長居してしまった。
 もう少し早く帰るつもりだったのに、あの場所は居心地が良い。
 きゃっきゃと騒ぐ双子と、それを見守る私と楓。
 何をするわけでもないのに、時間が経つのが早い。



 シャワーを止めると、私は湯船に浸かった。
 祭りは夕方からだ。
 しかしこの神社の長子である私は、祭事を行うための準備がある。
 急いで支度をしないといけないのはわかっているが、体がつい怠けてしまう。

「……楓と一緒にまわりたかったな」

 出来もしないことを口走っていた。
 この姓を受けたことを、初めて悔やむ。
 きっと年末も一緒にいられない。
 少しだけ胸が痛んだ気がした。

「真名さん」
 扉の奥から声が聞こえ、私は「今出る」とだけ返す。
 声の主は神社のバイト。
 私を急かすために来たのかと思ったら、違ったようだ。

「いえ、真名さんのお友達に手伝っていただいたので……急がなくても平気ですよ。
 それにしても、すごいですね。
 ひょっこり顔を出して無言で こう
 ……何人にも分裂して、あっという間に片付けてくれました」

 まるで忍者のようで・・・・・
 その言葉に、先程まで一緒だった楓を思い出す。

 きっと長居したことを分かっていたのだろう。
 そんな心遣いが、ものすごく嬉しい。
 その反面 何もしてやれない自分に苛立ちを覚えるのだが。


 楓のやさしさに甘え、体を温めることに専念することにした。
 顔ぎりぎりまで湯に浸かり、愛しい恋人を思い浮かべる。
「愛してるよ」
 この場にいない 楓へ想いを告げた。

「あいあい」
 いるはずもない楓の声がする。
 私は思わず 湯に頭まで潜ってしまった。

 ……なぜ いる?

 そんな私の思いを汲み取ったのだろう。
「真名の方も手伝うでござるよ」
 といつものように のほほんと言われた。


 そうか。
 これが目的だったのか。

 先刻楓の着付けをし、その際に少し悪戯をしたのを思い返す。
 きっと手伝いは口実で、仕返しが本音だったのだろう。

 私は「いらん」と否定するが、楓がその場を離れるはずがなかった。


「真名? いい加減に出てくるでござる」
 しばらくして、楓が脱衣所から声をかけてきた。

 出たくても出られない状況を作っているのは 貴様ではないか。
 今出て行けば、仕返しとして愛事を強要されるだろう。
 この後が遊びならば付き合ってやるが、一応仕事だ。
 体力を温存しておきたい。

 何もいわない私を心配したのか、
「のぼせたでござるか?」
 と楓が扉からひょっこり顔を出す。

 その頭をめがけて固形の石鹸を投げつけたが、即座にかわされた。
 それきり楓は覗かなくなったが、こんなのは僅かな時間稼ぎだ。
 そろそろ出ないと、本当に時間がなくなってしまう。

 私はため息を深くつき、しぶしぶ浴室のドアに手をかけた。


 楓は待ってましたとばかりに、私の仕事着を手にしていた。
 タオルで身体を隠そうと思ったが、用意のいいことにそれも楓の手中にある。

 私は半ば諦めモードで「何がしたいんだ?」と問うと、楓はにっこりと笑う。
「んー? 拙者が着替えさせてあげるでござるよ~」
 やはり先程のことを根にもっていたか。

 せめてタオルをよこせと言ったが、「全部拙者がするでござる」とタオルすら渡してくれない。

 時計を一瞥し、私は楓に従うしかなかった。

 柔らかなタオルが肌を這い回る。
 水滴を取るだけの行為に、思わず感じてしまう。
 タオルが二足の間を掠めると、小さな嗚咽が漏れてしまった。

 楓はそれに機嫌を良くし、私の秘部にタオルを当てる。
 そのまま片手で花芯を剥き、タオルで擦りあげた。
 敏感なその場所は、タオルのざらつきに反応する。

「か…えで」

 名を呼んでみるものの、楓は愛撫に夢中で視線すら合わせてくれない。
 身体の中を電気が走るような感覚がする。
 それでも物足りなくて、楓の髪に指を絡め 直接的な刺激を求めた。

