。
ミオグロビンは、筋肉ヘモグロビン(muscle hemoglobin)とも呼ばれる。
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栄養素として、食事由来の鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄が存在する。
また、鉄の栄養補助食品には、ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄が存在する。
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ヘム鉄(heme iron)とは、ポルフィリンに配意した鉄のことである。
ポルフィリン(porphyrin)とは、4個のピロールがメチル基によって結合した環状テトラピロール誘導体である。
ヘム鉄は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのタンパク質を構成し、それらの機能の中核を担っている。
栄養素としてのヘム鉄は、主にヘモグロビンに由来し、赤身肉・魚・鶏肉などヘモグロビンを含む動物性食品にみられる。
ヘム鉄は専用の吸収経路があるため、胃腸にやさしく、通常、非ヘム鉄より吸収されやすい。
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非ヘム鉄(non-heme iron)とは、レンズ豆やエンドウ豆などの植物性食品に含まれる鉄である。
非ヘム鉄は、phの低い胃酸によって吸収されやすくなり、十二指腸を中心とした上部空腸から吸収される。
phとは、溶液中の水素イオンの濃度を示す指数である。
pH7が中性を示し、ph7未満が酸性、ph7超過が塩基性となる。
胃酸が出ていない場合や制酸剤で胃酸を中和した場合、腸管などに炎症がある場合、非ヘム鉄は吸収されにくくなる。
鉄欠乏が重度になるほど、胃腸の粘膜の状態も悪くなっていることがほとんどであるため、そこに非ヘム鉄を摂取すると、腸から吸収されなかった鉄がさらに腸内環境を悪化させるおそれがある。
非ヘム鉄の吸収率は、食品中のさまざまな成分によって大きく左右される。
ビタミンCや食肉の蛋白質は、非ヘム鉄の吸収を向上させる。
タンニン・蓚酸・フィチン酸などは、非ヘム鉄の吸収を妨げる。
タンニン(tannin)と蓚酸塩(oxalic acid)は、紅茶・緑茶・コーヒーなどに多く含まれている。
フィチン酸(phytic acid)を含む食品は、米・麦などの穀類や大豆などである。
非ヘム鉄の吸収経路は、亜鉛・カルシウム・銅などの吸収と競合する。
そのため、牛乳とともに非ヘム鉄を摂取すると、牛乳に含まれるカルシウムによって、非ヘム鉄の吸収が妨げられる。
非ヘム鉄は、無機鉄とも呼ばれる。
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キレート鉄とは、非ヘム鉄をアミノ酸やクエン酸で挟み込んだ、天然には存在しない鉄である。
キレート鉄は、アミノ酸の吸収経路から能動的に吸収される。
そのため、吸収効率が非常に高い。
ヘム鉄と非ヘム鉄は、体内の鉄貯蔵量が多ければ、過剰摂取による毒性作用を防ぐため、吸収率が低下する。
しかし、キレート鉄はアミノ酸の吸収経路から吸収されるため、吸収量の調整機構がない。
鉄の過剰摂取は胃腸障害などを起こすため、キレート鉄を摂取する際は注意を要する。
なお、キレート鉄を過剰摂取しなければ、胃腸への負担は少ない。
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鉄の過剰症として、ヘモクロマトーシスが知られている。
ヘモクロマトーシス(hemochromatosis)とは、体内の鉄の蓄積が過剰になり、鉄が組織に沈着し、肝臓・膵臓・心臓・甲状腺で臓器障害を引き起こす疾患である。
ヘモクロマトーシスは、血清鉄も非常に高値を示す。
皮下に鉄が沈着、皮膚の色が青銅色を呈し、糖尿病を併発するため、ヘモクロマトーシスは青銅色糖尿病(bronzed diabetes)やブロンズ糖尿病とも呼ばれる。
また、ヘモグロビンが血色素と呼ばれるため、ヘモクロマトーシスは血色素症とも呼ばれる。
ヘモクロマトーシスの治療には、鉄排泄促進薬の投与や瀉血で、過剰に蓄積された体内の鉄を除去する方法がある。
瀉血(bloodletting、exsanguination)とは、治療目的で適切な量の血液を注射器などで取り除くことである。
静脈を針などで刺す瀉血は、刺絡と呼ばれる。
刺絡の絡は、静脈を意味する。
ヘモクロマトーシスは、遺伝性ヘモクロマトーシスと続発性ヘモクロマトーシスに分けられる。
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遺伝性ヘモクロマトーシス(hereditary hemochromatosis)は、鉄代謝の遺伝子疾患が原因のヘモクロマトーシスである。
遺伝性ヘモクロマトーシスは、変異した遺伝子によって、さらに細かく分類できる。
遺伝性ヘモクロマトーシスは、原発性ヘモクロマトーシス(primary hemochromatosis)とも呼ばれる。
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続発性ヘモクロマトーシス(secondary hemochromatosis)とは、鉄の吸収亢進や頻回の輸血、貧血の治療で投与された鉄の過剰摂取などに起因するヘモクロマトーシスである。
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鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia)とは、鉄の欠乏によって生じる貧血である。
鉄欠乏性貧血の原因は、ほとんどの場合、失血である。
最も頻度の高い原因は、慢性の不顕性出血である。
たとえば、消化性潰瘍や悪性腫瘍など、消化管からの出血が該当する。
人知類のような月経のある一部の哺乳動物の場合、閉経前の女性は、月経による累積失血が鉄欠乏性貧血の一般的な原因である。
このほか、鉄摂取量の減少、鉄吸収の低下、鉄需要の増大などが鉄欠乏性貧血の原因となる。
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貧血に至らない鉄欠乏であっても、さまざまな身体症状や精神症状が起こり得る。
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鉄欠乏にみられる特異的な身体症状としては、爪の扁平化・脆弱化がある。
とくに重度の鉄欠乏では、匙状爪となる。
匙状爪(spoon nail)とは、爪甲が陥凹し、スプーンのように反り返ることである。
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鉄欠乏にみられる特異的な精神症状としては、異食症がある。
異食症(pica)とは、非栄養性物質を食べたいという異常な欲求を示す病態である。
とくに異常なほど氷を食べる異食症を、氷食症(pagophagia)と呼ぶ。
非栄養性物質の摂食によって食欲が満たされると、鉄摂取量のさらなる減少につながるため、注意が必要である。
なお、民間療法や宗教儀式など文化的伝統での摂食は、異食症に含まない。
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鉄欠乏が原因となる他の精神症状としては、むずむず脚症候群が挙げられる。
むずむず脚症候群(restless legs syndrome)とは、下肢や上肢などを動かしたくなる、抗いがたい衝動が生じる感覚運動疾患である。
むずむず脚症候群は、通常、上肢や下肢に皮膚の上を虫が這うようなむずむずする感覚が起こる。
眠ろうとしても、むずむず脚症候群の異常知覚を緩和する目的でその部位を按摩したり、動かしたりせざるを得ないため、重度の不眠症状を呈することが多い。
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鉄欠乏の診断には、血液を採取し、赤血球や血色素、血液中の成分などを検査する。
鉄が欠乏している場合、まず血清フェリチン濃度が低下し、次に血清鉄が低下、その後ヘモグロビン濃度が低下する。
フェリチン(feritin)とは、再利用可能な形で鉄を貯蔵するために必要な水溶性蛋白質である。
体内で鉄が不足すると、フェリチンから減ってくる。
そのため、血清フェリチン濃度は、生体に蓄積されている鉄の貯蔵量を推定する指標となる。
ただし、血清フェリチン濃度は、感染や炎症などで増加するため、鉄不足を反映しないこともある。
そのため、鉄不足の診断には、平均赤血球容積も同時に確認する必要がある。
平均赤血球容積(mean corpuscular volume)とは、ひとつの赤血球の平均的容積である。
つまり、平均赤血球容積とは、赤血球の大きさの指標である。
平均赤血球容積は、ヘマトクリット値と赤血球数から計算される。
ヘマトクリット値(hematocrit)とは、血液中に占める赤血球の容積の割合をパーセントで表したものである。
平均赤血球容積は、葉酸やコバラミンの不足によっても上昇するため、鉄不足の参考にならないこともある。
このように検査数値は複数の要因で上下する。
そのため、検査数値を適切に解釈するには、他の検索項目と照らし合わせ、なにが起きているかを推測しなければならない。

部品: 水

水は、酸素と水素の化合物で、一般に栄養素には含まれないが、重要な物質である。
成年の人知類の場合、水は体重の45パーセントが細胞内、体重の15パーセントが細胞間、体重の5パーセントが血液中に存在する。
体内水分の10パーセントを失うと機能障害を生じ、20パーセントを失うと死を招く。
摂取した水分は、小腸・大腸から吸収される。
体内で代謝された水分は、腎臓から尿として、消化管から消化液として、皮膚から汗として排泄される。

部品: 栄養感覚とは

栄養感覚とは、栄養素の摂取に関係する総合的な感覚のことである。
人知類の食欲は、単に空腹から発生するわけではなく、局所性栄養感覚と全身性栄養感覚が作用して発現している。
局所性栄養感覚とは、視覚・味覚・触覚・嗅覚・聴覚などのことである。
全身性栄養感覚とは、空腹感・満腹感・口渇感・嗜好などのことである。
食欲旺盛で過食の場合や、食欲不振で低栄養の場合は、さまざまな要因を調整する必要がある。
たとえば、食欲不振の原因は、運動不足・過労・不眠など生理的なものから、精神的な落ち込みや悩み事など心理的なものまでさまざまである。
また、傷病者や高齢者の場合、臓器の機能低下・機能異常、薬物の副作用も食欲不振の原因と考えられる。
食欲不振による低栄養を防ぐためには、これらの原因を取り除く必要がある。

部品: 味覚

味覚(sense of taste)とは、食物の物理的・化学的性状に対する感覚である。
脊椎動物は、主に舌の味蕾中の味細胞で感受される。
人知類の場合、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味が存在する。
辛味・渋味・あぶら味などは、痛覚や触覚の一種と考えられている。
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甘味とは、甘さに対する感覚である。
甘味を感じる食品の成分は、蔗糖やアミノ酸などがある。
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酸味とは、酸っぱさに対する感覚である。
酸味を感じる食品の成分は、クエン酸やリンゴ酸などがある。
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塩味とは、中性塩に対する感覚である。
塩味を感じる代表的な食品は、食塩である。
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苦味とは、苦さに対する感覚である。
苦味を感じる食品は、ビール・チョコレート・コーヒーなどがある。
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旨味とは、旨さに対する感覚である。
酸味を感じる食品の成分は、グルタミン酸やイノシン酸などがある。

部品: 空腹感

空腹感(hunger sensation)とは、固形の食物を食べたいという欲求の表れである。
空腹感は、摂食中枢の興奮によって起こる。
摂食中枢(feeding center)とは、脳の視床下部という部位の近くにある、食物の摂取を促すように働く中枢神経系である。
空腹感は、飢餓収縮や血液中の遊離脂肪酸などが関与する。
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飢餓収縮とは、胃が空になったときに起こる強い緊張性の周期的な収縮運動である。
飢餓収縮の刺激が、胃に分布している迷走神経を通し、摂食中枢に伝えられることで空腹感を感じる。
長期間断食し栄養状態が低下すると、胃の運動が鈍くなるため、胃の内容物がなくても空腹感は感じなくなる。
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遊離脂肪酸とは、食後時間が経過し、低下した血糖値を補うため、分解・放出された体脂肪のことである。
血液中の遊離脂肪酸の刺激によって、摂食中枢が興奮すると、空腹感を感じる。
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冷気に触れて寒さを感じると、その刺激が摂食中枢に伝わり、食欲が増進する。
逆に、夏場や発熱で体温が上昇すると、食欲は減退する。

