歴史の好きな生徒からすれば今は楽しい時間になるのだろうが、ここは女子中。
歴史に興味のある女子などそうそういるはずもなかった。目の前にいる彼女を除いては……。
少し姿勢を前にしながら耳をかたむけている彼女を穴が開くほど見つめ自分で分かるほどのため息をつく、一度意識してしまうとなかなか頭から離れない。
そういえば今日は髪をすくのを怠ったのだろうか、少し乱れている。
とかしてあげたい。毎朝二人で鏡の前に立って、とかしあいたい。

「おはよう、楓」
「ん……おはよう」
「そう言いながら布団に潜るな。こっちへ来い」
「まだ余裕はござろう」
「こんなに髪を乱して何を言っている。整えるのに時間が掛かるだろ」
「そういう真名殿も……。どれ、拙者が先にしてあげるでござるよ」
「そうか? なら頼もう」
「―――真名殿の髪はいつ触ってもサラサラでござるな」
「特に気を使ってるつもりは無いんだがな」
「こんなに長いのに付け根まで清潔でござるな」
「っ……! どこを触っている」
「首筋がどうかしたんでござるか? それにしても、寝起きなのに汗ひとつ掻いていない。舐めても全然しょっぱくないでござる」
「……や、うなじ舐めないでぇ」
「ほんとに真名殿はカワイイでござるな」

授業中にとんでもない事を考えてしまっている。体温は上昇し集中力も低下している。
いくら必要の無いことだとしても少なくとも今はそんなことをする時間ではない。
気を落ち着かせるために長く息を吐き目をつぶる。しかし瞼の裏にはいつか見せた彼女の笑顔が鮮明に浮かんできてしまった。
結局、龍宮はそのまま悶々としながら本日最後の授業を終えた。

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最終更新:2007年04月10日 04:33