再編したやつ(立川基地防衛戦編)

8章5話より

 

同じ頃――ゾイド軍団の奇襲攻撃を受けた立川基地。

ヴェロキラプトル型ゾイドのレブラプターが、グランドをのっしのっしと歩き回る。
顔を出せば確実に撃たれるため、斉藤ら自衛隊レンジャーや尾形ら防衛隊歩兵部隊は倉庫などに隠れ、
建物の影から影に移動するように、ゾイドたちの動きを監視し、メーサーライフルなどで応戦する。
……とはいえ、余り効果的なダメージを与えられてはいない。

ディスヴェリオンの襲撃を受けた際も苦戦したが、あの時は途中でガンバインらオーディアンが参戦した。
しかし今回はオーディアンは都内の激戦地に散開し、基地を支援出来るオートロンは皆無なのだ。

「畜生め……どうしようもないのかよ―― うぉっ!?」

斉藤が吐き捨てるように言った次の瞬間――隠れていた倉庫の屋根が爆発と共に吹き飛んだ。
バラバラと降ってくる瓦礫を交わしながら見上げると、レブラプターの感情を感じさせない顔が見えた。
これはまずい――斉藤の顔が引きつった直後だった。


何の前触れもなく――レブラプターの頭部が爆発し、頭脳を失ったゾイドは沈黙した。


「な……何なんだ!?」
「おーい、サイトーさーん」

聞き覚えのある声と共に、数十m先の倉庫の影から、ジーラの青黒い顔と赤い髪が覗いた。
どうやらレブラプターの頭部を粉砕したのは、ゴジラの能力を持つジーラが放ったプラズマ弾らしい。
周囲を伺いながら、斉藤は駆け寄ってくるジーラに歩いて行く。
ジーラの隣には銃器を持つ少女が1人……習志野だ。
女子高生のような見た目にも関わらず、手元のM4カービン突撃銃に加え、背中には全重量13.9kgもある110mm個人携帯対戦車弾(陸自の対戦車火器)を涼しい顔で背負っている。

習志野だけかと思えば、後ろに目を凝らすと、その奥の倉庫の影にも、何人かの“陸自娘”の姿が見える。
眼鏡でセーラー服の少女(鯖江)が、後ろに従うごつい装備を身に着けた数名の少女達(戦車娘等)に手を振って何か指示しているのがチラりと見えた。

「あっ……キミは確か……」
「良かった良かった、この部隊は無事ッスね、無理せんで前線下げちゃってください」
突き出した右手の親指を後ろに振るジーラに、斎藤は逡巡の色を見せた。
「しかし、ここは我々の本拠地……」
「分かってるッスよ、でも生きてなんぼでしょ、最前線はおいらたちが引き受けたから」

にこ、と幼さの残る顔に人懐っこい笑みを浮かべたジーラに、斉藤は複雑な表情を浮かべて沈黙した。
自分たちの無力さと、数日前に出遭った彼らに、立川基地の防衛を任せることの申し訳なさが現れている。

「……済まない、恥ずかしい限りだ、こんなにも俺たちが無力だとは思わなかった」
ジーラは励ますように斎藤の肩をポンポン叩いた。
「悩まない悩まない、あんなの誰も想定できないッスよ……その代わり、後片付けたのんます♪
飛音、ここは任せたぞ、斉藤1尉は習志野レンジャーだ、同志だぜ!」
習志野は愛用の自動小銃の遊底を引いて、薬室に弾丸の1発目を送り込んだ。
「よし引き受けた……斎藤1尉、第1空挺団のモットーは?」
それを聞いて斎藤は俄かに元気と勇気が湧いて来るのを感じた。
「『精鋭無比』!」
「よし、その意気だ」
「そんじゃ、行ってきまーす!」


斎藤や習志野を後に残し、ジーラは倉庫脇の路地を、グランドに向かって駆けて行った。
上から足音が聞こえて斉藤が見上げると、金色の長い尻尾が屋根の骨組みを走り抜けた――キトラだ。
その周囲には、背中にローターを“生やした”迷彩服の人影が2つ、飛んでいる。