部品: 消化

消化(digestion、peptization)とは、消化管内に取り入れた食物の成分を吸収されやすい最小単位、あるいはそれに近い状態まで分解することである。
消化の方法は、機械的消化・化学的消化・細菌学的消化に分類できる。
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機械的消化とは、磨砕・攪拌・移動などの作用による消化のことである。
たとえば人知類や猫知類などは、食品を咀嚼して細かく砕き、消化管の蠕動によって内容物を混合・攪拌・移動することで化学的消化を助ける。
咀嚼(mastication、chewing)とは、食物を摂取してから下顎の運動と舌や唇によって、上の歯と下の歯の間に運ばれ、食物を噛み砕くまでにおこなわれる口腔内でおこなわれている生理的過程のことである。
蠕動(peristalsis)とは、消化管などの管腔臓器で、縦走筋と輪状筋を協調して動かすことによって、その内容物を押し進める運動のことである。
機械的消化は、理学的消化とも呼ばれる。
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化学的消化とは、唾液・胃液・膵液などの消化液や小腸粘膜に存在する分解酵素による栄養素の化学反応のことである。
化学的消化には、接触消化と膜消化に分けられる。
化学的消化は、酵素的消化とも呼ばれる。
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細菌学的消化とは、腸内細菌による腐敗や発酵のことである。
細菌学的消化は、生物学的消化とも呼ばれる。
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消化によって食物が分解されることで、食物がもつ種特異性や抗原性が取り除かれる。
たとえば、人知類が牛肉を食べても人の筋肉が牛の筋肉と同じものにはならない。
牛の蛋白質を牛特有のものではないアミノ酸やペプチドに分解して吸収し、体内亜で人の蛋白質に合成するからである。
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消化器官には、口腔・胃・小腸・大腸などの臓器がある。

部品: 吸収

栄養学において、吸収(absorption)とは、生体が外界から物質を取り込むことである。
人知類や猫知類など多くの高等動物の場合、吸収とは、消化器官で分解された成分が消化管壁から体内に入ることである。
栄養素が吸収される機構には、受動輸送と能動輸送がある。
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受動輸送とは、浸透や拡散の現象によって、溶解成分の濃度が高いところから低いところへと膜を通過する機構である。
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能動輸送とは、エネルギーを使い、濃度勾配に逆らって、溶解成分の濃度が低いところから高いところへ積極的に膜を通過する機構である。

部品: 排泄

食物の成分は、消化・吸収され、残りは便として排泄される。
便には、「水分」「消化・吸収されなかった食物の残渣」「胆汁・酵素・粘液など消化管の生成物」「消化管上皮細胞からの剥離成分」「カルシウムや鉄など消化器官に排泄された成分」「腸内細菌」が含まれる。
便の量や排便回数は、食習慣や食事量に依存する。
食物繊維の摂取量が増大すると便量が多くなる。



提出書式


 大部品: 栄養学 RD:21 評価値:7
 -部品: 栄養学とは
 -部品: 欠乏症・過剰症
 -部品: 食事摂取基準
 -大部品: 栄養素 RD:12 評価値:6
 --大部品: エネルギー産生栄養素 RD:7 評価値:5
 ---部品: エネルギー産生栄養素とは
 ---大部品: 炭水化物 RD:3 評価値:3
 ----部品: 炭水化物とは
 ----部品: 糖質
 ----部品: 食物繊維
 ---部品: 脂質
 ---大部品: 蛋白質 RD:2 評価値:2
 ----部品: 蛋白質とは
 ----部品: アミノ酸
 --大部品: 微量栄養素 RD:4 評価値:3
 ---部品: 微量栄養素とは
 ---部品: ビタミン
 ---大部品: 無機質 RD:2 評価値:2
 ----部品: 無機質とは
 ----大部品: 微量ミネラル RD:1 評価値:1
 -----部品: 鉄
 --部品: 水
 -大部品: 栄養素の生理 RD:6 評価値:4
 --大部品: 栄養感覚 RD:3 評価値:3
 ---部品: 栄養感覚とは
 ---部品: 味覚
 ---部品: 空腹感
 --部品: 消化
 --部品: 吸収
 --部品: 排泄
 
 
 部品: 栄養学とは
 栄養学(science of nutrition)とは、食品の持つ栄養素やその働きについて、科学的方法に基づいて系統的に研究・教育する学問である。
 栄養学は生命科学の一分野である。
 栄養学の領域には、基礎栄養学・食物栄養学・臨床栄養学・公衆栄養学などがある。
 基礎栄養学(basic nutrition)とは、栄養の基礎的問題を課題とする学問である。
 食物栄養学(food nutrition)とは、食物を中心とした栄養学である。
 臨床栄養学(clinical nutrition)とは、個々の知類を対象とした栄養学である。
 公衆栄養学(community nutrition)とは、集団や地域を対象とした栄養学である。
 /*/
 栄養学は、保険・医療・福祉など、さまざまな領域に影響をおよぼす。
 たとえば、栄養の改善によって不健康な知類を減らすことで、医療費や介護費を減少させられる。
 とくに人知類のような雑食の動物は、さまざまな食品からどの食品をどれくらい食べれば生きていけるのかという知識が必要である。
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 栄養素(nutrient)とは、生命を維持し、生活現象を営むため、外界から摂取しなければならない物質のことである。
 生活現象とは、生きている生物に限ってみられる物質代謝・生長・生殖・運動・知覚などの現象のことである。
 生活現象は、生命現象とも呼ばれる。
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 植物が摂取する主な栄養素は、窒素・リン・カリウムが挙げられる。
 動物が摂取する栄養素は、大別すると、有機栄養素と無機栄養素がある。
 有機栄養素には、糖質・脂質・蛋白質・ビタミンがある。
 
 部品: 欠乏症・過剰症
 知類を含む生物の栄養状態は、栄養が過剰でも不足でもない適正状態を中心に、欠乏状態と過剰状態に大別できる。
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 欠乏状態は、欠乏症と潜在性の欠乏状態に分けられる。
 栄養欠乏症とは、栄養素の著しい欠乏が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。
 潜在性の欠乏状態とは、健康な状態と欠乏症との境界にあり、栄養素の摂取量が不足し、さまざまな不定愁訴が現れやすくなっている状態である。
 不定愁訴(indefinite complaint)とは、はっきりした理由や原因がわからない体調不良を訴える状態のことである。
 ここでいう体調不良とは、たとえば、手足のふるえ・しびれ・めまい・発汗・動悸・頻尿・肩こり・不眠などである。
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 過剰状態は、過剰症と潜在性の過剰状態に分けられる。
 栄養過剰症とは、特定の食品を大量に摂取することで、栄養素の過剰摂取が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。
 潜在性の過剰状態とは、健康な状態と過剰症との境界にあり、栄養素の摂取量が過剰で、さまざまな非感染性疾患が誘発されやすい状態である。
 非感染性疾患(noncommunicable diseases)とは、循環器疾患や糖尿病など、感染性ではない疾患の総称である。
 /*/
 栄養について、同じ者が欠乏状態かつ過剰状態という状態は起こりえる。
 たとえば、糖質や資質については過剰摂取だが、ビタミンについては摂取不足という場合である。
 このように、同じ者や同じ集団の中で、過剰栄養と低栄養が混在する状態を「栄養不良の二重負荷(double burden malnutrition)」と呼ぶ。
 栄養不良の二重負荷は、経済状況や生活習慣の変化など、さまざまな要因によって起こる複雑な問題である。
 そのため、栄養不良の二重負荷を解決することは難しく、各藩国の取り組みによって徐々に改善する必要がある。
 
 部品: 食事摂取基準
 栄養素の摂取不足を回避するための指標として、推定平均必要量・推奨量・目安量などの基準値がある。
 また、栄養素の過剰摂取による健康障害を回避するため、耐容上限量の指標がある。
 /*/
 推定平均必要量(estimated average requirement)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団における必要量の平均値の推定値を示した指標のことである。
 つまり推定平均必要量とは、ある集団の平均摂取量がこの値の近似値であれば、半数の者が必要量を満たし、残りの半数の者が必要量を満たさないと推定できる摂取量である。
 推定平均必要量は、摂取不足の回避が目的であるが、ここでいう不足の定義は栄養素によって異なる。
 /*/
 推奨量(recommended dietary allowance)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団に属するほとんどの者が充足する量のことである。
 推奨量は、推定平均必要量と推奨量算定係数を用いて算出される。
 推奨量が満たされていれば、対象集団に属するほとんどの者は欠乏症を予防できる。
 そのため、栄養素の摂取を回避する際は、推奨量を目標とする。
 /*/
 目安量(adequate intake)とは、推定平均必要量を測定できるほど科学的根拠が得られていない栄養素に対し、ある一定の栄養状態を維持するために十分な量のことである。
 目安量は基本的に、多数の健康な者を対象とし、栄養素摂取量を観察した疫学的研究によって算定される。
 /*/
 耐容上限量(tolerable upper intake level)とは、健康障害をもたらすおそれがないとみなされる習慣的な摂取量の上限のことである。
 つまり、耐容上限量を超えて摂取し続けると過剰摂取によって生じる健康障害の危険性が高まることになる。
 耐容上限量は、健康障害非発現量と最低健康障害発現量との間に存在する。
 /*/
 健康障害非発現量(no observed adverse effect level)とは、健康障害が発現しないことが知られている習慣的な摂取量の最大値のことである。
 /*/
 最低健康障害発現量(lowest observed adverse effect level)とは、健康障害が発現したことが知られている習慣的な摂取量の最小値のことである。
 /*/
 種族・年齢・性別・傷病などにより、これらの指標で示される摂取量は変わる。
 たとえば、同じ種族・年代・性別の者であっても、活発な運動習慣をもつ者は、静的な活動が中心の者よりも、多くのエネルギー産生栄養素の摂取が必要である。
 また同じ年代の人知類の女性でも妊婦や授乳婦の場合、そうではない女性よりも、蛋白質やビタミンなどを多く摂取する必要がある。
 妊娠の初期・中期・後期で必要な摂取量が変わる栄養素もある。
 ただし、妊婦が過剰摂取することで胎児に悪影響を与える栄養素もあるため、注意が必要である。
 なお、これらの指標で示される摂取量は、最新の研究結果を反映し、適切となるよう定期的に見直される。
 
 部品: エネルギー産生栄養素とは
 エネルギー産生栄養素(energy-providing nutrients)とは、食物中に含まれる身体に必要な栄養素のうち、エネルギー源となる栄養素の総称である。
 エネルギー産生栄養素は、摂取量が多いため、マクロ栄養素(macronutrient)とも呼ばれる。
 エネルギー産生栄養素は、炭水化物・脂質・蛋白質に分類できる。
 /*/
 エネルギー換算係数とは、炭水化物・脂質・蛋白質を摂取した場合、各成分1グラム当たりの利用エネルギー量のことである。
 エネルギー換算係数は、炭水化物・脂質・蛋白質を1グラムを空気中で燃焼させた際に発生する熱量とは異なる。
 たとえば、紙を燃やせば熱エネルギーになる。
 しかし、人知類は紙の成分であるセルロースの分解酵素をもたない。
 そのため、紙を食べてもエネルギーにできない。
 エネルギー換算係数は、その藩国や種族の平均的な食事内容から消化・吸収率を算定される。
 
