私は猫。
名前は、ユキと呼ばれてる。
マスターは、よくキョンと呼ばれている高校生。
この家は、この間まで別の猫がいた匂いがする。
でも気にしない。
もういないから。
マスターは私を可愛がる。
でもそれは猫として。
私はマスターが好き。
それはマスターとしてではなくて、もっと特別な意味で。
私は夜寝る時、マスターのベッドで眠る。
いつも隣で。
でもマスターは欲情したりしない。
私が猫だから。
明日マスターが目を覚ましたとき、私が人になっていたら、マスターは喜ぶかもしれない。
ジリリリリリリリ…
いつもの同じ時刻に音を鳴らす装置が発動した。
でもマスターは起きない。
いつも起こすのは私。
いつもは耳たぶを少しだけかむ。
でも今日は違う。
腕があるから。
口があるから。
「マスター」
「……」
起きない。
いつものこと。
でも気になる。
聞こえている?
「マスター」
先程より少し声量を増やしてみた。
「……んん?うわっ!!」
起きた。
「ユ、ユキ、お前、生きてたのか!?」
何だろうか。
私は死んでいない。
「あの時ハルヒに付き合ってるのがバレて…」
ハルヒとは何だろうか。
恋人だろうか。
でも気にしない。
マスターは私を捨てたりしない。
「ユキ…」
!!
マスターが、私の胸に。
何故、泣いているのだろう。
「何故泣いてるの?」
聴いてみた。一番的確な気がするから。
「お前が戻ってきてくれて嬉しいからだ」
喜んでいるようだ。
しかしどこにも行っていないのに戻ってきたと言われている。
「どこかにいってた?」
また聴いてみた。一番的確な気がするから。
「覚えてないのか?」
私の記憶に不明点はなく、現在は間違えなく20XX年4月20日平日の午前7時15分。
どこにもいっていない。
全て覚えている。
「私の記憶に不明点はない」
私がそう伝えるとマスターは笑った。
その後出発時間と告げたらマスターは慌てて家から出て行った。
私は猫に戻って食料の確保にキッチンへ向かった。
マスターのいつも眠っているベッドに私は眠っていた。
しかし、階段を上る早い足音に目を覚ました。
足音の分析。
体重、接近速度からして、マスターの可能性93%。
「ユキ」
あたり。
しかしマスターは何かを探すように見回している。
何を探しているのだろう。
人形態になって訊いてみる。
「何を捜してる?」
「わっ!」
驚いたようだ。
まるで何かが突然現れたように。
「お前…ユキか?」
そう。
「猫に、なってたのか?」
そう。
「いつからだ?」
ずっと。
「……」
……
「まず、服、着ような」
最終更新:2011年01月04日 22:59