 楓はそれに反応してくれ、タオルのせいで赤くなった果実を口にする。
「あっ……んっ……」

 熱を帯びたその部分に、ヒヤリと冷たい舌が気持ち良い。
 時折あたる牙も すごい激だった。

 立っているのも辛くなり、楓の頭を抱え込む。
 まるで生き物のように動く舌に絶頂を求め、自ら腰を擦り付けた。

 しかし、楓は非常にも身体から離れてしまう。

 自分も似たようなことをしたから、人のことは言えない。
 ぼんやりと思う私の胸に、楓は器用にサラシをまく。

 神社の仕事時は和服のため、普段の洋物の下着ではなく サラシをまいていた。
 常時サラシの楓は、なれた手つきで胸を潰す。

「うっ……」

 きつく巻かれたサラシが痛い。
 その痛みを和らげるように、楓がやさしく撫でてくれる。

 続きをしてもらえるという私の期待を裏切り、楓は着付けを終えてしまった。
 湯と楓によって温められた身体は、虚しく震える。

 楓が苦笑し、先程まで私の蕾を弄っていた唇で口付けを求めた。
 私は素直にその舌を受け入れる。

「…んっ……んんっっ……」

 口の合間から漏れる、どちらとも分からない吐息。
 唇を離すと、差し出した舌同士に薄い糸が橋となった。

 して……
 と言う楓を床に寝かせる。

 浴室で粘った意味がない、そう思いながらも楓の脚に手を滑り込ます。
 下着の上からでも分かるくらい、楓のそこは熱くなっていた。
 自分にも余裕がなく、下着の合間から襞に指を入れる。
 楓の内部は待ちわびていて、何の苦もなく私を受け入れた。

 ぬめりを確認しながら指を増やして、楓の感じる部分を引っ掻き回す。
 愛液が止まることを知らずに、床を濡らしていた。

 自分も楓の愛をねだり、楓の指を導く。
 が、楓は頑なに拒否していた。

 …仕返しなのだろうが……ひどすぎる。

 きっと淫事では私に敵わないと分かっているのだろう。
 生殺しにすることが仕返しなのだ。

 そんなことを思いながら、私は楓の浴衣から伸びた脚に跨った。

 自分の愛液を楓の脚に擦り付け、高みへと昇る。
 外襞が楓から離れまいと ぴったりと張り付く。
 肉塊を潰すように動くと、楓もゆっくりと脚を動かしてくれる。

 楓を頂点へ誘うように内壁を掻く指に力を込めた。

「あっあ、あああああ……」
「んっ…んん……」

 二人の喘ぎがユニゾンして、脱衣所に木霊する。
 先程の悪戯の際につけた 楓の太股の赤い印をきつく吸うと、楓はあっさりと朽ちた。
 それを見送り、私も楓の脚に熱い愛欲をぶつけるのだった。



 けだるさの中 寝転がっていると、楓は優しい手つきで私の濡れている秘所を拭ってくれた。
 甘えるように、それに身を委ねる。
 ずっとこうしていたい。
 二人で溶け合って、ひとつになってしまいたい。

「真名さん…
 そろそろ急がないと……」

 タイミングよく現れたバイトに舌打ちし、のろのろと立ち上がる。
 そしてあることに気づいた。

「楓、パンツ」

 楓のいたずらの所為で、身につけていない下着を求める。
 すると楓はさっきまで私を拭いていた布を見せた。

 それは自分と恋人の愛液で びしょびしょになった、私のショーツ。
 にこりと笑う楓を一発殴って、外にいるバイトに声をかける。
「ちょっと部屋によってから行くよ」

 そんな時間ありませんよ と言うバイトと、
 どことなく嬉しそうな楓によって、
 私は落ち着かない姿で仕事をする羽目となった。

 酒で酔って暴れた者に蹴りを入れようと思い、
 慌てて袴を押さえた。
 そんなことは言うまでもない。



  教訓。
 楓に悪戯を仕掛けると、後できっちりと代償がくる。

     fin

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年10月28日 00:57