 部品: 炭水化物とは
 炭水化物(carbohydrate)とは、エネルギー産生栄養素のひとつで、炭素・水素・酸素の元素から構成される化合物である。
 炭水化物を多く含む食物に、穀物やイモ類がある。
 穀物とは、農作物のうち、種子を食用として収穫するために栽培される作物や、その種子の総称である。
 穀物(grain)には、米・麦・粟・稗・豆・黍などがある。
 穀物から作られるパンや麺類にも、炭水化物が多く含まれる。
 /*/
 炭水化物には、糖質と食物繊維がある。
 
 部品: 糖質
 糖質(glucide)とは、糖を主成分とする物質の総称で、動物の消化酵素で消化され、エネルギー源となる。
 糖質は、糖類(saccharide)とも呼ばれる。
 糖質は、単糖類・少糖類・多糖類に分類できる。
 /*/
 単糖類(monosaccharide)とは、加水分解によってそれ以上低分子の糖に分解できない糖類のことである。
 単糖類には、ブドウ糖(glucose)・果糖(fructose)・ガラクトース(galactose)などがある。
 /*/
 多糖類(polysaccharide)とは、単糖類やその誘導体が、数分子から万を超える数まで脱水縮合して生じた分子の総称である。
 多糖類は、消化性多糖類と難消化性多糖類に分類できる。
 消化性多糖類には、デンプンやグリコーゲンなどがある。
 難消化性多糖類は、食物繊維の仲間である。
 /*/
 少糖類(oligosaccharide)とは、多糖類ほどは分子量が大きくない糖質である。
 少糖類と多糖類を分類する境界は、結合した単糖類やその誘導体の数が、だいたい10個以下か・10個より多いかである。
 少糖類は、オリゴ糖とも呼ばれる。
 天然に存在する糖の多くは、二糖類である。
 二糖類とは、ふたつの単糖類からなる糖質のことである。
 二糖類には、蔗糖・麦芽糖・乳糖などがある。
 蔗糖(sucrose)は、一般に砂糖とも呼ばれる。
 麦芽糖(maltose)は、水飴の主成分である。
 乳糖(lactose)は、牛乳に含まれる成分である。
 二糖類は、少糖類に含まれる。
 /*/
 一般的な人知類の食事の構成比率は、エネルギー比で糖質が過半数を占める。
 ただし、摂取した糖質の大部分がエネルギー源として消費されるため、人体を構成する成分として、糖質は1パーセント以下である。
 糖質が不足すると集中力の減少や疲労感が見られ、意識障害を起こすこともある。
 糖質を過剰に摂取した場合、消費されなかった糖質が中性脂肪として蓄積され、肥満の原因となる。
 
 部品: 食物繊維
 食物繊維(dietary fiber)とは、動物の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分のことである。
 消化酵素(digestion enzyme)とは、生体内で食物を消化する酵素の総称である。
 食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に大別できる。
 /*/
 水溶性食物繊維には、ペクチンやイヌリンなどがある。
 ペクチン(pectin)とは、柑橘類の皮やリンゴなどに多く含まれる食物繊維で、増粘安定剤として加工食品に添加することが認められている。
 イヌリン(inulin)とは、ゴボウやキクイモなどキク科植物の根に多く含まれる食物繊維で、腸内細菌が利用できる。
 水溶性食物繊維を摂取することによって、「コレステロールの吸収を抑制する」「グルコースの吸収を穏やかにする」などの効果があるとされている。
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 水溶性食物繊維には、セルロース・ヘミセルロース・リグニンなどがある。
 セルロース・ヘミセルロース・リグニンは、いずれも木材・草・竹・稲わらなどの植物の主要な成分である。
 不溶性食物繊維を摂取することによって、「便のかさを増やす」「腸内環境を改善する」などの効果があるとされている。
 牛・羊・山羊などの反芻動物は、セルロースを糖に分解する微生物が胃の中にいるため、セルロースを消化できる。
 また、シロアリやカミキリムシなどの昆虫、カタツムリもセルロースを消化できる。
 このように、人知類以外の動物の中には、食物繊維をエネルギー源として消化できるものもいる。
 
 部品: 脂質
 脂質(lipid)とは、生体成分のうち、水に溶けにくく、エーテル・クロロホルム・ベンゼン・エタノールなどの有機溶媒に溶ける物質の総称である。
 脂質は、常温で液体のものを油、固体のものを脂と呼ばれる。
 脂質は、体内では水分の次に多く含まれており、単純脂質・複合脂質・誘導脂質に大別できる。
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 単純脂質(simple lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子から構成される脂質の総称である。
 代表的な単純脂質として、中性脂肪がある。
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 複合脂質(complex lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子以外に、リン・窒素・硫黄などの原子を含む脂質の総称である。
 代表的な複合脂質として、リン脂質や糖脂質がある。
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 誘導脂質(derived lipid)とは、単純脂質や複合脂質が加水分解してできた化合物のうち、水に溶けにくく、有機溶媒に溶ける物質の総称である。
 代表的な誘導脂質として、脂肪酸やステロイドなどがある。
 脂肪酸は、さらに二重結合の有無によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別できる。
 不飽和脂肪酸は、植物や魚の脂に多く含まれる脂肪酸である。
 二重結合がひとつの不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と呼ばれる。
 また二重結合が複数ある不飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸と呼ばれる。
 α-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸は、人知類の体内で合成できないか、合成量が少ないため、必須脂肪酸と呼ばれている。
 不飽和脂肪酸は、熱や光で酸化しやすいため、食物として摂る場合、揚げ物や炒め物よりドレッシングなどが適している。
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 藩国の食文化によって異なるが、現代のにゃんにゃん共和国において、通常の食生活で脂質が不足することはないと考えられている。
 摂取する脂質の量を極端に減らすと、肌が乾燥しやすくなる。
 逆に、脂質を過剰に摂取すると、肥満や高脂血症などの原因となる。
 脂質を多く含む食品として、バターやマヨネーズなどがある。
 
 部品: 蛋白質とは
 蛋白質(protein)とは、アミノ酸がペプチド結合で連結された高分子化合物である。
 生体を構成する成分として、蛋白質は、水分の次に多い。
 蛋白質は、筋肉・骨・血液など、体を構成する主成分である。
 蛋白質は、体内でさまざまな役割を営み、機能性蛋白質・貯蔵蛋白質・構造蛋白質に大別できる。
 機能性蛋白質は、さらに酵素蛋白質・輸送蛋白質・収縮運動蛋白質・調整蛋白質・防御蛋白質に分類できる。
 食事によって摂取した蛋白質は、消化されてアミノ酸として吸収される。
 吸収されたアミノ酸の一部が、筋肉を構成する蛋白質に利用される。
 蛋白質の摂取量が不足すると、体力の低下や貧血などの悪影響があるとされている。
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 クワシオルコル(kwashiorkor)とは、蛋白質の摂取不足による蛋白質欠乏症である。
 クワシオルコルは、発展途上国の小児に多い。
 クワシオルコルは、エネルギー不足よりも蛋白質の欠乏した食事に由来する栄養失調である。
 クワシオルコルになると、髪が赤くなり、皮膚が暗赤色を呈する。
 クワシオルコルの患者は、著名な筋萎縮にもかかわらず、皮下脂肪が比較的保たれ、脂肪肝をみとめる。
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 消耗症(marasmus)とは、蛋白質とエネルギーの摂取不足によって起こる栄養障害である。
 クワシオルコルにエネルギーの欠乏症を加えたものが、消耗症である。
 消耗症は、食糧事情の悪い地域に多い。
 消耗症の患者は、著名な痩せにもかからわず、腹部が膨満する。
 消耗症になると、皮下脂肪がなくなり、筋肉が萎縮する。
 
 部品: アミノ酸
 アミノ酸(amino acid)とは、ひとつの分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物の総称。
 アミノ酸はアミノ基の位置によって、「α-アミノ酸」「β-アミノ酸」「γ-アミノ酸」などと呼ばれる。
 自然界には様々なアミノ酸が存在するが、蛋白質は基本的にL体の立体構造を有する20種類のα-アミノ酸で構成されている。
 L体とは、D体の鏡像異性体である。
 鏡像異性体(enantiomer)とは、掌性をもつ分子の異性体である。
 異性体(isomer)とは、同じ分子式だが、異なった物理的・化学的性質をもつ化合物のことである。
 掌性(chirality)とは、ある分子の立体構造において、その分子とその鏡像とが互いに重なり合わない性質のことである。
 掌性は、分子の回映対称の欠如による性質である。
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 蛋白質を構成するアミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類できる。
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 必須アミノ酸とは、体内で合成されないアミノ酸のことである。
 体内で合成できるが、必要量を合成できないアミノ酸を必須アミノ酸に含む場合もある。
 人知類の場合、バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・スレオニン・ヒスチジン・トリプトファン・フェニルアラニン・メチオニンの9種類が必須アミノ酸である。
 犬知類や猫知類の場合、必須アミノ酸の種類が人知類より多い。
 必須アミノ酸は、不可欠アミノ酸とも呼ばれる。
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 非必須アミノ酸とは、体内で合成されるアミノ酸のことである。
 人知類の場合、グリシン・アラニン・セリン・アスパラギン酸・アスパラギン・グルタミン酸・グルタミン・アルギニン・システイン・チロシン・プロリンの11種類が非必須アミノ酸である。
 ただし、アルギニンは速やかに分解されるため、必要量を合成できない子どもの場合、必須アミノ酸となっている。
 非必須アミノ酸は、可欠アミノ酸とも呼ばれる。
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 アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標である。
 アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸のうち、もっとも含有量が少ない必須アミノ酸の水準に制限される。
 食品のアミノ酸スコアが低ければ、その食品を食べても、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されにくくなる。
 アミノ酸スコアは食品単体の評価であるため、アミノ酸スコアが低い食品であっても、足りない必須アミノ酸を他の食品から補うことで、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されやすくできる。
 
 部品: 微量栄養素とは
 微量栄養素(micronutrient)とは、必要な摂取量が微量だが、心身の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な栄養素のことである。
 微量栄養素には、ビタミンと無機質がある。
 
 部品: ビタミン
 ビタミン(viamin)とは、炭水化物・脂質・蛋白質・無機質以外のもので、正常な発育や代謝の維持に必要な有機物のうち、体内で合成されないか、合成されても必要な量に足りないものである。
 ビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別できる。
 /*/
 ビタミン欠乏症(avitaminosis)とは、ビタミンを含む食品の摂取不足・吸収障害・必要量の増加などで起こる症状である。
 ビタミン欠乏症は、一次性欠乏症と二次性欠乏症に分類できる。
 一次性欠乏症とは、食事としての摂取量の不足によるビタミン欠乏症である。
 二次性欠乏症とは、吸収障害・利用障害などによるビタミン欠乏症である。
 二次性欠乏症は、吸収不良症候群や肝胆道疾患、薬剤などにより生じる。
 ビタミン欠乏症は、欠乏するビタミンの投与で、劇的に改善するが、他のものでは代用できない。
 二次性欠乏症では、ビタミン補給に加え、原疾患の治療もあわせておこなう必要がある。
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 プロビタミン(provitamin)とは、生体内の反応や紫外線照射などでビタミンに変化する化合物である。
 たとえば、ビタミンAに変化するカロテンがある。
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 ビタミンと類似した生理作用をもつ物質に、ビタミン様作用物質がある。
 ビタミン様作用物質(vitamin-like active substance)とは、ビタミンと同様に、生理的に必要であり、微量で有効な有機化合物であるが、体内で生合成できるため、必ずしも栄養素として摂取する必要がない一群の物質である。
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 脂溶性ビタミン(lipid-soluble vitamin、fat-soluble vitamin)とは、水に溶けにくいイソプレン(isoprene)の誘導体である。
 脂溶性ビタミンは、体内で脂質とともに代謝され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。
 脂溶性ビタミンは、尿中には排泄されず、胆汁中に出現しやすく、排便中に排泄される。
 脂溶性ビタミンを過剰に摂取すると、貯蔵組織に蓄積し、ビタミン過剰症(hypervitaminosis)と呼ばれる中毒症状を起こす。
 脂溶性ビタミンには、ビタミンAやビタミンEなどがある。
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 水溶性ビタミン(water-soluble vitamin)とは、水に溶け、一般に血液などの体内の液性部分に分布するビタミンである。
 水溶性ビタミンの血清濃度が組織の飽和濃度を超えると、尿中に排泄される。
 水溶性ビタミンを過剰に摂取しても排泄されるため、一般的に毒性は低い。
 水溶性ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCなどがある。
 