「さぁーて、いっちょぶちかますぜ、キトラはそっちのグループな!
おいコラ其処のガラクタ野郎共、こっからはおいらが相手だぜ、どっからでもかかって――ぬぉあ!?」

ジーラが“名乗り”を上げ切る前に――大小の敵性ゾイドたちが先にジーラにぶちかました。
ヒーローの前口上など、この機械獣たちには関係ないということだろう、残念。
というかいつもセリフの途中で撃たれるなコイツ。

しかしその爆炎の中から、青黒い影が何事もなかったかのように飛び出す。

「上等だぜ――せっかちなてめぇらには、こいつを食らわせてやるよ!!」

ジーラの背びれが青白いスパークを放ち、白熱したプラズマ球がお手玉のようにジーラの胸元に生起する。
そしてそのプラズマ球を――ノックでもするかのようにジーラは次々と撃ち出した!
プラズマ球はちょうどアンダースローのピッチャーが投げた球のように、ゾイドたちの胸や脚に命中する。

衝撃を受けてよろめいたゾイドたちに、今度は上空から別のプラズマ球が雨のように降り注いだ。
装甲や動力パイプを次々に貫通され、すぐに数機のゾイドが動けなくなる。
能力をフルで開放したジーラは、こうやって大小多数のプラズマ球を同時にコントロールできるのだ。

「いっちょあがり――かな?」

手応えを感じたジーラがそう言った直後、100mほど先で雷電の雨のような光が煌いた。
怪獣キングギドラの能力を持つキトラの“重力波雷撃”である。
重力子を含む稲妻は普通の雷撃とはまるで重さが違い、金属の分子配列を破壊することも可能なのだ。
直撃を受けたゾイドの装甲や武装が、まるでガラス細工のように粉砕されて行く。
小銃よりも幾分重い、機関砲のような腹に応える銃声も響いた……恐らく、攻撃ヘリの能力を持つ木更津若菜だろう。

「おぉ、やってるやってるw」


----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

8章6話より


そして“自ら戦場と化した”立川基地。


“武器姉妹”の木更津若菜と木更津柚子が、背中に展開したローターを駆使して低空飛行している。
若菜の体の右から突き出しているのは、ベースメカが持つM197三砲身ガトリング砲を等身大に小型化したような機関砲だ。
柚子は元が観測ヘリコプターと言う事情で機関砲は持っていないが、改修により多連装ロケット弾発射機を、膝に固定したスタブウィングに装着されている。
ゾイドたちの砲撃で立ち上る黒煙の柱を“盾”に、小柄な少女たちがジグザグ飛行を繰り返しながら、
応戦するレブラプターやガンスナイパーに弾丸やロケット弾の雨を降らせている。

もちろん――艦娘ほどではないにせよ、残弾に限りがあるため、弾幕を張れるほどには多くない。
1秒間に10発強を発射する機関砲である……手持ちの750発くらいはすぐに使い切ってしまうのだ。同じ理由で、AH-1Sの最大の強みである対戦車誘導弾の使用は今のところ控えている。
そしてその程度の銃撃では、ゾイドを撃破出来るほどのダメージを与えることは難しい。
そしてロケット弾も無誘導弾なのですばしっこいゾイドへの命中は望めない。

しかし彼女たちには重大な役目があるのだ。

空を不規則に飛び回る小さな“敵”を追って、3機のガンスナイパーが倉庫群の“路地”に入った直後。
死角になった左右からメーサービームやロケットランチャー、砲弾の集中砲火を受ける。

斉藤と習志野が率いるレンジャー部隊に加えて、更に“戦車娘”数人が待ち構えていたのだ。
「命中!続いて撃て!」
武器娘の90式戦車の号令一下、戦車娘達の主砲が再び火を噴く。
十数発のロケット弾や砲弾の直撃を受け、先頭のガンスナイパーが火ダルマと化す。

それを見た殿のガンスナイパーが後退してグランドに飛び出すが――上空から雷電の束が降り注いだ。
こっちにはキトラが待ち構えていた……挟み撃ちを受ける形になり、また1機のガンスナイパーが沈黙。
間にいた最後の1機は、更に別の路地に駆け込むが。

