プリンのお話
いつも頼んでくれたおまけです。
「……っ」
それは超包子で昼食を取ろうとして、おまけで楓の好物であるプリンを五月がおまけで出ていた瞬間に起きた。
楓にとって壮大な大事件である。
「食べないのか楓?」
同じく楓と同じメニューを頼んだ真名が隣に座った。
真名は楓とメニューが同じであるはずなのに量が全く違う。
「このプリン…」
「お前いつも特盛り(別名:毒を食らわば皿までノンストップリミックスTypeX)頼むからだろ」
ご飯の量やおかずの大きさもまったく違う楓特別メニューであった。
その中で好物のプリンを喜ぶのは当然のはず。
しかし、大いに楓を困らせているのはその横にあるフルーツヨーグルトの存在。
「すでにデザートとしてフルーツヨーグルトが出てるでござろう」
「そうだな」
「デザートの大御所のプリンがここにいたらポジションが危ういでござろう!!」
つまり、デザートのポジションが二つも存在していることにすごい違和感があるという。
何でも笑って簡単にかわしそうな楓の意外なこだわり。
プリンと大盛りのフルーツヨーグルトを前にして全く食事に手が付いていなかった。
「あーはいはい」
真名にとってはどうでもいいことである。
そんな流し様子に楓は軽く怒りを感じていた。
「ならお前がプリンを食べて、そのフルーツヨーグルトを私が食べるのはどうだろう」
「えっ……!?」
一瞬で場の雰囲気が凍りついた。
楓の食欲とプリンの立場については別であった。
「いいじゃないか、素直に受け取ったら」
「しかし……」
変なこだわりを見せる楓を軽い姿勢のままでいる真名。
気にしすぎているのか楓は食事のペースが遅い。
すると真名はそっと楓の顔に近づいてきた。
「な、何を……」
「今日泊まっていいか?」
恋人同士のように、キスせんばかりに近づいて宿泊の返答を待つ真名。
「やめるでござる、人が……」
「早く返答すれば…な」
おでこをくっつけて微笑む真名は、隙あらば楓の唇を人前でも奪いかねない勢いだった。
どうしようか迷う暇もなく、徐々に真名の唇が楓の唇に触れ合う瞬間。
出前を終えて帰ってきた古菲がいたため、強引に机に向かって真名の顔面を押し当てる楓。
机にへばり付くようにして押さえつけられた真名は、息が出来なくて苦しんでいるがお構いなし。
ようやく顔をあげることが出来るや、真名の顔に蓋を開けたプリンが現れた。
「一口あげるでござる」
楓は顔を赤く染めて真名にプリンを渡した。
迷いが出るくらいならさっさと食べて欲しいといっているようだ。
「それはすまんな」
すると一口プリンを含むと、真名は楓の腕を掴んで口付けをしようとした。
それは俗に言う、口移し。
「――!」
だがその動きを察した楓はすぐに翻して真名の頭にげんこつを食らわせた。
「ぐぅぅぅぅぅ」
不意打ち返しであったため、ものすごく痛がる真名。
かなり効いたらしく、頭を抑えてしばらくそこから動けなかった。
「はぁ……」
真名の見境なさにうんざりしながらも、楓はプリンを手に取った。
楓にとって今までで十分であった。
その一口食われているプリンを見て、軽く笑い食べた。
一口食べた時に広がるプリンの味に舌鼓を打つ。
カラメルソースの味に堪能しつつ、楓はそっと考えた。
「まぁ、いいでござるか。腹に入らないわけではないでござるから」
気付いたころには、出された食事は全て食べきっていた楓であった。
終
最終更新:2007年10月28日 01:17