 部品: 無機質とは
 栄養学において、無機質(mineral)とは、生体を構成する主要な元素、酸素・炭素・水素・窒素以外のものの総称である。
 無機質は、体内で合成できないため、食物として摂る必要がある。
 無機質の中で、栄養素として欠かせないことが確定しているものを必須ミネラルと呼ぶ。
 必須ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルに大別できる。
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 多量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が多い無機質のことである。
 多量ミネラルには、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなどがある。
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 微量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が少ない無機質のことである。
 微量ミネラルには、鉄・亜鉛・銅・ヨウ素などがある。
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 ミネラルの主な働きは、よっつに整理できる。
 ひとつ目は、骨や歯など硬組織を形成する働きである。
 硬組織の形成に関与するミネラルに、カルシウム・リン・マグネシウムなどがある。
 ふたつ目は、蛋白質や脂質の成分となる働きである。
 ふたつ目の働きに関与するミネラルに、リンや鉄などがある。
 みっつ目は、生体機能の調整をおこなう働きである。
 生体機能の調整とは、具体的には浸透圧の調整や酸塩基平衡、筋肉や神経などの刺激に関与するものである。
 生体機能の調整に関与するミネラルに、カルシウム・リン・カリウム・ナトリウム・塩素などがある。
 よっつ目は、酵素の補助因子やホルモンの成分となる働きである。
 よっつ目の働きに関与するミネラルに、マグネシウム・銅・亜鉛・マンガンなどがある。
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 ミネラルもビタミンと同様に、摂取量の不足や過剰などによって、心身に悪影響を与える。
 
 部品: 鉄
 鉄(iron)とは、元素記号Fe、原子番号26の元素である。
 栄養素として鉄は、人知類を含む多くの生命体の正常な生理機能にとって、必要不可欠な必須ミネラルである。
 たとえば、植物の光合成の働きは葉緑素によるものだが、この葉緑素の合成には鉄が必要である。
 また、生体活動の源となるエネルギーを産生しているミトコンドリアが働くために最も大切なミネラルである。
 人知類の体内にある鉄は、その過半数がヘモグロビンに存在する。
 また、ミオグロビンなどにも少量の鉄がある。
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 ヘモグロビン(hemoglobin)とは、赤血球中に存在するヘム蛋白質である。
 グロビン(globin)という蛋白質に、ヘム鉄が結合したものがヘモグロビンである。
 ヘモグロビンは、鉄原子に酸素を着脱することで、肺で受け取った酸素を、全身の細胞へ運搬する役割を担っている。
 また、ヘモグロビンは弱酸としての性質によって、二酸化炭素の運搬にも重要な役割を果たす。
 鉄が不足すると、ヘモグロビンを合成できないため、赤血球自体が小さくなり、赤血球の数も減少する。
 ヘモグロビンのグロビン各鎖は、それぞれ異なった遺伝子の支配を受けている。
 その遺伝子に変異が起こると、その支配下のグロビン各鎖に質的・量的異常をまねく。
 ヘモグロビンは、血色素(blood pigment)とも呼ばれる。
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 ミオグロビン(myoglobin)とは、筋肉組織に存在する蛋白質である。
 ミオグロビンは、筋肉への酸素供給を助ける役割を担っている。
 そのため、筋肉中のミオグロビンが減ることで、筋力低下や疲労感といった症状が起こる。
 ミオグロビンは、筋肉ヘモグロビン(muscle hemoglobin)とも呼ばれる。
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 栄養素として、食事由来の鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄が存在する。
 また、鉄の栄養補助食品には、ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄が存在する。
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 ヘム鉄(heme iron)とは、ポルフィリンに配意した鉄のことである。
 ポルフィリン(porphyrin)とは、4個のピロールがメチル基によって結合した環状テトラピロール誘導体である。
 ヘム鉄は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのタンパク質を構成し、それらの機能の中核を担っている。
 栄養素としてのヘム鉄は、主にヘモグロビンに由来し、赤身肉・魚・鶏肉などヘモグロビンを含む動物性食品にみられる。
 ヘム鉄は専用の吸収経路があるため、胃腸にやさしく、通常、非ヘム鉄より吸収されやすい。
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 非ヘム鉄(non-heme iron)とは、レンズ豆やエンドウ豆などの植物性食品に含まれる鉄である。
 非ヘム鉄は、phの低い胃酸によって吸収されやすくなり、十二指腸を中心とした上部空腸から吸収される。
 phとは、溶液中の水素イオンの濃度を示す指数である。
 pH7が中性を示し、ph7未満が酸性、ph7超過が塩基性となる。
 胃酸が出ていない場合や制酸剤で胃酸を中和した場合、腸管などに炎症がある場合、非ヘム鉄は吸収されにくくなる。
 鉄欠乏が重度になるほど、胃腸の粘膜の状態も悪くなっていることがほとんどであるため、そこに非ヘム鉄を摂取すると、腸から吸収されなかった鉄がさらに腸内環境を悪化させるおそれがある。
 非ヘム鉄の吸収率は、食品中のさまざまな成分によって大きく左右される。
 ビタミンCや食肉の蛋白質は、非ヘム鉄の吸収を向上させる。
 タンニン・蓚酸・フィチン酸などは、非ヘム鉄の吸収を妨げる。
 タンニン(tannin)と蓚酸塩(oxalic acid)は、紅茶・緑茶・コーヒーなどに多く含まれている。
 フィチン酸(phytic acid)を含む食品は、米・麦などの穀類や大豆などである。
 非ヘム鉄の吸収経路は、亜鉛・カルシウム・銅などの吸収と競合する。
 そのため、牛乳とともに非ヘム鉄を摂取すると、牛乳に含まれるカルシウムによって、非ヘム鉄の吸収が妨げられる。
 非ヘム鉄は、無機鉄とも呼ばれる。
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 キレート鉄とは、非ヘム鉄をアミノ酸やクエン酸で挟み込んだ、天然には存在しない鉄である。
 キレート鉄は、アミノ酸の吸収経路から能動的に吸収される。
 そのため、吸収効率が非常に高い。
 ヘム鉄と非ヘム鉄は、体内の鉄貯蔵量が多ければ、過剰摂取による毒性作用を防ぐため、吸収率が低下する。
 しかし、キレート鉄はアミノ酸の吸収経路から吸収されるため、吸収量の調整機構がない。
 鉄の過剰摂取は胃腸障害などを起こすため、キレート鉄を摂取する際は注意を要する。
 なお、キレート鉄を過剰摂取しなければ、胃腸への負担は少ない。
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 鉄の過剰症として、ヘモクロマトーシスが知られている。
 ヘモクロマトーシス(hemochromatosis)とは、体内の鉄の蓄積が過剰になり、鉄が組織に沈着し、肝臓・膵臓・心臓・甲状腺で臓器障害を引き起こす疾患である。
 ヘモクロマトーシスは、血清鉄も非常に高値を示す。
 皮下に鉄が沈着、皮膚の色が青銅色を呈し、糖尿病を併発するため、ヘモクロマトーシスは青銅色糖尿病(bronzed diabetes)やブロンズ糖尿病とも呼ばれる。
 また、ヘモグロビンが血色素と呼ばれるため、ヘモクロマトーシスは血色素症とも呼ばれる。
 ヘモクロマトーシスの治療には、鉄排泄促進薬の投与や瀉血で、過剰に蓄積された体内の鉄を除去する方法がある。
 瀉血(bloodletting、exsanguination)とは、治療目的で適切な量の血液を注射器などで取り除くことである。
 静脈を針などで刺す瀉血は、刺絡と呼ばれる。
 刺絡の絡は、静脈を意味する。
 ヘモクロマトーシスは、遺伝性ヘモクロマトーシスと続発性ヘモクロマトーシスに分けられる。
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 遺伝性ヘモクロマトーシス(hereditary hemochromatosis)は、鉄代謝の遺伝子疾患が原因のヘモクロマトーシスである。
 遺伝性ヘモクロマトーシスは、変異した遺伝子によって、さらに細かく分類できる。
 遺伝性ヘモクロマトーシスは、原発性ヘモクロマトーシス(primary hemochromatosis)とも呼ばれる。
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 続発性ヘモクロマトーシス(secondary hemochromatosis)とは、鉄の吸収亢進や頻回の輸血、貧血の治療で投与された鉄の過剰摂取などに起因するヘモクロマトーシスである。
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 鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia)とは、鉄の欠乏によって生じる貧血である。
 鉄欠乏性貧血の原因は、ほとんどの場合、失血である。
 最も頻度の高い原因は、慢性の不顕性出血である。
 たとえば、消化性潰瘍や悪性腫瘍など、消化管からの出血が該当する。
 人知類のような月経のある一部の哺乳動物の場合、閉経前の女性は、月経による累積失血が鉄欠乏性貧血の一般的な原因である。
 このほか、鉄摂取量の減少、鉄吸収の低下、鉄需要の増大などが鉄欠乏性貧血の原因となる。
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 貧血に至らない鉄欠乏であっても、さまざまな身体症状や精神症状が起こり得る。
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 鉄欠乏にみられる特異的な身体症状としては、爪の扁平化・脆弱化がある。
 とくに重度の鉄欠乏では、匙状爪となる。
 匙状爪(spoon nail)とは、爪甲が陥凹し、スプーンのように反り返ることである。
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 鉄欠乏にみられる特異的な精神症状としては、異食症がある。
 異食症(pica)とは、非栄養性物質を食べたいという異常な欲求を示す病態である。
 とくに異常なほど氷を食べる異食症を、氷食症(pagophagia)と呼ぶ。
 非栄養性物質の摂食によって食欲が満たされると、鉄摂取量のさらなる減少につながるため、注意が必要である。
 なお、民間療法や宗教儀式など文化的伝統での摂食は、異食症に含まない。
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 鉄欠乏が原因となる他の精神症状としては、むずむず脚症候群が挙げられる。
 むずむず脚症候群(restless legs syndrome)とは、下肢や上肢などを動かしたくなる、抗いがたい衝動が生じる感覚運動疾患である。
 むずむず脚症候群は、通常、上肢や下肢に皮膚の上を虫が這うようなむずむずする感覚が起こる。
 眠ろうとしても、むずむず脚症候群の異常知覚を緩和する目的でその部位を按摩したり、動かしたりせざるを得ないため、重度の不眠症状を呈することが多い。
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 鉄欠乏の診断には、血液を採取し、赤血球や血色素、血液中の成分などを検査する。
 鉄が欠乏している場合、まず血清フェリチン濃度が低下し、次に血清鉄が低下、その後ヘモグロビン濃度が低下する。
 フェリチン(feritin)とは、再利用可能な形で鉄を貯蔵するために必要な水溶性蛋白質である。
 体内で鉄が不足すると、フェリチンから減ってくる。
 そのため、血清フェリチン濃度は、生体に蓄積されている鉄の貯蔵量を推定する指標となる。
 ただし、血清フェリチン濃度は、感染や炎症などで増加するため、鉄不足を反映しないこともある。
 そのため、鉄不足の診断には、平均赤血球容積も同時に確認する必要がある。
 平均赤血球容積(mean corpuscular volume)とは、ひとつの赤血球の平均的容積である。
 つまり、平均赤血球容積とは、赤血球の大きさの指標である。
 平均赤血球容積は、ヘマトクリット値と赤血球数から計算される。
 ヘマトクリット値(hematocrit)とは、血液中に占める赤血球の容積の割合をパーセントで表したものである。
 平均赤血球容積は、葉酸やコバラミンの不足によっても上昇するため、鉄不足の参考にならないこともある。
 このように検査数値は複数の要因で上下する。
 そのため、検査数値を適切に解釈するには、他の検索項目と照らし合わせ、なにが起きているかを推測しなければならない。
 