倉庫の屋根から2つの大きな影が飛び降り、赤熱するナイフをガンスナイパーの動力パイプに突き立てた。
ザラクと嶽羅である……持っているヒートナイフは竜王チームの白兵戦用装備だ。
武器の射角外に当たる背中に登られては、戦車を翻弄する軽量高機動ゾイドも無力であった。
メーサータンクなどが受けた非情な“仕打ち”を、今度は彼らが受けたことになる。

「――よぉっしゃぁあぁぁ!!」

ガッツポーズをする斉藤と習志野、その上空で若菜とキトラがハイタッチを交わした。

もちろん気を抜いている暇はない。
応戦しやすい小型ゾイドは確実に数を減らしているが、中型ゾイドのレブラプターが残っている。
“主力”であるジェノザウラーはパドルが相手しているだろうが。

「まだだ、総員気を抜くな、今度はでっかい方だぞ!」
習志野が空の弾倉を引き抜いて予備弾倉を差し込みながら、
「聞いたか若菜、柚子、今度はあのでかいメカ恐竜の誘導だ!」
「オーケー、任せ―― っ!?」


その時――全く想定していなかった角度から銃声が聞こえ、若菜のローターに火花が飛んだ。

「――うわっ!?」
「若菜っ!?」
「お姉ちゃん!?」

ローターを完全に破壊されはしなかったが、揚力が落ちて高度が下がる若菜の正面に、1機のレブラプター。
死角からの銃撃に気を取られ、まだ若菜の迎撃体勢は整っていない。

若菜には、目の前のレブラプターの動きがスローモーションのように映った。

「ウッソ……やば――」

顔面から血の気が引いた若菜――しかしその視界に、突然大きな金色の影が割り込んだ……キトラだ。
そしてその直後、ドスドスドス、とナイフを刺すような音が数回響いた――金色の幼い顔が明らかに歪む。
それが何を意味するのか悟った若菜の顔も引きつった。

地上にいたジーラは、レブラプターのバルカン砲が、キトラの背中を捉えるのを見た。
金色の背中に赤い飛沫がパッと飛ぶのが、地上からもハッキリと見える。


「――キトラ!!」

キトラが苦悶の表情で呻きながら体勢を崩す。
一斉射したレブラプターは、金色のヒューマノイドの割り込みに、一瞬驚いたように射撃を止めたが、すぐに追い打ちをかけようと照準を付け直し…

1発の銃弾がレブラプターの頭部を掠めた。
このレブラプターにとって幸運な事に、頭を少し動かしたおかげで直撃を免れたのだが、レブラプターの関心はこの銃弾の持主に向けられた。
もし頭部に浴びていれば、システムの一部が破壊され、脳をやられた人間のように行動に支障を来したかもしれなかった。

しかしこのレブラプターは、1発目が外れた幸運を最大限に活用するべきであった。即ち、離脱するべきであった。

弾道計算で発射元が数百メートル先の車庫の上からだと特定した瞬間、レブラプターの左目に、出浦が放ったTac-50対物ライフルの銃弾が食い込み、このレブラプターの視覚センサーの半分を使い物にならなくした。
左目がこの銃弾による衝撃を吸収してくれたおかげで、頭部内のシステムは事無きを得たのがせめてもの幸いだった。
おかげで不利を悟る時間を貰えたレブラプターは、3発目による不幸が来る前に向きを変え、若菜とキトラは命拾いする事となった。

「追います!」

柚子が左目を失ったレブラプターを追おうとしたが、出浦の声が止めた。

「待ってオメガ!あなたの役割を忘れちゃダメよ!」
「あ…すみません!」
逃げるレブラプターを目で追いながら、出浦は悔しそうに舌打ちした。
「…ちっ、逃げられたか…」

