第一話「舞踏会殺人事件」
坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖“舞踏会殺人事件”」
UN-GO「舞踏会の殺人」 より
ブレイブ「へぇ・・・結構広い会場だな」
リザルト「舞踏会なんていつぶりかな」
ブレイブ「そうだな・・・ま、入ってみるか」
数年前からリゾートエリアに設置された巨大なドームは、連日貸切でパーティが開かれる催し物会場として賑わっていた。
ある時はバザーが開かれ、ある時は披露宴が開かれ、あるときはスポーツ大会が開かれ、ある時は会議が開かれ・・・
戦争で姿は衰えてもテクノロジーはまだ衰えておらず、内装は幾度かの工事を経ていて壊れている箇所や使えないシステムなどもなくなっており、現在のコズミックアークには似合わないと言っても過言ではないレベルの綺麗さのドームがそこにあった。
中に入ると、すぐにポーンジャーが声を掛けてきた。舞踏会ということで、一応パピヨンマスクをつけて小洒落たワイングラスを片手に踊りを眺めていたようだ。
「む・・・君、なんでここにいるんだね?」
ブレイブ「これはこれはノップ氏、ご無沙汰しています」
ノップ「挨拶がしたいわけではない。なぜここにいるのかと聞いているのだ」
ブレイブ「私も"招待"されましてね」
そういって懐から取り出した手紙には、招待状とはっきり読める字で書かれていて、これにはさすがにノップも言葉を無くさざるを得なかったのか、黙り込んでしまった。
ブレイブ「まぁ、私が呼ばれたということは、何か事件が起こるかもしれませんよ。それも、大事件がね」
ノップ「ふっ、一人前に探偵を気取りおって。コスモカイザー氏との推理力の差は分かりきったことだろう?」
ブレイブ「ま、それはどうかな・・・、っし、行くぞリザルト」
リザルト「ねぇブレイブ、向こうのほうすごい人だかり」
二人の視線の先には、山のような人だかり(この場合ロボだかりと呼ぶべきなのか)があった。
持ち前の機動力で人々の懐を掻い潜り、囲まれている1機のロボを見ると、それはどうやらクリムローゼタイプのジアス機のようで、舞踏会に合わせてドレスを着ていた。
ブレイブ「あなたは・・・コスモカイザーさんの直轄の」
「あら、あなたコスモさんのお知り合い?」
ブレイブ「いや、ちょっとね・・・お名前は確か」
ピア「ピアです、クリムローゼのピア」
ブレイブ「ピアさん、でしたか」
ピア「何か、用でも?」
ブレイブ「いえ、すごい人だかりだったので・・・」
ピア「そう」
少し冷たげな返事で返すと、ピアはすっと振り向いて別の招待客と談笑を交わした。
その話に耳を傾けようとしたその時、ぱっと場内の電気が消えた。
「んっ!?」「なんだ?」「停電・・・?」
停電を危惧し各自バッテリーを用意していると、ステージのライトが点き、ステージに設置されたマイクと演説台が照らされた。
この舞踏会は、実は「舞踏会」という名目で行われる、一種の「弁明演説」だった。
イニットという一機の機体がある。
戦争中、イニットは混沌軍のスパイだったのではないかという疑いをかけられ、それを払拭するための弁明演説をこの舞踏会の場を借りて行う予定だったのだ。
今にもその弁明演説が始まるという雰囲気の中、ステージ横から歩いてきたイニットはステージに立ったかと思うと急に倒れこんだ。
イニットの背中を見ると、そこにはナイフが突き刺さっていた。
ブレイブ「・・・事件だ」
ファウント「まずは警察と救急車の手配を!応急手当を行うんだ!」
ピア「いったい、なんでこんなところで人が・・・!?誰が殺したの・・・!?」
ブレイブ「この事件、『誰が殺したか』よりも、重要なのは『なぜ殺されたか』のほうかも知れない」
ファウント「また君か・・・我々の邪魔をするなと」
ブレイブ「殺された理由を考えれば、おのずと事件は解けてくる・・・そういうものじゃないか?」
直後、通信モニターに一機の機体のホログラム映像が映し出された。
コスモ「やぁ、ブレイブ君」
ブレイブ「お前か・・・で、今回の事件、どう思う?」
コスモ「んー、やはり今回の事件、キーになってくるのは君も言った通りなぜ殺されたか、かもしれないね」
ファウント「コスモカイザー様、こんな素人の意見に耳を貸す必要は・・・」
コスモ「いや、彼は実際かなり鋭いところを突いていると思うよ」
ブレイブ「で、なぜ殺されたと思う?」
コスモ「んー、やはり事実の隠蔽じゃないかな」