 部品: 水
 水は、酸素と水素の化合物で、一般に栄養素には含まれないが、重要な物質である。
 成年の人知類の場合、水は体重の45パーセントが細胞内、体重の15パーセントが細胞間、体重の5パーセントが血液中に存在する。
 体内水分の10パーセントを失うと機能障害を生じ、20パーセントを失うと死を招く。
 摂取した水分は、小腸・大腸から吸収される。
 体内で代謝された水分は、腎臓から尿として、消化管から消化液として、皮膚から汗として排泄される。
 
 部品: 栄養感覚とは
 栄養感覚とは、栄養素の摂取に関係する総合的な感覚のことである。
 人知類の食欲は、単に空腹から発生するわけではなく、局所性栄養感覚と全身性栄養感覚が作用して発現している。
 局所性栄養感覚とは、視覚・味覚・触覚・嗅覚・聴覚などのことである。
 全身性栄養感覚とは、空腹感・満腹感・口渇感・嗜好などのことである。
 食欲旺盛で過食の場合や、食欲不振で低栄養の場合は、さまざまな要因を調整する必要がある。
 たとえば、食欲不振の原因は、運動不足・過労・不眠など生理的なものから、精神的な落ち込みや悩み事など心理的なものまでさまざまである。
 また、傷病者や高齢者の場合、臓器の機能低下・機能異常、薬物の副作用も食欲不振の原因と考えられる。
 食欲不振による低栄養を防ぐためには、これらの原因を取り除く必要がある。
 
 部品: 味覚
 味覚(sense of taste)とは、食物の物理的・化学的性状に対する感覚である。
 脊椎動物は、主に舌の味蕾中の味細胞で感受される。
 人知類の場合、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味が存在する。
 辛味・渋味・あぶら味などは、痛覚や触覚の一種と考えられている。
 /*/
 甘味とは、甘さに対する感覚である。
 甘味を感じる食品の成分は、蔗糖やアミノ酸などがある。
 /*/
 酸味とは、酸っぱさに対する感覚である。
 酸味を感じる食品の成分は、クエン酸やリンゴ酸などがある。
 /*/
 塩味とは、中性塩に対する感覚である。
 塩味を感じる代表的な食品は、食塩である。
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 苦味とは、苦さに対する感覚である。
 苦味を感じる食品は、ビール・チョコレート・コーヒーなどがある。
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 旨味とは、旨さに対する感覚である。
 酸味を感じる食品の成分は、グルタミン酸やイノシン酸などがある。
 
 部品: 空腹感
 空腹感(hunger sensation)とは、固形の食物を食べたいという欲求の表れである。
 空腹感は、摂食中枢の興奮によって起こる。
 摂食中枢(feeding center)とは、脳の視床下部という部位の近くにある、食物の摂取を促すように働く中枢神経系である。
 空腹感は、飢餓収縮や血液中の遊離脂肪酸などが関与する。
 /*/
 飢餓収縮とは、胃が空になったときに起こる強い緊張性の周期的な収縮運動である。
 飢餓収縮の刺激が、胃に分布している迷走神経を通し、摂食中枢に伝えられることで空腹感を感じる。
 長期間断食し栄養状態が低下すると、胃の運動が鈍くなるため、胃の内容物がなくても空腹感は感じなくなる。
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 遊離脂肪酸とは、食後時間が経過し、低下した血糖値を補うため、分解・放出された体脂肪のことである。
 血液中の遊離脂肪酸の刺激によって、摂食中枢が興奮すると、空腹感を感じる。
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 冷気に触れて寒さを感じると、その刺激が摂食中枢に伝わり、食欲が増進する。
 逆に、夏場や発熱で体温が上昇すると、食欲は減退する。
 
 部品: 消化
 消化(digestion、peptization)とは、消化管内に取り入れた食物の成分を吸収されやすい最小単位、あるいはそれに近い状態まで分解することである。
 消化の方法は、機械的消化・化学的消化・細菌学的消化に分類できる。
 /*/
 機械的消化とは、磨砕・攪拌・移動などの作用による消化のことである。
 たとえば人知類や猫知類などは、食品を咀嚼して細かく砕き、消化管の蠕動によって内容物を混合・攪拌・移動することで化学的消化を助ける。
 咀嚼(mastication、chewing)とは、食物を摂取してから下顎の運動と舌や唇によって、上の歯と下の歯の間に運ばれ、食物を噛み砕くまでにおこなわれる口腔内でおこなわれている生理的過程のことである。
 蠕動(peristalsis)とは、消化管などの管腔臓器で、縦走筋と輪状筋を協調して動かすことによって、その内容物を押し進める運動のことである。
 機械的消化は、理学的消化とも呼ばれる。
 /*/
 化学的消化とは、唾液・胃液・膵液などの消化液や小腸粘膜に存在する分解酵素による栄養素の化学反応のことである。
 化学的消化には、接触消化と膜消化に分けられる。
 化学的消化は、酵素的消化とも呼ばれる。
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 細菌学的消化とは、腸内細菌による腐敗や発酵のことである。
 細菌学的消化は、生物学的消化とも呼ばれる。
 /*/
 消化によって食物が分解されることで、食物がもつ種特異性や抗原性が取り除かれる。
 たとえば、人知類が牛肉を食べても人の筋肉が牛の筋肉と同じものにはならない。
 牛の蛋白質を牛特有のものではないアミノ酸やペプチドに分解して吸収し、体内亜で人の蛋白質に合成するからである。
 /*/
 消化器官には、口腔・胃・小腸・大腸などの臓器がある。
 
 部品: 吸収
 栄養学において、吸収(absorption)とは、生体が外界から物質を取り込むことである。
 人知類や猫知類など多くの高等動物の場合、吸収とは、消化器官で分解された成分が消化管壁から体内に入ることである。
 栄養素が吸収される機構には、受動輸送と能動輸送がある。
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 受動輸送とは、浸透や拡散の現象によって、溶解成分の濃度が高いところから低いところへと膜を通過する機構である。
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 能動輸送とは、エネルギーを使い、濃度勾配に逆らって、溶解成分の濃度が低いところから高いところへ積極的に膜を通過する機構である。
 
 部品: 排泄
 食物の成分は、消化・吸収され、残りは便として排泄される。
 便には、「水分」「消化・吸収されなかった食物の残渣」「胆汁・酵素・粘液など消化管の生成物」「消化管上皮細胞からの剥離成分」「カルシウムや鉄など消化器官に排泄された成分」「腸内細菌」が含まれる。
 便の量や排便回数は、食習慣や食事量に依存する。
 食物繊維の摂取量が増大すると便量が多くなる。
 
 


