同じ顔の姉妹を、長瀬と龍宮は手分けして着付けていく。
薄い桃色の浴衣が、幼さを強調していた。
「馬子にも衣装だな」
龍宮は最後の仕上げに風香の帯をぎゅっと引くと、風香の口から おかしな声が漏れる。
そんな光景を目の当たりにし、史伽は長瀬に恐る恐る視線を向けた。
「真名はひどいでござるな~」
その言葉を聴いた史伽は表情を緩めた。
しかし長瀬の手によって締められた帯に、風香同様 おかしな声を上げるのだった。
着付けが終わった双子は、晴れ姿を見せるために部屋を飛び出す。
今日は夏祭り。
祭り騒ぎの好きな3-Aが、じっとしている訳がない。
部屋に残った長瀬が「拙者も着替えるでござる」と言いながら服を下ろし始める。
同じ部屋に龍宮もいたが、気にしていないようだった。
しかし龍宮は違う。
目の前で脱ぎ始めた長瀬に、一瞬顔が強張る。
(……見てるのは・・・・・悪いよな)
そうは思うものの、目が離せない。
体育時の着替えでも見慣れているはずなのに、鼓動が早くなっていく気がしていた。
そんな龍宮の視線を感じたのか、下着姿の長瀬が近づいていく。
「真名、着替えさせて欲しいでござる」
そう言いながら、自分の浴衣を龍宮に投げる。
龍宮の視線が紺色に変わり、彼女の頭に疑問が浮かぶ。
(なぜ私が、楓を着付けなければならない?)
家庭の環境上、龍宮も長瀬も和服に違和感を覚えない。
動きづらいとも思わないし、着替えづらいとも思わない。
龍宮は疑問を直接長瀬に投げつけると、
「風香ばかりずるいでござる」
と幼い子供のように駄々をこね始めた。
それきり両手を広げ、長瀬は動かない。
外見に似合わない我侭に、龍宮はくすりと笑う。
恋人の嫉妬が 可愛くてしかたない。
祭りを一緒にまわれない せめてもの罪滅ぼしに、龍宮は長瀬の着付けを始めるのだった。
楓の“浴衣を着せてくれ”という願いを、すんなり受け入れてやる。
普段の私なら文句の一つも言うが、祭りを一緒に回れない罪滅ぼしも含んでいるから何も言わない。
言った当人が一番驚いているのか、私の返答に きょとんとしていた。
そんな楓を立たせ、私はさっそく着付けにかかる。
(・・・・・風香の方がよっぽど マシだな)
“浴衣を着せろ”というのは“徹底的に何もやらない”という意味だったらしい。
楓の肩に浴衣をかけ 袖を通すように促すが、動いてくれない。
動きすぎの風香にも困ったが、まったく動かないのは もっと困るものだな。
仕方がなく楓の片腕を軽く曲げ 袖を通した。
反対の腕も同じように袖を通すと、肌と布が擦れるのが くすぐったいのだろうか。
微かに身体が揺れる。
正面に回り 裾を揃えるために腰付近に手をまわす。
わざとではないが、ショーツとサラシの間の素肌に指が掠める。
女らしい肉という肉がついていなく、それといって筋肉質というほどでもない。
均等の取れた腹筋。
着付けよりもそちらに意識が行ってしまい、思わずその脇腹に触れた。
下から上に向けてゆっくりと撫でる。
珠のような肌とは こういうことを言うのだろう。
手がぴたりとくっついて、離れることを名残惜しむ。
そのまま自分の欲望のままに 夢中で弄った。
「あっ……」
小さく漏れる楓の溜息混じりの声に、ようやく私は我に戻った。
白い肌を 朱く染めにかかりそうになる。
目的を忘れるという失態に、大きな溜息をついた。
「丈はこの位で平気か?」
視線を上に向け、楓に訪ねる。
楓は何も言わず、軽く頷いた。
了承を得て 先に進もうと思うと、楓から下帯を渡される。
浴衣には本来、下帯などいらない。
近年では着付けをする時の補助として使うようだが、着慣れた者が使うのは少ないだろう。
その証拠に、楓が史伽を着付けた時にも使っていなかった。
「何かあった時に 着崩れるのはまずいでござるから」
確かにこいつらしいと言えば、こいつらしい。
自分もそうするかもしれない、そう思い 受け入れてやる。
帯よりもずっと細い下帯を巻くと、私によって弄ばれた肌が震えた。
その理由はなんとなく感じていたが、気にしないで目線を合わせるように目の前に立つ。
普段から開かれない瞳の端が、うっすらと潤んでいる。
そこに軽く口付けを落としてやると、小さな吐息が漏れた。
身八つ口から手を入れ、御端折りを作る。
そのまま手を後ろに持って行き、後ろの御端折りも整える。
必要以上に肌に触れていることに 楓が睨んできた。
「着せろと言ったのはお前だ。
これくらい 我慢しろ」
サラシの上から胸を玩ぶと、耐えられなくなったのだろうか。
楓が私の首に腕を回し、抱き寄せてくる。
「立っていることも出来ないのか?
