ゴーン・・・ゴーン・・・
古びた町並みの中心地。その一角にそこだけ旧世界へタイムスリップしたかのような錆付いた鐘がある。今日も正確に正午の時間を知らせてくれたそれは、きっちり12回鳴らされたあと、余韻のような金属音を残して静止した。
にぎやかな音楽とともに、祭りの開催を知らせる鐘の音でもあった。黄色い完成の後に、吟遊詩人の様々な楽器や、歌い手のきれいな歌声、その周りで踊る町の人たち。今日は祭りだ。
路肩に無造作に置かれたテーブルには様々な料理や飲み物、それらを何の躊躇も無くほおばり、飲み干し、空にしていく。とにかくめでたいのだ。町始まって以来の盛大な祝い事なのだ。今日はどんどん飲み食いして腹を満たそうと俺は考えていた。
そこに一人の男が、料理の追加を俺の目の前に持ってきて話しかけて来た。
「しかし、あんちゃんのおかげだよ。あのグリズリーを一撃で倒すなんて、人間業じゃねーぜ?」
その言葉には、感心しながらもどこか不信感が漂うような感じがする。まあ、いつものとおりだ。俺が人間扱いされたのなんて《一度も》無いのだから・・・
「ああ、鍛えてるからな。普通の剣士や戦士よりは強いと思うぜ?」
それでも、なるべくその不信感をあおらないように振る舞い、どうにか納得してもらった。それに、鍛えているのは事実だ。俺の持つ体よりも大きいこの大剣を自在に扱うためには、それなりに鍛錬と修行を欠かしてはいけない。魔法よりもこっちのほうが俺の肌にあっているみたいだし、このまま修行を続けていけばきっと・・・
「なら、腕試しにちょうどいい情報があるんだが。聞くかい?」
男のニッコリとした笑いに、俺は何の警戒心も持たずに首を縦に振ってしまった。思えば、俺の物語はここから幕を開けたのかも知れない。俺の運命と、一人の少女の、悲しい物語の・・・
さっきの鐘の音の余韻が、そのときだけ耳に木霊する気がした。始まりを伝える鐘の音の音が・・・
~MATETHU-マテツ-・始まりの鐘の音~
最終更新:2013年01月25日 17:28