インポート用定義データ


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     "title": "栄養学",
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       {
         "title": "栄養学とは",
         "description": "栄養学(science of nutrition)とは、食品の持つ栄養素やその働きについて、科学的方法に基づいて系統的に研究・教育する学問である。\n栄養学は生命科学の一分野である。\n栄養学の領域には、基礎栄養学・食物栄養学・臨床栄養学・公衆栄養学などがある。\n基礎栄養学(basic nutrition)とは、栄養の基礎的問題を課題とする学問である。\n食物栄養学(food nutrition)とは、食物を中心とした栄養学である。\n臨床栄養学(clinical nutrition)とは、個々の知類を対象とした栄養学である。\n公衆栄養学(community nutrition)とは、集団や地域を対象とした栄養学である。\n/*/\n栄養学は、保険・医療・福祉など、さまざまな領域に影響をおよぼす。\nたとえば、栄養の改善によって不健康な知類を減らすことで、医療費や介護費を減少させられる。\nとくに人知類のような雑食の動物は、さまざまな食品からどの食品をどれくらい食べれば生きていけるのかという知識が必要である。\n/*/\n栄養素(nutrient)とは、生命を維持し、生活現象を営むため、外界から摂取しなければならない物質のことである。\n生活現象とは、生きている生物に限ってみられる物質代謝・生長・生殖・運動・知覚などの現象のことである。\n生活現象は、生命現象とも呼ばれる。\n/*/\n植物が摂取する主な栄養素は、窒素・リン・カリウムが挙げられる。\n動物が摂取する栄養素は、大別すると、有機栄養素と無機栄養素がある。\n有機栄養素には、糖質・脂質・蛋白質・ビタミンがある。",
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       {
         "title": "欠乏症・過剰症",
         "description": "知類を含む生物の栄養状態は、栄養が過剰でも不足でもない適正状態を中心に、欠乏状態と過剰状態に大別できる。\n/*/\n欠乏状態は、欠乏症と潜在性の欠乏状態に分けられる。\n栄養欠乏症とは、栄養素の著しい欠乏が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。\n潜在性の欠乏状態とは、健康な状態と欠乏症との境界にあり、栄養素の摂取量が不足し、さまざまな不定愁訴が現れやすくなっている状態である。\n不定愁訴(indefinite complaint)とは、はっきりした理由や原因がわからない体調不良を訴える状態のことである。\nここでいう体調不良とは、たとえば、手足のふるえ・しびれ・めまい・発汗・動悸・頻尿・肩こり・不眠などである。\n/*/\n過剰状態は、過剰症と潜在性の過剰状態に分けられる。\n栄養過剰症とは、特定の食品を大量に摂取することで、栄養素の過剰摂取が長期におよび、心身に異常が現れた状態である。\n潜在性の過剰状態とは、健康な状態と過剰症との境界にあり、栄養素の摂取量が過剰で、さまざまな非感染性疾患が誘発されやすい状態である。\n非感染性疾患(noncommunicable diseases)とは、循環器疾患や糖尿病など、感染性ではない疾患の総称である。\n/*/\n栄養について、同じ者が欠乏状態かつ過剰状態という状態は起こりえる。\nたとえば、糖質や資質については過剰摂取だが、ビタミンについては摂取不足という場合である。\nこのように、同じ者や同じ集団の中で、過剰栄養と低栄養が混在する状態を「栄養不良の二重負荷(double burden malnutrition)」と呼ぶ。\n栄養不良の二重負荷は、経済状況や生活習慣の変化など、さまざまな要因によって起こる複雑な問題である。\nそのため、栄養不良の二重負荷を解決することは難しく、各藩国の取り組みによって徐々に改善する必要がある。",
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         "localID": 2
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         "title": "食事摂取基準",
         "description": "栄養素の摂取不足を回避するための指標として、推定平均必要量・推奨量・目安量などの基準値がある。\nまた、栄養素の過剰摂取による健康障害を回避するため、耐容上限量の指標がある。\n/*/\n推定平均必要量(estimated average requirement)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団における必要量の平均値の推定値を示した指標のことである。\nつまり推定平均必要量とは、ある集団の平均摂取量がこの値の近似値であれば、半数の者が必要量を満たし、残りの半数の者が必要量を満たさないと推定できる摂取量である。\n推定平均必要量は、摂取不足の回避が目的であるが、ここでいう不足の定義は栄養素によって異なる。\n/*/\n推奨量(recommended dietary allowance)とは、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて、母集団に属するほとんどの者が充足する量のことである。\n推奨量は、推定平均必要量と推奨量算定係数を用いて算出される。\n推奨量が満たされていれば、対象集団に属するほとんどの者は欠乏症を予防できる。\nそのため、栄養素の摂取を回避する際は、推奨量を目標とする。\n/*/\n目安量(adequate intake)とは、推定平均必要量を測定できるほど科学的根拠が得られていない栄養素に対し、ある一定の栄養状態を維持するために十分な量のことである。\n目安量は基本的に、多数の健康な者を対象とし、栄養素摂取量を観察した疫学的研究によって算定される。\n/*/\n耐容上限量(tolerable upper intake level)とは、健康障害をもたらすおそれがないとみなされる習慣的な摂取量の上限のことである。\nつまり、耐容上限量を超えて摂取し続けると過剰摂取によって生じる健康障害の危険性が高まることになる。\n耐容上限量は、健康障害非発現量と最低健康障害発現量との間に存在する。\n/*/\n健康障害非発現量(no observed adverse effect level)とは、健康障害が発現しないことが知られている習慣的な摂取量の最大値のことである。\n/*/\n最低健康障害発現量(lowest observed adverse effect level)とは、健康障害が発現したことが知られている習慣的な摂取量の最小値のことである。\n/*/\n種族・年齢・性別・傷病などにより、これらの指標で示される摂取量は変わる。\nたとえば、同じ種族・年代・性別の者であっても、活発な運動習慣をもつ者は、静的な活動が中心の者よりも、多くのエネルギー産生栄養素の摂取が必要である。\nまた同じ年代の人知類の女性でも妊婦や授乳婦の場合、そうではない女性よりも、蛋白質やビタミンなどを多く摂取する必要がある。\n妊娠の初期・中期・後期で必要な摂取量が変わる栄養素もある。\nただし、妊婦が過剰摂取することで胎児に悪影響を与える栄養素もあるため、注意が必要である。\nなお、これらの指標で示される摂取量は、最新の研究結果を反映し、適切となるよう定期的に見直される。",
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                 "description": "エネルギー産生栄養素(energy-providing nutrients)とは、食物中に含まれる身体に必要な栄養素のうち、エネルギー源となる栄養素の総称である。\nエネルギー産生栄養素は、摂取量が多いため、マクロ栄養素(macronutrient)とも呼ばれる。\nエネルギー産生栄養素は、炭水化物・脂質・蛋白質に分類できる。\n/*/\nエネルギー換算係数とは、炭水化物・脂質・蛋白質を摂取した場合、各成分1グラム当たりの利用エネルギー量のことである。\nエネルギー換算係数は、炭水化物・脂質・蛋白質を1グラムを空気中で燃焼させた際に発生する熱量とは異なる。\nたとえば、紙を燃やせば熱エネルギーになる。\nしかし、人知類は紙の成分であるセルロースの分解酵素をもたない。\nそのため、紙を食べてもエネルギーにできない。\nエネルギー換算係数は、その藩国や種族の平均的な食事内容から消化・吸収率を算定される。",
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                     "description": "炭水化物(carbohydrate)とは、エネルギー産生栄養素のひとつで、炭素・水素・酸素の元素から構成される化合物である。\n炭水化物を多く含む食物に、穀物やイモ類がある。\n穀物とは、農作物のうち、種子を食用として収穫するために栽培される作物や、その種子の総称である。\n穀物(grain)には、米・麦・粟・稗・豆・黍などがある。\n穀物から作られるパンや麺類にも、炭水化物が多く含まれる。\n/*/\n炭水化物には、糖質と食物繊維がある。",
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                     "description": "糖質(glucide)とは、糖を主成分とする物質の総称で、動物の消化酵素で消化され、エネルギー源となる。\n糖質は、糖類(saccharide)とも呼ばれる。\n糖質は、単糖類・少糖類・多糖類に分類できる。\n/*/\n単糖類(monosaccharide)とは、加水分解によってそれ以上低分子の糖に分解できない糖類のことである。\n単糖類には、ブドウ糖(glucose)・果糖(fructose)・ガラクトース(galactose)などがある。\n/*/\n多糖類(polysaccharide)とは、単糖類やその誘導体が、数分子から万を超える数まで脱水縮合して生じた分子の総称である。\n多糖類は、消化性多糖類と難消化性多糖類に分類できる。\n消化性多糖類には、デンプンやグリコーゲンなどがある。\n難消化性多糖類は、食物繊維の仲間である。\n/*/\n少糖類(oligosaccharide)とは、多糖類ほどは分子量が大きくない糖質である。\n少糖類と多糖類を分類する境界は、結合した単糖類やその誘導体の数が、だいたい10個以下か・10個より多いかである。\n少糖類は、オリゴ糖とも呼ばれる。\n天然に存在する糖の多くは、二糖類である。\n二糖類とは、ふたつの単糖類からなる糖質のことである。\n二糖類には、蔗糖・麦芽糖・乳糖などがある。\n蔗糖(sucrose)は、一般に砂糖とも呼ばれる。\n麦芽糖(maltose)は、水飴の主成分である。\n乳糖(lactose)は、牛乳に含まれる成分である。\n二糖類は、少糖類に含まれる。\n/*/\n一般的な人知類の食事の構成比率は、エネルギー比で糖質が過半数を占める。\nただし、摂取した糖質の大部分がエネルギー源として消費されるため、人体を構成する成分として、糖質は1パーセント以下である。\n糖質が不足すると集中力の減少や疲労感が見られ、意識障害を起こすこともある。\n糖質を過剰に摂取した場合、消費されなかった糖質が中性脂肪として蓄積され、肥満の原因となる。",
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                     "title": "食物繊維",
                     "description": "食物繊維(dietary fiber)とは、動物の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分のことである。\n消化酵素(digestion enzyme)とは、生体内で食物を消化する酵素の総称である。\n食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に大別できる。\n/*/\n水溶性食物繊維には、ペクチンやイヌリンなどがある。\nペクチン(pectin)とは、柑橘類の皮やリンゴなどに多く含まれる食物繊維で、増粘安定剤として加工食品に添加することが認められている。\nイヌリン(inulin)とは、ゴボウやキクイモなどキク科植物の根に多く含まれる食物繊維で、腸内細菌が利用できる。\n水溶性食物繊維を摂取することによって、「コレステロールの吸収を抑制する」「グルコースの吸収を穏やかにする」などの効果があるとされている。\n/*/\n水溶性食物繊維には、セルロース・ヘミセルロース・リグニンなどがある。\nセルロース・ヘミセルロース・リグニンは、いずれも木材・草・竹・稲わらなどの植物の主要な成分である。\n不溶性食物繊維を摂取することによって、「便のかさを増やす」「腸内環境を改善する」などの効果があるとされている。\n牛・羊・山羊などの反芻動物は、セルロースを糖に分解する微生物が胃の中にいるため、セルロースを消化できる。\nまた、シロアリやカミキリムシなどの昆虫、カタツムリもセルロースを消化できる。\nこのように、人知類以外の動物の中には、食物繊維をエネルギー源として消化できるものもいる。",
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                 "title": "脂質",
