あと少しで学祭が終わるという頃、皆ますます盛り上がりを見せていた
3-Aも例外ではなく、毎年一度きりのこのお祭りを存分に楽しんでいる
そんな中、楓はその場を離れて世界樹の根元に座っていた
「楓。こんな所でどうしたんだ?」
木の下で休んでいる所を真名に話しかけられた
「ん、いや…ちょっと」
今はあまり話したくない気分だった
誰にだってそんな気分になる時はある
だが、真名は気にしないとでもいうように隣に座った
「……寂しいのか?」
「…なぜ、そう思うのでござるか?」
「顔に出てる」
真名だって辛いはずなのにどんな時もそれは表に出さない
それはそのまま弱さに繋がるから
裏の世界はそれほど危険だから
「分かっている。分かっているでござる…けど」
「お前のソレは今、世界中で起こっている事となんら変わらない。そして私のもな…」
「こうゆう時を過ごしていると忘れそうになるでござるよ」
「ああ」
拙者の里にある日、悪魔が来た
当然対処法など分かるはずもなく…一晩で里は無くなった
父上も…母上も…皆、拙者を残してこの世を去っていってしまった
運よく蔵の中にいた拙者だけが悪魔に気づかれる事なく助かった
「泣くな。お前にそんな顔は似合わないぞ」
気がつくと頬を涙が伝っていた
真名はその涙をやさしく拭きとると拙者の頭を自分の胸に抱き寄せた
「今は私がいる。楓は一人じゃない」
なぜだかその気持ちが嬉しくて
また涙が流れてくる
しばらく真名の胸を借りた後
真名が大丈夫か?と聞いてきたが
「もう少し…このままがいいでござる」
と言った
今はこの温もりを感じたかったから
ただ、誰かに傍にいて支えて貰いたかったから―――
end
最終更新:2007年04月10日 04:10