風香ですらできたぞ」
嫌味を言うが、もはや届いていないようだった。
楓の口から漏れる息が熱い。
私の耳元にかかり、またしてもその気になってしまいそうになる。
しかし言いわたされたのは“着付け”だ。
“気持ちよくさせてくれ”とは言われていない。
私は軽く微笑むと、無理やり楓を引き離す。
せめてもの情けで箪笥の端に手をつかせ、背後にまわりこんだ。
帯は自由にしていいと言われたので、好きなように結ぶ。
楓がそれを確認すると、もう一度やり直すことになった。
「これは既婚者の結び方でござるよ!」
もちろん分かっていた。
浴衣用の短い帯で無理やり締めたのだ。
お前は私の嫁だろ? と説いたら、顔を赤く染めた楓に頬を叩かれる。
「頬が痛い」とか「好きにして良いと言った」とかほざきながら、風香とお揃いに結び直す。
少し悪く思ったのか、楓が私の頬の赤くなった所に手を当ててくれた。
冷たくて気持ちが良い。
任務はたいした時間がかからなかった。
罪滅ぼしの着付けだったが、ふと思う。
風香の着付けで それはチャラになっていたのではないか、と。
だから楓の着付け代として、報酬をもらう事にした。
頬に当てていた楓の手を取り、口に含む。
ねっとりと指の先から間まで舐める。
爪と指の僅かな隙間に舌を入れ込み、一本ずつ丁寧に愛撫していく。
歯を立てないように吸い付いてもみた。
何本か同時に口に入れ、行為の真似事のように出し入れしてみる。
時折 咽にかかる位に強く引き込む。
口内を性器に見立てて、楓の指を犯していく。
その間中聞こえる、楓の吐息が愛らしい。
左手が私の唾液まみれになるのを確認すると、見上げるように楓を覗き込んだ。
楓の右手はもはや箪笥を掴む事が出来ないのだろう。
その場に崩れるように倒れこんだ。
肩で息をする 楓のはだけた裾から覗く素足。
その脚を割り開き、身体をねじ込んだ。
身体が先を期待しているのが分かる。
陽を浴びることのない純白の二脚は震え、うっすら桜色に充血している。
指から 足と言えない位の付け根に舌を移し、口の中の空気を抜いていく。
同時に首元に腕を回し、浴衣の中に納まっていた 楓の一房の髪を引き抜いた。
「・・・・・んっ!」
一際大きな喘ぎをして、楓は朽ちた。
額に浮かぶ汗を指で拭ってやる。
力の入らない目で睨んでくるが、それは煽っていると気づかないのだろうか。
雪肌に残った、ルージュの刻印を指で軽く押す。
「何かあっても 着崩すなよ。
下帯を付けたからと言って」
これを見せるのは私だけで良い。
約束を守れたら・・・・・ご褒美、欲しいだろ?
そう言うと、楓は俯きながら頷いた。
後日聞いた話によれば、やはり祭りで何かあったらしい。
楓が新たに入った ふざけた名前の部活が絡んでいるらしいが、本人はあまり語ってくれなかった。
双子の話によると、楓は必死で裾を守っていたそうだ。
楓がそんなことを気にするのが珍しく、印象に残ったと言う。
しかし胸がはだけるのは まったく気にしていないのが、楓らしいとも。
胸にも痕を残すべきだったと思う反面、所有印を見せなかったのは上出来だと思う。
少しばかりの褒美と、それ以上の仕置きをするために、私は楓に近づくのだった。
fin
最終更新:2007年06月17日 00:37