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広大な宇宙を探訪する人類の船団、【オラクル】。

その船団を構成する一隻の宇宙船の中で、背の低い、少女のような見てくれの女と、モデルのようにすらっとした長躯の女が、
二人で隣り合って座っていた。

彼女らの視線の先には、様々な惑星へと飛び立つキャンプシップの発着場へのゲートがあり、【アークス】と呼ばれる現地調査員が行き来している。
隣り合っている女のうち、長躯の女もまた、彼ら好奇心に命を捧げる奇人集団の一員であった。

二人の間には、静かで、かといって気まずい訳でもない、妙な空気が流れていた。
なんとなしに眺めているゲートから出てくる者たちの人となりを想像したりしながら、何も喋らない時間が五分程続いた。


「新しい惑星が発見されたんだってさ」


やがて、【アークス】の文字があしらわれた調査員服(ネイバークォーツと呼ばれる種類の品であり、やけに露出度が高い)を着た、
長躯の女が口火を切った。
視線をあらぬ方へと向けて、今日に備えて短めにカットした自分の髪を弄びながら。

「新しい惑星なんて、しょっちゅう見つかってるじゃない」

いじけたような言い方に、長躯の女は「シルビア」と、相手の名を呼びながら、その肩に手を乗せた。
その少女のように幼い顔を覗き込みながら、困ったような笑みで言う。

「シルビア。そういうのじゃないんだ。今度のは、ただの新惑星じゃない。誰もまだ足を踏み入れたことのない―――」

「未踏査の惑星なら、一昨日の時点でまだ39,7180,689はある・・!人が生存できる環境の星に絞ったって、1,119も」

シルビアは、消え入るような声で続けた。

「貴方が・・・グェスが行くべき星は、まだそんなにあるんだよ?」

長躯の女―――グェスは、彼女の口から絞り出された、必死の言い訳ごと彼女を抱きしめた。
彼女の言いたい事はわかるし、彼女の気持ちだって、短くない時を連れ添ったグェスには理解できていた。
それでも、彼女の言うとおりにすることは、どうしてもできないのだ。

「知ってるよ。まだ誰も知らない自然環境や生物、美しい景観、私に見つけられるのを待っている」

シルビアの、今にも泣きそうな顔を抱いて、グェスは心の目を、これから向かおうとしている世界に向けた。

「でもね、そのどこにだってない場所が、あそこにはあるんだ。ここで、その名は言えないけど」

シルビアには、言われなくてもそれがなんなのか解った。
解らないはずがない。
常日頃からグェスが語っていた彼女の夢を、覚えていないはずがない。だから止めようとしているのに。

「私は、それを見つけるために生きてきたんだ」

その存在が恨めしくてしかたなかった。
大声で叫んで、彼女を困らせるだろうけど、彼女以外の誰かに、その役目を押し付けてやりたくなった。

なんでそんなものがあるんだろう。
幾星霜の彼方、遥か遠い過去の偉人、見知らぬクソッタレ野郎共のせいで。

「シルビア、私に行かせて欲しい。――――――【ナベリウス】に」

旧文明の遺産なんて、見つからなければよかったのに。

シルビアの喉まで出かかった言葉は、優しく頭を撫でるグェスの手によって押さえつけられてしまった。

「必ず見つけてくるよ、シルビア。私たち、人類の末路を。そして、それを乗り越えて、初めて人類はこの宇宙に足を立てられる」

「貴方の好きな歴史でしょ?繰り返してはいけない物を学ぶことって・・・ね?」

シルビアは、静かに身を震わせ、周囲からの奇異の視線など気にも留めず、二人は長い時間そのままでいた。
最終更新:2012年10月09日 02:49