ブレイブ「そうか、あくまでも混沌軍のスパイだという事実をそのままにするために殺した、そういうことだな」
コスモ「あながち間違ってないよ。で、その場合誰が殺したか、だけど」
ブレイブ「反混沌勢のリーダー格も何人か招待されているらしいな」
コスモ「うん、それもみんな同じ仮装、同じ格好。これは疑わざるを得ないね」
ブレイブ「じゃあ、聞き込みを始めよう。」
コスモ「『捜査開始』だね。近くのシャインバスターたち警備にも頼んでおこう」
捜査を進めていくと、反混沌勢であるシローと、その側近であるヤマダにたどり着いた。
シローとヤマダは見事に同じ仮装(それもサーティンマスクというなかなか使われないシロモノ)で、ステージに一番近い卓に座っていたようだ。
シロー「俺は、ヤマダと同じ仮装だが、俺はずっとステージ前でコズミックワインを嗜んでいたぞ。30年物の高級ワインだそうだ。嗜まないわけにはいかないだろう」
ヤマダ「私もシローさんと同じくワインを嗜んでいました」
ブレイブ「同じ仮装の二人が同じアリバイを主張する、か・・・」
ノップ「私も、彼らとともにワインを嗜んでいた」
ブレイブ「あなたもでしたか。では、アリバイは成立・・・と考えて大丈夫そうですね。ところでシローさん、ヤマダさんは反混沌勢のリーダー格でもある、とのことですが―――」
シロー「おい、まだ俺たちを疑うのか?たしかに反混沌ではあるがなあ、その・・・」
ヤマダ「確かに私たちは反混沌勢ですし、イニット氏のことも多少は疑っています。しかし、私たちは彼の意見を反混沌勢に伝えるために招待されて来たのです」
シロー「俺たちが『反混沌勢』だと思われないように、ご丁寧にも仮装舞踏会というくくりにしているらしいが、な」
ブレイブ「あなたたちのための舞踏会ステージだったわけだ」
シロー「ん、そうなるかな。まあ、つまりだな、その・・・」
ヤマダ「私たちがイニット氏を殺してしまっては、彼の必死な弁明が聞けないんですよ。私たちが殺してしまうわけにはいかない」
ブレイブ「そうでした、か・・・それは申し訳ない。疑ってしまった」
ブレイブ「・・・あ、ノップさん。一つお聞きしたいのですが」
ノップ「何かね」
ブレイブ「イニット氏の奥様は、どちらへ?」
イニットには妻がいた。戦争が始まる前の結婚で、同じロボタイプ・同じ年代のロボということで気が合ったらしい。
名前は、カノン。彼女には、一つの弱点があった。お酒に非常に弱いことだ。
ノップ「私は彼の奥方が酒に弱いのを知らなくてね。低アルコールとはいえ、すこし飲ませてしまった」
ブレイブ「それで彼女はお手洗いに」
ノップ「ああ。しかし演説前のことだ、演説までには戻ってこれると思ったのだが―――」
ブレイブ「・・・ん、あれがカノンさんですね」
ノップ「ああ。そのようだな。ちょうど戻ってきたのか、それとも」
カノン「・・・すみません、少し足止めを食らっていまして」
ブレイブ「この度は・・・」
カノン「いえ、いいんです。あの人は反混沌勢に嫌われていましたし、こういう場ですから、そういうことも起こり得るかと・・・信じられないことですが・・・」
ブレイブ「そうですか・・・ということは、足止めというのは」
カノン「ええ、お手洗いから出てすぐに説明を受けました」
ブレイブ「そうですか・・・ノップさんいわく演説前からお手洗いにいたようですが」
カノン「ええ、お酒に弱いもので」
ノップ「申し訳ない・・・知らなかったので」
カノン「いえ、いいんです。私も克服しないと、と思っていましたし・・・」
ブレイブ(・・・はっ、そうか・・・)
ブレイブ「・・・では、私は失礼します。まだ調べたいことがありますので」
カノン「ええ。お願いします」
リザルト「ねぇ、もう犯人分かったんでしょ」
ブレイブ「ああ。あとは『あいつ』がまた間違った推理を見せてくれれば、完璧だ」
リザルト「ひどいねー間違った推理、だなんて。今回はコスモさんも当てにくるかもよ?」
ブレイブ「まあその可能性はあるだろうな。会場内はモニタリングしていたようだし、俺たちの言葉も聞こえていただろう」
リザルト「ま、彼は彼なりにがんばるよ」
ブレイブ「それもそうだな・・・」
『謎は解けました。ここに残ってくださった皆さん、ありがとうございます。そして、大ホールまで集まっていただきたい」
ブレイブ「コスモの声だ・・・俺たちも行こう」
=《舞踏会殺人事件》解決編に続く。=
最終更新:2012年09月14日 22:07