しかしもうここは危険だ。出浦は狙撃銃を抱えて狙撃ポイントを急いで離れて行った。

一方地上では…

「負傷者発生!救護班を願います!」
無線で救護班を呼ぶ部下の傍らで、
「――畜生、何てこった! ……おい、さっきの銃弾はどこから飛んできた!?」

斉藤の叫び声と同時に、数mほど先の路地から軽機動車が1台、飛び出してきた。
運転席に誰も乗っていないのに、軽機動車はそのまま走り去ろうとする……荷台には銃器が光る。
そしてその挙動に――斉藤は見覚えがあった。
最初に基地が襲撃されたあの日――自分の命を危機に晒した、因縁の“敵”。

「 あ の 野 郎 っ !!! 」

思わず“キレた”斉藤の表情が鬼のように豹変し、目が血走る……隣の習志野が一瞬、引くほどに。


----------------------------------------------------------------------------------------------

再び立川基地。

無人の軽機動車が、倉庫の間の路地をジグザグに縫うように走っている。
1度裏門の前に出てきたが、そこには防衛隊員らがバリケードを作って待ち構えていたため、
Uターンして、レブラプターが「牛耳っている」グランドの方に再び飛び出してきた。

レブラプターは無人の軽機動車を攻撃しない……どういう関係なのか分かろうというものだ。

「――いい加減に観念しやがれロボット野郎、てめぇの正体はもう分かってんだよ!!」

そんな軽機動車に向かって、2台の偵察用オートバイが反対側から飛び出てきた。
1台目には斉藤がまたがり、その後ろには陸自娘の1人である出浦信がまたがっている。
不規則に走る2台のバイクに進路を塞がれ、無人の軽機動車はドリフトしかかりながら急カーブを切るが、
その目前に上空から木更津4姉妹の末っ子、柚子のロケット弾が撃ち込まれ、再び逆方向にカーブを切る。

「――に、逃がしません!」

レブラプターが弾幕を張るため簡単には近付けないが――若菜を“狙撃”した敵を逃がすわけにはいかない。
しかもその“横槍”の所為で、貴重な戦力の1つを失いかけたのである。

「ねぇ斉藤1尉――あれとは知り合い?」
「ああ、変形するロボット野郎だよ……この前基地にケンカを売ってきた連中の1人だ。
だいいち、無人で走る軽機動車なんてこの基地には配備していねぇ……絶対逃がすんじゃないぞ!」
額に青筋を立てて、斉藤はバイクのスロットルを握り締める。
その様子を横目で見ながら、出浦は仲間から失敬してきた9mm機関拳銃の安全装置を解除した。
「かなりご立腹ね。いいわよ、世界の果てまで追いかけてあげるわ」
言葉は軽いが、眼にはプロフェッショナルの色が宿っていた。


斉藤を“本気”にさせた――“異世界の同志”キトラは、防衛隊の衛生兵の応急処置を受けていた。
生半可な銃弾では大した傷も付かないキトラの頑丈なウロコを貫通して、
レブラプターのバルカン砲の小瓶のような弾丸が、金色の背中に6発は深々と食い込み、血に染めている。
数十発が撃ち込まれていたが、被弾角度が浅かった弾丸はウロコを破壊できなかったようだ。
心臓を貫かれなかったり、背骨を砕かれなかったのが不幸中の幸いだが――それでも重傷に違いはない。
まぁこれが普通の人間なら、1~2発で確実に体が引き裂かれていただろうが。

弾丸の摘出は先ほど終わったが……中々血が止まらない。
衛生兵達は焦りの表情を浮かべながら治療に悪戦苦闘している。

「どうだ?」
「何とかやっていますが、我々と体つきがまるで違います!」

“宇宙怪獣”の遺伝子を持つキトラの血管が普通の人間の位置とは違うのに加えて、
その爆発的な身体能力をカバーするために、血液がかなりの圧力と速度で体内を循環しているためだ。
おまけに衛生兵もこんな“金色の強化人間”の銃創を治療することなど初めてだろう。
キトラは荒い息をしつつうつ伏せで痛みと貧血に耐えている……この“戦地”では麻酔をかける余裕もない。
その横では若菜が不安そうな表情で、“命の恩人”の治療を見守っている。

