~水の国レモンド~
至る所に噴水が咲き乱れ,川の上には鮮やかに装飾された船が走る。
水の国レモンドの中心王街-ダーダルネス。
華やかな町並みを目にして,ラメイルは興奮していた。
ラメイル「なんて美しい街なんだ!!」
落ち着きのない彼女を珍しそうに見つめるアポロニウス,に気づくラメイル。
ラメイル「アポロニウス,他国を訪れたときは,まずは国王への謁見が常識です」
アポロニウス「俺何もいってないけど」
~王城門前~
その城は"水"でできていた。
いや,城の天辺から流れ落ち,城の周りの水路に流れ込む"水"が城の外郭を包み込み,あたかも"水"で作られたように見えるのだ。
導かれるように場内に入る二人を出迎えたのは,見覚えのある人物だった。
ポセ「ずいぶんと早いものじゃ。高速船でもつかったのか?」
ミストラルシティ3on3大会準優勝チーム,
アビスライジング。
チームのリーダーであるポセは,水色を主色とした水の国の伝統的な服装を着こなし,大会の時とは大きく印象が違っていた。
ポセ「これでも大臣での。さ,王への謁見を許可しよう。ついてきなさい。」
通された部屋の奥には大きくも美しい,透き通るような水色の玉座があり,そこに国王の風格漂わせる男が座ってた。
ポセ「こちらにおわすが国王ランゼル,我が国の主君であられる」
ランゼル「お前たちがメサイアの一員か。ポセから話は聞いているぞ,なかなかの使い手だそうだなガハハハハ」
体格のいい男がだちあがると,なおさらその巨大さに目がいく。
背の小さいラメイルの倍以上ある身長に圧倒されながらも,
ラメイル「国王ランゼル,しばらくこの国への滞在をお許し下さい。」
ランゼル「ガハハハハ。そうかしこまるな,ラメイルよ。フランゲルから書簡が届いていてな,できる限りのもてなしをしろとのことだ。存分のこの国を楽しんでくれ!!」
ポセ「しばらくゆっくり滞在するんじゃな。この国では決闘はあまり盛んではないから退屈かもしれんがの」
アポロニウス「サンキューな,ポセ」
ポセ「あぁそうじゃ,ラメイルよ。そちにこれを譲ろう」
大臣が差し出したカードを受け取るラメイル。
ラメイル「これはあなたの象徴的なカードではないですか,受け取れません。」
ポセ「ほほほ,フランゲルのいうとおり謙虚なおなごじゃ。しかしじゃな,受け取ってもらわねば困るのじゃよ」
そういうと無理やりカードを手渡し,ほほほと笑いながら去っていく大臣,を見つめる二人,それを陰から見つめる二人。
???「認めない…認めないぞ!!」
~城外街角~
アポロニウス「でかい。それにしてもでかい。国王も,この街も。」
アポロニウス「ところでフランゲルってだれだ?君の知り合いか?」
ラメイル「フランゲルは黄金都市アムジャーラの国王です。気にいられたようで,大抵の国では私は顔パスでものを買ったり食事ができます。」
アポロニウス「…君はなかなかの女性のようだ。恐れ入ったよ。」
アポロニウス「さて,目的を果たそうか」
ラメイル「えぇでは早速…」
???「ちょっとまてぇぇぇぇいいぃぃい!!」
立ちはだかる小学生ほどの少年が二人,確かこいつらは…
シーラ「認めない。俺は認めないぞ。」
エル「いぞ。」
アポロニウス「お前ら何だよ。うるさい,うるさいぞ?」
シーラ&エル「うるへー!!認めないったら認めないんだよ!!」
ラメイル「何を認めないんだ?国王への謁見を終え滞在の許可はもらっているぞ?」
シーラ「難しい話でごまかすな!!おまえ,ポセ大臣からカードもらったよな?」
エル「よな?」
ラメイル「無理矢理ではあるが確かに受け取ったが…」
シーラ&エル「それを認めないっていってんだ!!」
~ちょっと回想~
ポセ「異国の地で開催される大会3on3。大会に出場し活躍したものに英雄のカードを進呈しよう。至高の水デッキをくみ上げるのじゃ」
~回想おわり~
シーラ&エル「そのカードは俺たちがもらうカードだ。かえせよ!!」
アポロニウス「3on3に出場,大会で活躍,水デッキ使い。なんだラメイルはその条件に当てはまっているじゃないか。そもそもお前ら俺たちに負けてんだぞ?」
シーラ「むむむ」
エル「むむ」
ラメイル「あなた達の言い分わかりました。どうでしょう,僕ともう一度戦ってみませんか?それで気が済むならですが…」
ぱっと目を輝かせる二人。どうやら認めない!!は決闘したいための口実にすぎなかったようだ。
シーラ「俺からね」
エル「らね」
~王城王の間~
ランゼル「よかったのか,英雄のカードを手放して。あの娘はこの国の出身者ではないのだぞ」
ポセ「いいのです。英雄のカードは英雄が持ってこそふさわしいのです。それに…」
遠い過去に思いを寄せる。
かつてこの国は近隣の国々を支配した大国であった。
しかし突如現れた『シャカイナ』と名乗る人物によって,大きな変革が起きる。トロイ朝は滅ぼされ3000年の王族の歴史は幕を閉じる。
その後『シャカイナ』は何者かによって倒されるが,和平の国が戻ることはなかった。秩序を失った国は,動乱,狂乱,影乱に包まれる。そこに現れたのが二人の英雄だったのだ。
二人の英雄の活躍により,水の国は再びその美しさを取り戻した。そして"今"にいたる。
ポセ「英雄…アポロンとポセイドン…彼らがいなかったらこの国は…」
ランゼル「そうだな。それで,英雄の転生があいつらとでも?」
ポセ「いえいえ,英雄の話はあくまでも神話の中の話です。ですが…」
ポセ「…ですが神話は無常からは生まれません」
ランゼル「火のないところに煙は立たぬってやつか」
メサイア(
オリジネイター…二人の英雄…神話として伝承されているのか)
メサイア(これ以上の情報はないだろう。どれラメイルに教えてやるか)
バサっ
~噴水広場~
シーラ&エル「とりゃー」
アポロニウス「はっはは。見苦しい,見苦しいぞ少年よ。悔しかったら俺を越えてみろ!!」
楽しげに決闘する男の子らを眺めるラメイルは,ポセイドラのカードをデッキに,静かに組み込んだ。
最終更新:2012年08月30日 05:26