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振り向いて見上げると、市街地からビーチに戻って来たらしい1機のハインドが一瞬ふらついた。
その時大尉は、負傷者を運んで行ったトラックとBTR-60が見当たらない事に気付き、ビーチの防衛と民間人の避難を指揮していた少佐に声をかけた。
「〇〇少佐。〇〇小隊隊長の〇〇大尉です。負傷した私の部下を後送していったトラックと装甲車が見当たらないのですが」
ハインドが近くをフライパスする数秒間、少佐は大尉を見つめていたが、やがて溜息を吐き、重苦しい口調で言った。
「実は少し前に救援要請があった。敵に包囲されたらしい。今通過していったハインドを救援に送ったのだが・・・間に合わなかったようだ」
大尉はハインドがふらついた意味を悟り、顔から血の気がサッと引いた。
恐らくパイロットは、眼下で繰り広げられた地獄を目撃したのだろう。その光景が目に焼き付き、あまりの凄惨さに精神が消耗してしまったに違いない。
少佐と大尉は、そのハインドが苦労して着陸するのを見た。操縦手は歩兵2人に助けられてハインドから下りたが、その後も支えて貰わないといけないようだった。
銃手は自力でコクピットを降りてきたが、もはや意志の力だけで立っているように見えた。
遠目からだが、2人とも相当参っているようだ。
その2人と入れ替わりに別の2人のパイロットがハインドを引き継ぐと、間も無くローターの回転数を上げて飛び立って行った。