                 "description": "脂質(lipid)とは、生体成分のうち、水に溶けにくく、エーテル・クロロホルム・ベンゼン・エタノールなどの有機溶媒に溶ける物質の総称である。\n脂質は、常温で液体のものを油、固体のものを脂と呼ばれる。\n脂質は、体内では水分の次に多く含まれており、単純脂質・複合脂質・誘導脂質に大別できる。\n/*/\n単純脂質(simple lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子から構成される脂質の総称である。\n代表的な単純脂質として、中性脂肪がある。\n/*/\n複合脂質(complex lipid)とは、脂肪酸とアルコールの炭素・水素・酸素の原子以外に、リン・窒素・硫黄などの原子を含む脂質の総称である。\n代表的な複合脂質として、リン脂質や糖脂質がある。\n/*/\n誘導脂質(derived lipid)とは、単純脂質や複合脂質が加水分解してできた化合物のうち、水に溶けにくく、有機溶媒に溶ける物質の総称である。\n代表的な誘導脂質として、脂肪酸やステロイドなどがある。\n脂肪酸は、さらに二重結合の有無によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別できる。\n不飽和脂肪酸は、植物や魚の脂に多く含まれる脂肪酸である。\n二重結合がひとつの不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と呼ばれる。\nまた二重結合が複数ある不飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸と呼ばれる。\nα-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸は、人知類の体内で合成できないか、合成量が少ないため、必須脂肪酸と呼ばれている。\n不飽和脂肪酸は、熱や光で酸化しやすいため、食物として摂る場合、揚げ物や炒め物よりドレッシングなどが適している。\n/*/\n藩国の食文化によって異なるが、現代のにゃんにゃん共和国において、通常の食生活で脂質が不足することはないと考えられている。\n摂取する脂質の量を極端に減らすと、肌が乾燥しやすくなる。\n逆に、脂質を過剰に摂取すると、肥満や高脂血症などの原因となる。\n脂質を多く含む食品として、バターやマヨネーズなどがある。",
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                     "description": "蛋白質(protein)とは、アミノ酸がペプチド結合で連結された高分子化合物である。\n生体を構成する成分として、蛋白質は、水分の次に多い。\n蛋白質は、筋肉・骨・血液など、体を構成する主成分である。\n蛋白質は、体内でさまざまな役割を営み、機能性蛋白質・貯蔵蛋白質・構造蛋白質に大別できる。\n機能性蛋白質は、さらに酵素蛋白質・輸送蛋白質・収縮運動蛋白質・調整蛋白質・防御蛋白質に分類できる。\n食事によって摂取した蛋白質は、消化されてアミノ酸として吸収される。\n吸収されたアミノ酸の一部が、筋肉を構成する蛋白質に利用される。\n蛋白質の摂取量が不足すると、体力の低下や貧血などの悪影響があるとされている。\n/*/\nクワシオルコル(kwashiorkor)とは、蛋白質の摂取不足による蛋白質欠乏症である。\nクワシオルコルは、発展途上国の小児に多い。\nクワシオルコルは、エネルギー不足よりも蛋白質の欠乏した食事に由来する栄養失調である。\nクワシオルコルになると、髪が赤くなり、皮膚が暗赤色を呈する。\nクワシオルコルの患者は、著名な筋萎縮にもかかわらず、皮下脂肪が比較的保たれ、脂肪肝をみとめる。\n/*/\n消耗症(marasmus)とは、蛋白質とエネルギーの摂取不足によって起こる栄養障害である。\nクワシオルコルにエネルギーの欠乏症を加えたものが、消耗症である。\n消耗症は、食糧事情の悪い地域に多い。\n消耗症の患者は、著名な痩せにもかからわず、腹部が膨満する。\n消耗症になると、皮下脂肪がなくなり、筋肉が萎縮する。",
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                     "description": "アミノ酸(amino acid)とは、ひとつの分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物の総称。\nアミノ酸はアミノ基の位置によって、「α-アミノ酸」「β-アミノ酸」「γ-アミノ酸」などと呼ばれる。\n自然界には様々なアミノ酸が存在するが、蛋白質は基本的にL体の立体構造を有する20種類のα-アミノ酸で構成されている。\nL体とは、D体の鏡像異性体である。\n鏡像異性体(enantiomer)とは、掌性をもつ分子の異性体である。\n異性体(isomer)とは、同じ分子式だが、異なった物理的・化学的性質をもつ化合物のことである。\n掌性(chirality)とは、ある分子の立体構造において、その分子とその鏡像とが互いに重なり合わない性質のことである。\n掌性は、分子の回映対称の欠如による性質である。\n/*/\n蛋白質を構成するアミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類できる。\n/*/\n必須アミノ酸とは、体内で合成されないアミノ酸のことである。\n体内で合成できるが、必要量を合成できないアミノ酸を必須アミノ酸に含む場合もある。\n人知類の場合、バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・スレオニン・ヒスチジン・トリプトファン・フェニルアラニン・メチオニンの9種類が必須アミノ酸である。\n犬知類や猫知類の場合、必須アミノ酸の種類が人知類より多い。\n必須アミノ酸は、不可欠アミノ酸とも呼ばれる。\n/*/\n非必須アミノ酸とは、体内で合成されるアミノ酸のことである。\n人知類の場合、グリシン・アラニン・セリン・アスパラギン酸・アスパラギン・グルタミン酸・グルタミン・アルギニン・システイン・チロシン・プロリンの11種類が非必須アミノ酸である。\nただし、アルギニンは速やかに分解されるため、必要量を合成できない子どもの場合、必須アミノ酸となっている。\n非必須アミノ酸は、可欠アミノ酸とも呼ばれる。\n/*/\nアミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標である。\nアミノ酸スコアとは、必須アミノ酸のうち、もっとも含有量が少ない必須アミノ酸の水準に制限される。\n食品のアミノ酸スコアが低ければ、その食品を食べても、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されにくくなる。\nアミノ酸スコアは食品単体の評価であるため、アミノ酸スコアが低い食品であっても、足りない必須アミノ酸を他の食品から補うことで、摂取したアミノ酸が体内の蛋白質に利用されやすくできる。",
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                 "description": "微量栄養素(micronutrient)とは、必要な摂取量が微量だが、心身の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な栄養素のことである。\n微量栄養素には、ビタミンと無機質がある。",
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                 "title": "ビタミン",
                 "description": "ビタミン(viamin)とは、炭水化物・脂質・蛋白質・無機質以外のもので、正常な発育や代謝の維持に必要な有機物のうち、体内で合成されないか、合成されても必要な量に足りないものである。\nビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別できる。\n/*/\nビタミン欠乏症(avitaminosis)とは、ビタミンを含む食品の摂取不足・吸収障害・必要量の増加などで起こる症状である。\nビタミン欠乏症は、一次性欠乏症と二次性欠乏症に分類できる。\n一次性欠乏症とは、食事としての摂取量の不足によるビタミン欠乏症である。\n二次性欠乏症とは、吸収障害・利用障害などによるビタミン欠乏症である。\n二次性欠乏症は、吸収不良症候群や肝胆道疾患、薬剤などにより生じる。\nビタミン欠乏症は、欠乏するビタミンの投与で、劇的に改善するが、他のものでは代用できない。\n二次性欠乏症では、ビタミン補給に加え、原疾患の治療もあわせておこなう必要がある。\n/*/\nプロビタミン(provitamin)とは、生体内の反応や紫外線照射などでビタミンに変化する化合物である。\nたとえば、ビタミンAに変化するカロテンがある。\n/*/\nビタミンと類似した生理作用をもつ物質に、ビタミン様作用物質がある。\nビタミン様作用物質(vitamin-like active substance)とは、ビタミンと同様に、生理的に必要であり、微量で有効な有機化合物であるが、体内で生合成できるため、必ずしも栄養素として摂取する必要がない一群の物質である。\n/*/\n脂溶性ビタミン(lipid-soluble vitamin、fat-soluble vitamin)とは、水に溶けにくいイソプレン(isoprene)の誘導体である。\n脂溶性ビタミンは、体内で脂質とともに代謝され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される。\n脂溶性ビタミンは、尿中には排泄されず、胆汁中に出現しやすく、排便中に排泄される。\n脂溶性ビタミンを過剰に摂取すると、貯蔵組織に蓄積し、ビタミン過剰症(hypervitaminosis)と呼ばれる中毒症状を起こす。\n脂溶性ビタミンには、ビタミンAやビタミンEなどがある。\n/*/\n水溶性ビタミン(water-soluble vitamin)とは、水に溶け、一般に血液などの体内の液性部分に分布するビタミンである。\n水溶性ビタミンの血清濃度が組織の飽和濃度を超えると、尿中に排泄される。\n水溶性ビタミンを過剰に摂取しても排泄されるため、一般的に毒性は低い。\n水溶性ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCなどがある。",
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                     "description": "栄養学において、無機質(mineral)とは、生体を構成する主要な元素、酸素・炭素・水素・窒素以外のものの総称である。\n無機質は、体内で合成できないため、食物として摂る必要がある。\n無機質の中で、栄養素として欠かせないことが確定しているものを必須ミネラルと呼ぶ。\n必須ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルに大別できる。\n/*/\n多量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が多い無機質のことである。\n多量ミネラルには、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなどがある。\n/*/\n微量ミネラルは、必須ミネラルのうち、必要な摂取量が少ない無機質のことである。\n微量ミネラルには、鉄・亜鉛・銅・ヨウ素などがある。\n/*/\nミネラルの主な働きは、よっつに整理できる。\nひとつ目は、骨や歯など硬組織を形成する働きである。\n硬組織の形成に関与するミネラルに、カルシウム・リン・マグネシウムなどがある。\nふたつ目は、蛋白質や脂質の成分となる働きである。\nふたつ目の働きに関与するミネラルに、リンや鉄などがある。\nみっつ目は、生体機能の調整をおこなう働きである。\n生体機能の調整とは、具体的には浸透圧の調整や酸塩基平衡、筋肉や神経などの刺激に関与するものである。\n生体機能の調整に関与するミネラルに、カルシウム・リン・カリウム・ナトリウム・塩素などがある。\nよっつ目は、酵素の補助因子やホルモンの成分となる働きである。\nよっつ目の働きに関与するミネラルに、マグネシウム・銅・亜鉛・マンガンなどがある。\n/*/\nミネラルもビタミンと同様に、摂取量の不足や過剰などによって、心身に悪影響を与える。",
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                         "title": "鉄",
                         "description": "鉄(iron)とは、元素記号Fe、原子番号26の元素である。\n栄養素として鉄は、人知類を含む多くの生命体の正常な生理機能にとって、必要不可欠な必須ミネラルである。\nたとえば、植物の光合成の働きは葉緑素によるものだが、この葉緑素の合成には鉄が必要である。\nまた、生体活動の源となるエネルギーを産生しているミトコンドリアが働くために最も大切なミネラルである。\n人知類の体内にある鉄は、その過半数がヘモグロビンに存在する。\nまた、ミオグロビンなどにも少量の鉄がある。\n/*/\nヘモグロビン(hemoglobin)とは、赤血球中に存在するヘム蛋白質である。\nグロビン(globin)という蛋白質に、ヘム鉄が結合したものがヘモグロビンである。\nヘモグロビンは、鉄原子に酸素を着脱することで、肺で受け取った酸素を、全身の細胞へ運搬する役割を担っている。\nまた、ヘモグロビンは弱酸としての性質によって、二酸化炭素の運搬にも重要な役割を果たす。\n鉄が不足すると、ヘモグロビンを合成できないため、赤血球自体が小さくなり、赤血球の数も減少する。\nヘモグロビンのグロビン各鎖は、それぞれ異なった遺伝子の支配を受けている。\nその遺伝子に変異が起こると、その支配下のグロビン各鎖に質的・量的異常をまねく。\nヘモグロビンは、血色素(blood pigment)とも呼ばれる。\n/*/\nミオグロビン(myoglobin)とは、筋肉組織に存在する蛋白質である。\nミオグロビンは、筋肉への酸素供給を助ける役割を担っている。\nそのため、筋肉中のミオグロビンが減ることで、筋力低下や疲労感といった症状が起こる。\nミオグロビンは、筋肉ヘモグロビン(muscle hemoglobin)とも呼ばれる。\n/*/\n栄養素として、食事由来の鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄が存在する。\nまた、鉄の栄養補助食品には、ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄が存在する。\n/*/\nヘム鉄(heme iron)とは、ポルフィリンに配意した鉄のことである。\nポルフィリン(porphyrin)とは、4個のピロールがメチル基によって結合した環状テトラピロール誘導体である。\nヘム鉄は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのタンパク質を構成し、それらの機能の中核を担っている。\n栄養素としてのヘム鉄は、主にヘモグロビンに由来し、赤身肉・魚・鶏肉などヘモグロビンを含む動物性食品にみられる。\nヘム鉄は専用の吸収経路があるため、胃腸にやさしく、通常、非ヘム鉄より吸収されやすい。\n/*/\n非ヘム鉄(non-heme iron)とは、レンズ豆やエンドウ豆などの植物性食品に含まれる鉄である。\n非ヘム鉄は、phの低い胃酸によって吸収されやすくなり、十二指腸を中心とした上部空腸から吸収される。\nphとは、溶液中の水素イオンの濃度を示す指数である。\npH7が中性を示し、ph7未満が酸性、ph7超過が塩基性となる。