「――んなろぅ、往生際の悪いやつだぜ!!」

出浦の機関拳銃弾を浴びながら更に急カーブを切る“敵”の目の前に、今度は背ビレを輝かせたジーラが飛び出した。
足元に着弾するプラズマ弾に急ブレーキをかけた直後――その隣に斉藤が追いつき、空の荷台に手をかけた。
荷台の上に設置された機関銃の射角では、荷台のフェンスを撃てないことを斉藤は熟知している。
敵はジグザグ走行で振りほどこうとするが、斉藤はバイクから体が離れてもなお、死に物狂いで食らい付く。

「 離 す か ぁ あ ぁ !!! 」

痺れを切らしたか――ついに軽機動車は出浦や柚子の目の前で変形を始めた。
執念でしがみつく斉藤に、タイヤの下から引き出した腕を引っ掛け、その足を無造作に掴んで放り投げる。
斉藤の体が出浦の上を越えて10m以上も宙を舞い、倉庫の横に並べた補給資材の中に叩きつけられた。

「ぐぉっ――かはっ」
「斉藤1尉!!」

激しい衝撃を受けて倒れ込む斉藤に、変形を終えたディスヴェリオンの斥候は金属的な叫び声を上げて、
ケリをつけるように、もう片方の腕に仕込んだ3連装の機関銃の銃口を向ける……あの時のように。


だが斉藤は銃口を向けられながらもにやりと笑った……その指先に、黄色い“ピン”がキラリと光る。


斉藤の薄笑いの意味を悟ったか、歯軋りのような音を敵が立てたその直後。
その胸下辺りで爆発が起こり、敵は“体の破片”を撒き散らして、仰け反るようにグランドに倒れ込んだ。

「へえ……あんな僅かな隙に…」

出浦は意外そうに両眉を上げたが、すぐニンマリとする。「やっぱり勝ったと思った瞬間が、一番の隙よね」

そう――斉藤は敵に取り付いた際、安全ピンを抜いた手榴弾を胸下の隙間に捻じ込んでいたのである。
ポケットに忍ばせていたものを、相手が変形したほんの1~2秒の隙に。
敵の胴体そのもので手元を隠していたため、相手も異物に気付いた時は既に手遅れだった。

「げほっげほっ……へっ、ざまぁみやがれロボット野郎」

レブラプターが金属的な咆哮を上げるが、横から柚子のロケット弾とジーラのプラズマ弾が襲い掛かる。
更にジーラは柚子に手を伸ばす。
「柚子!」
「はい!」
柚子もジーラに手を伸ばし、その手を掴んだ。
「せーの!」
「えーい!」
ジーラと柚子の掛け声を合図に、引っ張り上げられるその勢いで、ジーラは1機のレブラプターの背中に飛び乗った。
こっちはこっちで“相棒”を撃たれた怒りで、赤い瞳が淡い紫色の光を帯びている……“本気”の証だ。
既にその手にはスミレ色に変色したプラズマの奔流が湧いている。

「クソッタレが……てめぇらにも背中に大穴開けてやんよ!!」

2人がレブラプターを引き付けている間に、出浦が機関拳銃を周囲に油断無く向けて警戒しながら斉藤に駆け寄る。
その背後からも2人……元いた世界で出浦とチームを組んだ事のある陸自娘、松本亜衣璃と豊川かるらだ。
松本は滅多に表情を動かさないが、今回はかなり心配そうにしている。

出浦がまだ補給資材の山に埋もれている斎藤の前で片膝を突いた。

「……大丈夫? ――あなた、特戦群に向いてるかもね」
後ろで松本がぼそりと、「ここでもスカウトするの…?」と呟いた。
斎藤はまだ痛みに顔をしかめながら補給資材を掻き分けて立ち上がる。
「特戦群ねぇ……まぁ考えとくよ」
「あら、フラれちゃったかしら?」

豊川も斎藤の体を気遣う。
「ご無事ですか斉藤1尉……随分無茶をされましたね」
「……性分でね、長生きは出来んかも知れんな」

斉藤は自虐的に呟きながらも――しかしその表情に後悔の色はなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年10月18日 01:13