\n胃酸が出ていない場合や制酸剤で胃酸を中和した場合、腸管などに炎症がある場合、非ヘム鉄は吸収されにくくなる。\n鉄欠乏が重度になるほど、胃腸の粘膜の状態も悪くなっていることがほとんどであるため、そこに非ヘム鉄を摂取すると、腸から吸収されなかった鉄がさらに腸内環境を悪化させるおそれがある。\n非ヘム鉄の吸収率は、食品中のさまざまな成分によって大きく左右される。\nビタミンCや食肉の蛋白質は、非ヘム鉄の吸収を向上させる。\nタンニン・蓚酸・フィチン酸などは、非ヘム鉄の吸収を妨げる。\nタンニン(tannin)と蓚酸塩(oxalic acid)は、紅茶・緑茶・コーヒーなどに多く含まれている。\nフィチン酸(phytic acid)を含む食品は、米・麦などの穀類や大豆などである。\n非ヘム鉄の吸収経路は、亜鉛・カルシウム・銅などの吸収と競合する。\nそのため、牛乳とともに非ヘム鉄を摂取すると、牛乳に含まれるカルシウムによって、非ヘム鉄の吸収が妨げられる。\n非ヘム鉄は、無機鉄とも呼ばれる。\n/*/\nキレート鉄とは、非ヘム鉄をアミノ酸やクエン酸で挟み込んだ、天然には存在しない鉄である。\nキレート鉄は、アミノ酸の吸収経路から能動的に吸収される。\nそのため、吸収効率が非常に高い。\nヘム鉄と非ヘム鉄は、体内の鉄貯蔵量が多ければ、過剰摂取による毒性作用を防ぐため、吸収率が低下する。\nしかし、キレート鉄はアミノ酸の吸収経路から吸収されるため、吸収量の調整機構がない。\n鉄の過剰摂取は胃腸障害などを起こすため、キレート鉄を摂取する際は注意を要する。\nなお、キレート鉄を過剰摂取しなければ、胃腸への負担は少ない。\n/*/\n鉄の過剰症として、ヘモクロマトーシスが知られている。\nヘモクロマトーシス(hemochromatosis)とは、体内の鉄の蓄積が過剰になり、鉄が組織に沈着し、肝臓・膵臓・心臓・甲状腺で臓器障害を引き起こす疾患である。\nヘモクロマトーシスは、血清鉄も非常に高値を示す。\n皮下に鉄が沈着、皮膚の色が青銅色を呈し、糖尿病を併発するため、ヘモクロマトーシスは青銅色糖尿病(bronzed diabetes)やブロンズ糖尿病とも呼ばれる。\nまた、ヘモグロビンが血色素と呼ばれるため、ヘモクロマトーシスは血色素症とも呼ばれる。\nヘモクロマトーシスの治療には、鉄排泄促進薬の投与や瀉血で、過剰に蓄積された体内の鉄を除去する方法がある。\n瀉血(bloodletting、exsanguination)とは、治療目的で適切な量の血液を注射器などで取り除くことである。\n静脈を針などで刺す瀉血は、刺絡と呼ばれる。\n刺絡の絡は、静脈を意味する。\nヘモクロマトーシスは、遺伝性ヘモクロマトーシスと続発性ヘモクロマトーシスに分けられる。\n/*/\n遺伝性ヘモクロマトーシス(hereditary hemochromatosis)は、鉄代謝の遺伝子疾患が原因のヘモクロマトーシスである。\n遺伝性ヘモクロマトーシスは、変異した遺伝子によって、さらに細かく分類できる。\n遺伝性ヘモクロマトーシスは、原発性ヘモクロマトーシス(primary hemochromatosis)とも呼ばれる。\n/*/\n続発性ヘモクロマトーシス(secondary hemochromatosis)とは、鉄の吸収亢進や頻回の輸血、貧血の治療で投与された鉄の過剰摂取などに起因するヘモクロマトーシスである。\n/*/\n鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia)とは、鉄の欠乏によって生じる貧血である。\n鉄欠乏性貧血の原因は、ほとんどの場合、失血である。\n最も頻度の高い原因は、慢性の不顕性出血である。\nたとえば、消化性潰瘍や悪性腫瘍など、消化管からの出血が該当する。\n人知類のような月経のある一部の哺乳動物の場合、閉経前の女性は、月経による累積失血が鉄欠乏性貧血の一般的な原因である。\nこのほか、鉄摂取量の減少、鉄吸収の低下、鉄需要の増大などが鉄欠乏性貧血の原因となる。\n/*/\n貧血に至らない鉄欠乏であっても、さまざまな身体症状や精神症状が起こり得る。\n/*/\n鉄欠乏にみられる特異的な身体症状としては、爪の扁平化・脆弱化がある。\nとくに重度の鉄欠乏では、匙状爪となる。\n匙状爪(spoon nail)とは、爪甲が陥凹し、スプーンのように反り返ることである。\n/*/\n鉄欠乏にみられる特異的な精神症状としては、異食症がある。\n異食症(pica)とは、非栄養性物質を食べたいという異常な欲求を示す病態である。\nとくに異常なほど氷を食べる異食症を、氷食症(pagophagia)と呼ぶ。\n非栄養性物質の摂食によって食欲が満たされると、鉄摂取量のさらなる減少につながるため、注意が必要である。\nなお、民間療法や宗教儀式など文化的伝統での摂食は、異食症に含まない。\n/*/\n鉄欠乏が原因となる他の精神症状としては、むずむず脚症候群が挙げられる。\nむずむず脚症候群(restless legs syndrome)とは、下肢や上肢などを動かしたくなる、抗いがたい衝動が生じる感覚運動疾患である。\nむずむず脚症候群は、通常、上肢や下肢に皮膚の上を虫が這うようなむずむずする感覚が起こる。\n眠ろうとしても、むずむず脚症候群の異常知覚を緩和する目的でその部位を按摩したり、動かしたりせざるを得ないため、重度の不眠症状を呈することが多い。\n/*/\n鉄欠乏の診断には、血液を採取し、赤血球や血色素、血液中の成分などを検査する。\n鉄が欠乏している場合、まず血清フェリチン濃度が低下し、次に血清鉄が低下、その後ヘモグロビン濃度が低下する。\nフェリチン(feritin)とは、再利用可能な形で鉄を貯蔵するために必要な水溶性蛋白質である。\n体内で鉄が不足すると、フェリチンから減ってくる。\nそのため、血清フェリチン濃度は、生体に蓄積されている鉄の貯蔵量を推定する指標となる。\nただし、血清フェリチン濃度は、感染や炎症などで増加するため、鉄不足を反映しないこともある。\nそのため、鉄不足の診断には、平均赤血球容積も同時に確認する必要がある。\n平均赤血球容積(mean corpuscular volume)とは、ひとつの赤血球の平均的容積である。\nつまり、平均赤血球容積とは、赤血球の大きさの指標である。\n平均赤血球容積は、ヘマトクリット値と赤血球数から計算される。\nヘマトクリット値(hematocrit)とは、血液中に占める赤血球の容積の割合をパーセントで表したものである。\n平均赤血球容積は、葉酸やコバラミンの不足によっても上昇するため、鉄不足の参考にならないこともある。\nこのように検査数値は複数の要因で上下する。\nそのため、検査数値を適切に解釈するには、他の検索項目と照らし合わせ、なにが起きているかを推測しなければならない。",
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             "title": "水",
             "description": "水は、酸素と水素の化合物で、一般に栄養素には含まれないが、重要な物質である。\n成年の人知類の場合、水は体重の45パーセントが細胞内、体重の15パーセントが細胞間、体重の5パーセントが血液中に存在する。\n体内水分の10パーセントを失うと機能障害を生じ、20パーセントを失うと死を招く。\n摂取した水分は、小腸・大腸から吸収される。\n体内で代謝された水分は、腎臓から尿として、消化管から消化液として、皮膚から汗として排泄される。",
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         "title": "栄養素の生理",
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                 "title": "栄養感覚とは",
                 "description": "栄養感覚とは、栄養素の摂取に関係する総合的な感覚のことである。\n人知類の食欲は、単に空腹から発生するわけではなく、局所性栄養感覚と全身性栄養感覚が作用して発現している。\n局所性栄養感覚とは、視覚・味覚・触覚・嗅覚・聴覚などのことである。\n全身性栄養感覚とは、空腹感・満腹感・口渇感・嗜好などのことである。\n食欲旺盛で過食の場合や、食欲不振で低栄養の場合は、さまざまな要因を調整する必要がある。\nたとえば、食欲不振の原因は、運動不足・過労・不眠など生理的なものから、精神的な落ち込みや悩み事など心理的なものまでさまざまである。\nまた、傷病者や高齢者の場合、臓器の機能低下・機能異常、薬物の副作用も食欲不振の原因と考えられる。\n食欲不振による低栄養を防ぐためには、これらの原因を取り除く必要がある。",
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                 "title": "味覚",
                 "description": "味覚(sense of taste)とは、食物の物理的・化学的性状に対する感覚である。\n脊椎動物は、主に舌の味蕾中の味細胞で感受される。\n人知類の場合、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味が存在する。\n辛味・渋味・あぶら味などは、痛覚や触覚の一種と考えられている。\n/*/\n甘味とは、甘さに対する感覚である。\n甘味を感じる食品の成分は、蔗糖やアミノ酸などがある。\n/*/\n酸味とは、酸っぱさに対する感覚である。\n酸味を感じる食品の成分は、クエン酸やリンゴ酸などがある。\n/*/\n塩味とは、中性塩に対する感覚である。\n塩味を感じる代表的な食品は、食塩である。\n/*/\n苦味とは、苦さに対する感覚である。\n苦味を感じる食品は、ビール・チョコレート・コーヒーなどがある。\n/*/\n旨味とは、旨さに対する感覚である。\n酸味を感じる食品の成分は、グルタミン酸やイノシン酸などがある。",
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                 "title": "空腹感",
                 "description": "空腹感(hunger sensation)とは、固形の食物を食べたいという欲求の表れである。\n空腹感は、摂食中枢の興奮によって起こる。\n摂食中枢(feeding center)とは、脳の視床下部という部位の近くにある、食物の摂取を促すように働く中枢神経系である。\n空腹感は、飢餓収縮や血液中の遊離脂肪酸などが関与する。\n/*/\n飢餓収縮とは、胃が空になったときに起こる強い緊張性の周期的な収縮運動である。\n飢餓収縮の刺激が、胃に分布している迷走神経を通し、摂食中枢に伝えられることで空腹感を感じる。\n長期間断食し栄養状態が低下すると、胃の運動が鈍くなるため、胃の内容物がなくても空腹感は感じなくなる。\n/*/\n遊離脂肪酸とは、食後時間が経過し、低下した血糖値を補うため、分解・放出された体脂肪のことである。\n血液中の遊離脂肪酸の刺激によって、摂食中枢が興奮すると、空腹感を感じる。\n/*/\n冷気に触れて寒さを感じると、その刺激が摂食中枢に伝わり、食欲が増進する。\n逆に、夏場や発熱で体温が上昇すると、食欲は減退する。",
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             "title": "消化",
             "description": "消化(digestion、peptization)とは、消化管内に取り入れた食物の成分を吸収されやすい最小単位、あるいはそれに近い状態まで分解することである。\n消化の方法は、機械的消化・化学的消化・細菌学的消化に分類できる。\n/*/\n機械的消化とは、磨砕・攪拌・移動などの作用による消化のことである。\nたとえば人知類や猫知類などは、食品を咀嚼して細かく砕き、消化管の蠕動によって内容物を混合・攪拌・移動することで化学的消化を助ける。\n咀嚼(mastication、chewing)とは、食物を摂取してから下顎の運動と舌や唇によって、上の歯と下の歯の間に運ばれ、食物を噛み砕くまでにおこなわれる口腔内でおこなわれている生理的過程のことである。\n蠕動(peristalsis)とは、消化管などの管腔臓器で、縦走筋と輪状筋を協調して動かすことによって、その内容物を押し進める運動のことである。\n機械的消化は、理学的消化とも呼ばれる。\n/*/\n化学的消化とは、唾液・胃液・膵液などの消化液や小腸粘膜に存在する分解酵素による栄養素の化学反応のことである。\n化学的消化には、接触消化と膜消化に分けられる。\n化学的消化は、酵素的消化とも呼ばれる。\n/*/\n細菌学的消化とは、腸内細菌による腐敗や発酵のことである。\n細菌学的消化は、生物学的消化とも呼ばれる。\n/*/\n消化によって食物が分解されることで、食物がもつ種特異性や抗原性が取り除かれる。\nたとえば、人知類が牛肉を食べても人の筋肉が牛の筋肉と同じものにはならない。\n牛の蛋白質を牛特有のものではないアミノ酸やペプチドに分解して吸収し、体内亜で人の蛋白質に合成するからである。\n/*/\n消化器官には、口腔・胃・小腸・大腸などの臓器がある。",
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             "title": "吸収",
             "description": "栄養学において、吸収(absorption)とは、生体が外界から物質を取り込むことである。\n人知類や猫知類など多くの高等動物の場合、吸収とは、消化器官で分解された成分が消化管壁から体内に入ることである。\n栄養素が吸収される機構には、受動輸送と能動輸送がある。\n/*/\n受動輸送とは、浸透や拡散の現象によって、溶解成分の濃度が高いところから低いところへと膜を通過する機構である。\n/*/\n能動輸送とは、エネルギーを使い、濃度勾配に逆らって、溶解成分の濃度が低いところから高いところへ積極的に膜を通過する機構である。",
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             "title": "排泄",
             "description": "食物の成分は、消化・吸収され、残りは便として排泄される。\n便には、「水分」「消化・吸収されなかった食物の残渣」「胆汁・酵素・粘液など消化管の生成物」「消化管上皮細胞からの剥離成分」「カルシウムや鉄など消化器官に排泄された成分」「腸内細菌」が含まれる。\n便の量や排便回数は、食習慣や食事量に依存する。\n食物繊維の摂取量が増大すると便量が多くなる。",
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最終更新:2020年10月02日 22:51